CASE STUDY
事例紹介
これまでに約20の業界、毎年数百件の
コンサルティング実績を誇ります。
企業規模や特定の業界に限らず、人事領域の課題を包括的な解決策を提供したこれまでの実績をご紹介します。
©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.
©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.
お悩みに合わせた解決策をご提供いたします。
これまでに約20の業界、毎年数百件の
コンサルティング実績を誇ります。
企業規模や特定の業界に限らず、人事領域の課題を包括的な解決策を提供したこれまでの実績をご紹介します。
トランストラクチャは、人事の課題を把握し、
解決する3つのフェーズ
「調査・診断」「計画・設計」「導入・運用」に対応した、
それぞれのサービスを提供しています。
組織・人事の状況を多面的に定量分析し、問題・課題を見える化する組織・人事診断サービスをはじめ、人事制度設計、雇用施策、人材開発の領域で多彩なサービスを提供。分析や戦略構築から、施策の実践、得られた効果の検証までサポートを通じて、真に経営に貢献する人事コンサルティングを行います。
組織や人事の課題解決には、その背後にある要因を正確に見極めることが不可欠との思いから、トランストラクチャはデータ分析を基にした定量的なレポートを提供。客観的かつ精密な課題の見える化により、分析や戦略構築、施策を適切に実践。効果の検証も可能です。施策の効果測定や進捗管理にも役立ちます。
当社を起点に、人事システム、退職金、給与計算などの人事関連サービス専門企業との緊密なネットワークを形成。組織・人事に関わるほぼすべての分野に対する良質なサービスの提供が可能です。企業が抱える組織・人事分野のさまざまな課題をワンストップで解決します。
トランストラクチャのコンサルタントは、徹底した教育とナレッジの共有、品質管理により、人事コンサルティングの最新知識から当社のサービスに関する方法論・テクノロジーまで熟知しています。全分野を網羅する課題解決力で、お客様の組織の成長と変革に向けた持続可能な人事戦略と組織体制を構築します。
組織・人事制度導入後も、最少2名の経験豊富なコンサルタントが伴走。長期的かつ持続的な改善を支援します。これによりお客様の組織に対する深い理解を得られ、その組織文化やニーズに適した戦略や改革の提案が可能。組織の持続的な成長と成功を支える重要な要素です。
人口減少・少子高齢化、テクノロジーの進化、働き方とライフスタイルの変化など、かつて経験したことのない変化が生じる2030年を見据えた組織と人事の課題解決はお済みですか?まずは、貴社の現状をお聞かせください。
トランストラクチャについての会社情報やサービス利用のご検討に際して当社の資料が必要な方に役立つ各種資料はこちらからダウンロードが可能です。ご登録メールアドレス宛にご希望の資料をお送りします。
トランストラクチャのコンサルタントが執筆したコラムを掲載するたびに、あらかじめご登録いただいたメールアドレス宛に更新情報をご案内します。まずはお問い合わせフォームより購読希望をお知らせください。
トランストラクチャでは、人事の課題解決に役立つ具体的な事例や、
最新の人事トレンドを反映した無料セミナーを積極的に開催しています。
組織と人事に関する最新情報やノウハウを発信。
ビジネスの現場ですぐにでも役立つ内容を厳選してご紹介します。
人事に関する魅力的なデータやチャートを
分かりやすく解説します。
これらの情報は、将来の人事管理に向けた基盤を提供します。
2024.12.23
当連載では、人的資本の重要指標として「人的資本ROI」の計算法、解釈と業界別分析を行っています。末尾の関連記事と併せてご覧ください。同じ業界であっても商材や経営戦略・ビジネスモデルが異なれば、当然、人的資本ROIの水準にも差が出ますが、一般的な業界水準の理解や、動向の把握が重要です。 今回は、直近5年分の建設業の人的資本ROIを資本金規模別に見ていきます。 図表1は、建設業の資本金規模規模別の2000年以降の人的資本ROIの推移です。まず、俯瞰で見ると、資本金規模や年度により大小がありますが、おおよそ4~6割のレンジで推移しています。一般的に建設業は比較的人件費率が低い業種であり、他業種と比べても一定のリターンが得られやすい構造ですが、超大手の情報通信業(2022年,135%)のような著しい伸びを実現できる構造では無さそうです。 また、資本金規模による比較の観点では、一部の業種では、規模の経済が働き、資本金規模が大きい程リターンが大きくなる傾向がありますが、建設業では水準に大きな差は見られません。むしろ、2021年以降、資本金規模10億円以上の大手企業の水準を、1~10億円規模の中堅企業の水準が上回っていることが分かります。 [図表1]建設業人的資本ROI推移(資本金規模別) 出典: 法人企業統計調査 時系列データを基に筆者計算 ※計算式:人的資本ROI={売上高ー(原価+販管費ー(給与+福利厚生費))}÷(給与+福利厚生費)ー1 建設業は、元請けである大手ゼネコンをトップに、多重構造からなる特有の業界構造を有します。従来は、上流企業は圧倒的な交渉力を有し、厳しい納期や条件で仕事を進めてきました。 現在も超大手は一定の交渉力を有しますが、2024年問題と称される働き方改革・労働条件改善の取り組みが進捗し、仕事を進めるために下請け企業が許容する条件を提示せざるを得ない状況になりつつあります。また、人手不足により下請け企業側が受注制限をせざるを得ない状況から、交渉の力関係が変化しつつあると言えます。こうした状況により、中堅規模の企業では健全な水準のリターンを得やすくなっていると言えます。逆をいえば、大手企業が下請け企業に厳しい条件を提示することで、これまで得られたリターンは失われていく傾向になるでしょう。 人口減少による国内市場縮小や、人手不足と深刻な高齢化、原材料高騰等、悩ましい問題を抱える業種ゆえに、今後、適切に人材へ投資をしながらリターンを得るため、構造を転換する契機でもります。業界全体の収益構造の抜本的な変革としては、M&Aによる過剰な多重構造の解消があげられます。また、個社の収益改善の観点では周辺業務のDX投資・DX人材開発による効率化や、新市場・新商流を生み出すイノベーション人材への投資等が考えられます。 以上 「人的資本ROI」が分かる!~「HRデータ解説」バックナンバー 人的資本ROIとは 人的資本ROIと労働生産性の関係性 人的資本ROI水準に影響する外的要因 小売業の人的資本ROI 情報通信業の人的資本ROI 宿泊業の人的資本ROI 物流業の人的資本ROI 製造業の人的資本ROI
2024.12.16
当連載では、人的資本の重要指標として「人的資本ROI」の計算法、解釈と業界別分析を行っています。末尾の関連記事と併せてご覧ください。同じ業界であっても商材や経営戦略・ビジネスモデルが異なれば、当然、人的資本ROIの水準にも差が出ますが、一般的な業界水準の理解や、動向の把握が重要です。 今回は製造業に絞って人的資本投資利益率(ROI)の特徴を解説します。人的資本ROIは収益構造やビジネスモデルにより水準が大きく異なるため、一概にどの水準であれば良いとは言いきれませんが、外部水準と比較して自社がどの水準にあるかや、自社の指標の推移を確認しておくことには意味があるでしょう。 ここでは資本金1億円以上規模の製造業全体と製造業の内、食品製造業・化学工業・電気機械器具製造業・情報通信機械器具製造業・金属製品製造業について、過去11年分のデータを比較します。 図表1は人的資本ROIの推移を示しています。(凡例の括弧内は11年間の平均値) 2018年からの米中貿易摩擦や2020年の新型コロナウイルス流行、半導体不足、2022年からのロシアによるウクライナ侵攻によるサプライチェーンや物流ネットワークの混乱、等による製造業全体の利益減少の影響は見られるものの、図中の全業種で2013年と比べ2023年の人的資本ROIは上昇しています。 最もROIが高いのは化学工業(11年間の人的資本ROI平均80%)です。食品製造業(同43%)は製造業全体(同44%)と同水準、電気機械器具製造業(同34%)・情報通信機械器具製造業(同32%)・金属製品製造業(同28%)は製造業全体より低い水準です。 [図表1]資本金1億円以上規模の製造業および製造業に含まれる一部産業の人的資本ROI 出典:財務省「法人企業統計調査」を基に筆者計算 ※計算式:人的資本ROI={売上高ー(原価+販管費ー(給与+福利厚生費))}÷(給与+福利厚生費)ー1 人的資本ROIは人件費投資に対するリターンを示す指標ですが、社員一人当たりが生み出した付加価値の指標である労働生産性と一緒に分析することも有効です。図表2は労働生産性の推移です。 [図表2] 資本金1億円以上規模の製造業および製造業に含まれる一部産業の労働生産性 出典:財務省「法人企業統計調査」 ※ 労働生産性=付加価値額÷従業員数 5業種の人的資本ROIと労働生産性を製造業全体と比較すると以下の4パターンに分類できます。 化学工業(人的資本ROI:同等以上×労働生産性:同等以上) 製造業全体と比較して、人的資本ROIと労働生産性のどちらも高い水準であることから、人件費の投資効率が良く、少ない人数で高い付加価値を創出していると言えます。 電気機械器具製造業・情報通信機械器具製造業(人的資本ROI:低い×労働生産性:同等以上) 製造業全体と比較して、労働生産性は同等以上であることから少ない人数で付加価値を生み出していると言えるものの、人的資本ROIは低いことから人件費投資効率に改善の余地があると考えられます。 食料品製造業(人的資本ROI:同等以上×労働生産性:低い) 製造業全体と比較して、人的資本ROIは同水準であることから人件費投資に対する一定のリターンは得られているものの、労働生産性が低いことから人員が余剰していると言えます。 金属製品製造業(人的資本ROI:低い×労働生産性:低い) 製造業全体と比較して、人的資本ROIと労働生産性のどちらも低い水準であることから、人件費投資効率に課題があり、人員も余剰していると言えます。 今回は人的資本ROIと労働生産性を比較しましたが、他にも設備や人材への投資の指標として、労働装備率(社員一人当たりの有形固定資産)や無形資産ソフトウェア、研究開発費、一人当たり人件費を比較することも意味があるでしょう。自社の方針と関連する指標を定め、モニタリングしていくことが重要です。 以上 「人的資本ROI」が分かる!~「HRデータ解説」バックナンバー 人的資本ROIとは 人的資本ROIと労働生産性の関係性 人的資本ROI水準に影響する外的要因 小売業の人的資本ROI 情報通信業の人的資本ROI 宿泊業の人的資本ROI 物流業の人的資本ROI
2024.12.09
当連載では、人的資本の重要指標として「人的資本ROI」の計算法、解釈と業界別分析を行っています。末尾の関連記事と併せてご覧ください。同じ業界であっても商材や経営戦略・ビジネスモデルが異なれば、当然、人的資本ROIの水準にも差が出ますが、一般的な業界水準の理解や、動向の把握が重要です。 物流業は私達の日々の生活の基盤となる重要な産業の1つです。コロナ禍において人・モノの移動が制限されたことで、通販や宅配等のサービスがより普及し、より一層身近で重要性を感じる産業の1つになったのではないでしょうか。同業界は国際情勢や資源価格等の影響を大きく受ける業界であることに加え、直近では法改正に伴う人材不足が懸念される等の課題があり、物流の安定性を担保するには様々な施策が必要です。今回は物流業界の過去20年の人的資本ROIの推移を見ながら、今後採りうる施策について述べていきます。 図表1は、陸運業の資本金規模規模別の2002年以降の人的資本ROIの推移です。コロナ禍以前は資本金規模に関わらず緩やかな成長傾向にあり、資本金1億円以上10億円未満は6~35%、10億円以上は30~70%のレンジで推移していました。2019年から2020年にかけて、人やモノの移動が世界的に制限されたことにより、陸運業全体の人的資本ROIが低下しましたが、その後回復基調にあります。 [図表1]陸運業人的資本ROI推移(資本金規模別) 出典:法人企業統計調査 時系列データを基に筆者計算 ※計算式:人的資本ROI={売上高ー(原価+販管費ー(給与+福利厚生費))}÷(給与+福利厚生費)ー1 陸運業の大企業の特徴として大口顧客をメインで扱う点や人件費や設備費等の固定費が高い点が挙げられ、同業種の中小企業と比較して売上の減少が収益に大きな影響を与えます。コロナ禍においては外部環境の変化に敏感な企業が大きな打撃を受けたことにより、収益が一時的に大幅に低下したと考えられます。一方で中小企業は特定の市場や地域に特化していることが多く、顧客基盤が特定の業界に集中していないことで、大企業と比較すると外部環境の変化の影響を受けにくかったと思われます。 図表2は、水運業のものです。資本金規模によって大きく傾向が異なり、資本金1億円以上10億円未満の企業は40~95%、10億円以上は特に変動幅が大きく、-220~570%を推移しています。 [図表2] 水運業人的資本ROI推移(資本金規模別) 出典:法人企業統計調査 時系列データを基に筆者計算 ※計算式:人的資本ROI={売上高ー(原価+販管費ー(給与+福利厚生費))}÷(給与+福利厚生費)ー1 [図表3]原油価格とA重油価格の推移 出典:石油製品需給動態統計調査 石油統計 年報を基に筆者作成 水運業の大企業の人的資本ROIは、原油価格の値動き(図表3)に非常に類似しています。水運業の収益は原油やコンテナ運賃等のコストが外的要因により大きく変動することから、人的投資が必ずしも企業の収益に直結する訳ではありません。一方で、中小企業の場合は国内向けの輸送が中心である点や景気動向に関係なく需要のあるものを大量に輸送する点等から、景気動向やコロナ禍のような外的要因の影響を受けづらかったと考えられます。 陸運業・水運業問わず、物流業が安定的に成長していくためには、これまで言及してきたような景気動向や外的要因の影響を最小限に留められるよう、経営・事業の戦略の立案と推進を行える人材への投資が肝要です。顧客・販路の開拓や、エネルギー効率を意識した設備投資、デジタル化による省力化・効率化等、ビジネスを俯瞰的に見られる人材への投資がより一層求められるでしょう。 以上 「人的資本ROI」が分かる!~「HRデータ解説」バックナンバー 人的資本ROIとは~人的資本経営の重要指標:人財への投資効率を知る~ 人的資本ROIと労働生産性の関係性~人数から投資効率を考察する~ 人的資本ROI水準に影響する外的要因~ITバブル崩壊・コロナからの回復の早い業種・遅い業種~ 小売業の人的資本ROI~労働集約型ビジネスにおける人材投資のあり方~ 情報通信業の人的資本ROI~人材不足が労働集約型ビジネスにもたらす影響~ 宿泊業の人的資本ROI~~苛烈化する競争で求められる次代の人材とは~
トランストラクチャのコンサルタントによるコラムをお楽しみください。
多くの企業様へのサポートを通じて蓄積された知識や、
日々の人事・経営に対する洞察をシェアします。
2025.01.10
失われた30年、わが国の企業には、創造性が決定的に欠けていたと言われる。最近になってこれを何とか取り戻そうとする動きを感じる。人事的な観点からは、D&I(ダイバーシティー&インクルージョン)という言葉を至るところで聞くようになった。女性や外国人を積極的に採用し、多様な社員を揃えることで、より「クリエイティブ」な組織を目指そう、という動きだ。確かに、多様なメンバーが集まれば、意見がぶつかり合い、新しい発想が生まれやすい…そんな理屈だろう。でも実際のところ、それだけで本当にクリエイティブな組織ができるのだろうか? まず、一つ誤解しがちな点がある。人材の「多様性」とは、単に「性別や国籍が違う人がいること」ではない。もちろん、女性や外国籍の人材が加わることで視野が広がるのは間違いないが、多様性ということは、もっと突っ込んで捉える必要がある。教育や職歴、大成功や大失敗の経験、そこから生まれる考え方や価値観といった「後天的な多様性」も加味することが重要だ。たとえば、同じ建築業界の外国人と日本人が一緒に働いても、業界のルールや価値観が似通っていると、意外と「多様性のある議論」にはなりにくい。ここに、IT技術者、医師、小売業の社員など異業種のバックグラウンドを持つ人が入れば、アイデアの幅が一気に広がるということがあるのだ。 次に、こうした「多様なメンバーの集まり」が一つの目標に向かって力を合わせるためのしっかりした「話し合いの仕組み」が必須だ。多様性のある組織では意見が対立しやすくなるのは当たり前だし、収拾がつかなくなるリスクすらある。バラバラな方向に進んでしまっては意味がない。そこで鍵を握るのが、メンバー同士がオープンに意見を交換できる場であり、安心して建設的な意見を出し合えるコミュニケーションのプロセスだ。これがなければ、単に「仲が悪いチーム」ができ上がるだけだ。 ここで出てくるキーワードが、例の「心理的安全性」だ。「出る杭は打たれる」というメンタリティが残ったままでは、どんなに多様な人材を集めても、誰も自由に意見を言えない。他者の見方を怖れずに意見が言える文化がない限り、斬新なアイデアは望めない。「心理的安全性」を確保することで、初めてみんなが自由に意見を言えるようになる。他方、「他人のことはまったく気にかけない雰囲気があるから自由だ」ということでは意味がない。他者の主張が自分と正反対であった場合にそれを楽しむような姿勢、反対意見があるからこそ自らの発想を止揚してより高度なものにできると考える雰囲気が重要である。 さらに、多様な意見をただ集めるだけでなく、それを「融合」して新しいアイデアに昇華させるためのスキルが必要だろう。異なる視点を取り入れ、それをひとつの方向にまとめ上げるだけの概念化力を持つ人材が、リーダーとして不可欠だ。パズルのピースを組み合わせるように、それぞれの意見を上手く調和させ、新たな発想にまとめあげる力だ。 最後に、多様性のある環境で生まれたアイデアを「実行可能なビジネスプラン」に落とし込み、実際にこれを実現に持ち込むむだけの実行力も不可欠だ。どんなに素晴らしいアイデアが出たとしても、それが机上の空論で終わってしまっては意味がない。そういうのはただの評論であって、創造ではない。現実にどう実行していくかを見据え、プロジェクトを推進する実行力ある人材が求められる。 このように考えると、多様性を創造性に繋げるにはひと手間もふた手間もかけなければならないことがわかる。単なる「見た目の多様性」に会社の創造力を任せるのは危ないのだ。奥深い価値観や経験の多様性、さらに、それを活かすための環境や仕組みがあってこそ、多様性が組織のクリエイティビティを引き出す。外形的に多様な人材を揃えて満足することなく、内面的多様性を丹念に整え、それが創造につながるまでの仕組みを作ることこそ、クリエイティブな組織づくりの本質と言えるだろう。
2025.01.07
正月休みに昨年の社会の動きを振り返ってみて、改めて、AI進化が凄まじいスピードで進んでいる事をつくづく感じている。この勢いに乗って、我々は、気づかぬうちに、とんでもないところまでいってしまうのではないかと心配になる。昨年、ノーベル経済学賞を受賞したMITのダロン・アセモグル教授は言う。 「人間がそれまで担っていた仕事にAIが取って代わる『労働代替型』の技術進歩ではなく、AIが労働生産性を高める方向で進歩していく『労働補完型』を目指し、人間の主体性(Agency)を奪ってはならない。」 AIは、様々な情報をインプットすれば、その条件の中でとりあえず、“最適な”ソリューションを提供してくれる大変頼もしい友人のようであるが、その回答を我々が鵜呑みにして、自ら考えることや選択することをひとたび止めてしまえば、おそらく映画『マトリックス』やジョージ・オーウェルの『1984年』のように、自らの意思で選択する力を奪われた世界に埋没していくだろう。我々は仕事における主体性を放棄してはいけないのだ。 「他社は?」コンサルティングを行っている日常でよく交わされる言葉だ。外部の状況を可能な限り十分に把握したうえで、自社にとっての最適解を導き出すことはとても重要だ。キャリアパス、給与水準、人事評価、人材育成の制度等、人事上の様々な仕組みを設計する際には、内外の情報や過去の知見を構造的に整理し、クライアント企業の意思決定を客観的にサポートするのがコンサルタントの役目でもある。クライアント企業の意思決定がその企業の属性から見て常識的な範囲のものであるのか把握したい時や、社内の過激で偏った意見を排除する際にも外部情報を有効に活用すべきだと思う。しかし当然ながら、自社と同様な他社の仕組みをそのまま取り入れればうまくいくものでもない。 「自社は?」むしろ、自社を知ることのほうが重要かもしれない。同じ業種や組織規模であっても、その企業の目指しているゴールやその企業を構成する人々のキャラクター、さらには創業以来培われてきた社風はそれぞれ固有のものであり、むしろそうした様々な内部情報を正確に認識し、収集した外部情報とともに机の上に並べ、何を重視すべきか考え、想定しうる選択肢を絞り、吟味し、意思決定を行うことが肝要だ。 未来は不確実なものである。将来、想定していた前提とは異なる現実が生じることも少なくない。その結果、よかれと思って作った仕組みは現実と適合しなくなり、見直しを求められる。それは当然のことであり、一度作ったら、将来にわたってメンテナンスをせずに使える仕組みなどはなく、移り行く現実に合わせて、チューンナップを繰り返し、最適化を図っていくものだ。 我々の人事コンサルティング業界も、アセモグル教授の言葉を借りて言えば、労働生産性を高める方向で進歩していく『労働補完型』のAIの活用は強力に追求していくべきである一方、収集した外部の情報や組織内部の状況を構造化し、言語化してクライアントと共に主体的に考え抜いて最適なシナリオやソリューションを生み出すことは、決してAIに任せてはならないものだ。 これは人事コンサル業界に限った話ではなく、どんな業界でも当てはまる。人間にとって「主体性」こそ、本質であり、「主体性」のない組織や、人間が「主体性」を持たない社会の中で生きることに、我々は何の価値も感じられないだろう。 一見、悩むことなく楽に見えるかもしれない「マトリックス」や「ビッグブラザー」に従う社会ではなく、日々移り行く現実と常に向き合い、我々自らが考え、意思決定をする健全な社会であり続けられるかどうかは、我々自身が、AI発展に対して、いかに主体性に向き合っていくかどうかにかかっている。AIの有用性に存分に享受しつつも、我々は、絶えずそれを自身に問いかけていかねばならない。
前回(「正確な測定」をあきらめるなー評価品質を高めるために①)提起したような評価基準を明快に定めた評価項目設計をおこなったとしても、評価のブレは必ず発生する。評価基準の抽象性を完全にはなくせないこともその原因ではあるが、最大の問題は、管理職の評価スキルが低いことだ。いや、正確にいえば、評価のスキルを鍛えられることなく、評価の実践を強いられていることだ。逆に、現行の評価項目定義があいまいだったとしても、まず評価スキルのレベルをあげれば、評価品質はかなり高めることができる。 なぜ、評価スキルが鍛えられないか。確かに新任管理職研修の一環として、評価の仕方は学ぶものだが、多くは自社の評価制度の理解と一般的な評価留意(基準と事実に即した評価原則やよくある評価エラーなど)の学習にとどまる。あとは実践の中で、せいぜい二次評価者チェックなどを経つつ、自分なりに評価スキルを身につけていくから、スキルレベルはばらつき、結局、「あいつはデキる奴だ」といった印象評価が幅を利かしたりする。 管理職者の評価スキルを向上させるために、新任・既任含めて徹底した評価力向上トレーニングを行えばよい。「研修」ではなく「トレーニング」、つまり座学ではなく反復練習によって、確実なスキル向上を図ることである。有効な方法は、以下の3つのフェーズで構成される。 1.課題の特定と確認 2.実践トレーニング 3.実践フォロー 第一フェーズは、評価者たちの課題を明らかにし、トレーニング内容をそれに合わせチューニングするとともに、本人たち「何が問題か」を突きつけることを狙いとする。常套的な課題抽出の方法は、評価情報を集計分析し、各評価者の甘辛や評点分布といった「クセ」を見える化することだ。360度診断やエンゲージメントサーベイを行っていれば、そこからも上司の評価行為の問題は見える。 さらに我々が推奨するのは、「評価力アセスメント」の実施。同一のシミュレーション下で、部下行動をいくつかの評価項目で評価するテストで、評価定義に示される基準に照らして部下の行動事実を評定することが、いかにできていないか、また、その原理原則をいかにわかっていなかったか、が如実に浮き彫りになる。 第二フェーズは、正しい評価ができるようなスキル習熟のための評定トレーニング。さきの課題を踏まえて、100本ノックのように、評定をくりかえす。そこでのポイントは、共通ケースを使ってのウォーミングアップののち、実際の部下を評価し、互いに相互検証し、講師の指摘も踏まえ、正しい評価を決定するセッションを時間の許す限り行うことだ。とくに評価者同士の侃侃諤諤の議論での気づきが効く。 同様に、目標設定についても、現状の目標の品質状況を総覧し、共通課題を明らかにし、適切な目標の要件を繰り返し教え込む。 そのうえで、各評価者は実際の評価に臨む。その実践のなかで、評価品質向上をはかるのが、第三フェーズ・実践フォローだ。たとえば、「目標設定レビュー」。実際に期首にたてられた目標をレビューし、その是正を指導する。目標はなんども立ててきていて自己流が身に沁みついているから、適切な目標設定の原則を学んでもなかなか実行できない。なので、実際の目標そのものを「添削」するほうが効果的なのだ。同様に、期末の「評価票レビュー」を行う場合もある。 もうひとつは、実践しての課題を採取し、その解決をはかるというフォロー施策。半期末か期末のタイミングで、評価者からアンケートをとる。実際の評価をしていくうえで、評価者が直面した問題やリアルな悩みを把握し、それに対してフォロートレーニングを行うということである。併せ、被評価者アンケートも行うとさらにシビアな実践課題が得られる。 「正確な測定」のためには、①評価の仕組み ②評価の運用 ③評価のスキル でそれぞれ打ち手があり、前回は①仕組みの観点、今回は③スキルの観点での提起を行ったが、②運用の観点での施策に触れる余裕がなかった。この運用上の施策もまた、きわめて実効性の高い評価品質向上策なので、追加でもう一回書く予定だ。 お役立ち情報→【人事評価運用のお悩みはトランストラクチャが解決】
私たちは「“見える化”を強みとした、
企業の持続的な成長・発展を後押しする組織人事コンサルタント」として、
日本社会が抱える多くの課題に向き合い、企業の未来を見据えています。
2024.12.27
2024.12.19
2024.05.21