CASE STUDY
事例紹介
これまでに約20の業界、毎年数百件の
コンサルティング実績を誇ります。
企業規模や特定の業界に限らず、人事領域の課題を包括的な解決策を提供したこれまでの実績をご紹介します。
©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.
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お悩みに合わせた解決策をご提供いたします。
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トランストラクチャは、人事の課題を把握し、
解決する3つのフェーズ
「調査・診断」「計画・設計」「導入・運用」に対応した、
それぞれのサービスを提供しています。
組織・人事の状況を多面的に定量分析し、問題・課題を見える化する組織・人事診断サービスをはじめ、人事制度設計、雇用施策、人材開発の領域で多彩なサービスを提供。分析や戦略構築から、施策の実践、得られた効果の検証までサポートを通じて、真に経営に貢献する人事コンサルティングを行います。
組織や人事の課題解決には、その背後にある要因を正確に見極めることが不可欠との思いから、トランストラクチャはデータ分析を基にした定量的なレポートを提供。客観的かつ精密な課題の見える化により、分析や戦略構築、施策を適切に実践。効果の検証も可能です。施策の効果測定や進捗管理にも役立ちます。
当社を起点に、人事システム、退職金、給与計算などの人事関連サービス専門企業との緊密なネットワークを形成。組織・人事に関わるほぼすべての分野に対する良質なサービスの提供が可能です。企業が抱える組織・人事分野のさまざまな課題をワンストップで解決します。
トランストラクチャのコンサルタントは、徹底した教育とナレッジの共有、品質管理により、人事コンサルティングの最新知識から当社のサービスに関する方法論・テクノロジーまで熟知しています。全分野を網羅する課題解決力で、お客様の組織の成長と変革に向けた持続可能な人事戦略と組織体制を構築します。
組織・人事制度導入後も、最少2名の経験豊富なコンサルタントが伴走。長期的かつ持続的な改善を支援します。これによりお客様の組織に対する深い理解を得られ、その組織文化やニーズに適した戦略や改革の提案が可能。組織の持続的な成長と成功を支える重要な要素です。
人口減少・少子高齢化、テクノロジーの進化、働き方とライフスタイルの変化など、かつて経験したことのない変化が生じる2030年を見据えた組織と人事の課題解決はお済みですか?まずは、貴社の現状をお聞かせください。
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トランストラクチャでは、人事の課題解決に役立つ具体的な事例や、
最新の人事トレンドを反映した無料セミナーを積極的に開催しています。
組織と人事に関する最新情報やノウハウを発信。
ビジネスの現場ですぐにでも役立つ内容を厳選してご紹介します。
人事に関する魅力的なデータやチャートを
分かりやすく解説します。
これらの情報は、将来の人事管理に向けた基盤を提供します。
人的資本の開示に注目が集まっています。前回(「人的資本ROIと労働生産性の関係性~人数から投資効率を考察する~」)・前々回(人的資本ROIとは~人的資本経営の重要指標:人財への投資効率を知る~)は、ISO30414から、人的資本ROIをテーマに、データの見方・業界水準・考察の仕方について概要を紹介しました。今回は、業種別かつ資本金規模別の人的資本ROIの推移について解説します。 同じ業界であっても商材や経営戦略・ビジネスモデルが異なれば、当然人的資本ROIの水準にも差が出ますが、一般的な業界水準を知っておくことや、外部環境の変化による動きを理解しておくことは重要です。 図表1は、資本金規模1億円以上10億円未満の、図表2は資本金規模10億円以上の2000年以降の推移です。まず、俯瞰で見るとて、資本金規模10億円以上規模の大企業では、1~10億円未満規模の中堅企業と比較をして、数字がかなり大きい印象を受けます。 業種別に見ると、特に情報通信業・サービス業でその傾向は顕著であり、小売業も少々その傾向があります。情報通信業のうち通信インフラ系の大手企業など設備・インフラ・装置など仕組みで稼ぐビジネスモデルや、規模の経済が活きる企業で、資本金規模の大小による差が顕著だと言えます。 一方、建設業や製造業では、景気回復期には大企業の方が投資効率が良くなる傾向が見て取れますが、景気低迷時の水準は業種規模によらずほぼ同水準です。卸売業では、大企業の方が中堅企業よりもリーマンショック以降の景気低迷後の立ち上げに苦戦した様子が見て取れます。 (図表1:業種別人的資本ROI(資本金1億円以上10億円未満)) 出典: 「法人企業統計調査 時系列データ」を基に筆者計算 ※計算式:人的資本ROI={売上高ー(原価+販管費ー(給与+福利厚生費))}÷(給与+福利厚生費)ー1 続いて、年代別の経済界における主な出来事が及ぼした人的資本ROIへの影響を見ていきます。 (図表2:業種別人的資本ROI(資本金10億円以上)) 出典:同上 2001年にはITバブルの崩壊(別称:ドットコムバブルの崩壊)が起こり、情報通信業の収益に大きなダメージが生じました。その影響で、大企業では、人的資本ROIの値が2000年の70%超から2001年57.6%、2002年には37.9%と大きく下落しています。収益の減に対して人件費が余剰したことが分かります。人的資本への適切な投資という観点では、短期的な業績悪化時において、必ずしも即座に人件費を削減し、単年度の人的資本ROIを上げねばならないわけではありません。むしろ、中長期を睨んだ投資までをすべて削減してしまうことは望ましくなく、一過性の業績悪化であれば必要な投資をしながら急場をしのぎ、翌期以降の回復期に投資の効果を発揮すべきだからです。 情報通信業の大企業では、ITバブル崩壊後、一度水準を大きく下げていますが、携帯電話の急速な普及を追い風に収益力を大きく回復させ、ITバブル期以上の水準を超えて成長を続けています。一方、同じ情報通信業の中堅企業では、ITバブル崩壊後、収益回復し人的資本への投資効率が2000年水準に戻るまでに15年以上を要しています。ビジネスモデルを転換できず、収益回復に時間がかかり、その間人材も活かしきれなかったことが推察されます。 中長期的にリターンが得られていない状況が続く場合には、早期に見切りをつけ、ビジネスモデル・事業戦略・人材戦略や人材への投資方法を見直さねばならないと言えます。 さらに、外的環境の変化による影響の受け方・その後の回復傾向という観点で、ビフォーコロナ・コロナ禍・アフターコロナの時期を見てみます。ほとんどの業界において、多少なりとも影響を受けていますが、パンデミックにより最も大きな影響を受けたのは、規模を問わずサービス業でした。サービス業は、対面でのサービス提供を生業とするビジネスがほとんどであり、収益を上げる機会が大きく損なわれたことが影響しています。 コロナ禍からの回復傾向については、いくつかの型に分類されます。1つはパンデミックによるコロナ後に、コロナ前の水準を上回る回復を見せている業界で、例えば、卸売業や大手の卸売業・小売業、中堅の建設業です。2つ目は、コロナ前と同水準程度までは持ち直したタイプで、情報通信業やサービス業、中堅の小売業などです。 他の業種とは異なる動きをしているのが大手の建設業で、コロナ禍により5%程低下したのち、アフターコロナの時期である直近期まで継続して低下しています。これはコロナ禍による業績悪化というより、原材料高等や労務費の増加を売上に転嫁できていないことによる利幅の低下が影響しているものと思われます。 ここまで特に顕著な動きをしている点に着目して解説をしてきました。人的資本のROIは単年度で高い水準を出せば良いというものではなく、一度水準を下げてでも、翌期以降の収益に貢献する投資をすべきタイミングもあります。しかしながら、中長期的に同じ投資方法をしていて、結果的に数字が下がり続けている場合には、ビジネスモデルの変革や人材活用方針の転換が必須となるでしょう。経年で正しく把握し、数字が下がったときには、意図的な投資増によるものか、人材投資の方法の経営環境へのアンマッチや成熟・衰退によるものか、見極める必要があります。 以上
2024.08.26
多くの企業では、一般的に退職後の生活保障・功績報奨(リテンション)などを目的とし、退職金制度を導入している。また、採用魅力の向上として制度を設けている場合もある。本記事においては、現在の退職金制度の実態統計データから、現在のトレンドを把握し、今後の退職金制度の在り方について考えることとする。 図表1は、2003~2023年における5年毎の退職金制度の有無および支給額の推移を表したものである。”退職給付制度がある”と回答した企業は減少傾向にあり、支給額も減り続けている。以前は、新卒~定年まで1つの企業に勤め続け、その対価として退職金を受け取る流れが一般的であった。しかし、近年は転職求人数が転職希望者数を大幅に上回るなど、転職しやすい環境となってきていることも影響し、定年後の生活保障やリテンション対策としての退職金制度は、効果が弱まり、退職金制度の導入・支給額が減少していると考えられる。また、再雇用などのシニア社員への人件費転嫁によって、給付額が減少している可能性もある。 (図表1:退職給付制度の有無・一人平均退職給付額) 出典:厚生労働省「就業条件総合調査」よりデータを加工 ここで退職金制度の一部である企業年金をさらに詳細に見ていくと、図表2のような結果となっている。 図表2は、確定給付型企業年金制度(DB)と企業型確定拠出年金制度(企業型DC)の制度数・規約数および加入者数の推移である。DBとは将来受け取る給付額を企業側が負担することに対し、DCは拠出額を企業が負担し、運用自体は個人が行う仕組みである。傾向としては、DBは、2004年頃から順調に増え続け2018年をピークに横ばい状態である。一方企業型DCは、DBと比較して加入者の増加数は少ないものの、近年も順調に増加している。先程も触れた転職のしやすさや”貯蓄から投資へ”という政府のスローガンもあり、転職時も持ち運びができ、個人で資産形成できる企業型DCを導入する企業や加入者が増えてきていることが分かる。また、今後もこの流れは続くと予想され、企業年金だけでなく、個人年金である個人型確定拠出年金(iDeCo)についても加入者は増加している。 (図表2:DBおよび企業型DCの制度数・規約数、加入者数の推移) 出典:下記複数のデータを加工 DB制度数(2013~2019年) 厚生労働省「厚生労働白書」 DB制度数(2020~2022年)およびDB加入者数 生命保険協会・信託協会・JA共済連「企業年金の受託概況」 企業型DC規約数および加入者数 運営管理機関連絡協議会「確定拠出年金統計調査」我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」経済産業省・国土交通省・農林水産省(2022年) 以上のことから、企業側は、自社の退職金制度を再定義することが求められている。退職後の生活保障や勤続年数による功績報奨としての意味合いだけでなく、職務の貢献度に応じた制度など、属する労働市場の特性に応じて変革していくべきである。極端な例で言うと、退職金制度は廃止し、その分毎年の給与で分配する方法であっても、社員にとっては魅力的に感じる可能性もある。 よって、企業側は社員の退職金に対する考えや転職事情など様々な情報をキャッチアップしながら、会社としての雇用方針に応じて、退職金制度の有無および制度としての魅力について考え続ける必要がある。 以上
2024.07.22
失われた30年と言われた日本経済も、17年ぶりの日銀の利上げや34年ぶりの日経平均最高値の更新、春闘の賃金引き上げ率が史上最高であること等から、回復の兆しが見えてきました。しかし、今後人口減少に伴い就業者数の減少も見込まれ、日本経済を持続的に成長させるための大きな課題となっております。 今回は企業が本業で稼いだ利益率を表す営業利益率の推移と平均従業員数の推移を比較しながら、今後の施策について解説します。日本経済を今後も持続的に成長させるためには成長も大切ですが、各業界がしっかりと収益性を高めていくことも重要です。今回は代表的な業界をピックアップし、その傾向を解説します。 1.運輸業・郵便業 運輸業・郵便業は、コロナ禍である2020年-2021年頃に一時的な営業利益率の大幅な減少が起こり業界全体で赤字となりました。物流の小口多頻度化※1が急速に進行している中での物流コスト増※2が原因であると考えられます。その後営業利益率は回復傾向にありますが、現状は以前の水準に達していない状況です。これを打開するためには、業界そのものが高付加価値型のサービスへ転換していくことが求められるでしょう。 ※1 「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」経済産業省・国土交通省・農林水産省(2022年) ※2 「2022年度物流コスト調査報告書」公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(2022年)や資源エネルギー庁の調査結果から、原油価格等の高騰に伴う物流コスト増であることが考えられる。 (図表1:運輸業・郵便業) 出典:「法人企業統計調査」財務省 をもとに作成 2.情報通信業 情報通信業は平均従業員数も営業利益率も緩やかに上昇しています。営業利益率については8~10%と高い水準を維持し、過去10年で毎年平均約2.8%成長しています。コロナ禍の一時的な景気後退に伴い成長が鈍化したものの、2022年にはコロナ以前に近い水準まで回復しました。同業界は他の業界と比較して、働く時間や場所を限定しない柔軟な働き方を実現しやすく、生産性向上の取り組みを行いやすいことから、今後も業界全体として更なる生産性向上に取り組みやすい業界であると言えます。 (図表2:情報通信業) 出典:「法人企業統計調査」財務省 をもとに作成 3.製造業 製造業については、従業員数が緩やかに減少していく中で、過去10年で毎年平均約9%営業利益率を成長させています。他の業界でも触れていますが、2019年以降に一時的な景気の冷え込みはあったものの、約2年弱で元の水準へ回復しています。従業員数はコロナ以前の水準に達していないものの、2022年は全産業平均でIT投資が前年比約5%増加※3すると見込まれており、特に金融や公共分野で大きく増加したことから業界全体の営業利益が向上したと考えられます。 ※3 「令和6年版情報通信白書」総務省(2024) (図表3:製造業) 出典:「法人企業統計調査」財務省 をもとに作成 日本の人口が減少していく中でビジネスを成長させるためには、ビジネスを牽引する人材への投資や、テクノロジー等への投資が必要不可欠であることは言うまでもありません。企業の置かれている状況、ステージにもよると思いますが、原則営業利益については、短期的に赤字が許容できるものではありません。 一方で人やテクノロジーに対する投資の効果が表れるのは少し時間がかかりますので、その投資効果を測るためには、中長期的な観点が必要です。個別の事業の売上とともに、収益を重視した中期的な検証、経営管理の重要性が今後より一層求められるでしょう。 以上
トランストラクチャのコンサルタントによるコラムをお楽しみください。
多くの企業様へのサポートを通じて蓄積された知識や、
日々の人事・経営に対する洞察をシェアします。
数年前からほとんどの企業の中期経営計画には、「イノベーション」という言葉が書かれ、期首の社長メッセージでもイノベーションの要請は常套句のように頻出する。しかしいま、日本企業でイノベーションが続々起こっているという状況とは程遠い。掛け声だけで終わっている要因の一つは、イノベーション創出の、もっとも基盤的な手が打たれていないからではないか。基盤とは、イノベーションを駆動する人材の確保・育成であり、そのための人的投資の戦略。イノベーションの起点になる新しい発想は、人々の頭のなかからしか生まれないからだ。 たとえば、国が提起し、各企業が濃淡はあるものの一斉に取り組みつつある「人的資本経営」には「イノベーション」が見えない。契機となった人材版伊藤レポートが斬新だったのは、「資本市場の力を借りて人事・人材変革を起こす」との目論見。投資家が着目するのは、収益性のみならず成長性だから、そこに資する人事戦略、つまりイノベーションのための人的資本経営こそが勘所のはずだが、多くの企業は、国から例示された定型一般的な指標情報の開示に留まり、女性管理職比率や働き方改革といった「雇用面のSDGs」遵守、いわば「守り」は見えるが、「攻め」(=イノベーション)のストーリーは一向に見えない。 「攻め」のための人への投資とはなにか。製造業でいえばR&D人材への投資、業種の違いを超えていえば、DX人材への投資はひとつの鍵になるものだが、それだけではVUCA時代の成長にはつながらない。未来が予測不能に変化するのであれば、会社のどの部署、どの機能であっても、同じことをやっていることがリスクだし、成長もない。新商品・新事業開発の職務はもちろん、営業職や管理職であっても開発的に新しいことに臨む能力が求められ、またどの仕事であっても「前提を鵜呑みにせず自分の頭で考える」能力が共通して必要になる。 イノベーションの基盤であり起点になる、こうした能力開発への投資が攻めの人的資本経営の橋頭保だとすれば、まず最初にやるべきことは、社内のイノベーション人材を発見することではないか。こうした「新しい領域を切り開く能力」は、階層と分業で合理的効率的に組まれた企業組織では原理的に見えなくなってしまうからだ。多くの企業では、誠実と協調を旨とし、役割とルールに従い、組織として成果を出すことが行動原理であり、出る杭はうたれ、斬新な発想や価値観の異質性は捨象される。そうした根強い協働スタイルによって、持っていたかもしれない人々のイノベーティブな能力は身を潜め、摩耗していったかもしれない。まず、現有のイノベーション人材リソースを把握し、新たな調達や効果的育成を計画化するとよい。 では、日常の仕事ぶりや人事評価では分からない、隠れたイノベーション人材をどう見極めるか? イノベーション人材に必要な思考力とは、正しい答えに到達する収束的思考ではなく、VUCA状況のなかで、俯瞰し様々に発想し仮説化する発散的思考力。そうした思考力レベルの、第三者視点による評定には3つの方法がある。 ① 行動から思考力を「推察」する(=シミュレーション演習によるアセスメントセンター方式で「創造性」 や「変革指向」といった思考系ディメンションに着目する) ② 過去の経験から思考力を「判定」する(=インタビュー・アセスメントにより定性的に判定する) ③ 思考力そのものを「評定」する(=正解のない問いに対する回答を評定する) ひとつめのセンター方式アセスメントは、「思考=頭の中でどう考えているか」は見れないので、発揮行動からの「推察」にとどまり、二つ目のインタビュー方式は、例えば、創造性を発揮するような仕事経験が一切なければ、創造力は判定し得ないといった限界がある。有効性が高いのは三番目の思考力そのものの評定である。これは、自身の考えを結論だけでなく、どう考えていったかを含めて書きだした文章を解析する方法(Think Aloud Assessment)だ。 ここで使われる、「正解のない問い」とは、たとえばこんなものだ。 下記は、武将・伊達政宗が残した言葉と言われています。これは、彼のある苦い経験、あるいは成功体験に基づいているとします。その具体的体験をあなたなりに想像し、できるだけ様々な可能性を書いてみてください。 「大事の義は、人に談合せず、一心に究めたるがよし」(意味:大切なことは人に相談せず、一人で悩みぬいた末に結論を出すほうが良い。) この答を、結論だけではなく思考プロセスを含めて、文章として書かせる。そこで、どれだけ発想を広げ、推論し、仮説をつくれているかを評定する。この方式が変わっているのは、制限時間を設けないことだ。好きなだけ考えて書いてもらってよい。ときに次々にいろいろ思いついてやめられなくなる人がいる。問いの答えを考えること自体が面白くなってしまうのだ。つまり、内発的動機付けが働き、たくさんの言葉を書き連ねてしまう。 内発的動機付けが創造性発揮のエンジンであることが創造性研究で明らかになっていることを考えれば、この方法の妥当性はあきらかなのである。 ※この手法=Think Aloud Assessmentについては、 下記当社セミナー・外部イベントにて詳しくご紹介をいたします。 ・2024年10月17日開催 : 当社主催セミナー 「イノベーション人材をどう発見するか?」 ・2024年11月 6日開催 : 日本の人事部主催 HRカンファレンス
2024.09.12
昔の私の上司だった人は、「目的」という言葉が異常に大好きな上司で、何かにつけて「その仕事の目的は何?」と繰り返し聞いてくる上司だった。その問いかけは、しばしば若い私を悩ませ、困らせたが、それはいま考えると、私の思考が未成熟だったせいもあるが、上司のほとんどパワハラとも取れる詰問調のアプローチによって、思考停止に追い込まれていたからでもあった。そしてさらに言えば、上司の言っている「目的」という言葉の意味合いが、言っている状況によって、ときには微妙に、またときには大きく異なっているように感じられたからでもあった。要するに、「目的」の言葉をもって言わんとしているところが、私にはよくわからなかったからだ。実は上司自身さえもよく分かっていなかったのではなかろうか。 「仕事の目的」ということに関連して、あるときこの上司は、私に対して次のように言っていた。「仕事の目的というのは、いま課せられている作業の先に何があるのか、なぜこれをやるのか、考えてやることなんだよ」。それに続けて「なぜやるのか考えたときに、できるだけ視座を高く、視野を広く考えることが大事だ。自分の仕事を片付けるという感覚ではなく、ステークホルダーの全体を考えて、できるだけ多くの周囲に応えられるようにするんだよ」。非常にまっとうなご意見である。ところが一方で、別のタイミングでは、同じ上司が次のようにも語っていた。「仕事をやっていて、自分自身が成長実感を得られるかどうか、充実していると思えるかどうかが肝心だよな。結局はこの境地を目指すことが、仕事の究極の目的だ。そうでなければつまらないだろ?」。これもまた至極まっとうなご意見である。 しかしこの二つの意見は、同じ「目的」という言葉を使いながら、ほとんど矛盾しているようにさえ聞こえる。目的において周囲の方々を重視するという話と、自分の充実感を重視するという話は、簡単に両立できることではない。方向性が全く異なっているからだ。それにも関わらず、言っている上司自身がまったく気付いていない様子を見ると、おそらくその上司自身も、自分の意見を客観視し俯瞰して捉えることはできていなかったのではなかろうか。そして実は多くの上司たちが語る「目的」というものの内実も、また似たり寄ったりなのである。その時点その時点ではそれなりの説得力を持つものの、俯瞰して振り返ってみた時には、「果たして何が言いたかったのだろうか…」ということになる。 さて事態を少し整理してみよう。「目的」というものには、どうも大きく二つのあり方があるらしい。一つは、「いまやっていることを手段として、何か別の、より重要なものを達成しようとすること」。もう一つは、「いまやっていることそのものを極めて、自身の充実感をもたらすこと」。これはフランスの詩人ポール・ヴァレリーにならって言えば、「歩く」ことと「踊ること」の違い、ということに少し重なる。 多くの場合、「歩く」ことは、「どこかに行く」ため「歩く」のである。それに対し、「踊る」ことに、ほかに行くべき場所はない。「踊ること」そのものが価値があり、目指すべき目的なのだ。仕事において厄介なのは、この二つのあり方が、ほとんど同時に求められているように思われることだ。「周囲に役立つ仕事をしよう」というメッセージがあるかと思えば、「自分の充実感が決め手だ」というメッセージもあり、まとめて平たく言えば「歩きながら踊る?踊りながら歩く?何ですかそれは?」ということになるのだ。賢い部下であれば、その「矛盾」を見逃すことはないだろう。 かつて、日本の代表的な哲学者のひとりである和辻哲郎は、「人間の学としての倫理学」という著書の中で、「人間個人には最初から社会的な性格が内包されており、他者との関りを通じて、個人のレベルから徐々に共同性や社会性のレベルへと移行し成長するものであり、またそうあるべきだ」という主旨のことを述べている。つねに内から外へと目を開くべきであり、「外に目的を見出すべきだ」ということになる。いわば「歩く」仕事姿勢である。一方で、かの有名なアメリカの心理学者アブラハム・マズローは、「人間の欲求には5段階あり、生理・安全・社会・承認・自己実現という成長段階を辿る」という主旨のことを述べている。最終段階である「自己実現」とは、「外に目的を設定しない」あり方であり、「自身の内面において価値ありとするものを重視し、それがなされることそのものを目的とする」姿勢である。いわば「踊る」仕事姿勢である。社会性や共同性を重視する和辻と、個人の内面性を重視するマズローの姿勢の違いは、日本と欧米の文化的脈絡に照らして興味深いものがあるが、さて「矛盾」めいたこの状態をどう取り扱い、紐解くか、ということが喫緊の課題となる。 いまひとまず言えることは、「個人レベルを超えてより社会性をレベルアップさせることが目的だ」、という「歩く」仕事姿勢も、「社会的な関係性を超えて個人の充実感や内面を磨くことが目的だ」、という「踊る」仕事姿勢も、どちらも極端なかたちを取れば現場では軽率だと見なされかねない、ということである。「この仕事の目的は何?」と問われた場合に、「いや、自分探しですよ」(マズロー)と語ったら、やっぱり何だかおかしいのではないか、と思われるだろうし、「日本や世界人類のためにやっています」(和辻)と言ったら、やっている仕事に照らして、やっぱり何だかおかしいと思われるだろう。かと言って、中途半端を目指すのもおかしいだろう。それは、「目指す」ということですらないだろう。 このような八方塞がりのような状況下で、「仕事の目的」をどのように捉え、位置づけるのがよいだろうか。それは仕事をしている皆さん一人ひとりに考えていただきたいことだ。それは仕事の意欲に関わり、成果に関わることだからだ。
2024.09.09
雑誌「遊」創刊号を見て、たちまち、その編集をした松岡正剛という存在に心身をわしづかみにされた。科学から芸術まで横超的な世界認識のワザ、その外連味と諧謔に満ちた手さばきがあまりにも魅惑的だったのだ。当時、大学で物理学を学びつつも出版業界で生きていきたいと思っていたから、必ずこの人と仕事をしたいと心に決めた。「遊」では、量子力学と花鳥風月と触覚的な誌面デザインが一気通貫していたことも嬉しかった。 結局、出版社には入れてもらえず、松岡さんの、縦横無尽に文化を切り分け組み上げ世界モデルを提示する仕事ぶりを横目でみつつ、書かかれた文章をただただ消化する日々。企業人事部をクライアントとするコミュニケーション・コンサルティング会社にいたときに、企業組織論専門誌を、いわばソートリーダーシップの道具として発行することができ、早速、この雑誌の取材を口実にして松岡さんに初めて会うことができた。 当時、松岡さんは、数人のスタッフと猫たちと職住一致の集団生活をしていた。「雑談ならいつでも歓迎」という言葉を真に受けて、そこに上がり込んでは、ずいぶんといろんな話を聞かせてもらった。松岡さんは、「方法」に着目するアプローチを旨としていたが、あるとき、「たとえばね、目の前の人がどんな意図をもって会いに来て話をしているか、すぐにわかる方法があるんだ」と言った。 それを教えてくれ、というと、「んー、高いんだよこれは」とにやりとしつつ、「それはね、会ってから相手が話したことを、時間を逆にして再生してみるんだよ。すると、本心がたちまち浮き彫りになる」と言うと、いきなり、その日その時までに私が話した言葉を、逆順で口にし始めたのだった。「あなたはいまこう言ったが、その前はこう言った。その前にはこう言い……」と延々と続けてみせた。録音テープのような記憶力にも驚いたが、聞くと、こうしたオリジナルの方法論をいくつも編み出したことに驚嘆。常にそんな刺激を堪能できた。 松岡さんは「日本の組織」全16巻を手掛けていたから、企業組織の問題意識も持たれているはず、とわが企業組織論専門誌への連載を依頼した。テーマは、「企業の安楽死仮説」。出色のテーマだと意気込んでぶつけたのだが、反応はイマイチ。いろいろ議論をして、企業に限らず様々な組織、たとえば官僚組織、宗教教団、スポーツチーム、劇団、暴力団等々の主宰者にインタビューし、そこから企業組織の問題を逆照射させる目論見の連載に決定。そのホストを松岡さんにお願することになった。 この連載は、残念ながら4回で中断する羽目になった。この雑誌を出していた会社が経営破綻し、実際に「安楽死」をせざるを得なくなったからである。連載に先立って、松岡さんに書いてもらった原稿がすばらしかった。松岡さんのどの書籍にも採録されていないが、企業という存在の様々な貌が、平易ではあるが濃縮された文章で書かれている。ウィトゲンシュタインの論理哲学論考のようにスタイリッシュ。 タイトルは「企業のジョークをいつ話せるか」。そこでは、企業組織を観るために設定した8つの視点がひとつひとつ語られている。いわく、 表徴としての企業 前衛としての組織 テキストとしての企業 限界としての組織 メタファーとしての企業 解釈過程としての組織 心理としての企業 ジェンダーとしての組織 といまここに書いてみただけで、経済学や経営学の教科書的な組織論や、ビジネス誌にある企業変革法といったハウツー的処方箋のくだらなさを凌駕する消息が伝わるだろう。いわば「企業を批評する」というどこにもなかった評論の世界が提起されたのだった。 改めてこの批評を読んでみると、その指摘は20数年後の今の日本企業にもそのまま当てはまる。つまり、ことさらにイノベーションやダイバーシティやジェンダーが喧伝されながらも、日本企業の「組織と人間」の問題は一向に変わっていない。「表徴としての企業」のなかで、世界的にも注目された日本的経営という表徴の“曲解”が語られたが、いまは、人的資本経営という表徴が徘徊している。また「心理としての企業」の中で、マズローの自己実現を、社員たちには迷惑極まりない組織のイディアと指摘した松岡さんは、今はやりのエンゲージメントをどう見るか。 興味津々の、現代の「企業批評」は、永遠に書かれることがなくなってしまった。
私たちは「“見える化”を強みとした、
企業の持続的な成長・発展を後押しする組織人事コンサルタント」として、
日本社会が抱える多くの課題に向き合い、企業の未来を見据えています。
2024.05.21
2024.05.15
2024.05.09