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エンゲージメント向上 ~会社と従業員が離婚しないために~ | モチベーションサーベイ

エンゲージメント向上 ~会社と従業員が離婚しないために~

 「エンゲージメントの向上」に注目している企業が多いようです。エンゲージメントが向上すると企業経営にプラスの影響をもたらすと言われ、関心が寄せられています。  そもそも「エンゲージメント」とは何か。「エンゲージリング」という言葉には馴染みがありますが、これはいわゆる婚約指輪です。この場合、結婚の約束の意味で用いられています。それでは企業活動においてはどうでしょうか。会社と従業員の関係で言えば、会社は、この人はどういう人なのかを知り、一緒に仕事したいと思えるかを考えます。従業員は、就職活動の際には企業研究をし、自分が生き生きと働くことができるかどうかを検討します。それらがマッチングした時に入社が決まり、会社と従業員は結ばれ、苦楽をともにすることになります。入社は「結婚」と言ってもいいかもしれません。  ただ、残念なことに、離婚ということもあります。有名人が離婚した際の報道で「価値観の違いが原因だった」と報道されることがよくあります。結婚生活がうまくいくか、いかないかは夫婦が歩み寄り、互いの価値観を理解し、同じ方向を向いて一緒に人生を進んでいけるか否かという点が重要なのです。  これが企業と従業員の関係でも当てはまります。従業員が会社のビジョンに共感し、それに向かって組織と従業員が一体となってお互いに成長し、貢献しあえる関係、まさにこれがエンゲージメントの根幹と言えます。  組織から一方的に貢献、成長を求め、そのための機会を与えるだけでなく、従業員からも貢献したい、成長したいという意欲を見せる、つまり双方向の関係を見つめる必要があるのです。この関係性がうまく機能するときに、従業員は意欲的に生き生きと仕事に邁進し、仲間や会社に深く思い入れを持つようになるのです。  エンゲージメントが向上すると「従業員が辞めない」「生産性向上」「自らが積極的に働く」結果、業績が向上すると言われています。採用関連でも、エンゲージメントの高い組織では、たとえその会社を退職しても、退職者が転職クチコミサイトにネガティブな投稿することは、エンゲージメントが低い組織に比べて少なくなると予想されます。また、注目されているリファラル採用も、従業員が会社に対して貢献意欲があれば「この人は会社にとって力になる」と思うような人材を推薦してくれるでしょう。    このようにエンゲージメント向上は企業にとって、とても重要な観点です。注目されているのも大いに頷けます。しかし、エンゲージメント向上だけに着目していればいいわけではありません。 弊社のH Rデータ解説「労働者の就労に対する意識(年齢階層別)~時代で変わる「働く目的」、やはりお金が一番?~」 https://www.transtructure.com/hrdata/20210316/ にもあるように、労働者の大半が「お金を得るため(=金銭的報酬)」に働いているのが現実です。「給与はいらないので働かせてください!」なんて言う人はおそらく存在しないでしょう。いくら働きがいを感じ、働くことが楽しい状態であっても、給与を切り離すことはできません。エンゲージメント向上と同時に、適正な給与や福利厚生、職場環境等、組織から与えるものについても綿密に検討し、従業員を幸せにする手立てを考えることで、企業と従業員は結びつきを強め、互いの成長が図れるのではないでしょうか。

コロナ後の職場はどう変わる? 対面会議の活用案 | モチベーションサーベイ

コロナ後の職場はどう変わる? 対面会議の活用案

 コロナ渦の収束がいまだ見えぬ中ではあるが、コロナ後の働き方について人事の皆様に伺うことがある。もともとリモートワークが不可能な事業形態の会社は別として、「リモートワークと出社の組み合わせ」のハイブリッド型を志向されているというご返事が多い。原則的に職場復帰を志向しているGoogle社のような企業はむしろ少数派のようだ。  ハイブリッドの働き方を前提とすると、コミュニケーションの方法も、Web会議と対面会議の組み合わせになっていく。その時、何を対面でやり、何をWebでやるかというのは判断が悩ましい。  最後は参加者それぞれの好む方法で、というのが正解だとは思うが、それでは整理がつかないので、対面会議の位置づけを、コストと効果の観点から考えてみよう。  まず、対面コミュニケーションは今や高コストな手段と捉えられるようになった。交通費に時間、体力を使うし、頭髪から服装、匂いまで全身の「身だしなみ」に気を遣う。そうなると、対面会議はコストがかかるのだから、ここぞという場面で行おうという心理が働く。  では何が「ここぞ」という場面になるのか。効果の観点から、「対面」にできて、「Web」ではむずかしいことは何だろうか。  相互に意見を出し合う目的の発散型の会議は対面に一定の優位性があるようだ。オンライン教育の専門家から以前伺った話では、ブレインストーミングなどのクリエイティブなセッションは対面の方が向いているという。  また、情報量の豊かさという点では対面はWebより優位にある。人間は、相手の声のみならず口の動きや顔の表情も含めた複雑な情報を認知している (※)ため、お互いに多くの情報を交換したい場合は対面にした方が良い。  このような特徴を踏まえ、以下のような条件に当てはまるときは対面会議を優先してはどうだろう。   ・互いの関係性がまだそこまで近くないこと   ・テーマに関する意見が定まっておらず、さまざまな情報を交換したい場合  たとえば、初めてのお客様との商談や新しく一緒になった部下とのミーティング。これらは、コストをかけても対面で実施すべき「ここぞ」という場面ではないだろうか。 そして長年のお付き合いのある大切なお客様との定例的なミーティングは、参加の負荷が最小限に抑えられるWebミーティングが合理的ではないだろうか。  筆者は営業として日々いろいろなお客様のお話をお伺いしているが、この1年半、Webでしかお会いできていないお客様も多い。そのようなお客様には、上記の条件に従って、コロナが明けたらぜひ訪問させていただき、さまざまな情報を交換させていただきたいと願っている。 ※田中 章浩,「顔と声による情動の多感覚コミュニケーション」,Cognitive Studies, 18(3), 416-427. (Sep. 2011)

働き者と改革の不一致 | モチベーションサーベイ

働き者と改革の不一致

 「何でそんなに働くの?」と知人(男性)に聞いてみた。 「いやぁ、仕方ないよね」と彼は言う。しかしその表情は誇らしげにも見えた。  彼は企業に勤める会社員で、新入社員の頃からとにかく仕事にほとんどの時間を費やしており、中堅になった今でもその姿勢は変わらない。特に悲壮感が漂っているわけではなく、むしろ、仕事に人生を費やしている自分に誇りを持ち、楽しそうにさえ見える。まさに「働き者」だ。  働き方改革という言葉が浸透して久しいが、彼にとっては改革なんて何のそのといった風情だ。彼の会社も、働き方改革に関する何らかの施策は講じているはずである。「それなのになぜ?」と思うほど働いている彼をきっかけに考えると、そこには施策と労働者個人の噛み合わなさがあるのである。  そもそも働き方改革は、人口減少に伴う労働力不足を解消するために始まった。  先の働き者の知人の話で大きく関連するのは、長時間労働の是正であろう。 筆者の知る企業で取り組まれているこの課題の改善施策としては、ノー残業デーの導入、業務の精査からパート・アルバイトの方に可能な限り広い業務を担ってもらう、年次有給休暇の計画的付与、作業管理の徹底などがある。他にも、徹底した例だと決まった時間になるとパソコンが強制シャットダウンされるといったものもある。  こういった施策によって、長時間労働が改善されたという実例も世の中には多く存在する。しかし、全てが全てうまくいっているわけではない。それは個人の「働き方の価値観」と嚙み合っていないからだと筆者は考える。  日本の戦後高度成長期からバブル時代まで、働けば働いた分だけ見返りがあった時代に「男はとにかく仕事に全てを捧げる」という考え方が存在し、(対になるのはもちろん「女性は家庭を守る」である)そういった働き方をする男性会社員から「モーレツ社員」だとか「企業戦士」などの呼称が生まれた。そして、そういった社員を企業も求めた。 現在男性だけでなく女性も活躍し、プライベートと仕事のバランスを取った働き方が求められるようになった。働き方の価値観は非常に多様になっている。  施策と労働者個人の噛み合わなさとは、働き方改革のための施策の意図と、個人の「働き方の価値観」が一致しない事に起因する。いくら企業で改革のために新しく施策を断行したとしても、その意図と社員の価値観が一致していないと元々想定した通りに変化はしない。  社員はひとりひとり異なる考え、バックボーンを持っている。働き方に関しても同様である。みんながみんな「プライベートと仕事をしっかり両立したい」と考えているわけではないだろう。中には「自分はとにかく仕事に生き、仕事に死にたい」という思いを抱いている人もいる。そういった「とにかく仕事」という価値観や「プライベートを充実させたい」という価値観など、多様な考え方が尊重されるような組織・制度作りを加速させる必要がある。

「なくならないパワハラ」 | モチベーションサーベイ

「なくならないパワハラ」

 『2017年10月大手自動車メーカーの車両設計などを担当していた男性社員(当時28歳)が自殺した。上司から「ばか」「死んだ方がいい」などと暴言を浴びせられていたという。 遺族は2019年3月に労災を申請し、認定された。2021年4月に遺族と和解した。』 2021年6月8日付けの日本経済新聞の朝刊の記事の一部だ。  このような事例は今に始まったことではないが、ハラスメントが大きな話題として取り上げられたのは2016年の大手広告代理店での新人女性の過労自殺問題ではないだろうか。この事件は、最終的に社長の辞任にまで至った。近年では、検索エンジン企業やファーストフードチェーンストアなどの米国の大企業でもハラスメントを理由に経営幹部が解任される事例が相次いでいる。国内に目を向けても、いくつかの著名企業でハラスメントが残念な結果を招いている。  厚生労働省によれば、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は、2019年度は約8万8千件。10年で2倍に増加している。なぜ、ハラスメントに関する相談が増加し続けているのか、また中小企業に至っては、なぜ認知度すら低いままなのか。  背景のひとつは、法制化によって相談の垣根が下がったことだろうが、そのほかに、以下のことが考えられる。 ・上司の権限が強く、被害者自身が主張をためらい、取り下げてしまうケースが多いこと。 ・ハラスメントをする側は、上司やハイパフォーマーであるケースが多く、会社におけるポジションも高いので、会社側も処分できないこと。 ・中小企業の場合、社長が自らパワハラを行っている。こうなると、結局は泣き寝入りするか、退職するしかないこと。 ・現在のパワハラ防止法に罰則規制がないこと。やはり、企業や加害者に対しても罰則やペナルティーを科さないと根本的な減少には至らないだろう。  さて、冒頭の大手自動車メーカーが再発防止策の一つとして行ったことで、着目すべきことがある。約1万人の基幹・幹部職に対して、「360度評価」を実施したことである。  今回の事例の場合、被害者の男性が直属の上司から暴言を受けていたことを他の若手社員は知っていた。しかし、幹部は認識していなかった。これにより経営トップへの報告が遅れたのだ。社長は、2019年11月の報道で、初めてこの事件がパワハラと関係していたと知ったという。そこで、360度評価を実施し、水面下に隠れてしまいがちなマネジメントの弱みを、経営がしっかり把握しようとしたのだ。  このように、「360度評価」を継続的に実施することは、ハラスメント事件の発生の一つのアラームにはなり得る。上司からの一方的な人事評価や行動観察では見えなかったことが、周囲(360度)の目から見ることで、明らかになることがある。これが、当事者の気づきにつながる。その事実を今後のマネジメントとしての行動改善に生かすことが最終的に求められる。さらには単なる分析に留まらず、今後の社員の意識改革を促す施策を実施し継続することに意味がある。360度評価は応用の仕方で大きな効果をもたらすのだ。  パワハラは重大な経営問題といっても過言ではない。社員の健康や安全を守れない企業に優秀な人材は集まらないし、発展もない。人を壊してしまう会社に、人はついて来ない。経営者は、パワハラは大きな経営リスクであることの認識を新たにすべきだと思う。パワハラ撲滅のポイントは何かと聞かれたら、トップ自らが厳しい姿勢を示し、あらゆる工夫と対策を打ち続けていくことであると言いたい。

働く事の過去と未来 | モチベーションサーベイ

働く事の過去と未来

 古代ギリシャでは、労働は“卑しい”ものだった。肉体的労働ばかりか、医師や会計士などの知的労働も、奴隷が行うべきものであり、市民は、労働による苦役がない環境で、自由に思考し、生きることが望ましいとされた。「アダムとイヴが禁断の果実を食べた罰として、神が人間に苦役たる労働を課した」というキリスト教的観念と共に、ヨーロッパに「労働はできればすべきでない」という考え方が広がっていた。  その後、中世に入り、教皇や聖職者の堕落により、ローマ・カトリック教会への不信が広がる中で始まったルターやカルバンらによる宗教改革の過程で、人々の労働への価値観に大きな変化が起きた。彼らは、腐敗した教会や司祭を通じて神と向き合う事を止め、神から与えられた仕事を天職として、一生懸命励み、成功することでこそ、神の救済を得られる、と考えるようになった。  神の救済を求めて、まじめに働き、その結果として得られた利益を、神へのより大きな奉仕のため、生産の拡大へと充てて行ったため、次第に資本が蓄積され、それが近代資本主義へと発展して行ったと言うのが、20世紀初頭の社会学者のマックスウェーバーの主張である。宗教的な無欲思想に基づく勤労精神が、現代の資本主義的社会構造を築く源泉だったという事だが、その過程で、生産性や効率性を重視する合理的思想が強調されていく一方で、いつしか、神への奉仕という、本来の宗教的倫理感は色褪せ、結果として、利益の追及を優先的に考える現代的資本主義へと変化していった。  人々の崇高な倫理感が欠けたまま、暴走を始めた資本主義が、地球環境を破壊し、人々の貧富の差の拡大をもたらし、社会自体を傷つけている事に、我々もようやく気付き始めている。SDGs「Sustainable Development Goals(持続可能な開発目標)」等の新たなルールを事業経営にも持ち込み、社会全体の利益を考える企業が増えて来たり、Environment(環境)、Social(社会)、Governance(ガバナンス=企業統治)の3つの観点から企業の将来性や持続性などを分析・評価した上で、投資先(企業等)を選別する、ESG投資が若い世代を中心に注目を集めているのもその表れと言ってよいだろう。企業も人々も、単なる財務的利益を追求する従来型資本主義の軌道修正を今、はかろうとしているのだ。  こうした変化は、企業と労働者との関係も大きな影響を与えることになるはずだ。多くの企業で、近年のAIやテクノロジーの発達による従来業務の機械化・自動化に伴い、企業も人も将来、「どんな仕事を行うべきか」を模索し始めているが、こうした資本主義のトランスフォーメーションというもう一つの社会変化が、同時に進行する中では、「人がなぜ働くのか」、という根源的な問いにも同時に向き合った対応も求められているという事だ。いやはや、人事にとっては本当にチャレンジングな時代がやってきた。

組織の力を引き出すために、人間的な側面にフォーカスしよう | モチベーションサーベイ

組織の力を引き出すために、人間的な側面にフォーカスしよう

 『A社は、ほとんど異動がなく分業体制による業務の効率性を追求していたが、他社との競争に対応するために積極的なローテーションを導入。最初は異動に対する抵抗感が強く、象徴的な管理職の異動から始まり、徐々に一般社員も異動するようになった。異動者からは、「学びがあった」とその価値が周囲に広まる。部署間の理解を深めるために説明会やワークショップが開催された。複数業務経験を昇格の要件とし、毎年一定数の異動を実施。若年層から異動希望の声が上がるようになり、異動の順番待ちも発生した。積極的なローテーションにより、一部の業務効率や品質に一時的な低下が見られたが、会社は社員の能力向上を重視し、業務の標準化、業務マニュアルの整備、評価制度の見直しなど対策を講じた上で、方針を継続。入社時から異動が当たり前となり、異動経験者から未異動者への不満も生じたが、時間をかけて異動が当たり前の文化が形成された。』  この例では、少数の影響範囲から始めて、効果を感じた人から口コミを通じて変化の波は少しずつ広がっていきました。そして、新入社員に対しても同じ考え方を適用していくことで、早いスピードで適用者の比率が増え、徐々に組織全体へ浸透していきました。  しかし、ここで興味深いのは、途中から「異動しない人がずるい」というような声が大きくなり、「異動をしていない層」に対する同調圧力が強くなったことです。最初に異動の効果を感じた人は、新たな発見や自分自身が新しい何かをできるようになったことで、仕事の面白みや充実感を感じていたはずです。それが途中から、一部の層において変化していきます。制度の目的が腹落ちしていない、周囲との関係性の面から多数派でいたいなどの理由があったかもしれません。                   組織には、「ハードな側面」と「ソフトな側面」があります。組織のハードな側面とは、組織構造、制度や規則、職務内容や仕事をする上での手順などをさします。一方、ソフトな側面とは、人の意識やモチベーション、人々の関係性、リーダーシップ、組織の文化や風土などをさします。いわば、「人」や「関係性」など人間的側面です。どんなに立派な制度や精緻なルールを整備して、計画通り運用し、ハードな側面を整えても、組織のソフトな側面(人間的な側面)の影響で、当初のねらい通り、目的が達成されないことがあります。組織の力を強くするためには、両方の側面に焦点をあてて取り組むことが必要です。組織開発の先駆者であるダグラス・マグレガーは、「組織における人間的側面は重要なマネジメント課題である。」と主張しています。  人は、「いやいや仕方なしにやる」ことによっては活き活きとせず、その人が持つ力が発揮されません。自ら「面白がってやりたい」と感じた時に活き活きとし、その人らしさや力が発揮されてきます。ソフトな側面へのアプローチは、一朝一夕にはいきませんが、是非取り組みたい課題です。そしてそれは、人事領域に関わる方の仕事の面白味・充実感につながるのではないでしょうか。   以上

褒める文化がもっとあってもいい | モチベーションサーベイ

褒める文化がもっとあってもいい

 これまでのビジネス経験から、褒め上手な人は部下を育てることが上手く、かつ真の信頼関係構築に長けています。一方、褒め下手の人の下で部下は育たないと強く思っています。最近、褒め上手な人に出会わないなとふと思い、褒める文化ってもっとあっていいと思いながらキーボードを打っています。自分自身も褒められて伸ばされたと感じていますし、若い世代の人を育成するには「褒めて伸ばす」がしっくりきます。  組織の中で働く以上、人間関係を円滑にするためのコミュニケーションは欠かせません。部下の指導や同僚とのやり取りのなかで、「褒めて伸ばす」というキーワードがあります。当社が提供している「360度診断」においても「褒めて伸ばす」の設問が存在します。  「褒め言葉の3S」というものもあります。「すごいね」「さすがだね」「すばらしいね」の「3S」です。「褒める」「褒めて伸ばす」のワードが注目されることを個人的に願っています。  褒めるだけで部下が成長したら苦労しないと言う人もいるでしょう(当たり前ですが褒めるだけで成長などあり得ない)。ANAグループでは、互いの仕事のよいところを見つけたら、それをカードに記入して本人に手渡す「Good Job Card」を推進し、褒める文化を醸成していると聞いたことがあます。2001年から始められて、全社に浸透するまでには5年程の時間が必要だったようです。  「褒める文化」について、肯定派・否定派、どちらですか?私はもちろん肯定派です。誰かに褒められることにより、脳内神経伝達物質であるドーパミンが分泌され、意欲が高まることはよく知られていることです。多くの人が、恋愛・家族・子育ての中で、「褒める」ことを自然に、または意識的に行っている(きた)はずですが、仕事になると「褒め上手」な人は少ないと感じてしまいます。  管理職に「褒めて伸ばす」とのミッションを与えたとしても、褒める習慣がない人には難しいことかもしれません。前述のとおり、私は、褒め上手な人は人を育てることが上手いと強く思っています。採用が厳しくなっている中、自社内での人材育成は必至です。ANAグループのように「褒める文化」の醸成を考えることは、企業にとってプラスしかないと思います。こんな事と感じてしまうかもしれませんが、「褒める文化」には否定や拒絶とは真逆なため、今流行りの心理的安全性にも繋がるはずです。  最後に、部下を育てることが上手と思われる人の何気ない行動を2つ紹介。 ・なかなか仕事内容で褒めることができない相手に対しては、「いつもありがとう」「いつも助かっているよ」と伝えている<「アクノリッジメント」(存在承認)>。 ・挨拶にプラス一言を上手く使える。朝であれば、「おはようプラス(例)昨日の提案GOODだ ったよ」。挨拶ひとつで相手の印象は変わります。 以上

幸福感を感じる方法 部下に幸福感を持ってもらうには | モチベーションサーベイ

幸福感を感じる方法 部下に幸福感を持ってもらうには

 「最近さ、私の幸せって何だろうって考えたんだよね。」 先日、美容室に行った際、私の髪をブローしながら担当美容師がこんなことを話し出した。もう10年以上もお付き合いのある間柄なので、たまにプライベートな話もするが、なんとも難しい話題である。ここからの話の展開次第では、非常に気まずくなる。そんなことを一瞬ぐるぐると考えていると、こう続いた。 「いま独立して自分で好きなようにやれて、これで十分幸せだなって結論になったの。」あぁ、暗い話じゃないんだ、よかったと思っていると、髪の毛はつやつやになっていた。  担当美容師は、最近独立し、自分が吟味して選んだカラー剤やトリートメントを使い、シャンプーからカット、カラーまですべて一人でこなす。自分で全てを決定し、試行錯誤しながらも楽しんで経営をしている。そのスタイルが非常に合っているらしい。  「幸福感」について、2018年に神戸大学社会システムイノベーションセンターの西村和雄特命教授と同志社大学経済学研究科の八木匡教授が行った国内2万人に対するアンケート調査の結果(*1)、幸福感に強い影響を与えているのは、健康、人間関係に次いで、所得、学歴よりも、「自己決定」であるという研究結果を発表した。自己決定は所得、学歴よりも影響度が大きいという結果である。  この調査では、自己決定度を評価するにあたっては、「中学から高校への進学」、「高校から大学への進学」、「初めての就職」について、自分の意思で進学する大学や就職する企業を決めたか否かを尋ねているとのことだが、「自らの判断で努力することで目的を達成する可能性が高くなり、また、成果に対しても責任と誇りを持ちやすくなることから、達成感や自尊心により幸福感が高まることにつながっていると考えられる」と結論づけている。  企業で仕事をする中での幸福度にも通ずるものがあるのではなかろうか。達成感、自信が幸福度につながるとするならば、自分(達)で考え、決定し、チャレンジすること=「自己決定」でしかそれを醸成することはできない。これが幸福度に影響を及ぼすのなら、企業においては、まず「自己決定」をする場面を提供しなくてはならない。マネジメント側が、部下に対してある程度の権限を与え、仕事に対して自己決定をする場面を与えることで、仕事を「自分事」としてとらえ、責任感を持って取り組むようにする。その先に仕事における幸福感の向上が見込めるのではないだろうか。    権限委譲はなかなかに怖いものではある。自分でやった方が気が楽だと考える心理は大いににわかる。しかし、それが仕事を抱え込むことにもつながってしまう。  弊社で実施している「360度診断」における対象者へのコメントにも「権限移譲してください」「仕事を部下に振ってください」といった内容がたびたび見られることも事実で、非効率の悪循環にもなりかねない。適切な仕事の分配を計画し、思い切って実行することで部下が責任を持ってやり遂げた先の幸福感の醸成を後押しすることが、マネジメント層の仕事の一つではないだろうか。そしてそれが非効率の悪循環を解消してくれるかもしれない。ただ、注意が必要なのは、マネジメント側はその間も適宜フォローや最終的なチェックを欠かさないことである。バランスの取れた権限委譲が幸福感の鍵である。 *1 神戸大学 Research at Kobe,「所得や学歴より「自己決定」が幸福度を上げる 2万人を調査」 https://www.kobe-u.ac.jp/research_at_kobe/NEWS/news/2018_08_30_01.html (参照: 2023-06-05)

人材獲得競争を勝ち抜くために<br />~調査結果を使ったアピール~ | 人事アナリシスレポート®

人材獲得競争を勝ち抜くために~調査結果を使ったアピール~

 多くの会社で人が足りない、しかし中途採用が難しいとお伺いする。 帝国データバンクの調査では、外食産業と情報システムを筆頭に、半数以上の企業が正社員不足と回答しているように(人手不足に対する企業の動向調査(2023年7月) | TDB景気動向オンライン (tdb-di.com))まさに人材獲得競争が企業の成長に大きな影響を及ぼしかねない状況である。  弊社は採用支援自体は行っていないが、制度設計やモチベーションサーベイ等のさまざまなプロジェクトを通じて、魅力ある組織・人事制度の実現をご支援している。「社員さんの活力を引き出す制度にしたい」「社員さんが満足する組織にしたい」といった人事の皆様の想いを日々受け止める立場から見ると、人事品質の向上に向けた営みは採用における会社の魅力となるはずと強く思っている。  ここでは、転職希望者向きのサイト等で紹介されている「採用条件のチェックポイント」の代表的な項目に沿って、どんな点がアピールポイントになるか考えてみたい。貴社において、使えそうなデータはあるだろうか? ■給料  貴社の賃金が採用上の競合(地域・業種)と比較してどのような水準にあるか?  同等もしくは上回る処遇であればすでにアピールされているだろうが、仮に、候補者の年齢層ではあまり差がなくても、「中高年になると市場を上回る」などの事実はないだろうか?  処遇に関しては、月給と賞与割合も注目したい。賞与割合を高めにしている企業の場合、候補者からすると、どのくらい確実に賞与が支給されるのか大変気になる。平均支給月数だけでなく、分布で実際にその額をもらっている社員の割合などを示すことが安心感につながるのではないか。 ■勤務地 転勤を伴う異動がある事業の場合、転勤関連の施策の充実ぶりもアピールポイントになる。 「エリア限定社員制度」は、転勤を望まない候補者に魅力的である。全国区で活躍してほしい候補者を確保するうえでは、たとえば転勤者向けのハードシップ手当などが魅力となる。 ■昇給昇格の仕組み 貴社において、社員の昇進昇格のスピードは中途採用と生え抜き社員で変わりないだろうか? スピードが同じであれば、「うちは新卒・中途に関わりなく活躍できますよ」というアピールポイントになる。中途入社者へのサポート施策(キャリア面談や研修等)も併せて紹介すると、成長志向の高い候補者に響くのではないだろうか。 ■ワークライフバランスや福利厚生、働きやすさ さまざまな福利厚生や働きやすさの施策を用意していても、採用面接で細かく説明する時間がない場合は、「社員満足度調査をやっている」「モチベーションサーベイの結果の社員説明会をやる」など、調査の実施そのものをアピールしてはいかがだろうか。 パーフェクトな良い結果でなくても、たとえば「満足度の高い点ベスト3」「近年改善した点3つ」などの切り口で見ていただくとどうだろうか?  上でご紹介した「賃金水準」や「昇進昇格スピード」「社員満足度」等は、弊社の定量分析やモチベーションサーベイ等で実施している内容だが、コンセプトは上記の通りなので、社内でも分析できるものはある。ぜひ、現状分析を通じて自社の強み、魅力を視える化し、人材獲得におけるアピールにつなげていただければと思う。

社員アンケートに真剣に答えてもらうには | モチベーションサーベイ

社員アンケートに真剣に答えてもらうには

 「社内アンケート」と聞いて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?モチベーションサーベイ、パルスサーベイ、ストレスチェック、職場環境調査、360度診断…一口に「アンケート」といっても社内で実施するアンケートとして、様々なものが存在します。  弊社でも「モチベーションサーベイ(社員満足度調査)」「360度診断」は調査分析のサービスとして提供しています。このところ着目していることとしては、はたして回答者である社員のみなさんはどのような気持ちでアンケートに答え、捉えているのか?ということです。 アンケートに対して負担を感じている、面倒くさいと思っている、期待している、本音を伝えるチャンスと思っている…様々な捉え方があるでしょう。アンケートを実施するのならば、本音で、忖度なく回答してもらう必要があります。そのためには、アンケートを実施する側の姿勢や投げかけがとにかく重要なポイントだと思うのです。  なぜアンケートを取るのかというと、「社員からの声を拾い上げ、それらを反映させて会社をよくするため」。シンプルにまとめればこういうことではないでしょうか。今後の会社の発展のために、会社の様々な環境、仕組み、業務を整え、さらに成果をあげてもらう、その検討材料としてアンケートは実施されます。果たしてその意図、目的が回答者に正しく、熱意を持って伝えているでしょうか。 また、よくあるアンケートに関するご相談としては、「アンケートは実施したが、結果を放置」「結果を経営陣や担当部署のみに限定して社員にオープンにできていない」というものがあります。せっかくアンケートを取ったとしても、その結果を使って会社として何をするのかがわからないようなアンケートは答える側としては答えたくありません。忙しい中を縫って回答時間を捻出するのならば、自分が答えた内容が返ってくることを人間は求めるでしょう。毎年実施していたとしても、結果のフィードバックもなければ次は答えたくなくなります。  それでは、期待を持って、前向きにアンケートに取り組んでもらうには、どうすればいいでしょうか。 最後に以下の3点にまとめます。 ①アンケートの意図、目的を明確に回答者に伝える 初めが肝心ということです。回答開始前に、なぜこのアンケートが実施されるのか、そして結果をどのように活用し、どのように開示するのかを明確に伝える必要があります。方法はメールや、イントラ、各組織長からメンバーに落としてもらうなど様々な方法が考えられます。もっとも効果があると考えられるのは、アンケートを管轄する担当者、または経営層から直接言葉で伝えることだと思います。本気で取り組む姿勢と言葉は期待感を醸成させることでしょう。会社規模などで可能、不可能はあると思いますが、アンケート前に各拠点を回って説明会を実施するような例もあります。 ②すべて解決はできなくても、優先順位を付けてアンケート結果を踏まえた施策を実施する とにかくアンケート結果を放置しないことです。アンケート項目が多い場合、しかも多く課題が見つかってしまった場合、どこから手をつけるべきかわからず放置してしまうことがあるかもしれません。優先順位をつけ、何から取り組むのかをはっきりさせて少しずつでも進んでいくことで、アンケートの意味が出てきます。社員はそれを見て、答えた結果が反映される実感を持ち、「答え損」という気持ちは無くなるはずです。 ③結果は社員に開示する 自分の会社の仲間はどういう意識なのか知ってもらうことは重要です。開示する粒度は様々ですが、大きく集計した結果だけでも開示することで、会社がオープンに見せてくれるという意識になり、また、結果から業務改善に取り組む人も出る可能性もあります。特に、組織長、管理職レベルには、自身の組織の結果をしっかり開示し、それを受けて組織内で取り組むべきことなどを検討してもらうのは重要です。アンケートを実施したのが人事部だとしたらば、「アンケート結果を見て動くのは人事部でしょ」という意識は排除させるべきです。自分事として受け取る仕組みを作ることです。

いいわけ文化がイノベーションを阻害する | モチベーションサーベイ

いいわけ文化がイノベーションを阻害する

 新製品や新サービスが次々に生まれる会社と、何か閉塞感のある会社は何が違うのだろうか。 数多くの企業研修に立ち会わせていただいていて分かったことがある。言い訳が多い会社では新商品は生まれにくい。  「忙しいから」「上が決められないから」「若手が育っていないから」「予算が厳しいから」そんな言葉が飛び交っている会社は要注意だ。  いやいや、成功している会社は時間や予算に余裕があって、素晴らしい経営陣と主体的に動いてくれる若手がいるんでしょう?と思うかもしれない。でもちょっと待ってほしい。そこで思考停止に陥るかどうかが分かれ道だ。  言い訳が多い会社の特徴として、管理職が「部下に失敗をさせないこと」に注力している点が挙げられる。きちんとマネジメントをすべく、きっちり計画を立て、分からないことがあれば親切に教えてあげる。部下に過重労働させるわけにはいかないから自分が誰よりも働く。誰よりも頑張っているからこそ、何か問題が起きたときに上司に叱られるのは理不尽に感じる。「自分はしっかり仕事していたのに」「自分は悪くないのに」と考えてしまう。  上司に「なぜ失敗したんだ?同じ失敗を繰り返すな」と注意をされた部下はもうチャレンジをすることはない。「上司に文句を言われないように仕事をする」スタイルになっていく。 きちんとマネジメントすることが悪いのではない。ただし全てのことを失敗しないように進めようとするのは危険だ。確実に成功するチャレンジなどない。失敗のリスクがあることこそがチャレンジと言えるのだ。  チャレンジを推奨する文化がある会社では、失敗が起きたときに「誰が悪いのか」は焦点にならない。だから言い訳をする必要もない。周りの人は失敗を責めるのではなく、どうにか自分が手助けできないかと考える。失敗を失敗で終わらせない。その失敗から学んだことをどのように活かし、次のチャレンジに繋げるかが重視される。失敗したときに周りが助けてくれた、失敗を乗り越えて成功をつかんだ経験を持つ人は強い。次のチャレンジも迷うことはない。  若手がチャレンジしないことを嘆くよりも、まずは自分から、そして周りの人の行動を変えることから始めるべきだ。

ノーレイティングの時代は来るか | モチベーションサーベイ

ノーレイティングの時代は来るか

 先日、アメリカ企業に20年勤めていた知人が日本に戻り、日本企業に転職した際に人事評価にまだMBOを使用していることにびっくりしたという話を聞きました。  このMBO(Management by Objectives and Self Control)は、アメリカの経営学者ピーター・ドラッカーによって提唱され、日本に上陸したのは意外と古く1960~70年代と言われています。その後1990年代から多くの企業で導入され現在も広く使用されていますので、もう30年程度使用されていることになります。また現在、日本で導入されているコンピテンシー評価もアメリカ発祥の手法です。  これは人事評価やパフォーマンス評価の一環として使用され、社員の強みや改善のポイントを特定し、組織全体の目標達成に貢献するために役立つものとして使用されています。  前出の知人によると、アメリカでは人事評価そのものが廃止されていて、それは2010年頃からの動きとのこと。それまでは、社員個々の成果(業績)に基づき、事実ベースで評価を行い、結果に報酬を結びつけるというものが主流でした。ただ、現在の業務遂行においては多種多様なスキルが必要なことや、目に見える成果(業績)だけで判断することが難しくなってきたことが挙げられ、人事評価を撤廃する動きが急となったそうです。  人事評価を撤廃?と聞くと人事評価を行うことをやめたのかと思う方もいるかもしれませんが、人材や企業の成長を促すうえで、評価を行うこと自体をやめることはできません。人事評価をやめるというのは、人材に点数やランク付けをやめるということです。  本来、人事評価は社員のモチベーションを上げ、成長意欲や会社への貢献度を上げていくための人材育成ツールであるにもかかわらず、評価点数やランクが思ったより低く、逆にモチベーション低下を招いてしまったなんてことがあるのです。    そこで、アメリカでは「ノーレイティング」という手法に切り替えた企業が多く、GoogleやMicrosoft、Adobeをはじめ、有名な大手企業も取り入れています。  ノーレイティングは点数で評価を行うのではなく、目標に至るまでの行動内容、どのように目標を達成したのか、目標の見直しは行われたのかといったことも含め「面談」をこまめに行うことで人事評価を行います。また、ノーレイティングは行動改善なども評価の対象とするため、チームのコミュニケーションが取れ、改善するべき点が浮かび上がりやすくなります。また、業務遂行中にフィードバックなどを行うことにより、年度末にまとめて行っていた評価者の負担も軽減といったメリットもあります。  ここまでの流れでいうと、日本にはアメリカの人事評価の手法を取り入れる傾向が顕著で、今後日本でも人事評価がなくなっていくのかと思うかもしれません。しかし、今の日本で人事評価をすぐに撤廃することは難しいでしょう。日本では、アメリカですでに多くの企業が行っているタレントマネジメントが浸透しきっていないことが挙げられます。  日本企業は伝統的な組織文化を持っており、ヒエラルキーが強調され、社員のスキルや成果を評価するといった文化があります。このような文化では、タレントマネジメントが十分に評価されず、個人の成長と適材適所の配置に焦点を当てるのが難しいのです。  ノーレイティングは、数値評価や従来の評価スケールに頼らず、社員の個々の成長と発展に焦点を当てます。タレントマネジメントは、社員のスキルやキャリアの目標を明確にし、それを支援するためのプランを策定するプロセスです。これを組み合わせることで、社員の成長をより効果的に促進できるのです。  タレントマネジメントを導入するには、社内の現場や部門・部署を超えての連携が不可欠となります。そのため、タレントマネジメントが行き届いてからでないと人事評価を廃止・簡易化するのは難しいのではないでしょうか。  ただ、日本でもグローバルなビジネス環境の変化や若年層の価値観の変化により、タレントマネジメントの重要性が認識されつつあり、いくつかの企業では取り組みが進んでいます。何年後かには導入が進み、タレントマネジメントが当たり前の企業が増え、ノーレイティングを前向きに導入する時代が来るのかもしれません。 以上