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昇格審査では遅すぎる

執筆者: 吉岡 宏敏 人材育成

 管理職への登用を決める際には「昇格アセスメント」を行うことが多い。人事評価や部門長推薦によって選定された昇格候補者に対して、テストや論文、役員面接などといった社内での審査に加えて、外部アセッサーによる審査=アセスメントを行う。たいていは「アセスメントセンター方式」と呼ばれる手法が使われ、1~3日の研修形式で管理職能力の発揮可能性が測られる。

 この手法は、まだ非管理職である対象者全員が同一のシミュレーション環境(=管理職の業務環境)のなかに置かれ、そこでの行動を観察することで、保有能力(=潜在的管理職能力)を測定するもの。約50年前から欧米企業で使われ、日本でも約40年の歴史があり、その評定の信頼性はすでに確立されている。管理職への入学審査として総合的な管理職能力レベルがわかること以上に、個別の強み弱みが能力項目の言葉で明らかになる効用がきわめて大きい。

 つまり、一人一人の管理職たりうるための能力課題が、非管理職の段階で明確になる。しかし、昇格審査では、序列化された総合点結果が選抜だけに使われ、個別育成に資する結果は個人の自己啓発の参考としてフィードバックされるだけである。残念ながら、審査の合否段階で、自身の能力課題がわかっても、もはや遅い。宝の持ち腐れだ。

 個々人の強み弱みという貴重な情報がもっと早く、例えば、管理職手前の等級にあがった時点で得られれば、3年なり5年なりの期間、本人も上司も業務遂行のなかで管理職へ向けての自己研鑽や成長のための指導を効果的にはかれるに違いない。このことは、管理職スキル先行教育にほかならず管理職候補者群の能力底上げとなり、量的にも質的にも管理職能力の向上につながる。

 実際、管理職手前の等級のエントリー時点で全員にセンター方式アセスメントをきっちりと行い、管理職昇格審査をむしろ簡素にする運用を仕組化している企業もあるが、まだまだ少数派だ。

 どう考えても有効なこの手の施策が広がらないのは、センター方式アセスメントの手間と費用の負担レベルが多人数実施に向かないからである。しかし、センター方式アセスメントは、必ずしもコストのかかる1日や2日の集合研修形式(5人程度の専門アセッサーが稼働)を必須とするわけではない。大事なことは、「何を診るか」に応じて、適切なシミュレーション環境(=「刺激」)が設計され、評定構造(=「認知」「判断」「行動」)が理論的専門的に正しく組まれること。

 たとえば、インバスケット演習だけをテストとして設計したり、用途ごとに作成したケースを使った方針策定演習だけを実施することだけでもディメンション(=評価項目)は限定されるが、十分な能力課題把握ができる(ちなみに当社の『スマートアセスメント』はWeb診断で簡易に多面的な診断ができる)。昇格審査だけではなくむしろ人材育成にこそ、アセスメントセンター方式は、自由な発想で多様に活用すべき手法なのである。

 管理職先行教育はもちろん、若手対象の選抜型経営人材育成も、個々人の(経営人材としての)能力課題の測定があって初めて、効果的個別的な育成が可能になる。あるいは、中途採用対象者が自社で能力発揮できるか、なにが課題になりそうか。新卒採用対象者のなかで自社の事業開発業務に適する人材がいるか、どのような能力特徴か。

 そうした将来可能性と個別特性が、シミュレーション環境で測定する手法ゆえに掴めるから、全社で鍵となる人材の活用・育成を個別効果的に実践するには必須のツールなのである。

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プロフィール

吉岡 宏敏 (よしおか ひろとし)

シニアパートナー

東京教育大学理学部応用物理学科卒業。ベンチャー企業経営、ウィルソンラーニング・ワールドワイド株式会社コーポレイト・コミュニケーション事業部長等を経験後、株式会社ライトマネジメントジャパンに入社。人材フローマネジメントとキャリアマネジメントの観点から、日本企業の組織人材開発施策の企画・実行支援に数多く携わる。ライトマネジメントジャパン代表取締役社長を経て、現職。

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