給与情報の公開レベル
コンサルティングをしていると、企業間で、人事上のポリシーに、大きな隔たりがある事を時々、感じさせられる。たとえば、社員の給与や評価結果を社内でどこまで公開するのかという事も、その一つだ。評価結果は、大変、個人的なものであり、ラインの上司と人事部しか知るべきものではなく、他部門であれば、役員クラスでも、公開されないという考え方を持つ企業もあれば、管理職以上であれば、自分の所属階層以下の社員の評価結果については、だれでもアクセス可能で、むしろ積極的に部門間どうしで、評価に対して意見を求めあい、より適正な評価を行っていこうという企業もある。
給与額についても同様で、法的な観点もあり、さすがに、一人ひとりの給与明細を社員全員に公開しているところはあまり見かけないが、人事制度で決められた各等級の給与レンジや賞与額決定ロジックや月数を社員に公開していて、役割やポジションにより、おおよその給与水準が推測可能にしている企業もあれば、給与レンジに加え、誰がどの等級であるかという事さえ、本人以外には、一切、公開していないという企業まである。
このように、処遇に関する情報開示ポリシーは企業により様々であるが、給与額情報をある程度、積極的に公開していこうと考えている企業が、今、徐々に増えているように感じる。その目的は、どんなパフォーマンスや役割を担えば、いくらの給与が期待できるのかを社員に明示する事で、給与支給の透明性が高まり、社員のより高いパフォーマンスを引き出すことにある。他人と比べた自分の給与状況を知らされると、より熱心に働き、業績を伸ばしたという研究結果もあるようだ。また、給与の透明性を高めることで、男女間での給与格差是正にもよい影響が期待できるという声も聞く。
一方、いままで、給与レンジや賞与額決定ロジックを公開してこなかったのは、社員に対して、なぜ、その給与額や賞与額になったのかをうまく説明することができないという理由によるところが多い。給与情報の公開をすることで、適切で合理的な給与・賞与決定メカニズムへ整備を促進していこうと、経営や人事が、一歩、前進していこうとする意思の表れでもある。
そもそも、企業サイドがいくら、給与情報を秘密にしようとしても、社員間で給与明細を見せ合うことまで、止めることはできないし、最近では、匿名で社員や元社員が、給与情報を提供して、ネット上で、かなり具体的な月収や手当額まで、わかってしまう時代である。こうした大きな流れに対抗して、企業サイドで、情報を制御していくことはますます難しくなっていくだろう。社会の情報開示のトレンドが進行する中で、社員のパフォーマンス向上や優秀な社員の獲得・維持のために、給与情報や決定メカニズムの公開がより進んでいくことになるだろう。
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