第4回:労働力制約社会において、人事は「人材価値を最大化する設計者」となる
第4回:把握の方法②:定性分析 ― 数値の裏側にある「社員の実感」を読み解くー
HR DATAHRデータ解説
政府統計などから、人事に役立つデータをピックアップし分かりやすく解説します。
2026.04.03
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2026.03.17
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2026.03.06
OECD男女賃金格差から考える課題と改善策 ~格差是正は人的資本経営のアジェンダ~
COLUMNコラム
多くの企業様へのサポートを通じて蓄積された知識や、日々の人事・経営に対する洞察をシェアします。
2026.04.10
成長しているのに、なぜ組織は疲れているのか― 成長でも停滞でもない、組織の次の選択肢
売上は伸びている。利益も出ている。それでも、組織の空気はどこか重い。 コンサルタントの視点から現場を見ていると、この違和感を抱くことが多い。 目標は毎年更新され、評価制度も回っている。 けれど、数字が達成されるたびに歓声が上がるわけでもなく、「また一年が始まるのか」 という静かな疲労だけが積み重なっていく。 成長しているはずなのに、なぜ人はこんなにも疲れているのだろう。 背景には、私たちが長く共有してきた「成長し続けることが正しい」という価値観がある。 成長し続けることは良いこと。止まることは衰退。 そう信じる文化の中で、株主は成長を期待し、経営者はそれに応えようとする。 人事もまた、その前提のもとで制度を設計し、組織を回してきた。 誰かが間違っていたわけではない。 それぞれが、自分の立場で誠実だっただけだ。 ただ一つ、見落とされがちな視点がある。 自然界において、「成長し続けるもの」は例外なく不健全だという事実だ。 がん細胞は増殖を止めない。その結果、宿主は死ぬ。 健全な細胞は、成長期を終えると分化し、役割を変え、維持へと向かう。 成長し続けることは、世の摂理ではない。 それにもかかわらず、企業だけが「永遠に成長し続ける存在」であるかのように扱われている。 この無理が、組織をじわじわと疲弊させているのではないだろうか。 ここで考えたいのが、「維持」という言葉の意味だ。 成長しない=何も変えない、と思われがちだが、実際は逆である。 維持するためには、変え続けなければならない。 人は年を取り、役割は変わり、環境も変化する。 仮に事業規模や人数を保とうとしても、中身を更新しなければ、組織は自然に老いていく。 役割が固定されたままの人、形だけ更新される評価制度、惰性で続く会議やプロセス。 一つひとつは小さくても、組織の新陳代謝を確実に鈍らせていく。 成長しないことは、止まることではない。 会社も生き物だ。必要なのは、成長でも停滞でもなく「代謝」ではないだろうか。 代謝とは、拡大することではない。 何かを入れ替え、手放し、役割を変えながら、組織としての輪郭を保ち続けることだ。 人が入れ替わることもある。事業を縮めることもある。経営者がバトンを渡すこともあるかもしれない。 それは冷たい判断ではない。 無理を続けないための、ごく自然な営みである。 人事の役割も、ここで少し変わってくる。 「どう伸ばすか」だけでなく、「どう続けるか」「どう回復させるか」を設計すること。 成長前提の制度を回し続ける苦しさに、言葉を与えること。 そして、役割や期待を定期駅に更新し、組織の代謝が止まらないように支えることだ。 成長そのものを否定したいわけではない。 ただ、「成長し続けなければならない」という呪縛から、一度離れてみてもいいのではないか。そう問いかけたい。 成長しているのに疲れている。 もしそう感じているなら、それは個人の問題ではない。組織が、次の在り方を探し始めているサインだ。 あなたの組織はいま、「もっと大きくなること」と「健やかに回り続けること」。 どちらを本当に求められているだろうか。
2026.02.16
「裸足の国に靴を売りに行った営業マン」から学ぶ ~ 人事が磨くべき視点転換と可能性創造力 ~
ある国に、二人の営業マンが派遣された。現地では誰ひとりとして靴を履いていない。 ひとりは肩を落として言った。「ここでは靴は売れません。誰も靴を履いていないのです」。もうひとりは目を輝かせて言った。「ここには無限の需要があります。誰もまだ靴を履いていないのです」。 同じ現実を見ていながら、解釈がまったく異なるこの寓話はマーケティング領域で語られることが多いが、実は人事の本質を象徴している。なぜなら人事とは、「現状評価の仕事」ではなく、「未来可能性に価値を見出す仕事」だからである。 心理学では、出来事を別の枠組みで捉え直すことを「リフレーミング(Reframing)」と呼ぶ。裸足の国の二人の営業マンは、その違いを端的に示している。リフレーミングは現実を否定したり、美化したりする技術ではなく、“事実を変えずに意味づけを変える”視点である。人材開発の世界ではこれを「ポジティブ・アプローチ」と呼び、課題や不足の指摘よりも「今ある強み」「これからの可能性」に焦点を当てることで、人が行動するエネルギーを引き出す考え方として重視されている。 「裸足=市場がない」と捉えるか、「裸足=潜在的市場」と見るかで、未来は大きく変わるのである。 人事の現場にも、まったく同じ構造が存在する。企業では「若手が受け身だ」「管理職が育たない」「イノベーションが生まれない」といった声が聞かれることが多い。そのとき、「人材の質の問題」と断定するのか、それとも「学習機会や成長設計の不足」と捉えるのかで、施策の質も方向性も結果も大きく変わる。評価制度や育成施策が期待どおりに機能しない背景には、「足りない点」や「リスク」にばかり焦点が当たり、行動が生まれるデザインになっていないケースが少なくない。裸足を欠点と見るか、靴を履く未来の伸びしろと見るか、その違いが組織文化や価値観を決定づける。 さらに、社員が主体的に動かない状況に対して、「やる気がない」「意識が低い」と断じるのは簡単だ。しかし、彼らはただ、“履きたくなる靴”や“歩きたくなる道”を与えられていないだけなのかもしれない。人事の役割は、制度や仕組みといった「靴」を提供することだけではなく、「歩く理由」「歩き方」「歩きたくなる未来の景色」をデザインすることである。人は納得・成長実感・挑戦意欲が揃ってはじめて、自ら歩き出す。 そして、この寓話は多様性という現代の重要テーマにも通じる。裸足で生きる文化があるなら、それを否定するのではなく、「その文化に合った靴」を考える想像力が求められている。これは特定の価値観やキャリア観を全員に押しつけるのではなく、一人ひとりの強み・志向・歩幅に寄り添った機会設計を行うタレントマネジメントそのものである。 人材を「履いていない」と見れば組織は停滞し、「まだ履いていない」と見れば未来は開ける。ここには単なる言葉遊びではなく、人材マネジメントの思想的な分岐点が存在する。「できていない人」を減点評価するのか、「これからできる可能性を持つ人」として育成するのか。その違いは、組織文化、学習し続ける土壌、新しい挑戦が生まれる風土と直結する。可能性を前提に語れる組織は、失敗を学習資産へと転換し、また挑戦者を支援し、経験の差を機会の差にはしない。 現代の人事に求められているのは、制度の整備や数値管理に留まる役割ではなく、配置・評価・育成・制度といった機能を超え、個人の内側に眠る「未発火の価値」を見つけ、成長の道筋に光を当てる眼差しである。たとえ履いている靴が今はなくても、裸足で歩いてきた背景や、地面を感じてきた感覚にこそ、その人ならではの強みが潜んでいるかもしれない。能力は“保有しているか否か”の静的な概念ではなく、機会・意味付け・文脈によって引き出される“動的な資源”である。 だからこそ、歩き出すための一歩を「指示する側」ではなく、「ともに考え、設計し、支える側」でいられるかどうかが、人事の存在価値を大きく左右する。伴走者として寄り添える人事は、個人の成長物語に共に関与し、その人の未来に責任を持つ立場になる。成長とは与えられるものではなく、本人が歩き出す“納得の理由”と“希望の方向性”を得たときに初めて動き始める。その瞬間をつくることこそ、人事が果たす最大の価値ではないだろうか。
2026.03.16
2026年4月改正に備える:男女間賃金差異の公表と「不合理な差」の点検
2026年4月1日から、女性活躍推進法に基づく一般事業主行動計画では、常用労働者301人以上の企業は「男女間賃金差異」「女性管理職比率」を含む計4項目以上、101人以上の企業は同2項目を含む計3項目以上の情報公表が義務づけられます。 公表対象企業が拡大することで、「自社の男女間賃金差異や役職別の女性管理職比率はどの程度か」「その差は何によって生じているのか」といった点が、これまで以上に多くの企業にとって身近なテーマになりそうです。 公表義務の狙いは、単に情報を並べることではなく、背景を点検し、不合理な差を減らすための改善につなげることにあるはずです。そのため、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」や、「職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備」といった項目もあわせて示す枠組みになっています。※1 なお、女性の活躍推進企業データベースで情報公開している企業は、平均で5項目を公表しており、公表割合が高い項目として「労働者に占める女性労働者の割合(56.2%)」「管理職に占める女性労働者の割合(55.3%)」「採用した労働者に占める女性労働者の割合(53.7%)」が挙げられています。(2024年3月31日時点)※2 さて、男女間賃金差異に目を向けてみると、縮小傾向とされつつ差は残っています。厚労省資料では、男性の所定内給与額を100とした場合、女性は「一般労働者」74.8、「一般労働者のうち正社員・正職員」77.5という値が示されています(令和5年度)。※3 ただし、男女間賃金差異は「数字だけ」で語ると、かえって誤解を生むこともありそうです。平均年齢や勤続年数の違い、職種・等級・役割の偏り、管理職比率、時間外労働の多寡など、複数の要因が重なって差として表れやすいためです。公表を機に「差がある/ない」で終わらせず、どこで差が生じているのかを分解して把握することが重要になります。 なお、賃金構造基本統計調査を用いた要因分析では、男女間賃金格差に影響する要素として、役職、勤続年数、学歴、労働時間、年齢、企業規模、産業の7つが挙げられています。 また、この7つの要素を調整してもなお差が残ることも示されています。※4 ここでいう「不合理な差」とは、たとえば、評価や昇格の基準は同じでも運用にばらつきがある、配置・育成の機会(重要案件、研修、ローテーションなど)に偏りが生じている、あるいは、管理職はフルタイム勤務が前提とされる慣例や、住宅手当・家族手当の支給要件が意図せず影響してしまう可能性がある——といったケースが考えられます。いずれも意図せず起こりやすく、数字だけでは捉えにくい点です。 今回の法改正は、企業にとって負担に感じられる場面もあるかもしれません。一方で、制度と運用のズレや、気づかない前提を見直す機会にもなります。数字の背景を丁寧に確かめ、不合理な差が見られる場合には必要な改善を少しずつ重ねていくことが、社員が納得して働ける環境づくりにつながっていきます。 最後に、最初の一歩としては、次の点から始めるのが取り組みやすいかもしれません。 ①等級・役職、年齢×等級等の男女別人数分布を整理し、構造を把握する。(正社員を対象とした場合) ②それを手がかりに、昇格・登用の結果と運用(推薦・育成機会)の偏りを点検する。 以上 資料出所: ※1 女性活躍推進法改正リーフレット(001663919.pdf) 規模 改正前 改正後 301人以上 ①男女間賃金差異 ②女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供(7項目の内、1項目以上) ③職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備(7項目の内、1項目以上) ①同左 ②同左 ③同左 ④女性管理職比率(追加) 101人以上300人以下 ②③より1項目以上 ①男女間賃金差異(追加) ②③より1項目以上 ④女性管理職比率(追加) ※2・3 厚生労働省 雇用環境・均等局「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会(第10回)御説明資料(報告書(素案)参考資料)」〔令和6年7月19日〕 ※4 内閣府 男女共同参画局「男女間の賃金格差の要因とその対応等」 (資料:計画実行・監視専門調査会 提出資料「ka7-2」) 「男女間賃金格差の要因とその対応」







