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「なくならないパワハラ」

執筆者: 東條 徹也 人事管理

 『2017年10月大手自動車メーカーの車両設計などを担当していた男性社員(当時28歳)が自殺した。上司から「ばか」「死んだ方がいい」などと暴言を浴びせられていたという。
遺族は2019年3月に労災を申請し、認定された。2021年4月に遺族と和解した。』
2021年6月8日付けの日本経済新聞の朝刊の記事の一部だ。

 このような事例は今に始まったことではないが、ハラスメントが大きな話題として取り上げられたのは2016年の大手広告代理店での新人女性の過労自殺問題ではないだろうか。この事件は、最終的に社長の辞任にまで至った。近年では、検索エンジン企業やファーストフードチェーンストアなどの米国の大企業でもハラスメントを理由に経営幹部が解任される事例が相次いでいる。国内に目を向けても、いくつかの著名企業でハラスメントが残念な結果を招いている。

 厚生労働省によれば、「いじめ・嫌がらせ」の相談件数は、2019年度は約8万8千件。10年で2倍に増加している。なぜ、ハラスメントに関する相談が増加し続けているのか、また中小企業に至っては、なぜ認知度すら低いままなのか。

 背景のひとつは、法制化によって相談の垣根が下がったことだろうが、そのほかに、以下のことが考えられる。
・上司の権限が強く、被害者自身が主張をためらい、取り下げてしまうケースが多いこと。
・ハラスメントをする側は、上司やハイパフォーマーであるケースが多く、会社におけるポジションも高いので、会社側も処分できないこと。
・中小企業の場合、社長が自らパワハラを行っている。こうなると、結局は泣き寝入りするか、退職するしかないこと。
・現在のパワハラ防止法に罰則規制がないこと。やはり、企業や加害者に対しても罰則やペナルティーを科さないと根本的な減少には至らないだろう。

 さて、冒頭の大手自動車メーカーが再発防止策の一つとして行ったことで、着目すべきことがある。約1万人の基幹・幹部職に対して、「360度評価」を実施したことである。
 今回の事例の場合、被害者の男性が直属の上司から暴言を受けていたことを他の若手社員は知っていた。しかし、幹部は認識していなかった。これにより経営トップへの報告が遅れたのだ。社長は、2019年11月の報道で、初めてこの事件がパワハラと関係していたと知ったという。そこで、360度評価を実施し、水面下に隠れてしまいがちなマネジメントの弱みを、経営がしっかり把握しようとしたのだ。

 このように、「360度評価」を継続的に実施することは、ハラスメント事件の発生の一つのアラームにはなり得る。上司からの一方的な人事評価や行動観察では見えなかったことが、周囲(360度)の目から見ることで、明らかになることがある。これが、当事者の気づきにつながる。その事実を今後のマネジメントとしての行動改善に生かすことが最終的に求められる。さらには単なる分析に留まらず、今後の社員の意識改革を促す施策を実施し継続することに意味がある。360度評価は応用の仕方で大きな効果をもたらすのだ。

 パワハラは重大な経営問題といっても過言ではない。社員の健康や安全を守れない企業に優秀な人材は集まらないし、発展もない。人を壊してしまう会社に、人はついて来ない。経営者は、パワハラは大きな経営リスクであることの認識を新たにすべきだと思う。パワハラ撲滅のポイントは何かと聞かれたら、トップ自らが厳しい姿勢を示し、あらゆる工夫と対策を打ち続けていくことであると言いたい。

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