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column

「辞めない」だけじゃない、従業員の真の定着を探る

従業員の定着の本質とは

 人口減少とそれに伴う労働市場の採用競争の激化を背景に、多くの企業で人材の定着が喫緊の課題となっています。私は100~1000名規模の企業を中心に組織人事コンサルティングを行っていますが、「定着率を上げたい」というご相談が増加しています。しかし「定着」といっても、単に「従業員が辞めない状態」なのが望ましいわけではありません。会社にとって従業員は採用するのも解雇するのも簡単ではありませんから、「従業員が長期間、高い意欲を持って業務に精励している状態」が定着の本質であると言えます。

社員意識調査データから見えてきた定着のカギ

当社が実施している社員意識調査の分析結果の中で、総合満足度と勤続意向(社員が今後もその会社で働いていきたいという意欲)がともに高い水準にある企業があります。
 「総合満足度」は高い意欲に、「勤続意向」は長期間の勤務志向に対応しており、この両方が高いということは、冒頭で述べた定着の本質を実現している企業と言えます。それぞれ業種業界・企業規模・男女の構成比等はバラバラですが、「総合満足度」「勤続意向」に対して統計的に有意な影響を示した要因を抽出すると、特徴的な共通点があることが分かっています。 

  1. 満足度を高める要因
  • 会社への信頼と誇り
  • 仕事のやりがい・主体性の尊重
  • 成果や努力の承認
  • 良好な職場環境と上司との関係性
  1. 勤続意向を高める要因
  • 良好な人間関係(満足度と共通)
  • キャリア形成支援の充実
  • 適切な人事異動
  • 労働環境の整備
  • 公正な昇進・昇格・昇給制度
  • 役割に見合った仕事の配分

 とくに興味深いのは、01.満足度の要因と02.勤続意向の要因では影響する因子が若干異なる点です。満足度には「やりがい」や「承認」といった心理的要素が強く影響する一方、勤続意向には「公正な評価」や「キャリア支援」といった雇用関係における実利的な要素がより強く影響しています。
 
 一方、定着率の低い企業では、次のような課題がよく見受けられます。

  • 人事評価制度が機能していない
  • 管理職の育成不足
  • 部下の成長支援やフィードバックの欠如

このような企業の中には、管理職自身が日々の業務に追われ、部下のキャリア支援や評価に十分な時間を割けないケースが目立ちます。人員不足による管理職の現場業務過多が、従業員のモチベーション低下や職場のコミュニケーション悪化に繋がり、定着率の低下を招くという悪循環に陥っていることもあります。

定着促進のためにHOWよりWHYを問う

従業員の定着に影響する要因について様々お話ししましたが、これら全てに対処するのは非現実的です。また、企業の経営環境や組織運営の文脈によって各要因の影響の濃淡も変わってくるでしょう。限られたリソースで自社に効果的な施策を打つためには、何をするか(HOW)よりも何が原因か(WHY)を突き止め、理論的に正しい施策を打つことが必要です。そこで、社員の意識調査と合わせて、客観的データを用いた調査・分析による「組織の健康診断」で自社の課題を適切に把握することが重要です。

具体的なチェックポイントとしては例えば以下の項目が代表的です。

  • 給与水準:同業・同規模企業と比較して適正な水準か
  • 労働分配率:自社の数年間の推移や業界平均と比較して適正な水準か
  • 管理職と一般職の給与バランス:給与の逆転現象が起きていないか
  • 管理職の育成状況:360度診断などによる客観評価

 ちなみに、360度診断で高いスコアを記録している管理職が多い会社は従業員定着率も高い傾向にあることが分かっています。これは上司だけでなく、同僚や部下、他部署など、複数の関係者の意見を元に評価とフィードバックを行うもので、管理職の成長機会の提供にとても有効です。

 定着率向上は一朝一夕に実現するものではありませんが、様々な原因(WHY)の中から自社の「問題の重心」を正確に把握し、的を絞った施策を継続することで、確実に成果を上げることができます。まずは組織の健康状態を客観的に診断することから始めてみてはいかがでしょうか。

 

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