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column

まれに重篤な副作用を起こすことがあります

 DXとは一体何のことだろうか。日々のニュースや記事の中で、政府の広報文書の中で、または職場の会話の中で、あまりにも数多く使われるこの用語、きちんと定義できる人はどれほどいるだろうか。このような流行り言葉で、政治家や学者がもっともらしく使う一群の言葉を「Buzz Words」と呼ぶのだそうだ。時代のトレンドを示す重要な概念をたった一語で伝えることができる、また、それを通じて、産業界や国民を一つの共通の方向に導くことができる魔法の言葉だ。だが、このような言葉を使うときには、その本当の意味を正しく認識しておくことが不可欠だ。

「DX」を引き合いに出して考えてみよう。DXとは、言わずと知れた「Digital Transformation」の略語だ。ICTを戦略的に活用し、圧倒的に高い付加価値を創造すべく、従来のビジネスモデルを画期的・抜本的に変更することを言う。ならば、DX人材とは何か。DX人材の育成とはどのようなことを言うのか。
 DX人材を考えるとき、「D」の側面と「X」の側面の両方を意識する必要がある。「D」の側面は、先進のICTに関する知識と技能だ。これは、しかし、必要条件であって十分条件とは言えない。そこで、「X」の側面を考える。これは、ビジネスモデルを抜本的に変えることのできるセンスや志だ。だから、DX人材を育てるには、ICTの教育に加えて、経営全般に関わる知識、並々ならぬ好奇心、進んでリスクを負う気概などを醸成していく必要がある。人事評価を含む会社の環境を整えることも必要だろう。
 翻って、巷で実際に行われているDX教育とは何か。ほとんどの場合、特定のソフトウェアの利用教育や、新しい開発言語の教育といったものに留まる。シニア層にパソコンの起動の仕方を教えてDX教育と称する企業すらある。新聞紙上には、DX人材〇千人を育成、といった見出しが躍るが、会社のビジネスモデルを抜本的に変えようとする人材が〇千人も要るのだろうか。PC教育を〇千人に実施してDX推進企業だというのは、株主を欺くことにならないか。

ご存知のとおり、他にも、あまたのBuzz Wordsがある。DXの尻馬に乗ったような、GX、SXは何を表すのか。DXの「X」とCXの「X」は同じことか。リスキリングという言葉の元々の目的を私たちは知っているだろうか。HRBPとは本来、どんな仕事か。1on1と個人面談はどこが違うのか。人的資本経営というが、その本当の意味は何なのか。社員の働きの価値が低下したら減損会計の対象となるのか。ジョブ型とは何を表す言葉だろうか。雇用の在り方を言っているのか、給料の仕組みを言っているのか・・。

 経営者や人事部員は、人事管理に関する世の動静に敏感であるべきだ。そして、DXのようなBuzz Wordsは、このような議論を効率的に進めるための重要かつ効果的な道具ではある。これらの用語を駆使しつつ、周囲の人々を巻き込んで、自社の経営が時流に乗り遅れないようしっかりと行動する必要がある。この意味では、Buzz Wordsは、小さくて飲みやすく、効き目の確かな新薬のようなものに思える。
しかし、Buzz Wordsを安易に大量に服用することはあまりにも危ない。その言葉の正しい定義や、それが生まれた時代背景をよく知らず、自分流に解釈してわかった気分になる。つまり、思考停止の状態に陥るのだ。これはかなり強い副作用だ。会社を間違った方向に誘導しかねない。万が一、「うちもDXをひとつ入れといたほうがいいんじゃないか。」といった表現で社長から指示が下りてきたら、その会社はかなり重篤な状態だと思ったほうがよい。すぐに社長向けDX研修を企画しよう。

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