歴史から学ぶ、人事の未来 ―生成AI時代に生き残る人事とは
― 第1回|維新により侍が立たされた岐路と、人事の現在地
目次
なぜ歴史を振り返るのか
ご存知の通り、生成AIはすでに多くの現場で広がり始めています。
数年前は試験的な利用にとどまっていたものが、今では特にホワイトカラー職種の領域では大きな変革の兆しとなっています。
ただし、技術の浸透により業務の効率化は進みつつありますが、意思決定の仕方や役割の捉え方といった、深い行動様式の抜本的な変容は簡単ではないと思われます。理由は「リスクを取ってまで大きく変える段階ではない」と考える伝統的な日本企業の特性でもある、強い慣性が働くと考えられるからです。
この姿は歴史の一場面において、ある観点によっては重なります。
明治維新のころ、武士は刀という役割の象徴を手放し、新しい役割を模索せざるを得ませんでした。もちろん、明治維新と現代の技術普及は背景も構造も異なる現象です。維新は武士を含む体制内部が急速に制度を転換したものであり、生成AIの普及は人々の選択の積み重ねによる側面が大きいといえます。
それでも「変化に直面したときに人がどう分岐するのか」という観点では、両者に通じるものがあると考えることができます。
私たちは今、第4次産業革命の中核とされる生成AIがキャズムを越えて社会全体に広がろうとする変化の過程にあります。
歴史を振り返る意味は、変化の時代に現れる「人の行動」を知り、自身に引き寄せることにあると考えます。
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維新に揺れる侍の選択
長きにわたり「治安の維持と戦の担い手」として社会の中心にいた武士は、明治政府の改革によってその基盤を根底から揺さぶられます。廃藩置県(1871年)による藩の解体、秩禄処分(1876年)による家禄の公債化、そして廃刀令(1876年)による帯刀禁止。わずか数年の間に、武士は誇りや役割の象徴を手放し、士族という新たな身分に再編されました。
その後の進路は多様でした。教育や官界で新しい役割を担った士族もいれば、新産業に挑戦した士族、開拓に従事して生活基盤を築いた士族もいました。一方で、新しい役割を見いだせず、生活が安定しなかった士族も少なくありません。つまり、同じ士族であっても、新たな役割を再定義して活躍した者がいれば、移行が難しかった者やリスキリングの努力が十分に実を結ばなかった者もいたと考えられます。
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人事にとっての「刀」とは何か
そこで、現代の人事にとっての刀は何か?と考えてみると、「人的資本経営に基づき、経営と現場をつなぐ象徴」と言いたいところですが、実情は残念ながら「膨大なオペレーション業務」になってしまうかもしれません。求人票の作成や面接調整、研修資料の作成や受講管理、勤怠・就業管理や規程運用、さらに経営層向けの会議資料作成や部門間の調整などに日々追われ、人事自身が選んで刀を振るってきたのではなく、組織から“オペレーション部門”として位置付けられ、意図せず刀を握らされてきた構造がそこにあります。確かにこうした業務は会社運営に欠かせないものですが、日常を埋め尽くすことで、人事が本来向き合うべき課題を後景に追いやってきました。そしてその状況に「仕方がない」とあきらめの声も多く聞きます。
しかし、ここにきて生成AIは、この刀をおろす契機を与えています。かつての士族が刀に代わる役割を模索したように、人事もまた“調整とルーティン”を超えて、本来の使命に立ち返る可能性が拓けています。
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歴史が投げかける問い
明治の士族の歩みは、時代の変化にどう応えるかという普遍の問いを映し出しています。進路は人によって大きく異なりましたが、その差を生んだのは能力や境遇だけではなく、「変化をどう受け止め、どのような問いを立てたか」にもあったのではないでしょうか。多様な軌跡は、時代が人に迫る問いと、それにどう応えるかの違いを示しています。
現代の人事に対して歴史が映し出すのは、人事がこれからどのように役割を再定義し未来を描いていくか、と考えることも出来るでしょう。
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※本稿は2回シリーズの第1回です。第2回では生成AI時代に、人事がどのように未来を切り拓くのかを展望していきます。
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