©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.

MENU

©️ Transtructure Co.,Ltd.All Rights Reserved.

コラム

column
組織の力を引き出すために、人間的な側面にフォーカスしよう | モチベーションサーベイ

組織の力を引き出すために、人間的な側面にフォーカスしよう

 『A社は、ほとんど異動がなく分業体制による業務の効率性を追求していたが、他社との競争に対応するために積極的なローテーションを導入。最初は異動に対する抵抗感が強く、象徴的な管理職の異動から始まり、徐々に一般社員も異動するようになった。異動者からは、「学びがあった」とその価値が周囲に広まる。部署間の理解を深めるために説明会やワークショップが開催された。複数業務経験を昇格の要件とし、毎年一定数の異動を実施。若年層から異動希望の声が上がるようになり、異動の順番待ちも発生した。積極的なローテーションにより、一部の業務効率や品質に一時的な低下が見られたが、会社は社員の能力向上を重視し、業務の標準化、業務マニュアルの整備、評価制度の見直しなど対策を講じた上で、方針を継続。入社時から異動が当たり前となり、異動経験者から未異動者への不満も生じたが、時間をかけて異動が当たり前の文化が形成された。』  この例では、少数の影響範囲から始めて、効果を感じた人から口コミを通じて変化の波は少しずつ広がっていきました。そして、新入社員に対しても同じ考え方を適用していくことで、早いスピードで適用者の比率が増え、徐々に組織全体へ浸透していきました。  しかし、ここで興味深いのは、途中から「異動しない人がずるい」というような声が大きくなり、「異動をしていない層」に対する同調圧力が強くなったことです。最初に異動の効果を感じた人は、新たな発見や自分自身が新しい何かをできるようになったことで、仕事の面白みや充実感を感じていたはずです。それが途中から、一部の層において変化していきます。制度の目的が腹落ちしていない、周囲との関係性の面から多数派でいたいなどの理由があったかもしれません。                   組織には、「ハードな側面」と「ソフトな側面」があります。組織のハードな側面とは、組織構造、制度や規則、職務内容や仕事をする上での手順などをさします。一方、ソフトな側面とは、人の意識やモチベーション、人々の関係性、リーダーシップ、組織の文化や風土などをさします。いわば、「人」や「関係性」など人間的側面です。どんなに立派な制度や精緻なルールを整備して、計画通り運用し、ハードな側面を整えても、組織のソフトな側面(人間的な側面)の影響で、当初のねらい通り、目的が達成されないことがあります。組織の力を強くするためには、両方の側面に焦点をあてて取り組むことが必要です。組織開発の先駆者であるダグラス・マグレガーは、「組織における人間的側面は重要なマネジメント課題である。」と主張しています。  人は、「いやいや仕方なしにやる」ことによっては活き活きとせず、その人が持つ力が発揮されません。自ら「面白がってやりたい」と感じた時に活き活きとし、その人らしさや力が発揮されてきます。ソフトな側面へのアプローチは、一朝一夕にはいきませんが、是非取り組みたい課題です。そしてそれは、人事領域に関わる方の仕事の面白味・充実感につながるのではないでしょうか。   以上

褒める文化がもっとあってもいい | モチベーションサーベイ

褒める文化がもっとあってもいい

 これまでのビジネス経験から、褒め上手な人は部下を育てることが上手く、かつ真の信頼関係構築に長けています。一方、褒め下手の人の下で部下は育たないと強く思っています。最近、褒め上手な人に出会わないなとふと思い、褒める文化ってもっとあっていいと思いながらキーボードを打っています。自分自身も褒められて伸ばされたと感じていますし、若い世代の人を育成するには「褒めて伸ばす」がしっくりきます。  組織の中で働く以上、人間関係を円滑にするためのコミュニケーションは欠かせません。部下の指導や同僚とのやり取りのなかで、「褒めて伸ばす」というキーワードがあります。当社が提供している「360度診断」においても「褒めて伸ばす」の設問が存在します。  「褒め言葉の3S」というものもあります。「すごいね」「さすがだね」「すばらしいね」の「3S」です。「褒める」「褒めて伸ばす」のワードが注目されることを個人的に願っています。  褒めるだけで部下が成長したら苦労しないと言う人もいるでしょう(当たり前ですが褒めるだけで成長などあり得ない)。ANAグループでは、互いの仕事のよいところを見つけたら、それをカードに記入して本人に手渡す「Good Job Card」を推進し、褒める文化を醸成していると聞いたことがあます。2001年から始められて、全社に浸透するまでには5年程の時間が必要だったようです。  「褒める文化」について、肯定派・否定派、どちらですか?私はもちろん肯定派です。誰かに褒められることにより、脳内神経伝達物質であるドーパミンが分泌され、意欲が高まることはよく知られていることです。多くの人が、恋愛・家族・子育ての中で、「褒める」ことを自然に、または意識的に行っている(きた)はずですが、仕事になると「褒め上手」な人は少ないと感じてしまいます。  管理職に「褒めて伸ばす」とのミッションを与えたとしても、褒める習慣がない人には難しいことかもしれません。前述のとおり、私は、褒め上手な人は人を育てることが上手いと強く思っています。採用が厳しくなっている中、自社内での人材育成は必至です。ANAグループのように「褒める文化」の醸成を考えることは、企業にとってプラスしかないと思います。こんな事と感じてしまうかもしれませんが、「褒める文化」には否定や拒絶とは真逆なため、今流行りの心理的安全性にも繋がるはずです。  最後に、部下を育てることが上手と思われる人の何気ない行動を2つ紹介。 ・なかなか仕事内容で褒めることができない相手に対しては、「いつもありがとう」「いつも助かっているよ」と伝えている<「アクノリッジメント」(存在承認)>。 ・挨拶にプラス一言を上手く使える。朝であれば、「おはようプラス(例)昨日の提案GOODだ ったよ」。挨拶ひとつで相手の印象は変わります。 以上

シニア人事制度 | 関連制度設計

シニア人事制度

 最近クライアントの人事担当者と話をしていると、シニア人材活用のテーマが多いと感じます。シニアの方々は、長年の経験と豊富な知識を持っているし、その経験や洞察力は、会社にとって非常に貴重な資源でもあります。だからこそシニア人事制度を再構築することで、彼らの経験や知識を最大限に活用し、会社の業績向上や問題解決に貢献してもらいたいといった内容です。ただ、そういった思いはあるものの、制度構築となると進んでいないのが現状のようです。  ご存じのとおり、2021年4月施行の改正高年齢者雇用安定法により、企業には70歳までの雇用が課されることになりました。この法改正で企業に求められる高年齢者雇用確保措置は「努力義務」の位置づけであるものの、大企業を中心に70歳までの雇用延長を制度化する動きが出てきており、多くの企業で高年齢者雇用の推進が急務となっています。 旧法では、   ①65歳までの定年引上げ   ②65歳までの継続雇用制度の導入   ③定年廃止のいずれかを講じることが企業に義務付けられていました。 今回の改正法では、   ①70歳までの定年引上げ   ②70歳までの継続雇用制度の導入   ③定年廃止   ④高年齢者が希望するときは、70歳まで継続的に業務委託契約を締結する制度の導入 あるいは、70歳まで継続的に事業主が自ら実施する社会貢献事業や、事業主が委託、出資等する団体が行う社会貢献事業に従事できる制度の導入のいずれかを講じることが企業の「努力義務」として課せられることになりました。  また、総務省統計局「人口推計」によれば、高齢化率(総人口に占める65歳以上人口の割合)は2021年10月1日時点で28.9%となっていて、この高齢化率は今後も上昇を続け、2036年には33.3%、つまり総人口の1/3が65歳以上になると推計されています。労働人口はどうかというと、若年層を中心に減少に転じており、今後必然的に、企業としてはシニア層(60歳代以上)の活用を推進せざるを得ない状況になってきているのです。  現在は多くの企業が65歳までの制度を有しているものの、65歳定年延長や70歳までの継続雇用制度については、まだまだ整備が追い付いていないのが実情です。65歳定年延長あるいは66歳以上の継続雇用制度の導入にあたっては、今よりも雇用期間を延長していくことに対してシニア層の処遇をどのように再設定するか、総額人件費の上昇にどのように対応するか、という点が非常に高いハードルになっています。その他にも、シニア層の健康や能力の維持、業務の確保、職場環境整備等といった人事施策が必要になる点が、企業の人事施策が計画的に進まない要因になっていると考えられます。シニア人材の活躍ということに関して、現場レベルでは何から始めればいいか分からないという状態の企業が非常に多く、とりあえず検討を開始してみたが、検討が長期化したり頓挫したりといったケースが多いです。その主な原因を考えると、意思決定するための現状分析と方針策定、シミュレーションが不十分なことがあげられます。   現状分析は、問題・課題の抽出をして分析するわけですが、少なくても以下の視点で実施することが必要です。   ①人員数・人員構成 現状の人員数が適正か、人員構成に問題がないか、将来的にどうなっていくのか   ②人件費単価 現状の自社の賃金レベルが労働市場においてどうなのか   ③シニア人材評価 現状の評価はシニア層の能力や貢献を適切に評価しているか、評価結果に偏りはないか   ④意識調査/職場環境調査 シニア社員を含め、モチベーションや組織の現状をソフト面・ハード面で分析すると どうなのか  この分析の結果を根拠とし、自社におけるシニア社員の活用方針を明確にして、経営と共有しておくことで、その後のシニア人事制度構築をスムーズに進めることが可能になります。シニア人事制度を構築・浸透させるには、会社全体での意識改革や政策の見直しへの取り組みが必要です。シニア人材の能力や貢献を正当に評価し、彼らが持つ経験や知識を最大限に活かす仕組みを整備することで、会社は多様性や包括性を促進し、持続的な成功を築くことができるのです。

不退転の覚悟のしどころ | 人事制度設計

不退転の覚悟のしどころ

 多くの企業が中期経営計画の中に、人事基盤の刷新、人事制度の見直し、経営計画と連動した人材戦略確立など、人事施策を中計の主要な柱に掲げている。しかし、3~5年の中期経営計画の中で、それこそ「基盤」が変わるほどの変化を遂げた会社はそう多くないと感じている。それは一重に、人事の変革において、経営が覚悟を以て取り組むべき所が実は人事施策の方針策定や制度設計の先にもある、ということの認知がされていないからなのではないかと思うのだ。ビジネスのステージや置かれている環境が異なり、改革に対する慎重度や見直しの必要性の度合い、求めているスピードの違いがあるので、大きな変化の有無を良い悪いと評価するつもりはない。ただ、大きな改革をやり遂げた企業の特徴をいえば、「最初から最後まで」経営が不退転の覚悟を以て取り組んでいると感じる。  最初から最後まで、とは大きくいうと、①方針・制度策定時、②制度導入時(社員説明を行う段)③制度運用時(毎年の配置変更、昇格・降格を見据えた評価時、もしくは格付け見直しの時)である。①においては、経営メンバーで議論をし、経営としての重要な施策であることから、経営、もしくは現場を巻き込みながら、各施策の必要性の検証やリスク分析などを行い、かなり慎重に重要な決断を下している。もちろん議論をつくし、大きな改革を行う必要があるのであれば、覚悟を経営メンバーで共有し、意思決定がなされる。これはよく見かける光景だ。しかし、実は人事の改革で極めて重要なのは②と③であるが、この重要性が意外と経営に認識されていないのではないかと思う。  人事制度は全ての社員にとって身近であり、処遇に関わることから、非常に注目度が高い。だからこそ、人事基盤の見直しをするときにはその改定の目的、社員に期待すること、もしくは変わってもらいたいこと、を理解させることが重要である。等級・給与・教育・評価、さらには人事部の在り方まで、しっかり議論がつくされ、合理的に設計されたのであれば、それを理解してもらうために、言葉を尽くす必要があるし伝えるための工夫が必要だ。  しかし、出来上がった制度をどう伝えるか、どのような布陣で社員説明の場に臨むかは、あまり議論されずに進んでいる会社をよく見かける。制度の伝え方についていえば、厳しさがあると受け入れられづらいのではないか、という配慮や質問されることをリスクととらえ、リスク回避の結果、本来実現したい改革の本質を「ぼかす」説明会にしてしまったケースもある。  また、直接社員に言葉で語りかける絶好の機会であるため、本来であれば、社長(経営)の口から強烈なメッセージを発信してほしいところだが、実際は「人事部長・人事課長の制度設計最後の仕事」となっており、テクニカルな仕組みについて理解させることに終始していることも多い。確かにそこも重要だが、経営の想い、考えは結局伝わらずに終わっているケースも多い。制度のエンドユーザーに直接触れる機会こそ、不退転の覚悟をもって、経営の目指す世界と制度のつながりをしっかり落とし込んで頂きたい。それがしっかり伝わったかが説明会の良しあしの判断基準でもよいくらいだ。  ここまでの話は②の代表的な制度導入時の話であるが、実はもう一つ覚悟をもって臨むべきは③の、制度の運用である。方針議論の際に、必ずといってよいほど、パフォーマンスの割に処遇(等級)の高い社員に対しての問題認識や、優秀な若手登用の話が語られる。優秀な人材であれば年齢に関係なく登用し、パフォーマンスが高くなければ適正な格付けにする。これをやりたいがための制度を目指して設計しても、いざ運用してみるとそのような対象者が一人も出ていない。登用のケースにおいては、象徴的な人を一人は出そう、という考えのもと、導入時に数名登用したりするが、その後が続かない、もしくはその真逆で、登用しすぎて、本来の人材イメージに合っていない人材が登用され、制度の狙いを大いにぼかしてしまっている。  中計実現のために成しえたかったことは制度設計だけでなく、運用を以て実現できるのだが、もはや運用の段になると経営の目も届きづらい。細かな人事運用の結果は経営報告されていないことも多いだろう。制度導入を経たら、経営も、もはや中計の柱である人事基盤の構築という仕事が終わったと思われているかもしれない。しかし、基盤は制度設計と運用で出来上がるものである。経営として、目指す世界を実現するための覚悟を持った運用を先陣きって進め、運用の指導して頂きたいと思う。加えていえば、人事や管理職に「不退転の覚悟をもった運用」をさせることが、経営として覚悟をもって進めなくてはならない仕事なのではないだろうか。

幸福感を感じる方法 部下に幸福感を持ってもらうには | モチベーションサーベイ

幸福感を感じる方法 部下に幸福感を持ってもらうには

 「最近さ、私の幸せって何だろうって考えたんだよね。」 先日、美容室に行った際、私の髪をブローしながら担当美容師がこんなことを話し出した。もう10年以上もお付き合いのある間柄なので、たまにプライベートな話もするが、なんとも難しい話題である。ここからの話の展開次第では、非常に気まずくなる。そんなことを一瞬ぐるぐると考えていると、こう続いた。 「いま独立して自分で好きなようにやれて、これで十分幸せだなって結論になったの。」あぁ、暗い話じゃないんだ、よかったと思っていると、髪の毛はつやつやになっていた。  担当美容師は、最近独立し、自分が吟味して選んだカラー剤やトリートメントを使い、シャンプーからカット、カラーまですべて一人でこなす。自分で全てを決定し、試行錯誤しながらも楽しんで経営をしている。そのスタイルが非常に合っているらしい。  「幸福感」について、2018年に神戸大学社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と同志社大学経済学研究科の八木匡教授が行った国内2万人に対するアンケート調査の結果(*1)、幸福感に強い影響を与えているのは、健康、人間関係に次いで、所得、学歴よりも、「自己決定」であるという研究結果を発表した。自己決定は所得、学歴よりも影響度が大きいという結果である。  この調査では、自己決定度を評価するにあたっては、「中学から高校への進学」、「高校から大学への進学」、「初めての就職」について、自分の意思で進学する大学や就職する企業を決めたか否かを尋ねているとのことだが、「自らの判断で努力することで目的を達成する可能性が高くなり、また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなることから、達成感や自尊心により幸福感が高まることにつながっていると考えられる」と結論づけている。  企業で仕事をする中での幸福度にも通ずるものがあるのではなかろうか。達成感、自信が幸福度につながるとするならば、自分(達)で考え、決定し、チャレンジすること=「自己決定」でしかそれを醸成することはできない。これが幸福度に影響を及ぼすのなら、企業においては、まず「自己決定」をする場面を提供しなくてはならない。マネジメント側が、部下に対してある程度の権限を与え、仕事に対して自己決定をする場面を与えることで、仕事を「自分事」としてとらえ、責任感を持って取り組むようにする。その先に仕事における幸福感の向上が見込めるのではないだろうか。    権限委譲はなかなかに怖いものではある。自分でやった方が気が楽だと考える心理は大いににわかる。しかし、それが仕事を抱え込むことにもつながってしまう。  弊社で実施している「360度診断」における対象者へのコメントにも「権限移譲してください」「仕事を部下に振ってください」といった内容がたびたび見られることも事実で、非効率の悪循環にもなりかねない。適切な仕事の分配を計画し、思い切って実行することで部下が責任を持ってやり遂げた先の幸福感の醸成を後押しすることが、マネジメント層の仕事の一つではないだろうか。そしてそれが非効率の悪循環を解消してくれるかもしれない。ただ、注意が必要なのは、マネジメント側はその間も適宜フォローや最終的なチェックを欠かさないことである。バランスの取れた権限委譲が幸福感の鍵である。 *1 神戸大学 Research at Kobe,「所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査」 https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html (参照: 2023-06-05)

二刀流人材 | 人材アセスメント

二刀流人材

 有名な方なので、詳細な説明をする必要はないと思いますが、投打二刀流の大リーガーの大谷翔平さんについて少しだけ説明させてください。プロフェッショナルな世界というのは、ある特定の領域を極め、研ぎ澄まされた才覚をもった人材が更なる努力を重ね、しのぎを削っております。だからこそ、その領域でトップレベルに君臨することに最大限の価値があり、賞賛されます。大谷翔平さんは、本来1つしか勝ち得ないトップレベルの領域を2つもっていることで、注目を集め、また唯一無二の存在として君臨しています。まさに「二刀流のプロ」と言えます。単純に2倍頑張れば、実現できるわけでなく、いずれも追及しつつ、相互の刀を磨きあっているかのようにさえ思えます。二刀流を実現するための技術を持っているに違いありません。  この二刀流の技術はビジネスの中でも大変参考にすべきと思います。スキルや適性などの特徴面から対極にある相容れないであろう概念を組み合わせることで、新たなる価値や相互の機能および全体の効果の最大化を果たせるのではと思います。単なる人事ローテーションやジェネラリストとは一線を画す必要があります。対極にある相容れない領域を2つ極めるという点が重要です。  最大の効用は万能さが高まる点です。人事領域おいていうならば、人事制度などのハード面の仕組みしかつくれなかった人が、組織開発など働く人と人との関係性を高め、組織を活性化させるソフト面の施策までできるようになるようなことです。守るために攻める、攻めるために守るなど、この柔軟性は魅力的であり、対極となる相容れない二つの価値観を受け入れることの謙虚さ、視野の広さ、視座の高さなども磨かれるはずです。人間性も高まるかもしれません。  失敗しがちな人事の施策の特徴として、この対極にある相容れない領域に対する取り組みのバランスの悪さがあげられます。人事システムは作ったのだが、活用ができなかった。新しいビジネスを担う人材を適切に採用はしたのだが、外部環境に転職したほうが活躍できる人材の退職勧奨ができなかったなどです。この二刀流を極めたときにこそ、真の目的を達成が最も効果的に得られるはずです。  また大切なことは役割分担ではなく二刀流人材であるということです。どうしても効率さを追求すると組織を分け、担当を分けるなど体制をとるのが一般的ではあります。ただおそらく対極にある相容れない人材どうしだからこそ、連携の難しさが生まれてしまいます。二刀流人材がたくさん存在することで、この心配はとても少なくなります。二刀流人材が行う施策は効果的であり、組織のパフォーマンスが最短で高まるということです。そしてそうそう容易には実現はできないであろう二刀流を極めるこのわくわくするチャレンジングな体験は、エンゲージメントを追求していくひとつのトレンドにさえなるかもしれません。

人の成長に必要なこと | 人材開発

人の成長に必要なこと

 皆さんは人の成長には何が必要だと思いますか。  いろいろな答えが浮かびますが、私の答えは、「様々な人と会話をすること」、「会話を通して相手の良さ、自分の良さに気づくこと」の2つです。  なぜ、その2つなのかですが、そう答えた理由は、これまでの自身の経験に基づいています。 私は30代前半で、企業人事の管理職から人事コンサルタントになりました。今でこそ、人事コンサルティング会社のシニアマネージャーという肩書で仕事をしていますが、転職間もないころは、人事コンサルタントの仕事をうまく自分のものにできずに苦しんでいました。上司からは、何度も会議室に呼び出され、「このまま成長の兆しが見えない場合は、この仕事を続けていくのは難しい、別の仕事を考えたほうが君のためだ」と、何度も言われて、途方にくれていたことをよく覚えています。  あるとき、私は東北の建設会社で人事制度見直しの提案を行う機会がありました。その当時、私の上司は多くの案件を抱えていたこともあり、私への最後のチャンスの意味も含めて、この提案を担当させたのだと思います。現地でのプレゼンテーションは、提案内容をしっかり伝えることで精一杯だったせいか、あまり印象に残っていません。しかしプレゼンテーションを終えた後、先方の社長・役員から、プレゼンテーションの内容について、質問を受けて回答したことは鮮明に覚えています。なぜなら、その受け答えについては、自分でもはっきりとこれまでとは違って自信を持って回答でき、お客様に納得いただけたという手ごたえを感じることができたからです。  なぜこのとき私は、自信をもって受け答えができたのでしょうか。  実は、この提案までに、コンサルタントとして思うような活躍ができていない状況を打破するには、どうすればよいのか、ずっと思案していました。しかし、自分だけで考えてもなかなか明快な答えはでてきません。そこで、「学校の先生は授業を通して生徒に教わる」という話を思い出し、それなら「コンサルタントはお客様との関係づくりで成長できる」のではないかと考えました。そこで、その時担当していた他のお客様と、会話をする機会を積極的に増やすことにしました。そして、お客様が望むことは何かを可能な限りキャッチアップしました。会話の際には、情報のキャッチアップだけでなく、会話自体のコントロールの仕方(話の切り出し方、会話の間の取り方、声の強さ、相手の思考を支援する質問内容、会話を今何分しているかといった時間管理等)を、意識して行ったことを覚えています。 改めて振り返ると、この活動を通して、「情報」・「思考」・「受け答え」といった、ビジネスで重要となる要素を、会話という真剣勝負の機会で鍛錬できたことが、提案後の受け答えがしっかりできた理由だと思います。  提案が終わり、空港で上司と反省会を行いました。これまでは反省会ではダメな点を指摘されることがほとんどでしたが、この時は、プレゼンテーションと受け答えについて、特に受け答えがとても素晴らしかったとほめてもらえました。私が今もコンサルタントを続けていられるのは、試行錯誤しながらも周囲との会話からコンサルタントとしてどうあるべきかを学び、実践したことと、その結果、上司にほめてもらうというポジティブなレビューを受けて、自身の強みに気づけたからです。  もう20年以上前の話になりますが、その時に感じた「受け答えの妙が自分の強みになるかもしれない」という思いを信じて、その後も継続して一つ一つの会話を大切な成長機会としてとらえ、自分の仕事の型を確立することができました。今では、お客様からどのような問いかけがあっても、およそ望ましい答えを外さないで的確に話をする自信を持っています。  私は、現在、教育研修の仕事をしています。私の研修では、これまでの自分の経験を踏まえて、研修成果を感じてもらえるように、可能な限り、受講生と直接会話をする機会を設定しています。具体的には30分~1時間ほどの時間枠を使って、受講生一人ずつと個別の面談を行っています。そこでは、会話を通じて受講生の思いの強化や、思考の整理を支援すること、本人の強みにつながる良い点は何かを、なるべく具体的に伝えることを心がけています。多くの方との個別面談は大変ですねと言われますが、当時の私のように、面談の場で伝えたことが、その人の成長につながるかもしれないと思いながら、一つ一つの面談を大事に行っています。

あきらめる傾聴 | 人材開発

あきらめる傾聴

 会社の運営のカギを握る管理職層、配下の社員たちとの良いコミュニケーションに欠かせないのが「傾聴」のスキルだと言われる。傾聴とは、単に情報を受け取るという意味で「聞く」のではなく、相手に肯定的関心を寄せ、内容の真意をはっきりさせながら、相手が伝えたいことをちゃんと理解することだ、と先生は教える。  英語では「I’m all ears(体じゅう耳)」と言うのだそうだ。先生が言うには、このスキルを使えば部下とのコミュニケーションはとても効果的なものとなり、意思疎通はより深くなり、仕事は円滑に進み、厚い信頼関係が育まれる。傾聴がうまく行われれば、話し手にも良いことがある。自分の言っていることを上手く整理できるのだそうだ。 しかし、効果的な傾聴には、それなりのテクニックが必要だ、と先生は言う。正しい傾聴を行うには、相手の言うことをいちいち解釈せず、心を空(カラ)にしてそのまま飲み込むことが必須。だから、しっかりとアイコンタクトを取り、よく頷き、時には相手の言ったことをオウム返しにし、間を見計らって、「君の言いたいことはこういうことだね」と要約してみせる。そのうちに部下のほうでは「私の言うことをよく聞いてくれる」という気分になり、より心を開いて本当のことを打ち明けてくれる。  米国のある有名企業でも、マネジメント研修の中に「傾聴訓練」というプログラムがあって、その始めのパートでは、部下のコメントをただオウム返しにする練習をするらしい。「課長、今日はちょっと体調が悪いのです…」という部下に、「それはいかんなあ、病院に行って診てもらいなさい」と答えるのは間違い。正しい反応は「そうか、体調が悪いのか…」とそのまま返すことだと先生は言う。  そうは言っても…と思う。仕事場で交わされるコミュニケーションはそんな悠長なものではない。がんばって傾聴しよう、とは思うけれど、やたらに話が長くて何がポイントだかわからない部下もいれば、こちらが尋ねることにストレートに応えない部下もいる。ある程度の落としどころを示して相手の意見を聞くと、妙に否定したり、批判したりしてくる者もいる。…腹が立つ。  仕事の締め切りが迫っていたり、いくつも電話がかかってきたり、落ち着いて話のできる状況ではない場合もある。まして、多様性が大事だと叫ばれる世の中だ。言語や文化が違っていて、何を言っているのだか、皆目わからない相手もいる。…困惑する。  そんな現実を考えると、「話はわかるけれど、傾聴など絵空事ではないか」と思う。しかし、良いコミュニケーションが必要なのは間違いない。うまくいかないたびに腹を立てたりイライラしたりして、結局こちらの言いたいことを押し付けるような会話になってしまったら、信頼関係を損ねることはあっても、厚くすることはできない。例の「心理的安全性」というのを築くことも覚束ない。  では、どうすればよいのか。おそらく、傾聴の障害はどうせ現れる、ということを、予めよく承知したうえで、コミュニケーションに当たることが大切なのだろう。話が長くて何を言っているかわからない部下がいたら、「…そうくるよね」と、日本語がカタコトで何を言っているかわからない部下がいたら、「…そりゃそうだよね」と、思う。思えば、腹が立つことはない。時間が無ければ、またの機会に話せばよい。  なんだか、傾聴などどうせうまくいかないさ、と諦めているように聞こえる。だが、調べてみると、諦める、という言葉の語源は「明らかに観る」ということだそうだ。コミュニケーションの相手の性質を客観的に観察して明らかにしながら話し合うことで、少なくとも腹を立てたりイライラしたりすることを防ぐことができる。傾聴という素晴らしいコミュニケーションスキルの出発点は、この辺りかも知れない。

あなたの会社にCLOはいるか | 人材開発

あなたの会社にCLOはいるか

 ここでいうCLOとは、Chief Legal Officer(最高法務責任者)でもなければ、Chief Learning Officer (最高人材育成責任者)でもなく、Chief Logistics Officer(最高ロジスティクス責任者)である。と説明せざるを得ないほど、CLOは言葉として知られていないし、その役職のある日本企業はほとんどない。  ロジスティクス(兵站)は、もともと軍事用語。戦争の趨勢は兵站術に左右されることは常識であり、「戦争のプロはロジスティクスを語り、戦争の素人は戦略を語る」とさえ言われる。モノを扱うビジネスにとっても同じ事情(戦争のプロ≒経営のプロ)のはずだが、多くの企業にとってロジスティクス責任者は物流サービスの発注担当者にとどまる。そうした経営意識ゆえCLOの不在が当たり前ではあったが、ここにきて急にCLO設置の「外圧」が高まってきた。  ロジスティクス環境の危機的状況が加速しているからである。来年2024年には、時間外労働時間の上限規制が、ドライバー職にも適応される。もともとロジスティクス業界は、昨今の宅配ニーズの高まりもあって物流量は増大、低賃金長時間労働が常態化し、恒常的な人手不足による将来の物流能力不足が危惧される構造だった。  そこに、時間規制により業務量が減り売上がさがる。人材確保のためには時間外勤務報酬を前提しない賃金レベルアップは必定であり、利益は減少、さらなる物流コスト増や徹底せざるを得ない効率化の取り組みは、ロジスティクス業界のみならず産業界全体のサプライチェーンを揺るがす事態となることはあきらかだ。  かくて、昨年9月より国が主導する「持続可能な物流の実現のための検討会」では、荷主企業に役員クラスの物流管理統括者(≒CLO)の選任を義務づける措置案があがっている。この検討会は、物流業者、発荷主企業、着荷主企業の三者それぞれの物流効率化へ向けての取り組み促進を目指し、その一環としてのCLOの設置は、荷主企業経営者に対する物流生産性向上の意識醸成が狙いとされる。  しかし、単に物流生産性向上のためのCLOでは、「経営のプロはロジスティクスを語る」には物足りない。そもそも、三者関係においては、一方の効率化が他方のコスト増をもたらしかねない。物流というサービスの売買である限りは、「三方よし」の追求は難しい。持続可能な物流のためには、従来の、安くて融通のきく物流サービスを使うという発注姿勢からの転換が必要なのではないか。  たとえば荷主企業は当たり前のように、出荷タイミングにあわせ待機させ、指定の時間に届けることを最優先に要求する。たとえば私たちは気軽にアマゾンで、近所のコンビニ行けば買えるような日用品をひとつ、時間指定の宅配で購入したりする。物が運ばれる/物が届けられることは、産業と生活にとって不可欠な機能であり、物流は経済社会の血脈ともいえる。だとすれば、そうした顧客の身勝手な個別ニーズ以前に、その仕組み維持と効率的使用のための社会共通の使用規則と標準手順があってもいい。  経産省と国交省が旗を振る「フィジカルインターネット」構想は、そのような社会インフラとしてのロジスティクスネットワーク、いわば公共財としてのロジスティクスへの構造転換を予感させる。インターネットとは、①情報を「パケット」に分割しそれが ②都度、さまざまな通信経路を自在に経て届き ③共通プロトコルによって各局面が制御されるしくみ。それにならって、①「コンテナ」や「パレット」といた標準化された荷単位を使い、②最適なルート(空き容量があり時間の合う輸送手段)を経て配送され、③集荷・配達・情報管理の汎用ルールによって荷主とのインターフェイスが制御されるしくみとし、ロジスティクスを社会的装置として組み立てるということだ。  となれば、荷主企業には、インターネットのようにユニバーサルなロジスティクス機能を自在に使えるリテラシーと、それを使いサプライチェーンマネジメントをどう最適化するかという戦略的意思決定が、日々問われるだろう。安く自社の都合に合わせてくれる物流業者をどう調達するかが勝負で、あとは業者任せ、ではなくて、自社のサプライチェーン戦略にあわせて、みずから柔軟に物量機能自体をどう設計し制御するかが問われてくる。さらには、個別業者のキャパシティの制約から解放されて、サプライチェーン戦略自体の自在な策定も可能になるからだ。  兵站術では、戦闘の作戦が「兵站支援限界」によって規制される方策と、戦闘に必要な兵站をなんとか用意する「作戦追随型」の方策があるとされる。国と国の戦争ではもっぱら前者が歴史的に選択されてきたが、近年のテロとの戦闘においては後者にならざるをえないらしい。ビジネスにアナロジーすれば、それはVUCA時代のロジスティクスであり、フィジカルインターネットはそれを可能にする。と考えれば、これは先行き不透明ななかでの柔軟自在なロジスティクス=攻撃的なサプライチェーンマネジメントへの機会かもしれない。  その担い手としてのCLOであれば、魅力的でチャレンジングだ。単なる物流合理化ではない、ロジスティクスの構造転換に今から主体的に与し先行してリテラシーを磨くという意味で、CLOの設置の好機なのである。

パワハラを産む「黒い大三角」を排除するために有効な360度人事評価 | 360度診断

パワハラを産む「黒い大三角」を排除するために有効な360度人事評価

●気づきで是正できるパワハラ言動  真面目な上司がついつい部下指導に力が入ってしまって、パワハラ言動に至ってしまうことはよくあるものです。特に新しくリーダーやマネジャーに昇格した上司にありがちなことかもしれません。部下の能力を底上げしてあげたい、そんな善意が背景にあったとしても、結果として、部下のモチベーションを下げ、チームのエンゲージメントを損なう指導になってしまっていたとしたら逆効果です。力みすぎによるパワハラ言動は、それが最低最悪のマネジメントであるという気づきから、改善される場合も多いでしょう。しかし一方で、気づきによって、是正が期待できない場合もあるのです。 ●黒い大三角 〜 気づきで是正できないパワハラ気質  心理学的に次の三つの要素を兼ね備えたタイプの人間は、人としていかがなものかと思える邪悪な言動を平気で行うことができると考えられています。 ・自己利益ファースト(マキャベリズム) ・異常に高い自己評価 (ナルシシズム) ・罪悪感や感情の欠如(サイコパシー) これは「黒い大三角(ダークトライアド)」と呼ばれるものです。 図表1 邪悪な性格特性:黒い大三角(ダークトライアド) 資料出所:『パワハラ上司を科学する』 津野香奈美 ちくま新書”Dark Triad” Paulhus Delroy L., Williams Kevin M. The dark triad of personality 2002  黒い大三角をもつ社員は得てして優秀で、仕事で結果を残す場合が多く、組織の中で高い評価を得ていることが多いと言われます。特に上司に対しては表の顔しか見せず、いつの間にか成果を独り占めし、踏み台にした同僚や後輩に対して何ら罪悪感を持つことはありません。そんな人間がリーダーになると巧妙に部下を追い込み、成果を独り占めし、何ら恥じることなく堂々と振る舞います。  「追い込まれ、踏み台にされる人たちの痛みを感じろ!」と言ってみても、そもそも、このタイプは人の痛みを感じないのです。「なぜいけないのですか?私は結果を出しています」と静かに微笑むことでしょう。たとえ一時的に成果が上がっても、メンバーの身体や精神が損なわれたとしたら、組織にとって好ましくはありません。結果のために手段を選ばずメンバーを追い込み、人の痛みを感じることなく、成果だけは独り占めにするリーダーやマネジャーは存在してはならないのです。  それでは気づきを促しても無駄だとすれば、どうしたらいいのでしょう?  黒い大三角タイプはそもそもリーダーやマネジャーにしてはいけないのです。プレイヤーとしては優秀であっても、リーダーやマネジャーにする際にはスクリーンをかけ、排除することがベストだといえましょう。 ●黒い大三角社員を排除するために有効な360度評価  通常の人事評価では、黒い大三角の本当の顔は見えないかもしれません。ましてや管理職アセスメントでは逆に高い得点をたたき出すかもしれません。そもそも能力は平均以上なのですから。  そこで、周囲の人たちからの評価がとても参考になります。普段の職場の振る舞いから、ふと覗かせる裏の顔は周囲のメンバーたちが一番よくわかっています。陰湿なパワハラ言動の数々や、手柄や成果を横取りされた独り占めされたというケースが浮き彫りになってくるかもしれません。表の顔しか知らない上司の評価、高すぎる自己評価(ナルシシズム)、同僚や後輩からの裏の顔の評価、これらを総合する360度評価により、黒い大三角社員の存在を浮き彫りにして、そんな特性を持った人たちを排除していくこと、少なくともリーダーやマネジャーに昇格させないことをお勧めします。

スマホレジ的DX | モチベーションサーベイ

スマホレジ的DX

 1年ほど前に、オフィス前にあるコンビニでセルフレジのシステムが導入された。 以来、そのコンビニでは、棚から商品を取って、バーコードを自分のスマホのアプリで読み込み、そのまま精算し、レジに並ぶことなく、誰とも会話する事なく店を出ている。ファミリーレストラン等でも、テーブルに設置されているタブレット端末の画面メニューを見ながら、注文をするようなシステムが導入されているが、コンビニのセルフレジは、商品を取って、代金の精算するまで、店舗のスタッフとは、まったくコンタクトせず取引が完了するので、その先を行っている。店側は、人件費削減になるし、顧客側もレジの列に並ばなくてよいし、まさに、デジタルトランスフォーメーションの代表的な例だ。  デジタルトランスフォーメーションでは、一般に、プロセスの自動化やデータ分析、クラウド移行、IOT導入など、デジタル技術の活用が前提になるが、それと組み合わせて、業務や取引プロセスを変更することで、ビジネスモデルの進化がなされる。先ほどのスマホレジの場合も、商品の代金決裁の機能の主体者を提供者からユーザーに移管させた訳である。  当社で提供している社員意識調査においても同様の効用を感じる例がある。 社員意識調査の質問項目別のポイント集計は、サーベイ対象者全員と共に、年齢別、男女別、部門別、役職別、等級別、職種別といった属性ごとのポイント集計を行っている。そうする事で、例えば、ある質問項目に対する全社員の満足度は、比較的高い結果がでているが、年齢別でみると30代、40代の社員に比べて、20代の社員が極めて低いという事がわかる。  では20代の社員だけなぜ満足度が低いのかを検討する中で、今度は、20代の特定の部門に所属している社員が他の部門と比べて低いことがわかれば、20代のなかで、特定の部門に所属している社員にターゲットを絞って固有の理由を考えればよいことになる。  こうして、年齢別X性別、年齢別X部門別、年齢別X等級別、等、様々な属性を掛け合わせて見る事で、ピンポイントの状況が把握できるので、結果として、その理由も推察しやすくなるし、対策も打ちやすくなる。当社の提供する社員意識調査では、当社で、全社のポイント集計と共に属性別のポイント集計、および、結果に対して想定される原因や想定されるソリューションを一通り提示するが、それに加えて、2つの属性の掛け合わせの集計に関しては、簡易的なダッシュボードツールも提供して、クライアントが、20代の男性、40代の課長など設定された属性の中から、ツール上で自由に選択し、その集計結果が把握できるようにしている。  こうした属性X属性の集計は、必ずしも、すべての組み合わせでやることは有効ではないし、まずは、単独の属性別での集計結果の中で、着目すべき結果に対して、原因を考察し、特定の属性X属性というクロス集計を見てみようという流れになるので、サーベイの提供者である我々が、あらかじめ一定の仮説のもとでクロス集計を行うよりも、ユーザーとしてのクライアント企業の方で、提供したダッシュボードツールを自由に使いながら、考察する方がより効果的で本質的な問題把握が可能になると考えている。  こうした機能の主体者を移管させる事が有効となる可能性は、企業内の人事部と社員の間でも十分ありうる事だろう。人事評価の過去の履歴や分布情報なども、人事が抱え込んで、分析をしようとしても、なかなかやりきれないのであれば、一定以上の管理職にデータを提供し、人事評価を行う前に、過去データを分析することで、より評価品質が向上したり、評価対象者に対する効果的な育成ポイントが見えてきたりするかもしれない。

管理職昇進を望まない社員増加は心配事ではない | スマートアセスメント®

管理職昇進を望まない社員増加は心配事ではない

 近年は労働観が多様化し、管理職になりたくないという人が増えています。厚生労働省の調査(平成30年版労働経済の分析)によれば、実に61.1%もの人が「管理職に昇進したいと思わない」と回答しており、更に直近の調査会社の結果では80%という数字も散見されます。管理職になりたくない理由として、「出世欲がない」「責任が伴う」「仕事量が増える」が上位を占めます。バブルの時代「24時間戦えますか?」というフレーズが流行り、管理職になることはキャリアにおける一つの目標であったものの、現在は誰もが出世を夢見た時代は終わり、働き方が多様化し、仕事はほどほどに、私生活の充実も重視するライフワークバランス派の増加だけでなく、専門性を突き詰めるために管理職にならない道を選ぶポジティブなキャリアを選択する社員も増えているということです。  この様な状況から、企業の人事担当者との商談で、管理職登用試験を受けない社員が増えているが他社でも同じ傾向ですか。自分が試験を受けた時は、試験を受けられなかったらどうしようと思っていたのに・・・、という場面がリピートします。  企業としては、管理職になりたくない人が今後も増えていくことを前提に人事管理を行っていく必要となるものの、一方、現状の管理職層の問題課題として、40歳前半になると管理職に昇格させてきたことで、部下無し管理職や会社貢献が希薄な管理職の扱いに苦慮している企業は少なくありません。 「2:6:2の法則」「8割を2割が生み出す“パレートの法則”」から、会社を牽引する管理職は20%が適切で、80%の社員が管理職になりたくないことは、管理職の歪な状態を見直すトリガーになり得るとも言えます。ただし、留意点としては、会社が管理職にしたい社員が管理職を目指す仕組みが整っているかです。ミスマッチを回避するために、以下のようなことを確認することをお薦めします。これが全てではないですが。 ①本人のキャリアプラン確認(入社5年・10年の節目で複数回設定) ②会社からのメッセージ(上位職から君は管理職として会社を牽引する人材だと情熱を持って伝える、情熱が欠けると意味がない) ③人事制度(キャリアプランが選択できる複線型パス、適正な評価、報酬格差等) ④能力把握の適正診断(アセスメント等) ⑤管理職候補者に絞った育成研修(社員全員の底上げでなく選抜型での育成)  働き方の多様化から、管理職昇進を望まない社員の勢いは止めることは出来ないでしょう。管理職試験を受けたくない社員がいること自体、50代の管理職は理解できないことかもしれません。この傾向を管理職の歪さ解消を中心とした組織見直しのチャンスと捉え、前向きに人事管理に向き合っていくことができれば、決して心配することではないと言えます。どの様な場面においても、プラス思考を忘れなければ、進むべき路は見えてくるものです。