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「日本庭園と組織構造」                   ―石の位置を変えると、すべてが変わる話 | 人事制度

「日本庭園と組織構造」                   ―石の位置を変えると、すべてが変わる話

京都・龍安寺の石庭には、15個の石が一度にすべて見えないように配置されているという。 どこから見ても、必ず一つの石が「見えない」。 だがそれが逆に、庭に「奥行き」と「想像」を生む。そこに日本庭園の深さがある。 これは、組織構造にも似ている。 人事制度や組織設計を考えるとき、つい「完全な構造」「欠けのない制度」を目指したくなる。 でも、本当に人が活きる組織には、どこか「見えない石」がある。 すべてが説明できるわけではないが、なぜかうまく機能する。 そういう「余白」こそが、組織に深みと呼吸を与えるのではないだろうか。   人事の仕事をしていると、構造設計に対する「誤解」によく出会う。 「要員を増やしたら回るでしょ」 「とりあえずポジションをつくろう」 「課長が多すぎるから減らせばいい」 これらは部屋の間取りだけで家の快適さを決めようとするようなものだ。本当に大事なのは、 「どこに」「どんな人を」「どう配置するか」。 つまり、石庭でいえば「石をどこに置くか」である。   庭園の美しさは、石の個数ではなく、「石と石の間にある空間」で決まる。 それは組織でも同じだ。 例えば―― ・優秀な部下を、上司が「活かしきれない」構造 ・部門間に「壁」がある構造 ・中堅社員が「漂流」する構造 これはすべて、「配置の失敗」だ。 どれも石そのものではなく、「置き方」の問題である。 逆に、全体が生き生きと動く組織は、「余白」がある。 役職に意味があり、立ち位置に物語があり、個のスキルに応じた「置かれ方」がある。 それはまるで、絶妙な間隔で置かれた庭の石のようだ。   そして、もう一つ忘れてはならないのが「視点」だ。 庭をどう見るかは、立つ場所によって変わる。 同じ配置でも、視座が変われば、石の意味も変わる。 組織でも、上層部から見た構造と、現場社員から見た構造は別物だ。 役割や階層を「機能」として配置したつもりでも、現場から見れば「障壁」になっていることもある。 だからこそ、人事の仕事には「複数の視座」が欠かせない。   私たちはしばしば「人が足りない」という声を聞く。 だが、それは「石が足りない」問題ではなく、「石をどう置くか」の問題かもしれない。 一人ひとりの社員は、石そのもの。動かせば、見える景色が変わる。 構造改革とは、「石の総入れ替え」ではない。 一つの石を3センチずらすことで、全体の見え方が変わることがある。 それが人事の「設計力」だ。 人をただ「足す」のではなく、「活かす」。 その視点を持てるかどうかで、組織の風景はまるで違うものになる。 そして何より、人をどう配置するかは、単なるオペレーションではない。 その人をどう活かしたいかという、組織の意思の現れでもある。   石は、ただ置かれているのではない。 そこには、誰かの「意思」が宿っている。 だからこそ、組織設計には、美学と哲学が必要なのだ。 人をどう置くか。それは、人をどう見ているか、の表明でもある。  

組織文化こそが、企業の“実行力”を決める | 人事制度

組織文化こそが、企業の“実行力”を決める

いま、多くの経営者や人事責任者が直面しているのは、「制度は変えたのに、行動が変わらない」という現実だ。理念を掲げ、人事制度を改定し、変革の旗を立てても、社員の行動が旧来のままでは成果は出ない。合理的には正しいのに実行が伴わない──その背景には、往々にして「組織文化」という見えない壁がある。 戦略がコモディティ化した時代、企業の差は“実行力”で決まる。短期的にはポジショニングや施策で優位を築けても、中長期的には実行力の強さが持続的な競争力となる。その実行力の源泉こそが、組織文化である。 モチベーションを高めるスローガンやキャッチコピーではなく、社員一人ひとりの心理の奥底に根づき、行動を生み出す“心理的エンジン”としての文化が、組織能力を競争優位へと高める鍵となる。 文化は、単なる「雰囲気」や「仲の良さ」ではない。シャインが示したように、それは組織の伝統や経験が刷り込まれ、儀式やシンボルを通じて共有され、最終的に社員の“無意識の前提”となるものである。 強い文化を持つ組織は、外部から見ても独自の個性が際立っている。一方、どこにでもあるような働き方が自然に行われているなら、その文化は弱い。強い文化ほど、社員にとって「当たり前」となり、もはや意識に上らない。だからこそ、社外の第三者からどう見えるかを診断することが重要だ。 よく混同される「組織風土」との違いも押さえておきたい。風土は、組織の心理的な基盤──活気がある、閉鎖的であるなど、良し悪しで語られる“土壌”である。 一方、文化はその上に根づいた価値観や行動様式であり、「良し悪し」ではなく「その会社らしさ」を形づくるものだ。風土が土壌なら、文化はそこに刻まれた“行動のDNA”に近い。 経営変革や人事制度の改定が機能しないケースでは、この文化の存在を軽視していることが多い。どんな施策も、最終的には「社員一人ひとりの行動が変わるかどうか」に行き着く。 だが、今の文化を診断せずに制度だけを変えれば、「言っていることは合理的だが、動かない」という現象が起こる。 まさに「仏作って魂入れず」だ。最も見落とされがちなのは、組織の最小単位である“上司と部下の関係性”である。そこに根づく行動の型こそが、組織文化そのものであり、行動変容の起点となる。 文化を変えるには、まず「現状の文化が何を是としているか」を把握し、そのうえで「変革後にどんな文化を浸透させたいのか」を描く必要がある。強い文化を持つ組織ほど抵抗も強い。 したがって、制度や施策を変えるのと同時に、文化をどう変化させるのかをマネジメントする必要がある。抵抗は必ず生じるため、変化を意図的に起こし、抵抗を最小限に抑え、社員の行動変容を導くことが有効である。 文化は、毎日の行動の積み重ねによってしか変わらない。キャッチフレーズを飾るより、社員が“自然にとる行動”が変わったとき、文化は動き出す。そして、その変化が実行力となって、企業を強くしていく。   出典:「エドガー・シャイン『組織文化とリーダーシップ』(原著タイトル: Organizational Culture and Leadership)」  

「ポスト真実(post-truth)」時代における“切り札”としての人事 | 人事コンサルティング

「ポスト真実(post-truth)」時代における“切り札”としての人事

トランプ大統領の発言をめぐる一連の真偽論争に象徴されるように、最近は「事実」そのものよりも“刺さる言葉”が先に拡散し、SNSでは切り取られた動画や断片的な体験談が瞬時に印象を決める。 生成AIの普及は、もっともらしい文章や画像を大量に生み出し、真偽を確かめる前に感情が先に走る場面も増えた。我々は今、いわゆる「ポスト真実(post-truth)」という時代の中にいる。   事実は消えないが、事実に基づいた意思決定の前提となる“信頼”あるいは“共通の理解”がぐらついてしまっている。拡散されたフェイクを後から訂正しても、人々の印象はなかなか更新されない。一次情報を出しても「都合のよい説明」と疑われる。 こうした状況は企業経営にも及ぶ。社外にとどまらず、経営と社員、社員間といった組織内でも『信頼を獲得するためのコスト』が増大している。   この“ポスト真実”の時代に、企業経営としてどう対処していくべきか。まずは、自社の“制度(ルール)”をしっかりと固めていかなければならない。 社会や組織の繁栄を左右するのは制度である。法の支配が弱く、人々を搾取する社会は、成長や“より良い変化”を生みにくく、ルールが守られる社会においては、投資・蓄積・革新が進みやすい。 2024年ノーベル経済学賞を受賞したダロン・アセモグル、サイモン・ジョンソン、ジェームズ・ロビンソンは、このように、国の繁栄にとって社会制度の重要性を長年の研究で示し続けてきた。   法の支配が不十分で、搾取を許容する社会は、成長や良い変化を生み出さないことと同様に、ポスト真実の環境下では、社員が安心して挑戦できる制度の整備が不可欠である。例えば、人事制度は、人と組織が安心して協力し、挑戦するための“土台”ともいえる。「法の支配」を形づくる経営インフラとしての人事制度を整備することは、組織内の信頼コストを下げる最も現実的な手段になる。   同時に重要なのは、制度運用の在り方である。経営方針と人事制度の設計方針にギャップが生じてくると、運用での裁量に依存するようになる。逆に、人事制度の運用方針がぐらついていると、せっかく設計した制度も形骸化し、「結局、上司次第だ」という“不信”が組織内に蔓延していく。   “ポスト真実”の時代だからこそ、「人事制度は建前で実態は別」という不信が拡散し、組織は内向きの消耗へ向かってしまうリスクには敏感になるべきだろう。   さらにもう一つ、ポスト真実(post-truth)時代に特に重要になるのが、人材サーベイ・アセスメントの活用だ。評判や印象が先行しやすい環境では、「あの人は優秀」「向いていない」といった物語が人の評価や配置を左右しがちである。だからこそ、我々は主観に依存せず、何を能力と呼ぶかの定義、どう測り比較するかの測定、成果や成長と結びつくかの妥当性、人が変わっても同じ判断になる再現性――といった人材の“測定力”を磨き続けたい。制度が立派でも測定が弱ければ、運用は社員の語る“物語”に飲み込まれてしまう。   ポスト真実(post-truth)時代において、日本企業が組織の“信用のインフラ”として人事力を高めることの意義は大きい。優秀人材の採用・定着、社員の挑戦機会の創出、意思決定の迅速化など、広範な領域に効果が及ぶ可能性がある。信頼コストが高まりやすい環境下では、制度の整備と運用の一貫性、そして人事を測る力の向上が、組織の競争力を左右する重要な変数となる。  

「ヤノマミ族に人事制度はあるのか?」            ―文化人類学が教える、“制度より強いもの”の話 | 人事制度

「ヤノマミ族に人事制度はあるのか?」            ―文化人類学が教える、“制度より強いもの”の話

「ヤノマミ族に人事制度はあるのか?」 そう問われると、多くの人は「あるわけないだろう」と思うかもしれない。評価シートも等級もない。給与テーブルなんて、森のどこも探しても見つからない。 だが、文化人類学の目で見れば、彼らにもちゃんと「役割」と「格」がある。狩猟が得意な者は獲物をもたらす者としての敬意を受け、長老の言葉は自然と集落に影響力をもたらす。 明文化はされていないが、誰がどこに座るか、誰が口を開くか、すべて「見えないルール」に支配されている。 組織にもこの「見えない制度」がある。それを、われわれは「組織文化」と呼ぶ。 制度が正しく設計されていても、なぜかうまく機能しない。 評価制度を刷新しても、「結局、声の大きい人が昇格するよね」という空気があれば、どんな制度も張りぼてに終わる。 それは制度の問題ではない。文化に飲み込まれているのだ。 制度とは「骨格」だが、文化は「血流」のようなもの。 どんなに立派な骨格でも、血が通っていなければ動かない。 しかも、やっかいなことにこの文化は「制度より古く」「制度より根強く」「制度より見えない」。 つまり、人事担当者にとって、最も手強い敵であり、最も心強い味方にもなる。 文化人類学者のクロード・レヴィ=ストロースは、部族社会を「構造」の視点で読み解いた。 彼が見抜いたのは、「人間の集団には、制度がなくても“秩序”が生まれる」ということ。 この秩序こそが、“文化”だ。 では、企業における「文化の秩序」とは何か。 ・部下が“正論”より“上司の顔色”を読む職場 ・「制度はあるけど、みんな空気で昇進が決まる」組織 ・「自由な発言を歓迎します」と言いながら、提案すると煙たがられる会議体 これらはすべて、「制度」と「文化」の不一致から生じる「文化的ノイズ」だ。 人事制度は設計できる。だが文化は設計できない。 だから、制度を文化に「なじませる」しかない。 例えば、評価制度を導入するときには、制度説明会よりも先に、「なぜこの制度ができたか」という物語を語る必要がある。 異動ルール(配置転換・ジョブローテーションなど)を変えるなら、まずは身近な成功体験を可視化することが大事だ。 つまり、制度は「論理」でつくるが、文化は「感情」で染み込ませるものなのだ。 企業とは、ある意味「都市化された部族」である。 その組織に制度を導入するとは、近代化のプロセスに他ならない。 だが、それが機能するかどうかは、文化という見えない力をどう扱うかにかかっている。 人事は「設計者」である前に、文化の「翻訳者」でもある。 制度をつくるたび、私たちは「見えない部族の掟」と向き合っているのかもしれない。   ※ヤノマミ族:ブラジルとベネズエラにまたがるアマゾンの熱帯雨林に住む先住民族      

マネジメントのミスマッチを防ぐには? 管理職の昇格試験の改善ポイントを解説 | スマートアセスメント®

マネジメントのミスマッチを防ぐには? 管理職の昇格試験の改善ポイントを解説

多くの企業で「マネジメントに向いていない人がマネージャーになっている」いわゆる管理職のミスマッチ問題が存在しています。優秀なプレイヤーを管理職に昇格させても、管理職として成果を出す人もいれば、管理職としての役割を果たせない人もいます。 どうすればマネジメントのミスマッチを防ぐことができるのでしょうか。 重要なのは、管理職の昇格試験の段階で、「管理職として期待される行動が発揮できるか」を見極めることです。本記事では、マネジメントのミスマッチを防ぐために、昇格試験の改善ポイントを解説します。 目次 1.管理職の昇格試験とは 2.管理職の昇格試験の目的 3.管理職昇格試験の内容詳細 4.まとめ 1.管理職の昇格試験とは 社員が管理職の昇格を希望するときに、昇格要件を満たしているかを判断するプロセスを指して「管理職の昇格試験」としています。後述するように、「試験」といっても、テストとは限らず、面接、模擬演習、360度評価など、さまざまな手法が存在します。 このように多様な評価手法が存在する理由は、管理職昇格判断の難しさを示しています。通常、管理職の候補となる人材とは、メンバー時代から業績や貢献が認められて昇格しています。ところが、管理職になったとたんに、マネジメントという新しい業務を任されることになります。 マネジメントができるかどうかは、プレイヤーとしての評価からは判断がつかないため、人事評価とは別軸のプロセスで見極めを行う必要があるのです。 2.管理職の昇格試験の目的 管理職の昇格試験の目的は、会社が管理職に期待する能力・行動を発揮できるかを見極めることにあります。期待する能力・行動で共通性の高いものとしては、たとえば以下が挙げられます: 対人能力・コミュニケーション 意思決定・問題解決力 適応力・ストレス耐性 情熱・達成意欲 経営的な視点。 これらの共通項をおさえつつも、何を重視するのかという「めりはり」は、会社によって、また事業や組織のステージによって変わってくるものです。 組織連携の細やかさに競争力の源泉のある会社であれば、「対人能力・コミュニケーション」とりわけ「仕事の目的や詳細を丁寧に説明する」という行動が重要かもしれません。接客や小売業のなかには、ストレス耐性を重視する職場もあります。 研究開発部門の管理職は領域に関する研究実績、IT事業であれば領域の資格等級などの「専門性」が必要とすることもあります。 まず、「わが社の管理職に求める能力・行動は何か」を明確にすることが、管理職の昇格試験を改善する第一歩です。 3.管理職の昇格試験の内容詳細 「管理職に求める行動・能力」を特定したら、それを評価するのに適した手法を採用することが、次に重要です。 以下は筆者の独断による、目的と手法のマッチング例です。 横軸が期待される行動・能力、縦軸が手法例で、とても適しているを◎、適しているを〇、可能であるを△にしています。また運用によって適否が変わるものは()に入れています。   対人能力・コミュニケーション 意思決定・問題解決力 適応力・ストレス耐性 情熱・達成意欲 経営的な視点 高い専門性 筆記試験         〇 〇 人材アセスメント(インバスケット)   〇 △ △ 〇   模擬プロジェクト 〇 〇 〇 〇 〇 (〇) 360度診断 ◎   〇 〇     小論文       ◎ ◎ (〇) 役員面接       ◎ ◎   このような整理を使うと、わが社に必要な管理職の昇格試験のセットが見えてくるはずです。いくつかの事例をご紹介しましょう。 例1:目標達成型チーム運営の管理職 (営業組織など) 現場の管理職に求められること: ー自組織で達成すべき目標とその意味合いをしっかりと理解する ー部下にブレイクダウンした目標を伝え、声掛けや励ましで鼓舞する ーチームを盛り上げ、あきらめず取り組む 診断手法と見極めのポイント: ー360度評価⇒ 対人コミュニケーション力の発揮度合い ー小論文⇒ 自分の言葉でビジョンを語る力の発揮度合い ー役員面接⇒ 真摯さ、やる気のプレゼンテーション力の発揮度合い 例2:現場における創造性の発揮を重視する自律型組織 現場の管理職に求められること: ー指示待ちではなく高い目標に向かって課題解決に取り組む ー失敗や多様性を許容する心理的安全性の高い職場風土の醸成 ー部分最適に陥らず全体最適で意思決定を行う 診断手法と見極めのポイント: ー360度評価⇒ ハラスメント行動がないこと ー筆記試験⇒ 経営や論理思考の基本スキルの発揮度合い ー人材アセスメント⇒ 課題解決力、意思決定力の発揮度合い 例3:研究開発リーダー  現場の管理職に求められること: ー研究開発のロードマップに基づく研究テーマを設定する ーメンバーの自律性・情熱を尊重しつつ、進捗管理を行う ーコミュニケーションを活性化する 診断手法と見極めのポイント: ー経営提案(アクションラーニング研修※)とピアフィードバック⇒ 論理性、巻き込み力、影響力、コミュニケーション力 ー人材アセスメント⇒ 課題解決力、意思決定力の発揮度合い ※他部門メンバーと協働し、事業・部門課題に対する施策提案を作成し経営にプレゼンテーションする長期研修 まとめ 管理職のミスマッチが生じているなら、管理職昇格試験を見直しましょう。ポイントは2つです。 ・目的=「わが社の管理職に求める行動・能力」を明確化すること ・目的に適した手法を選び、多角的に見極めること 管理職昇格試験の内容は、広く共通的な要素もありますが、同時に、会社や事業のステージによってめりはりが異なるものです。わが社に、今、どのような管理職を求めているのかを分析していくプロセスこそが、基準の明確化や適切な見極めにつながります。 管理職は、現場の要であり、業績の成長と人材の成長を担う存在です。管理職の質向上をめざすには、まず入口となる、管理職の昇格試験から見直してみてはいかがでしょうか。 参考 [誰を昇格させるか](https://www.transtructure.com/column/hr-management/p5986/) [管理職昇格試験では遅すぎる](https://www.transtructure.com/column/search/smart-assessment/p6287/)  [昇格試験をWEB化して公平性と即戦力化を実現~階層別テストを活用した事例](https//www.insource.co.jp/ihl/251027_assessment_hierarchy_test.html)  [管理職登用試験の方法やポイント|論文例や問題例を紹介](https//etudes.jp/blog/management-promotion-examination)  [昇進・昇格試験に関する導入事例](https//www.noma.co.jp/case/promotion_test/)  [昇格選考における論文評定の分析(Recruit Management Solutions)](https//www.recruit-ms.co.jp/research/essay/pdf/2004jaas01.pdf) トランストラクチャのWebで完結する人材アセスメント「スマートアセスメント」ご紹介

イノベーション人材育成のコラム

イノベーション人材とは?定義と特徴、育成するポイントをご紹介

目次 - はじめに――人事が イノベーション人材の育成に取り組む理由 - イノベーション人材とは? - イノベーション人材の定義 - イノベーション人材を育成するポイント --イノベーション適性のある人材の特定 --イノベーション人材の育成施策例 - まとめ はじめに――人事が イノベーション人材の育成に取り組む理由 企業が成長する上で、イノベーションは不可欠です。 従来より、イノベーションは事業・組織のあらゆる場面で創出され、求められてきました。経済学者ヨーゼフ・シュンペーターはイノベーションを対象別に5つに分類しました。その5つ(新製品開発/新生産方法の導入/新しい市場の開拓/サプライチェーンの開発/組織の改革)は、組織のほぼすべての機能に関連するものです。 人事が「イノベーション」に向き合う時、実際には2つの難しさがあります。 ・人材ニーズの多様性と個別性 「どの現場に、何ができる人材が求められているのか」の幅が広く個別性が高いこと ・中途採用の競争性 IT人材だけをとっても慢性的に不足しており、人がすぐ採れないこと この記事では、このような「人材ニーズ」「調達」の二つの難所に対して、イノベーション人材を社内で発見し、育成する手法で解決することを提案します。ご参考になれば幸いです。 イノベーション人材とは? 世の中の定義は多様ですが、主に以下のように分類・整理できます。 段階別分類 「自走型人材」/「プロジェクト型人材」/「新事業開発人材」など 役割やスキルに基づく分類 「アイデアを出す人材」/「事業を成長させる人材」 「技術タイプ」「企画タイプ」「管理タイプ」など 能力・特徴別分類 分析力・課題抽出力/コミュニケーションスキル/協調性/問題解決能力/ 指導力/忍耐力・胆力/情熱・意欲・モチベーションなど これらの定義は、自社の状況や目的に対して使いやすそうかという視点で選ぶことがおすすめです。 イノベーション人材の定義 本記事では、読者は「イノベーション人材を育成する」課題に取り組む人事を想定し、「保有能力」「役割」の2つの軸でイノベーション人材を定義することをご提案します。 <保有能力>の視点で見ると、自社の人材(や、これから採用する人材)が保有しているイノベーション人材に適した能力は何か、強みを強化し、不足を補うにはどうすればよいか、を考えやすくなります。 <役割>の視点で見ると、イノベーションは「チーム戦」で、多様なタイプの人材が連携して成し遂げるものという前提を置いて、自社の人材(や、これから採用する人材)に多いのはどのような役割タイプか、不足しているのはどのタイプかを把握し、育成したり、バランスに配慮した配置を行いやすくなります。 具体的に、育成に使いやすいと思われる<保有能力>(イノベーション適性)と<役割>の定義例を上げます。ご覧になれば分かりますが、独自の定義というより、過去に上げられているイノベーション人材の定義と重なるものです。 <保有能力(イノベーション適性)> 新しいことを始める力 組織で取り組む力 面白がる力 <役割> Driver=過去の常識や前提にとらわれないアイデアモンスター Explorer=実現の難しいアイデアほど燃えあがるファンタジスタ Designer=走りながら仕組化するウルトラプロフェッショナル Crew=未知の世界、予期せぬ事態を楽しむパーティメンバーイノベーション ここでのポイントは、「保有能力」と「役割」の2つの視点のかけ合わせです。保有能力だけに注目すると、単一のスキル開発に施策が留まりがちなところ、役割の視点を入れることで、その能力を組織でどのように発揮するのかというイメージが付けやすくなり、人事・育成者・育成される人材の間で育成の目的が明確化しやすくなることがメリットです。 イノベーション人材を育成するポイント イノベーション人材の育成は、単なる研修だけでなく、適性のある人材の特定と実践的な経験の提供が不可欠です。 イノベーション適性のある人材を特定すること 現場で見極められれば信頼性は高いですが、イノベーション適性は、日常業務では発揮しにくい可能性があります。そこで、第三者によって診断する適性検査やアセスメントも有効です。手法としては3つあります。 ①行動から思考力を「推察」する(=シミュレーション演習によるアセスメントセンター方式で思考力ディメンションに注目する) ②過去の経験から思考力を「判定」する(=インタビュー・アセスメントによる定性的に診断する) ③思考力そのものを「評定」する(=正解のない問いに対する回答を評定する) ポイントは、第三者の診断だけに頼るのではなく、多元的評価(行動データ、360度、過去の探索行動、ミニ実験課題での観察)と組み合わせることです。また、実務でのトライアル(社内ベンチャー応募・スプリント参加)などを適性検証の一部に組み込むこともよいでしょう。 イノベーション人材の育成施策例 イノベーション人材を発見することで育成が可能になります。 育成施策は、単発の研修や適性検査にとどまらず、イノベーションを阻害する組織構造や管理システムの課題を克服することが不可欠です。ここからは、「組織論的アプローチ」と「人事管理的アプローチ」の2軸で育成施策例をご紹介します。 ●イノベーションを阻害する階層型分業型組織の克服(組織論的アプローチ) 階層型で分業が固定化された組織は、情報のサイロ化や意思決定の遅延を招き、イノベーションの推進を阻害します。これを克服するためには、組織の柔軟性を高め、部門間の壁を取り払うことが重要です。 <施策例> クロスファンクショナルチームの設置による部門横断的な協働促進 フラットな組織構造への移行や権限委譲の推進 社内ベンチャー制度やイノベーションラボの設立による新規事業創出の場の提供 これらの施策は、例えばトヨタ自動車の「カイゼン活動」や、楽天の「イノベーションラボ」などで実践されており、組織の硬直性を打破しイノベーションを促進しています。 ●管理システムの克服(人事管理的アプローチ) 階層型分業組織の管理システムは、評価基準や昇進制度がリスク回避的であったり、権限移譲が不明確であったりすることが多く、イノベーションを阻害します。人事制度(等級制度や評価制度)を見直し、たとえば複線型人事制度を導入することでよりイノベーションに適した環境にすることは可能です。 育成でアプローチする場合の一例は、イノベーターのレベル別に次世代リーダーを育成する施策です。 <施策例> 開発部門人材・新規事業開発人材 新規事業をテーマとした実務伴走型・プロジェクト型の育成が有効です。また、育成施策だけでなくジョブローテーションや外部研修派遣、社内起業支援制度、業務時間の一部を新規挑戦に充てる「10%ルール」など、硬直的な人事管理を変える多様な施策を組み合わせている事例も見られます。 VUCAリーダー(経営・管理職) イノベーション適性の高いマネジメント=VUCAリーダーの存在は事業・組織の変革に不可欠です。VUCAリーダーを育成するには中長期的なプログラムで、 ・「自分らしさ」の確立 ・傾聴・共感・コミュニケーション力の向上 ・先見力・概念化力の育成 ・意思決定力・行動力の強化 などを強化することが有効です。集合研修(ワークショップ・ロールプレイ)と実践を繰り返し、イノベーション適性の発揮の度合いを高めていきます。 若手人材 組織の在籍期間が短いほど、イノベーション適性は高いスコアを出すという調査結果が存在します。組織に埋没する前の若手のうちから、未知の世界や予期せぬ事態を楽しみながら挑戦する「クルー」の能力を育成します。コニカミノルタの2年目人材が新入社員人材を教えるIT研修などもユニークな取り組みです。 まとめ 皆様の会社では、イノベーションに成功していますか? イノベーション人材は足りていますか? イノベーション人材がどこに必要なのか、どのような能力が求められているのかわからないまま、「イノベーション研修」の企画を行っていませんか? 打ち手を検討する前に、まずは自社人材の「保有能力」と「役割」のレベルを棚卸してはいかがでしょうか。誰を、どのように「育成」するべきか、結果が示してくれるはずです。 <参考> ・【Consulactionセミナー】成長を促す、イノベーション・ドライバー 革新的な人材とプロジェクトを生み出すための仕組みづくりとは? |博報堂WEBマガジン センタードット ・イノベーション人材とは?必要スキルと社内で育成する方法 | 記事一覧 | 法人のお客さま | PERSOL(パーソル)グループ ・イノベーション人材とは?意味や採用・育成方法を解説 ・イノベーション人材~重要性と特徴・育成方法を解説 | 社員のエンゲージメント向上を支援する 株式会社 NTT HumanEX ・イノベーターズ・ディスカバリー|イノベーション人材発見は㈱トランストラクチャ ・イノベーション人材をどう発見するか|コラム|株式会社トランストラクチャ(東京都) ・“未来のイノベーター” を採用で見極めるには?

服従的AI利用が生む「考えない組織」 | 人材開発

服従的AI利用が生む「考えない組織」

 「AIがそう言っていたので」といった言葉がよく聞かれるようになった。  口に出さない者も少なくないだろうから、私たちは既に考える機会の多くをAIに委ねているのだろう。  多くの企業にとってAIを前提とした業務設計は喫緊の課題であるが、誤ったAIの利用により「考えない組織」が生まれようとしている。  AIは人の思考を支援し生産性を高めるが、一方で人が適切に判断するスキルを劣化させるリスクを伴っている。2025年に報告されたポーランドの大腸内視鏡検査の観察研究では、AI支援を日常的に使用していた医師がAIなしで検査を行った場合、腺腫発見率が28%から22%に低下したと報告している(※1)。  また、AI支援下で業務を行う専門家は、AI未使用時に自力判断の精度が落ちる傾向があることが指摘されている(※2)。  これらはAIへの依存がスキル劣化を引き起こすことを示した実例だ。  現場の社員がAIを利用する動機の多くは、「的確に対応したい」、「誤りたくない」、といった善意からのものだ。その結果、AIを”正解保証装置”として扱い、自身の思考を放棄することにつながってしまっている。AIを活用しているつもりが実はAIに完全依存しているのだ。  この「服従的AI依存」は、いま企業が直面しているAI時代の新たな人事課題と言えるだろう。極端な例を挙げると、業務効率や業務量のウェイトが高い評価基準のもとでは、“考えないほうが得”な行動様式が定着するリスクがある。評価や教育の設計を誤ればこういった傾向を助長しかねない。  この「思考」の欠如により、組織の「判断」は容易に機能不全に陥る。AIのアウトプットは一見するともっともらしく、筋が通っているように見えるからだ。  AIを意思決定支援に利用する際は、正解を提示する推薦者(Recommender)としてではなく、あえて異論を唱える反論的役割(Devil’s Advocate)として使う方が利用者の判断精度を維持・向上できるとされている(※3)。  また、未知の課題に取り組む際など、自身のスタンスが確立していない場面では、AIに案を出させ、それに対して人間が批判的思考を重ねることで、AIの提案が自身のスタンスへと昇華される。AI依存を防ぐために必要なのは、AIをどう使うかのスキル教育ではない。思考を再設計することだ。  AIに「どうすればいいか」を問うのではなく、「本当にそれでいいのか」「他の視点はないか」を人間とAIが互いに問いを投げかけ合うこと。提案を否定・修正・再構築する双方向の批判的思考を通じて、判断力を維持・向上する。さらに、重要な判断や対外発信に関わる場面では、人間によるレビューを必須とするなど、リスクに応じたチェック体制も必要だ。こうした仕組みを維持するためには、評価制度の見直しも欠かせない。成果の品質やスピードだけでなく、「どう理解し、どう判断したか」というプロセスを可視化する力や説明力を評価項目に加え、思考を放棄しない姿勢を評価することも重要になるだろう。  AIに服従的な社員は決して怠慢なのではなく、むしろ慎重で責任感が強い。だからこそ、上司はその善意を理解し、適切なフィードバックやフォローを行うことが重要だ。AIの提案は十分に信頼できるものであるが、それは人間とAI相互の批判的思考を経たものに限られる。社員がAIの出力を検証し、自らの判断で補強できるよう導くことで思考停止から脱却できるのである。AIを活用する文化と、思考をAIに依存しない文化は両立させなければならない。AIをどう使うか、どう活かすかだけではなく、AIとどう考えるか、がこれからの競争力になる。  AIがすさまじいスピードで進化する現在、経営と人事はAIとどう向き合い、いかに『考える組織』をつくるか、を設計するフェーズに入っている。   参考文献 ※1:K. Budzyń et al., “Endoscopist deskilling risk after exposure to artificial intelligence in colonoscopy”, The Lancet Gastroenterology & Hepatology, 2025 ※2:G. Romeo & D. Conti, “Exploring automation bias in human–AI collaboration”, AI & Society, 2025 ※3:S. Ma et al., “Beyond Recommender: An Exploratory Study of the Effects of Different AI Roles in AI-Assisted Decision Making”, arXiv, 2024  

大谷翔平はいない。でも勝ち筋はある───自社に必要な人事戦略 | 人事制度

大谷翔平はいない。でも勝ち筋はある───自社に必要な人事戦略

大谷翔平のような存在がいれば、チームの戦い方は一気に広がる。投げても打っても結果を出せるスター選手がいれば、監督は思い切った作戦を組むことができる。 けれど、現実にはそんな選手がいないチームが圧倒的に多い。だからといって勝てないわけではない。 むしろ、自分たちの選手をどう生かすかを工夫することで、そのチームならではの勝ち筋をつくることができる。 名将の戦術をそのまま真似してもうまくいかないのは、自分たちに合ったやり方を考える必要があるからだ。サッカーでも野球でも、同じフォーメーションや作戦は別のチームでは機能しない。 結局のところ、勝ち筋はチームごとに異なる。企業経営も同じだ。他社を真似たスローガンや人事制度を持ってきても成果が出ないのは、「自社の勝ち筋=固有解」が他社とは違うからだ。 だからこそ、まず現状を診断する必要がある。 目の前に見えている現象に振り回されず、なぜその問題が自社で起きているのかを分析する。そして「全部やる」ではなく、「この課題に集中する」と決める。 これが固有解を見つけるプロセスだ。固有解とは、経営成果や競争優位に直結する人事課題を見つけ出し、そこに人やお金といった経営資源を集中的に投下することである。 よくある誤りは、「立派な理念の言葉」や「短期の数字目標」から制度をつくってしまうことだ。 制度を整えても社員の行動が変わらなければ成果にはつながらない。 重要なのは「何を変えるのか」を見極めることだ。経営課題の中には「放置すれば会社の存続に関わるもの」と「成長のブレーキになっているもの」が混在している。 その中から本当に取り組むべき課題を選び出し、今の会社の体力で現実的に解決できるかどうかを見極める。ここに限られたリソースを戦略的に集中させることが求められる。 押さえるべきポイントは明確だ。課題は必ず原因まで掘り下げること。全員を平等に扱うのではなく、会社の成長に直結する層や行動を選んで投資すること。 制度改定には必ず抵抗が起きる。だが、それは変化が本物である証拠だ。恐れる必要はない。 経営が「ここに集中する」と腹をくくって旗を振り、幹部や現場の管理職がそれを自分の言葉で社員に伝える。 この両方がそろって初めて変革は動き出す。 そして制度は必ず硬直化する。だからこそ有効期限を設け、定期的に見直すことが不可欠だ。 人事制度はあくまで手段にすぎない。 価値があるのは「何のためにつくり、どんな行動を生み出すか」である。完全な正解は存在しない。矛盾や摩擦を抱えながらも、比較的うまく運用していくことが現実的な理想だ。 企業が成長するために必要なのは、自社に合った固有解を見つけ、それを人事制度に落とし込み、社員の行動を経営目標に結びつけること。それこそが他社には真似できない競争優位を築き、成長を続けるための人事戦略である。 自社にだからこそできるのは、大企業にはないスピード感と柔軟さで制度を見直し、自社に合った勝ち筋を磨き続けることだ。

「辞めない」だけじゃない、従業員の真の定着を探る | モチベーションサーベイ

「辞めない」だけじゃない、従業員の真の定着を探る

従業員の定着の本質とは  人口減少とそれに伴う労働市場の採用競争の激化を背景に、多くの企業で人材の定着が喫緊の課題となっています。私は100~1000名規模の企業を中心に組織人事コンサルティングを行っていますが、「定着率を上げたい」というご相談が増加しています。しかし「定着」といっても、単に「従業員が辞めない状態」なのが望ましいわけではありません。会社にとって従業員は採用するのも解雇するのも簡単ではありませんから、「従業員が長期間、高い意欲を持って業務に精励している状態」が定着の本質であると言えます。 社員意識調査データから見えてきた定着のカギ 当社が実施している社員意識調査の分析結果の中で、総合満足度と勤続意向(社員が今後もその会社で働いていきたいという意欲)がともに高い水準にある企業があります。  「総合満足度」は高い意欲に、「勤続意向」は長期間の勤務志向に対応しており、この両方が高いということは、冒頭で述べた定着の本質を実現している企業と言えます。それぞれ業種業界・企業規模・男女の構成比等はバラバラですが、「総合満足度」「勤続意向」に対して統計的に有意な影響を示した要因を抽出すると、特徴的な共通点があることが分かっています。  満足度を高める要因 会社への信頼と誇り 仕事のやりがい・主体性の尊重 成果や努力の承認 良好な職場環境と上司との関係性 勤続意向を高める要因 良好な人間関係(満足度と共通) キャリア形成支援の充実 適切な人事異動 労働環境の整備 公正な昇進・昇格・昇給制度 役割に見合った仕事の配分  とくに興味深いのは、01.満足度の要因と02.勤続意向の要因では影響する因子が若干異なる点です。満足度には「やりがい」や「承認」といった心理的要素が強く影響する一方、勤続意向には「公正な評価」や「キャリア支援」といった雇用関係における実利的な要素がより強く影響しています。    一方、定着率の低い企業では、次のような課題がよく見受けられます。 人事評価制度が機能していない 管理職の育成不足 部下の成長支援やフィードバックの欠如 このような企業の中には、管理職自身が日々の業務に追われ、部下のキャリア支援や評価に十分な時間を割けないケースが目立ちます。人員不足による管理職の現場業務過多が、従業員のモチベーション低下や職場のコミュニケーション悪化に繋がり、定着率の低下を招くという悪循環に陥っていることもあります。 定着促進のためにHOWよりWHYを問う 従業員の定着に影響する要因について様々お話ししましたが、これら全てに対処するのは非現実的です。また、企業の経営環境や組織運営の文脈によって各要因の影響の濃淡も変わってくるでしょう。限られたリソースで自社に効果的な施策を打つためには、何をするか(HOW)よりも何が原因か(WHY)を突き止め、理論的に正しい施策を打つことが必要です。そこで、社員の意識調査と合わせて、客観的データを用いた調査・分析による「組織の健康診断」で自社の課題を適切に把握することが重要です。 具体的なチェックポイントとしては例えば以下の項目が代表的です。 給与水準:同業・同規模企業と比較して適正な水準か 労働分配率:自社の数年間の推移や業界平均と比較して適正な水準か 管理職と一般職の給与バランス:給与の逆転現象が起きていないか 管理職の育成状況:360度診断などによる客観評価  ちなみに、360度診断で高いスコアを記録している管理職が多い会社は従業員定着率も高い傾向にあることが分かっています。これは上司だけでなく、同僚や部下、他部署など、複数の関係者の意見を元に評価とフィードバックを行うもので、管理職の成長機会の提供にとても有効です。  定着率向上は一朝一夕に実現するものではありませんが、様々な原因(WHY)の中から自社の「問題の重心」を正確に把握し、的を絞った施策を継続することで、確実に成果を上げることができます。まずは組織の健康状態を客観的に診断することから始めてみてはいかがでしょうか。  

Z世代とともに創る新しい職場~特徴と育成のコツ~ | 人材開発

Z世代とともに創る新しい職場~特徴と育成のコツ~

 「Z世代」と聞くと、X世代(43~58歳)の方は、つい中学生や高校生を思い浮かべてしまうかもしれません。しかし、実際のZ世代は13~27歳の若者を指し、今や職場の若手社員の多数がこの世代です。採用はもちろん、組織の文化や働き方にも大きな影響を与える存在となっています。 今後10年、企業の成長・変革を担う「主役」へと移り変わっていくでしょう。 Z世代は、1990年代後半から2010年代初頭に生まれたデジタルネイティブ世代です。多様性や自己実現を重んじる価値観が特徴で、従来世代とは異なる側面を持っています。Z世代を組織で活躍させるためには、従来型の育成方法・マネジメントスタイルを見直し、Z世代に合わせた方法を考える必要があります。これを怠ると、特に新卒採用を主軸にしている企業では、将来の人材確保・組織の持続的成長に大きな影響が出かねません。 実際、「新卒3年以内離職率 約30%」という現象は昔に比べて高まっているように感じるかもしれません。ですが、厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」調査によると、この数字は1980年代後半以降、ほぼ横ばいです。しかし、離職の背景は時代とともに変化・多様化しています。  【新卒離職の主な背景】   ◆リアリティショック(理想と現実の大きなギャップに戸惑いや失望を感じやすい)   ◆働き方や価値観の多様化(「仕事=人生」の意識が薄まり自分らしいキャリアを追求したい)   ◆雇用流動性の増加・転職市場の活発化(転職サイト普及・終身雇用や年功序列の崩壊)   ◆育成環境・職場風土の問題(「放任型」や「昔ながらの厳しい上下関係」に馴染みにくい)   ◆入社・配属後のアンマッチ(職種・勤務地・環境)   ◆将来への不安(成長実感の不足・自分の成長やキャリアパスが見えない) Z世代の育成には、どのようなマネジメントが必要か。まずはZ世代の価値観を理解することです。価値観をまとめてみると、「違いを認める:多様な価値観や背景を受け入れる」、「理由や目的を伝える:仕事の意味や目標を説明する」、「デジタルを活用する:チャットやクラウドで情報共有する」、「社会的意義を明確にする:仕事が社会にどう役立つか伝える」、「ワークライフバランスに配慮する:柔軟な働き方を認める」、「フラットな関係性を築く:役職や年齢に関係なく意見交換する」です。これらのポイントを意識して接することで、Z世代の価値観を正しく理解し、組織の中で活躍してもらえる環境づくりにつながります。 一定数の管理職の方は、既に理解し行動していることかもしれません。「デジタルを活用する」に不安を感じる管理職の方も多いでしょう。 Z世代はインターネットやスマートフォンが当たり前の環境で育ったため、情報共有や業務管理にもデジタルツールを強く求めます。スピーディな情報共有やITツールへの柔軟な対応が重視され、従来の紙文化や非効率なやり方には不満を持ちやすい傾向があります。コミュニケーションや業務管理にデジタルツール(チャット・クラウド・タスク管理ツール等)を積極的に取り入れることは必至です。Z世代の得意分野を活かし、デジタル化推進の中心的な役割を任せてみるのも良いでしょう。 Z世代を完璧に理解しようとせずとも、まずは歩み寄りが大切です。新卒3年以内離職率が40%、50%になってしまったら、将来の人員不足に必ず影響してきます。そうならないためにも、Z世代の強みを引き出し、会社の成長へと結び付けるためには、部下育成の手法も時代に合わせてアップデートしていくことが必要です。 Z世代の力を活かすことで、組織の成長だけでなく、管理職自身も新たな価値観やスキルを得ることができます。ぜひこの機会に、ご自身と組織の可能性を広げてください。 【まとめ】Z世代から期待される具体的な上司像  ◆指示待ちではなく、対話や共感を重視し、納得と成長をサポートできる存在。  ◆時代変化やテクノロジーを積極的に受け入れて、柔軟な働き方や考え方をリードできる存在。  ◆上から押し付けるのではなく、共に考え・共に動く伴走型リーダー。 【ご参考】Z世代を育成していく上司やリーダー層に効果的な教育施策  ◆デジタル世代とのギャップを埋めるための「デジタル・IT活用研修」  ◆社会的意義や仕事の目的意識を明確に伝える力を養う「エンゲージメントマネジメント研修」  ◆上下関係よりもフラットな関係やチームワーク構築を学ぶ「フラットな組織マネジメント研修」  ◆サーバント型・伴走型リーダーを学ぶ「リーダーシップ多様化研修」 管理職の方は、まずはZ世代とじっくり対話することから始めてみてはいかがでしょうか。 新しい視点や気づきが得られるはずです。                                          以上

組織は『代謝』で若返る             ―入れ替えを恐れない「役割」設計と敬意ある運用 | 雇用施策・その他

組織は『代謝』で若返る             ―入れ替えを恐れない「役割」設計と敬意ある運用

 そもそも、生物とは「入れ替え」によって生きている。 人間の体も日々新陳代謝を繰り返しており、皮膚は1ヶ月、血液は4ヶ月、骨は数年単位で更新される。 それでも「私」は「私」であり続ける。これは驚くべきことだ。細胞がすべて入れ替わっても、アイデンティティは保たれるのだから。 この現象、会社・組織にも当てはまるのではないか。 人が入れ替わっても、理念や文化が保たれていれば、「その会社」は存在し続けられる。 しかし、『細胞=役割を遂行する人』がまったく入れ替わらなければ、代謝不良を起こし、静かに死に向かうだけだ。 問題は、『どの細胞を残し、どの細胞を更新するかだ。』 ここで言う「残す/更新する」の単位は「人」ではなく「役割」だ。役割要件が古くなれば、役割自体を作り替える。人の入れ替えはその結果にすぎない(人が成長しても、役割は変わらない。この状態が代謝不良を起こす。更に悪化するのは、役割は変わらず、人も成長せず、停滞し続ける細胞である )。 とくに脳細胞のように動かないポジション―重要ポジションが長期固定化し、運用上「変わらないこと」自体が価値として過剰一般化されると、組織の動きは鈍る。 彼らは企業の記憶かもしれないが、記憶ばかりが蓄積され、動きが鈍れば―それはもう老化である。 もちろん、長く残る細胞がすべて悪いわけではない。 神経細胞のように長命であるべき「役割」もある。ただ、それは「変わらないから偉い」ではなく、「変わらず支えているから価値がある」のである。一方で“皮膚”にあたる役割は、更新を前提に設計しておくべきだ。 自然界にも代謝加速の例がある。京都大学の研究によれば、ショウジョウバエの細胞は、成長の遅れを察知すると分裂を加速して追いつくそうだ[1]。 生物は「このままじゃマズい」と気づけば、自ら入れ替えを進める。 あなたの組織はどうだろう? そして話は「退職勧奨」に及ぶ。これは言ってしまえば、『細胞にそろそろお役御免をお願いする』営みだ。ただし、「個人に向ける」ものではなく、まず役割の棚卸と更新から始め、必要に応じて人の配置や出口を整える営みである。 意外に思われるかもしれないが、日本において退職勧奨そのものは違法ではない。 強要や不利益な示唆などがあれば問題になるが、丁寧な対話による任意の働きかけは適切に行えば認められている。「退職してもらえないか」という働きかけ自体は、合法的な手段なのだ。 ただし日本企業には独特のねじれがある。 「終身雇用を守る」と言いながら「柔軟な組織をつくりたい」 「心理的安全性が大切」と言いながら「成果主義を導入する」 この中途半端さが、退職勧奨を「感情的な追放」と受け止めさせてしまう土壌になっている。 だが、生物に学ぶなら、入れ替えとは本質的に痛みを伴うものだ。皮膚が新しくなるとき、古い皮膚は剥がれ落ちる。骨も、まず破壊されてから再構築される。 つまり、「壊してから創る」ことが進化の前提なのだ。 組織も同じ。役割や役割を遂行する人が入れ替わるたびに、多少の痛みはある。だが、痛みを避けて何も変えなければ、取り返しのつかない「死」が訪れる。 退職勧奨とは、そうした組織の硬直を防ぐ「免疫反応」なのだ。体に異常が起きたとき、免疫が働くように、組織の成長を阻む滞留に対して一定の代謝を促す。対象の選定は役割要件の見直しを起点に、配置転換・再教育・合意退職の順で検討し、記録化と複数回対話を原則とする。 目的は『排除』ではなく、『回復と維持』である。 もちろん、やり方には細心の注意と敬意が求められる。だが、プロセスの難しさと制度の必要性は切り分けて語られるべきだ。 すべての社員が生涯在籍する必要はない。入れ替わりを許容できない組織は、やがて硬直し、再生不能になる。 「退職勧奨は冷たい」と言う人に、私はこう返したい。 「あなたは、20年前の皮膚で今日を生きていますか?」   [1] 京都大学. (2021年1月). 体の成長と組織の成長の速度を調節する仕組みをハエで解明 ―進化のメカニズムに関する可能性―. https://www.kyoto-u.ac.jp/ja/research-news/2021-01-29

「内省の強制」から始める(育成のためのアセスメント②) | スマートアセスメント®

「内省の強制」から始める(育成のためのアセスメント②)

   「管理職の登用審査」に使われるアセスメント(=アセスメントセンター方式)を、「管理職候補者の育成」に使うことを前回提案した。アセスメントの利点である客観的な保有能力判断を用いることで、的確に管理職レディネス(=管理職になる準備ができている状態)の醸成が出来る。管理職手前の早い段階で、管理職能力として何が足りないかがわかれば、その後、個別計画的なOJTやOff-JTを組むことで能力伸長や弱点補強ができるからだ。  例えば、把握された強み弱みを踏まえて、上司が、その部下を管理職にすべく育成計画を組み権限移譲を含むOJTをすればいいし、共通して足りないスキルがあれば研修を組む、といった対象者の弱点の実態に即した効果的で計画的な管理職候補者育成が可能になる。  その際にもっとも大事なことは、まずは、本人が自身のアセスメント結果を「自分事」として腹落ちすることである。「分析力」はわりと良い点とれてるが、「創造力」はぜんぜんだめだな。「人材育成力」はイマイチの点だったな、などとテスト結果に一喜一憂するだけでは、まったく意味がない。自分事としての腹落ちとは、①問題に対して自分がどう答えたからこの評価点になったのだと「理解」し、②たしかに日常業務でもこの点は弱みだなと「納得」し、③是正のためにどう「行動」するかがわかっている、ということである。  この、①理解→②納得→③行動、を本人任せにしないで、きっちりとフィードバックを行うこと。いわば、「内省の強制」のイベントとしてのフィードバックが、アセスメント以降の育成の出発点として必須だと強調しておきたい。  それには、二つの方法がある。ひとつは、アセッサーによる個別フィードバック面談。実際の評定者だから、評点の理由はきわめて具体的に説明できる。加えて対話のなかで、本人の違和感や日常の課題感を聞き、演習行動との関係を意味づけさせることで、結果の腹落ちを促す。つまり、自身の業務の文脈でアセスメント結果を再確認させ、具体行動に結びつけることが、フィードバック面談の目的となる。  もう一つは、受検者集合型のフィードバックセッションだ。こちらは、ワークショップ形式なので個別面談のようなきめ細かさには劣るが、グループダイナミクスならではの「気づき」効果の大きさに優れる。たとえば、インバスケット演習であれば、いくつかの案件について、自身の回答を手元にもって、正解に向けてのグループ討議をする。講師の「この案件では何が問われ、どうすべきだったのか」という解説とともに、他者がどう考えどう行動したかを目の当たりにすることで、自身の不足や課題に如実に気づかされる。仮に、同じ管理職を目指す立場として、どうも自分は劣っていると体感したとしたら、その焦りは、以降の自己啓発の原動力にもなるだろう。  このセッションでは最後に、自己確認した能力課題に対して、以降の改善行動方針を作らせるが、そこでも、共有のなかで他者の方針に触れることで、自身に足りない視点に気づき、方針のブラッシュアップの場となるという効用もある。セッションを通じて、他者との考え方や着眼の違いに直面することが、ときに危機感をもった自己課題への気づきをもたらすわけである。  自分の能力課題は何なのか、それをどう解決するか。その切実な理解と自己啓発の意思がなければ、上司が考える計画的な指導も、きちんとした方法論やスキルの教育も、十分な効果は望めない。いま管理職としてなにが足りていないかが自覚できていて、それをどう解消していくかの意思と方針をもつこと。それが、管理職レディネスを高めるために不可欠な第一歩なのである。   「育成のためのアセスメント」を考えるコラム2回シリーズ。 「管理職レディネスをどう高めるか」(育成のためのアセスメント①)  「内省の強制」から始める(育成のためのアセスメント②)→今回 ※育成のためのアセスメント「スマートアセスメント」はこちら