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HRデータ解説

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労働力の量と質の推移 <br />~人口減少時代に向けて~ | 人事アナリシスレポート®

労働力の量と質の推移 ~人口減少時代に向けて~

 内閣府(2022)「令和4年版高齢社会白書」によると、日本の総人口は今後減少し、65歳以上の人口割合が今後更に増えるという推計が算出されています。少子高齢化が進むにつれて生じる労働人口の減少により、日本経済が停滞してゆくことが危惧されています。日本経済が持続的に成長するためには、労働力をいかに維持するかが社会的な課題となっています。  こうした背景の中、労働力として注目されている一つが、65歳以上の人材の労働力確保です。2021年4月の改正高年齢者雇用安定法においても、70歳までの就業確保が企業の努力義務となっています。実際、図表1にもあるように、高齢者の就業率は年々上昇しています。65歳以上の高齢者の就業率は2015年から年々上がっており、直近の労働人口全体も緩やかに増えています。このように、労働力の"量"は高齢者の就業率増加もあり、短期的には維持できていることが見受けられます。 <図表1> 労働人口と65~69歳の就業率の推移 出所: 総務省(2023)「労働力調査(基本集計) 2023年(令和5年)1月分結果 20~69歳の人口、就業者数、就業率」をもとに作成  労働力の"質”の推移を確認するため、業界別の労働生産性 (労働者1人あたりが生み出す付加価値額)の推移と平均従業員数の推移を比較しながら解説します。  飲食サービス業(図表2-1)では、労働生産性は常に減少傾向にあり、従業員数も2019年以降は落ちている傾向があります。昨今、大手飲食チェーン店を中心に注文や配膳等業務の機械化が進んでいますが、一人当たりの付加価値=”質”の面では効果が表れていません(付加価値には人件費が含まれるため)。今後機械化がさらに進み、人員数が安定・最適化されたときに高い付加価値を生み出すことができているのかが重要になってきます。 <図表2-1> 労働生産性×従業員数の推移_飲食サービス業 出所:財務省(2021)「法人企業統計調査」をもとに作成  情報通信業(図表2-2)では、2016-2017年にかけて従業員数が減った一方で労働生産性が上がっており、2017-2018年では従業員数が増える一方で労働生産性が下がっており、それぞれが逆行した動きをしています。新規就労者が多く、業界内での転職等による人の動きが活発な情報通信業では、仮に即戦力採用の中途社員だとしても、付加価値への貢献=”質”といった意味では、業務習熟するために必要な経験を得ることに時間がかかりやすい、もしくは時間がかかってしまっている可能性があります。 <図表2-2> 労働生産性×従業員数の推移_情報通信業 出所: 財務省(2021)「法人企業統計調査」をもとに作成  医療福祉業(図表2-3)では、2018年度に従業員数が減少しましたが2020年以降は上昇傾向にあります。一方、労働生産性も2019年以降で安定的に上昇傾向にあります。高度な知識や資格の基盤が前提にある医療福祉業界では、即戦力として労働生産性=”質”に寄与しやすい業種といえます。 <図表2-3>労働生産性×従業員数の推移_医療福祉業 出所: 財務省(2021)「法人企業統計調査」をもとに作成  定年延長・再雇用の活用によって短期的には労働力の”量”の維持が期待できますが、将来的に総人口が減少する日本では少ない人数でいかに労働力を維持していくかが課題となります。そのため、労働力の“質”にも目を向け、労働人口が将来的に減ったとしても安定的な労働生産性が確保されるサービス形態への変換が求められるのではないでしょうか。限りある労働資源をいかに有効活用していき、労働生産性を高めていくかの議論が各企業内でより活発化していく必要があります。自社の生産性をより高めるための阻害要因を各社で見つめ直し、DX推進やリスキリング、イノベーション推進等によって業務効率化とその価値向上に務めることが重要となります。 以上

賃金引上げ率の推移と参考指標<br />~自律的な報酬水準のコントロールを~ | モチベーションサーベイ

賃金引上げ率の推移と参考指標~自律的な報酬水準のコントロールを~

 2022年以降の物価上昇率の伸長と実質賃金が目減りしている状況等を踏まえ、2023年12月、政府は物価上昇率を超える賃上げを実現できるよう、賃上げ税制を抜本的に拡充しました。同11月末には、「令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査」が厚生労働省より発表されており、2023年の各社の賃上げ状況が見えてきました。  賃金の改定を実施した又は予定している企業は、89.2%(前年86.6%)。管理職のベースアップを行った・行う予定の企業は43.4%(前年24.6%)、一般職のベースを行った・行う予定の企業は49.5%(前年29.9%)と前年から急上昇しました(※ベースアップの実施割合は、管理職及び一般職で定昇制度がある企業を100.0%とした場合の割合)。  図表1は1人平均賃金の改定額・改定率の調査結果と、消費者物価指数(CPI)の推移です。昨年の1人当たりの平均賃金の改定額は9,437円、改定率が3.2%と、消費者物価指数(CPI)の上昇を追いかけるように大幅に伸びているのがわかります。 <図表1> 1人平均賃金の改定額(円)及び改定率(%)と消費者物価指数(%)の推移 出所: 厚生労働省(2023)『令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査』,総務省統計局(2023)『消費者物価指数(CPI)』をもとに作成 注1 図表は「1人平均賃金の改定額及び改定率の推移」と「消費者物価指数(CPI)」より加工 注2 消費者物価指数は生鮮食品を除く総合。2023年のCPIは日銀の予測(2023年10月31日時点)より引用  注目される2024年以降の賃上げですが、皆さんの企業ではどのように検討を進めているでしょうか。他社が何を参考指標としているのか、同調査結果を見てみましょう。 <図表2> 賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素別企業割合の推移 出典:出所:厚生労働省(2023)『令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査』をもとに作成 注1 図表は「企業規模、賃金の改定の決定に当たり最も重視した要素別企業割合」より加工したもの。 注2 賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業のうちの割合。ただし、平成20年調査以前は賃金の改定を実施した又は予定していて額も決定している企業のうち、改定に当たり最も重視した要素に記入のある企業を100.0%とした割合であり、比較の際は注意を要する。  図表2は、賃金の改定を実施した又は予定している企業において、賃金改定の決定の際に最も重視した要素の推移です。2023年は、「企業の業績や前年実績、関連会社の動向」の割合が42.2%と最も多くなっており、次いで「雇用・労働力の確保」が28.9%、「世間相場・物価の動向」が14.6%となっています。注目すべきは、前年に比べて「雇用・労働力の確保」と「世間相場・物価の動向」の割合が急増しており、「重要視した要素はない」とした企業が減少していることです。それだけ昨年の賃金改定では、世の中の動向と従業員への配慮を念頭に置いて検討した企業が多かったということです。  報酬はハーズバーグの二要因理論からすると「衛生要因」であり、不満足の要因になります。一旦報酬水準が上がったとしても、それを継続しないと、また不満足の要因になるということです。  社員の報酬満足を維持するには、「世間の賃上げの気運が高まっているから」ではなく、労働市場における報酬水準や物価等を定期的(例: 半年ごと、年次など)に把握しつつ、自社の業績なども踏まえ、自律的に報酬水準をコントロールしていくことが望ましいです。  企業は成長を続けないと報酬満足を維持していくことは難しいため、人的資本経営の観点における適正な報酬水準のコントロールとともに、人材のパフォーマンスを高めるマネジメントや育成も重要になってきます。  従業員への適正な報酬とパフォーマンスマネジメントが、企業と従業員の間の相互信頼を築き、持続可能な業績向上へつながっていくでしょう。 以上

遅れているリカレント教育<br />~企業側も理解と活用を~ | 人材開発

遅れているリカレント教育~企業側も理解と活用を~

 近年、リスキリングやリカレント教育など、社会人に対する学び直しが重要視されています。 注目され始めた背景には、DXの加速化など、企業・労働者を取り巻く環境が日々変化している一方で、労働者の職業人生が長期化しており、変化に対応するべく個人の能力を向上させることが求められていることがあります。  リスキリングとリカレント教育の主な違いは、だれが主体となって取り組むのか、そしてその学びのプロセスにあります。リスキリングは、新しい職業に就くため、あるいは今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、企業側が主体となって、個人が働きながら学ぶことを支援することです。一方リカレント教育は、就業した後も個人が主体となって専門能力を向上させ、キャリアを自身で形成するために、「働く→学ぶ→働く」を繰り返すことです。両者の違いはあるものの、どちらも“学び直し”という観点では同義であり、本記事では、「働く→学ぶ→働く」を繰り返すリカレント教育にフォーカスし、現状を量と質の観点から検証し、あるべき姿について解説します。  まずは、量の観点から現状を把握します。図表1は、大学数の推移を表しています。リカレント教育における学びのプラットフォームのひとつである大学は、2010年までは順調に増加し、2010年以降800校程度と横ばいに推移しています。 <図表1> 大学数の推移 出典:文部科学省「令和4年学校基本調査」よりデータを加工 注) 大学とは、国立・公立・私立を含めた大学数の合計を表しており、短大・専門学校は含まれていない  続いて図表2は、大学院生に占める社会人学生の割合を表しており、2009年を境に増加度合いは小さくなったものの、現在も増加傾向は続いています。  今後、子どもの出生率が低下し、入学者数が減少していくことが予想されているため、大学側は学生だけでなく社会人も含めて広く展開し、社会人教育に力を入れてと想定されます。 <図表2> 日本の社会人大学院生(在籍者)の状況 出典:文部科学省 科学技術・学術政策研究所「科学技術指標2020」調査資料-295、2020年8月  次に、質の観点から現状を把握します。図表3は、日本における成人学習制度をOECD諸国と比較したデータです。なお、ここでの成人学習制度とは、各社会において成人とみなされているものが参加するフォーマル・ノンフォーマル・インフォーマルなど学習形態を問わない学習過程全体を指します。  財源は、他の諸外国と比較すると高く、個人が自主的に学ぶための財源は十分である一方、柔軟性とガイダンス・整合性・認識されている効果は低く、制度を柔軟に活用することが難しく、かつ効果も薄いということが分かります。つまり、経済面では補助金等の整備によって問題ないものの、個人が活用しづらく、学んだ後の効果も低いと考えられています。 <図表3> 成人学習制度の評価 出典:OECD「2019年成人学習の優先順位に関するダッシュボード (Priorities for Adult Learning, PAL)」 注) 1に近いほどパフォーマンスが高く、0に近いほどパフォーマンスが低いことを表す  今後、社員一人一人のスキルアップは必須であることに加えて、社内研修やOJTだけでなく、大学等の外部の専門機関を有効活用しながら自身の能力を向上させ、より専門性の高い人材となっていくことが求められています。 そのためには、下記2点の意識・制度改革が必要不可欠です。 ①個人が学び直す時間を確保し、自身でキャリアを選択すること ②会社側が学び直しを行うための環境づくりや処遇する仕組みを整えていくこと たとえば、サイボウズ株式会社では、「育自分休暇制度」という退職後、留学や大学院入学など、自由にスキルアップを行い、最長6年間は会社に復職できる制度を導入しています。 このような取組みを参考にし、個人が「働く→学ぶ→働く」の良い循環を行い、会社側が学び直しを行った人材を処遇することによって自社を成長させていくなど、ひとつの選択肢として取り組む必要があるのではないでしょうか。 以上

年収に占める賞与比率<br />~社員の売上意識を高める賞与の意義~ | 人事制度

年収に占める賞与比率~社員の売上意識を高める賞与の意義~

 年末が近づくにつれて、冬の賞与の使い道を考え始める方も多いのではないでしょうか。 今回は賞与について取り上げます。賞与は、月例給与の後払いや生活給といった生計費調整機能と、会社業績や個人の成果に応じて分配する業績連動機能の2つの機能を持ちます。会社業績に応じて賞与額を決定する仕組みにすることで、経営状況に応じた柔軟な支給額調整や、社員の売上意識を高めることが期待できます。一方、月例給与と異なり、賞与は保証された給与として規程されていない企業も多いため、年収に占める賞与の比率(賞与比率)が過度に高い場合、従業員にとってはリスクとも言えます。  図表1は令和4年度の役職別・企業規模別の年収(縦棒)および賞与比率(折れ線)を示しています。企業規模にかかわらず、係長級以上の役職者の賞与比率は、非役職者よりも約4%高いです。役職者には会社業績に応じて支給額を変動させる余地を多く設ける一方、非役職者には業績や成果に応じて支給額を変動させる余地を抑えていると考えられます。しかし、役職者の中で係長級、課長級、部長級を比較すると差がなく、むしろ部長級の賞与比率は低下しています。  企業規模で比較すると、同じ役職でも企業規模が大きいほど年収が高く、賞与比率も高い傾向があります。10~99人規模の部長級と1000人以上規模の係長級を比較すると、年収は同程度ですが、後者の方が賞与比率が高いです。このことから企業規模が大きいほど業績連動性を重視していることが推察されます。 図表1:役職別・企業規模別、年収と賞与比率 "出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」注1)縦棒:年収、折れ線:賞与比率 注2)年収=所定内給与額×12+年間賞与その他特別給与額 注3)賞与比率=年間賞与その他特別給与額÷年収"  業種による傾向の違いも確認できます。図表2は、令和4年度の業種別の年収水準と賞与比率を示しています。横軸には産業計を100としたときの各業種の年収指数を、縦軸には産業計が原点にくるよう賞与比率をプロットしています。年収が高い業種ほど賞与比率が高い傾向があります(決定係数R² = 0.7911)。また年収水準が高いゾーンにおいて、年収が近い業種を比較すると、中長期的な成果や安定的な職務遂行が重要な業種の賞与比率が低い傾向が見られます。 図表2:業種別、年収指数と賞与比率 "出典:厚生労働省「令和4年賃金構造基本統計調査」注1)年収指数:産業計の平均年収を100としたときの各業種の平均年収の割合 注2)産業計が原点になるようプロット 注3)業種は抜粋"  『賞与は毎年○か月分出て当たり前』ではないことを社員に理解してもらうことが重要です。社員一人一人が自分の役割を果たすことで会社業績が伸び、得られた利益(原資)が責任の大きさや個人の成果に応じて配分される。このことをしっかりと社員に伝え、理解してもらうことで売上意識が高まり、企業の持続的な成長に繋がります。業績が大きく予算を超過する際には、決算賞与などを導入し、支給することも社員のモチベーションに対しては大変有効な施策です。 また、人材不足が深刻な経営課題になっておりますが、業界によって年収や賞与比率については傾向に違いがあります。業界における年収水準と賞与比率を定期的に把握し、外部水準に対するポリシーを明確にし、賃金制度を整備していくことが重要です。人材の定着や採用の競争力を維持向上させていくうえで欠かせない人事施策と言えるでしょう。 以上

勤務間インターバル制度<br />~働き方見直しの道のりは遠い?~ | 人事制度

勤務間インターバル制度~働き方見直しの道のりは遠い?~

 2017年3月より、働き方改革の一環として始まった「勤務間インターバル制度」をご存じでしょうか。これは労働者の休息時間の設け方に関する制度で、前日の終業時間から次の始業時間の間が短い時間とならないよう、一定時間以上空けなければならないとした制度です。過労の原因となり得る「終業時刻が遅いのに始業時間が早い」という就業状態を、常態化させないための重要な制度であると言えます。2019年施行の働き方改革関連法により、企業への導入が努力義務として求められ、続いて2022年7月30日の「過労死等の防止のための対策に関する大綱」の中で、以下の目標が閣議決定されました。 ・ 令和7年(2025年)までに、勤務間インターバル制度を導入している企業の割合を15%以上とする。 ・ 令和7年(2025年)までに、勤務間インターバル制度を知らなかった企業の割合を5%未満とする。 この目標に対して、実際の導入状況や認知度はどうなっているのか、現状を見てみました。  図表1は令和4年調査の就労条件総合調査の結果です。勤務間インターバル制度の導入状況を見ると、【導入している】のは5.8%、【導入を予定又は検討している】のは12.7%でした。 <図表1:勤務間インターバル制度の導入状況(%)> 出典 厚生労働省 就労条件総合調査「第19表 産業・企業規模、勤務間インターバル制度の導入状況、具体的な時間の設定状況別企業割合及び平均勤務間隔時間」 注 企業規模別表より抜粋したデータを図表に加工した  図2は、図1の【導入予定はなく、検討もしていない】企業に対して勤務間インターバル制度の認知度を調べた結果で、21.3%の企業が【当該制度を知らない】と回答しました。 <図表2:勤務間インターバル制度の認知度実態(%)> 出典 厚生労働省 就労条件総合調査「第19表 産業・企業規模、勤務間インターバル制度の導入状況、具体的な時間の設定状況別企業割合及び平均勤務間隔時間」 注 企業規模別表より抜粋したデータを図表に加工した  図3は当該制度の導入状況を産業別に見たものです。【導入している】【導入を検討又は予定している】の割合は、運輸業・郵送業がもっとも高く、続いて建設業となりました。これらの業界で導入が進んでいる背景には、いわゆる「2024年問題」と呼ばれる「残業上限規制(原則月45時間・年360時間)の免除」がなくなることで、労働時間に対する意識が高く、取組みが進んでいるのではないかと考えられます。 <図表3:勤務間インターバル制度の導入実態__産業別(%)> 出典 厚生労働省 就労条件総合調査「第19表 産業・企業規模、勤務間インターバル制度の導入状況、具体的な時間の設定状況別企業割合及び平均勤務間隔時間」 注 産業別表より抜粋したデータを図表に加工した  現段階では、2025年の目標値までには導入状況・認知度ともに乖離がある結果となりました。勤務間インターバル制度の導入は、 ①従業員の健康維持・増進につながる②生産性向上に貢献し、従業員のワークライフバランスの実現につながる③企業としてのロイヤリティが向上し、採用競争力や定着率改善が期待できるといったメリットがあります。  一方で、①業務フロー・体制の見直しが必要になる②一時的なパフォーマンス低下が懸念される(サービスの質の低下など)といったデメリットもあります。  事業者の制度導入の負担を少しでも軽減できる助成金制度(「働き方改革推進支援助成金」)も用意されているので、一時的なデメリットよりも中長期的なメリットを見据えて、早めに動き出すことを推奨したいと思います。

賃金生産性<br />~人的資本の投資価値を把握する有効な指標~ | 人事アナリシスレポート®

賃金生産性~人的資本の投資価値を把握する有効な指標~

 企業は従業員に対して労働の対価として賃金を支払い、経営者は支払った賃金に対する有効性を評価しています。今回取り扱う賃金生産性とは、人件費がどのくらい付加価値創出につながっているかを評価する生産性指標です。  図1は全産業(金融、保険をのぞく)の賃金生産性と従業員の平均賃金の10年間の推移です。賃金生産性は、2020年のコロナウイルス蔓延にともない経済が停滞した影響などから、大きく低減した時期はありますが、増加傾向にあります。また平均賃金をみてみると、増加傾向にはありますが、賃金生産性ほどの増加ではありません。経営側からすると賃金生産性は上昇基調にあり、賃金の有効性が高められていますが、従業員側からすると賃金水準はそれほどあがらず、得られた成果の還元が十分になされていない状況にあることがわかります。 図1 生産性と平均賃金の10年間の推移 出典:財務省「法人企業統計調査」全業種(金融保険除く)よりデータを加工 注1)賃金生産性=付加価値÷人件費 注2)2011年を100とした場合の10年間の推移  各業種別にみると、傾向や課題に違いが認められます。図2は宿泊業の10年間の推移です。宿泊業は非正規社員の比率が高い業種ですが、インバウンドなどにより発展が期待されている業種です。人手不足もあり、外国人労働者の活用や、人が担う業務を機械に置き換えるなど、さまざまな取り組みをし、事業運営を行っている点が特徴です。 賃金生産性は、上昇傾向にありましたが、2019年以降は2011年の水準を割り込んでいます。これはコロナウイルス蔓延の影響を強く受けたためです。一方で平均賃金は2018年以降ようやく2011年当初の水準を上回りましたが、その後やや低下、横ばいとなっています。インバウンドによる需要が回復しているなかで、今後の賃金生産性と賃金の回復が期待されています。 図表2:宿泊業の賃金生産性、平均賃金 出典:財務省「法人企業統計調査」宿泊業よりデータを加工  図3は医療福祉業の10年間の推移です。高齢化などを背景に市場のニーズは拡大しており、人手不足を補うべく人材の獲得を目指し、積極的に平均賃金を増加させているのがわかります。一方で、賃金生産性が賃金水準と比較すると、その増加率は低くなっており、まだ投資に対するリターンが十分に得られていないかもしれません。人命にかかわる業種であり、効率よりも品質が絶対的に優先されることなどから、人材のパフォーマンスを高めていくことについては時間がかかるなど、生産性を高めることが非常に難しい業界と思われます。従業員の平均賃金は上昇傾向にあり、従業員にとっては望ましい傾向になってはいるものの、付加価値をさらに増やしていくことが重要な課題といえます。 図表3:医療福祉業の賃金生産性と平均賃金 出典:財務省「法人企業統計調査」医療福祉業よりデータを加工  今後、企業として対応すべきことは、業種によって異なる賃金生産性の傾向を把握し、自社との比較を行うことで、自社の課題をまず認識する必要があります。賃金生産性を、将来の利益を生み出すための人的資本の投資価値を把握する有効な指標として中長期的に管理することが重要です。賃金生産性の改善には人材への教育や、業務をより効率的に推進できるように労働装備率を高め、それにより、付加価値をしっかり高めていくことです。従業員にとって賃金は、働くうえで欠かせない衛生要因です。サービスを提供し、また生産している従業員の満足度を下げないように、収益をしっかり賃金に還元し、賃金水準を継続的に高めることが重要です。生産性を高める施策を講じ、創出した付加価値を従業員に還元し、そしてさらなる投資につなげていく、この好循環をもたらすことが理想です。 以上

労働者の自己啓発の実施状況<br />~本人任せではなく企業の支援を~ | 人材開発

労働者の自己啓発の実施状況~本人任せではなく企業の支援を~

 日本企業の能力開発費用の割合が他国に比べて圧倒的に少ない状況です。人的資本経営の潮流の中でも、人材に対してどのように教育を施すかは重要であり、企業が社員の能力開発に積極的に取り組む必要は言うまではないですが、社員各自の自己啓発はどうでしょうか。  労働者(正社員)の自己啓発の実施状況を見ると、この10年以上、自己啓発を実施した人の割合は40%台で推移しています。特に大きな波も無く横這いの状態で推移をしており、平成21年度以降は50%を超えることがありませんでした。日本の労働者がいかに自己啓発を行っていないかがわかります。自己啓発に時間を割けない理由は多種多様かと思いますが、そもそもの仕事が忙しい、女性の場合は家事や育児の問題、そもそも何をテーマに取り組めば良いのかがわからないといった理由もあり得ます。企業側もその事情を調査するなどし、自己啓発の促進を検討する必要があるかもしれません。 図表1:自己啓発をしているもの(正社員)の割合の推移 出典:厚生労働省 能力開発基本調査より作成  労働者(正社員)の自己啓発に対する支援を実施している事業所の推移は、平成20年代前半に比べ、現在は約80%の事業所が実施しています。金銭的支援や情報提供、就業時間や休暇の配慮など様々ではありますが、自己啓発への支援自体はある程度はなされていると考えられます。しかし、自己啓発を実施した労働者の現状を見ると、これらの支援が十分に活用されているとは言えないのではないでしょうか。せっかく準備した人材への投資は確実に活用されているか、確認が必要です。 図表2:労働者(正社員)の自己啓発に対する支援を実施している事業所 出典:厚生労働省 能力開発基本調査※平成26年度調査ではこの調査を実施していない。  産業別での状況を見ると、産業ごとでの特徴が見られます。産業別のOFF-JTの実施と自己啓発を行った労働者の割合を見ると、主に企業が主催する研修などのOFF-JTを実施している割合の大きい産業では、自己啓発を行う労働者の割合も大きいのです。金融業・保険業、情報通信業などはOFF-JT実施、自己啓発ともに高めで、宿泊業・飲食サービス業などのサービス関連の産業ではOFF-JT実施も自己啓発も低めという特徴が出ています。 企業がOFF-JTをしっかりと実施したことで、社員の自己啓発意欲が高まるとも考えられますし、自己啓発が盛んな風土で組織としての取組への期待の声が多く、実施に至るということもあるかもしれません。組織で働く労働者に対しての自己啓発は自分で勝手に頑張るものという考え方ではなく、組織と労働者が相互に求めるものを共有し、自己啓発への取組推進を一緒にしていくことで、自己啓発状況が前進する可能性があります。 図表3:産業別 自己啓発を行ったものの割合とOFF-JTを実施した事業所の割合 出典:厚生労働省 能力開発基本調査 令和4年度より作成  日本企業の能力開発費用は他国に比べて圧倒的に少ない状況ですが、まさにその結果が自己啓発の状況からも見えています。しかし、企業側としてもすべて研修などを準備して学習させるのは不可能です。各個人の自己啓発への積極性を高めていくためには、学びを仕事にどう生かすべきなのかを考えるきっかけづくりが重要です。例えば、研修などの機会を通して、仕事で生せるフレームワークや手法などを学ぶことで、知識欲を高め、成長に向けた動機付けを行います。その後も実践への活用と振り返りを継続することで、学びが定着していくのではないでしょうか。また、支援を行ったならば、教育投資に対する効果の検証をして、次回の教育施策検討に繋げる必要があります。 以上

第一次産業労働力の特徴<br />~危機的状況に打開策はあるか~ | 人事アナリシスレポート®

第一次産業労働力の特徴~危機的状況に打開策はあるか~

 戦後経済の成長は産業構造の変化に伴いながら進展し、第一次産業から第二次産業、第三次産業へとシフトしていきましたが、それは就業者構成にも影響を及ぼしました。  戦後まもなくは第一次産業の就業者数が最も多く、高度経済成長を通じて、第一次産業はその割合を大きく低下させ、1960年を過ぎたころから第二次産業、第三次産業が逆転しています。1954年(昭和29年)に「神武景気」と呼ばれた好景気を皮切りに、日本の戦後高度経済成長が始まり、「岩戸景気」、池田内閣による「国民所得倍増計画」、1964年の東京オリンピック、1970年の大阪万博と、日本の経済成長は目覚ましく、特に第二次産業の重化学工業による生産性の向上によりGDP世界第二位にまでなったという時代です。  その後、第二次産業の就業者数は低下していきますが、第三次産業の就業者数は伸び続けています。  農林水産業中心の構造から、製造業の拡大、そしてサービス業の拡大へと繋がり、産業構造の変化に応じて就業者構造が変化していったのです。 図表1:産業別就業者数推移 出典:総務省「労働力調査」  第一次産業の現状を見ると、就業者は非常に高齢であるということがわかります。  60歳以上の割合は農業、林業においては64%、漁業においては47%です。次世代の担い手が減る中で、今後、高齢の農業者、漁業者のリタイアが増加することが見込まれ、日本の第一次産業は非常に深刻な状況にあると言えます。  日本の食料自給率は過去最低レベルとなっており、輸入に頼らざるを得ない状況では今後の気候変動や食料危機、円安の影響などによって輸入ができなくなる食料がでてくる可能性もあります。  就業者を増やす努力と、企業が第一次産業に参入するなど多方面からの対策が必要であると言われています。 図表2:第一次産業年齢別就業者数 出典: 令和2年国勢調査 就業状態等基本集計  この10年の農業経営体数の推移を見ると、個人経営体は、平成22年を100とすると令和2年には63まで減少し、農家の減少が進行していることがわかります。これは、就業者の高齢化と、後継者がいない問題が直結した結果です。しかし、法人経営体を見ると、平成22年を100とすると、令和2年は136と増加しており、企業の農業への参入が増えています。平成21年の農地法改正に伴い、企業が参入しやすくなったことで、農地法改正後のリース方式での参入が5倍にまでなりました。個人経営体の減少が止められない中で、企業の参入に大きな期待が寄せられています。 図表3:農業経営体数推移 出典: 2020農林業センサス「推移」は平成22年を100としたときの指数  就業者の高齢化、そして後継者もいない中で、日本の第一次産業は危機的状況にあります。産業を守っていくには企業の参入が不可欠なのではないでしょうか。第一次産業を救う社会貢献活動の意味でも、既存企業が参入し、組織的に取組みをしていくことで、産業を守りに行くことが必要であると考えます。そして近年はAI、ICT、ロボット、ドローンといった最先端技術の活用も不可欠とされています。技術を持った企業が参入し、人手の不足解消、生産性向上のために研究が進んでいますが、さらなる推進が期待されます。  社会全体がこの危機を認識して産業を守っていかなければならないという改革が必要と言えます。 以上

データから見る製造業の人事課題<br />~製造業 就業者と有効求人倍率~ | 人事制度

データから見る製造業の人事課題~製造業 就業者と有効求人倍率~

 日本は優れた製造技術によって信頼性の高い製品を生み出し、世界各国から「ものづくり大国」とも言われてきました。日本の製造業は現状どのようなものでしょうか。  ここ数年製造業のGDPは110兆円程度を推移しており、2021年の経済活動別国内総生産(名目)では製造業が最も構成比が高く、次いで卸売・小売業、不動産業となっています。製造業は日本経済を支える大きな産業です。しかし、昨今の世界情勢から原油価格高騰の影響により生産コストの増加など影響は引き続き深刻な状況です。 図表1 業種別GDP 出典:内閣府 2021年度国民経済計算  実際に製造業での人材需給はどのような状況なのでしょうか。有効求人場合率の推移を確認すると、製造業に関わる職業の有効求人倍率は全般的に上昇傾向です。特に「機械整備・修理」「金属材料製造、金属加工、金属溶接・溶断」は3を超えています。「機械組立」「生産設備制御・監視」などは元から相対的に倍率は低い状況でしたが、倍率の上昇率も大きくはなく、IT化、ロボティクスによる省人化が理由として考えられます。製造業の中でも職業による差が生じつつも、人手不足は進むことが考えられます。 図表2: 職業別有効求人倍率 パートタイム含む常用 出典:厚生労働省 「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」  日本経済を支える産業の製造業ですが、働く人々の年齢はどうでしょうか。34歳以下の就業者は2021年で263万人で、この約20年で3割減っています。それに伴って製造業の34歳以下の就業者割合は徐々に下がり、ここ数年は25%台が続いています。反対に65歳以上の就業者数は2021年91万人、2002年と比較をすると、約1.5倍と増えており、業界の高齢化が進んでいると言えます。  他の業種でも同様に、若年層の就業者割合の低下、高齢者の就業者割合の上昇の形になっています。若い人材が減ると言うことは、素晴らしい技術の継承者がいなくなることが考えられ、どのように継承し、発展させていくかを真剣に考えなくてはなりません。 図表3: 製造業就業者数と割合 出典: 総務省「労働力調査」  人材の高齢化と人材不足は一朝一夕に解決できる問題ではなく、これから先、世界はこの問題とともに経済活動を続けていかなくてはなりません。製造業においては、シニア活用の土壌を整えることと同時にどのように技術継承を行うか、また求職者に向けて製造業、会社の魅力を伝える工夫をすることが必要と考えます。  65歳を超えても働いてもらうためには、シニア層の職務の割り当てや待遇方針を明確にし、やりがいを持って働いてもらうための制度の検討が必要です。  また、シニア層がこれまで築いてきた技術をどのように後進に継承するのかも重要です。「経験と勘」、「見て学べ」という属人的なものはなく、どのような人でも一定の成果をあげられるマニュアルを作成するなど継承の準備は必須と言えます。  製造業のイメージとして、厳しい業界というイメージも昔はありました。しかし、昨今は働き方改革の影響もあり改善がされ、働きやすい環境も整備されてきているようです。こういった働きやすさの向上施策は引き続き努力すること、そして採用活動において会社側から魅力をしっかりと求職者に伝えることで人材採用に繋がる可能性があります。 以上

有給休暇は取りやすくなったか<br />~取得率推移と産業別比較~ | モチベーションサーベイ

有給休暇は取りやすくなったか~取得率推移と産業別比較~

 年次有給休暇の取得率は低いと言われてきました。労働者の心身のリフレッシュを図ることを目的とした有給休暇ですが、請求することへのためらいから取得率は低調であるとされています。2019年より働き方改革の一環として、年に5日の有給休暇を取得させることが経営者の義務となりました。有給休暇の現状と、労働時間、その課題はどういったものでしょうか。  労働者一人当たりの平均年次有給休暇取得率の推移を見ると、ここ数年取得率はやや上昇傾向です。しかし、政府は令和7年までに有給休暇の取得率を70%までにするという目標を掲げており、現在そこにはまだ及ばず、まだ「有給休暇がとりやすい」とはまだ言い難いのではないでしょうか。このまま取得率を上げていくためには、各企業において有給休暇取得の促進を図っていくことが必須です。  では、労働時間はどうでしょうか。総実労働時間・所定内労働時間・所定外労働時間の推移を見ると、2018年までは横ばいが続きましたが、コロナウィルスの影響による労働時間の抑制も影響してか2020年は総実労働時間・所定内労働時間・所定外労働時間すべて減少しました。コロナウィルスは労働時間に抑制にいい意味でも悪い意味でも影響を与えたと言えます。社会の変化を契機に、労働者の意識の変化も起こりました。仕事とプライベートの両立ができる労働時間や、休暇の取得は労働者にとって非常に重要なポイントになっています。道半ばの有給休暇取得率、労働時間の抑制がどのように推移していくかは、各企業の今後の取組みにかかっていると言えます。 (図表1:有給休暇取得率と労働時間の推移) 出典:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査厚生労働省 令和3年版 労働経済の分析 -新型コロナウイルス感染症が雇用・労働に及ぼした影響-  ※労働時間:労働者が実際に労働した時間数。休憩時間は給与支給の有無にかかわらず除かれる。有給休暇取得分も除かれる。    産業別の有休取得率を見ると、産業別に有給休暇の取得率に差があることがわかります。特に電気・ガス・熱供給・水道業のインフラ関連については73.3%と高水準です。一方、卸売業、小売業や宿泊・飲食サービス業などは50%を切っており、有給休暇の取得がし辛い現状が見て取れます。不特定多数の一般顧客がメインの顧客である産業ですが、近年人材不足は深刻です。業務が回らない部分の解決のため、例えばホテルのフロント受付業務を人ではなく、機械に置き換える、小売店でのセルフレジの導入を進めている企業も増えています。システムの活用と社員の活躍のバランスを取り、社員が休みを取ることができる状況を模索することは必須です。 (図表2: 産業別労働者1人平均有給休暇取得率) 出典:厚生労働省 令和3年就労条件総合調査  有給休暇の取得は労働者の権利です。必要に応じて気兼ねなく、取得できるようにするには組織の風土の問題があります。有給休暇を取ることを申し訳なく感じることなく申請を出すことができる組織の雰囲気の醸成です。その雰囲気醸成の手前には、有給休暇取得をしても仕事が滞りなく進む状態が必須です。有給休暇で休む人がいたとしても業務が滞らない体制、準備、システムの活用など、人の数だけでなく業務全体を見通した改善を検討する必要があります。 社員がメリハリを持って働く環境を整え、労働生産性の向上、社員の満足度を向上させる風土と体制づくりを実現し、本当の働き方改革を実行していくことが求められます。 以上

ICTによる生産性向上<br />~ICT投資の推移と効果~ | 人事アナリシスレポート®

ICTによる生産性向上~ICT投資の推移と効果~

 近年、新しい経済・社会の仕組み、更には新しい生き方、働き方が現れており、それは情報通信技術(ICT)の力無くしては実現しえないものです。情報通信機器を揃え、ソフトウエアを導入したとして、実際の効果どうなのでしょうか。  日本のICTに対する投資の推移を見ると、2007年を100とした指数で見ると、2020年は115となり、投資額わずかな上昇です。コロナウィルスの影響から新たな働き方に対応するための方法としてICT投資が必要に迫られたことや、今後のDX推進に向けた投資も必要なことから投資額は伸びていくのではないでしょうか。また、外的要因(経済危機や震災など)によって投資額が減少することもわかります。  弊社HRデータ解説の「DX人材戦略~IMD世界デジタル競争力ランキングから考える日本企業の課題~」において、日本は情報通信への投資は世界の中でもランキングが低く、働き方のニューノーマルに向けた企業によるテクノロジーの投資は課題と言えます。 (https://www.transtructure.com/hrdata/20220719/) (図表1:ICT投資の推移) 出典:総務省(2022)「令和3年度 ICTの経済分析に関する調査」  ※赤線は2007年の合計値を100としたときの指数    生産性向上を目的としたデジタル化の効果を国別にみると、「期待通り」とする回答が多いですが、日本においては「期待以上」という回答は極端に少なく、また「期待する効果を得られていない」という回答も約30%です。一方、米国では「期待以上」が非常に高く、ドイツ、中国では「期待通り」が日本と比較して多いことがわかります。この他国との比較において差が出る理由は「本来必要なものに対しての投資が少ない」「日本人のデジタルに対する期待値の高さ」かもしれませんし、「導入したシステムを使いこなすスキルや人材が不足している」「デジタルに対する理解が不足し組織内で推進しにくい」といった事情があるかもしれません。いずれにしても、期待した効果が得られないということは、さらにデジタル化を進めていこうとする風は吹きづらくなってしまうのではないでしょうか。 (図表2: 生産性向上を目的としたデジタル化の効果(国別)) 出典:総務省(2022)「国内外における最新の情報通信技術の研究開発及びデジタル活用の動向に関する調査研究」    ICT投資をしたとして、効果が得られなければ意味がありません。効果を得るためには、経営レベルでの投資の目的および目標や評価指標の明確化を行うこと、実際に使用する人々の理解と意識改革、システム活用による生産性向上のための現在の業務改革、といった一連の取り組みが必要なのではないでしょうか。 理解と意識改革の面ではITリテラシー向上が必要ということであれば、リカレント教育やリスキリングの機会も必要でしょう。また、業務改革については、慣例的業務の撤廃や導入するシステムに業務を合わせに行くぐらいの改革が必要かもしれません。  そして、ICTを活用した「新たな価値創造」が重要になります。そこにはIT人材やサービスの価値創造、変革を推進する人材の採用や既存社員からの配置、活用が必要になるでしょう。  働き方の変化やDXの推進に際して、企業は適切なICT投資への検討と実践に取り組まなくてはなりません。 以上

育休取得状況の推移<br />~仕事と家事を見直すチャンス~ | モチベーションサーベイ

育休取得状況の推移~仕事と家事を見直すチャンス~

 育児休業(以下育休)とは、育児をする労働者を時間的かつ金銭的に支援する制度です。育休は、男女の雇用機会の均等の実現、少子化への対応などといった社会的責任があり、経営者、人事がその責任を強く認識していく必要があります。  日本の育休取得率は全体として非常に低い水準です。特に男性の育休取得率は他国に比べても著しく低く、女性の育休取得率は85%に対し、男性はわずか14%弱です。しかも数年前まではわずか2%程度という状況でした。(図表1) 育児や家事の負担が女性に偏り少子化の要因になっている背景を踏まえて、政府は、2025年までに男性の育休取得率を30%に上げる数値目標を掲げています。 (図表1:育児休業取得率の推移) 出典: 厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」「育児・介護休業制度等に関する事項」 注)本調査は男女別に掲載されているグラフを、1つのグラフに統合している。  男性の育休取得率は目標の30%まで程遠いですが、増加傾向であることは好ましい状況です。しかし取得率が上がっても育児休業期間について大きな問題があります。企業の対応や社内での理解との間に温度差があることで”短期間の育休”を取得する男性が多いのが実情です。性は、半数が1年以上の育休期間を取得する一方で、男性は、半数以上が2週間未満の期間しか取得していません。男性は育休を取得しているとはいえ、その期間についてはまだ十分ではないと言えます。(図表2) (図表2:取得期間別育児休業後復職者割合) 出典: 厚生労働省「令和3年度雇用均等基本調査」「育児・介護休業制度等に関する事項」      (単位:%) 注)「育児休業後復職者」は、調査前年度1年間に育児休業を終了し、復職した者をいう。  男性の育休取得及び育休期間が女性と比較してまだ不十分である要因は、主に4つあると考えられます。「育休取得による代替要員の確保」、「業務の引継ぎ調整」、「育休取得による不利な処遇になる懸念」、「前例がない等の社内文化」です。  1つ目と2つ目の要因は、「実際に抜けた『穴』を問題なく埋められるのか」についての懸念です。業務の担当者がいなくても問題なく遂行させるためには、”あの人にしか分からない”といった業務の属人化を解消し、標準化させる必要があります。また業務の棚卸しが出来れば、その仕事に見合った人材のレベル感や、業務の難易度を元に給与のレベル感を再定義できる機会にも繋がります。 (図表3:男性部下の育児休業への懸念) 出典:サイボウズチームワーク総研『「男性育休」についての意識調査』    ・調査対象:部下に男性正社員/公務員をもつ上司(課長職相当~経営者):2,000名 ・調査期間:2022年4月15日(金)~20日(水) ・調査方法:パネルを活用したインターネット調査    3つ目の要因は、会社と本人の間で認識の齟齬が生じていることです。会社としては、法律で認められた制度であり不利益な処遇をしてはならないと認識している一方で、本人にとっては“育休が昇格や昇給の妨げになるかもしれない“と懸念し、両者間で処遇に対する認識が一致していない可能性が考えられます。昇格や昇給の判定に育休の取得有無は全く関係が無い、ということを会社は社員に対して適切に周知していく必要があります。  4つ目の問題である前例がない等の社内文化は、経営者や管理職の視点によるものです。部下に対して育休を取得しやすい環境を作るのはもちろんのこと、担当者が不在でも業務が回る仕組みを構築することは“前例がない”に対する解決策の1つとなるでしょう。  ご家庭内での家事分担における個人の意識の改善も重要です。出産前後で生活環境や家事の内容は大きく変わり、出産後の女性が一手に家事を担うのは負担が大きいです。家事をパートナーに任せっきりにせず、なるべく分担をし、育休期間の間に家事・育児の新生活に慣れることが望ましいです。  育休は、取得すれば良いということではなく、十分な期間を設けて育児をすることが本質的です。育休を皮切りに、今一度会社の仕事の在り方・ご家庭での家事分担を振り返ってみてはいかがでしょうか。