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HR DATA

従業員数と営業利益率
~人的資本の投資で営業利益率を高める~

失われた30年と言われた日本経済も、17年ぶりの日銀の利上げや34年ぶりの日経平均最高値の更新、春闘の賃金引き上げ率が史上最高であること等から、回復の兆しが見えてきました。しかし、今後人口減少に伴い就業者数の減少も見込まれ、日本経済を持続的に成長させるための大きな課題となっております。
今回は企業が本業で稼いだ利益率を表す営業利益率の推移と平均従業員数の推移を比較しながら、今後の施策について解説します。日本経済を今後も持続的に成長させるためには成長も大切ですが、各業界がしっかりと収益性を高めていくことも重要です。今回は代表的な業界をピックアップし、その傾向を解説します。

1.運輸業・郵便業

運輸業・郵便業は、コロナ禍である2020年-2021年頃に一時的な営業利益率の大幅な減少が起こり業界全体で赤字となりました。物流の小口多頻度化※1が急速に進行している中での物流コスト増※2が原因であると考えられます。その後営業利益率は回復傾向にありますが、現状は以前の水準に達していない状況です。これを打開するためには、業界そのものが高付加価値型のサービスへ転換していくことが求められるでしょう。
※1 「我が国の物流を取り巻く現状と取組状況」経済産業省・国土交通省・農林水産省(2022年)
※2 「2022年度物流コスト調査報告書」公益社団法人日本ロジスティクスシステム協会(2022年)や資源エネルギー庁の調査結果から、原油価格等の高騰に伴う物流コスト増であることが考えられる。

(図表1:運輸業・郵便業)

運輸業の営業利益率グラフ出典:「法人企業統計調査」財務省 をもとに作成

2.情報通信業

情報通信業は平均従業員数も営業利益率も緩やかに上昇しています。営業利益率については8~10%と高い水準を維持し、過去10年で毎年平均約2.8%成長しています。コロナの一時的な景気後退に伴い成長が鈍化したものの、2022年にはコロナ以前に近い水準まで回復しました。同業界は他の業界と比較して、働く時間や場所を限定しない柔軟な働き方を実現しやすく、生産性向上の取り組みを行いやすいことから、今後も業界全体として更なる生産性向上に取り組みやすい業界であると言えます。

(図表2:情報通信業)

情報通信業の営業利益率グラフ出典:「法人企業統計調査」財務省 をもとに作成

3.製造業

製造業については、従業員数が緩やかに減少していく中で、過去10年で毎年平均約9%営業利益率を成長させています。他の業界でも触れていますが、2019年以降に一時的な景気の冷え込みはあったものの、約2年弱で元の水準へ回復しています。従業員数はコロナ以前の水準に達していないものの、2022年は全産業平均でIT投資が前年比約5%増加※3すると見込まれており、特に金融や公共分野で大きく増加したことから業界全体の営業利益が向上したと考えられます。
※3 「令和6年版情報通信白書」総務省(2024)

(図表3:製造業)
製造業の営業利益率グラフ

出典:「法人企業統計調査」財務省 をもとに作成

日本の人口が減少していく中でビジネスを成長させるためには、ビジネスを牽引する人材への投資や、テクノロジー等への投資が必要不可欠であることは言うまでもありません。企業の置かれている状況、ステージにもよると思いますが、原則営業利益については、短期的に赤字が許容できるものではありません。
一方で人やテクノロジーに対する投資の効果が表れるのは少し時間がかかりますので、その投資効果を測るためには、中長期的な観点が必要です。個別の事業の売上とともに、収益を重視した中期的な検証、経営管理の重要性が今後より一層求められるでしょう。
以上