今求められる「リーダーシップスタイル」
ピラミッド構造組織の中でもがいている指揮命令型のリーダーは、仕事を任せられる部下がいない、部下が育たない、時間がないと言う。結果、リーダーは猛烈に働かなければいけないものだと思い込んでいる。リーダーシップスタイルとは、ひとりの相手とどの様な形で協力するかということで、部下のパフォーマンスに影響を与えようとするとき、どの様に指導・行動するか、それが相手からどう見えるかが重要になる。多様性が求められる今後、指揮命令型、協調型でもなく、相手によって対応を変えることができるリーダーが求められている。
スポーツ界には、ビジネスにおいて参考になるリーダーがたくさん存在する。
青山学院大学陸上競技部・男子長距離ブロック・原晋監督。箱根駅伝の出走経験はなく、大学OBではなかったが、ある人の推薦で、2004年に中国電力(自称、伝説の営業マンとの事)を退職の後、監督に就任。当初の条件は3年契約の嘱託職員であった。「箱根駅伝に3年で出場、5年でシード権、10年で優勝争い」と宣言したため、就任3年目の2006年の第82回箱根駅伝予選会での16位惨敗に、大学幹部から「話が違う」と責められ、監督解任、長距離部門廃部寸前になった時期もあったそうだ。
原監督の組織の作りでは、人を育て、組織を鍛え、成功を呼び込む勝利への哲学を大切にされている。人を育てる領域で参考になるポイントをいくつか挙げてみる。
・減点方式ではなく加点方式で前向きに評価する。
・失敗から学ばせるのではなく、小さな成功体験で成長させる。
・自分の思いを監督に自由に言える雰囲気を作る。
・チームのビジョンではなくその子のビジョンも伝える。
・最後は感性や表情豊かな選手が伸びる。
その他、参考になる「魂の語録」は枚挙に暇がない。
監督就任当初の陸上部の組織レベルは低く、監督命令型での組織作りから始まり、次は主将に指示を出す、大筋の方針だけを提示する、そして現在は、選手を観察してヒントだけを与える最終系のサポート型となり、組織としては成熟期に入っている。初期の監督命令型からサポート型に至るまで、紆余曲折ある道のりだったと思うが、多くの部員を抱える中で選手の能力や性格などを考慮し、相手によって対応(マネジメント)を変えている事がうかがえた。それは今求められる「状況対応型リーダー」と一致する。相手によってマネジメントスタイルを変えることは大変なことではあるが、その姿勢は必ず相手に伝わり、強い信頼関係が生まれることを疑わない。3年目の監督解任が検討された時、監督継続を懇願したのは部員たちだった。
指揮命令型、協調型のリーダーシップを活かして成果に結びつけてきた人が大半でしょう。誰にも自分の型がある。ただし、時代の変化とともに変えるべきところが出てくることは当然のことだ。何事においても、これまでの継続では何も変わらないと、皆が知っているものの行動ができていない。自分のリーダーシップスタイルは、部下からどう見えているかを確認することをお薦めする。私自身も、状況対応型リーダーシップスタイルが出来ているか自問自答し、最適な組織構築に繋げるよう取り組んでいるところである。
その他、スポーツ界で注目しているチームがある。
JリーグFC町田ゼルビア。2018年に株式会社サイバーエージェントが経営権を取得(2022年に藤田晋氏が社長兼CEOに就任)。2022年の成績は、J2で15位。2023年に青森山田高校サッカー部総監督の黒田剛氏が監督に就任。選手補強があったもののJ2優勝。そして、J1に昇格した2024年現在、驚くことにJ1首位キープ。町田ゼルビアの戦略に興味を抱いてしまう。関連書籍が出版されたら迷わず購入したい。
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