「調査・診断(組織分析) 」の記事一覧(5 ページ目)|コラム|株式会社トランストラクチャ

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調査・診断(組織分析)

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拡張自我 | 調査・診断(組織分析)

拡張自我

普段何気なく使っている筆記具や腕時計、鞄などの様々なアイテムをキチンと意識して、毎日使っていることに感謝することが必要です。身のまわりのものが自分の行動に影響を与えてくれたり、自身を映し出す鏡になってくれたりするからです。 この筆記具や腕時計など、自分の身近なものを褒められると、自分が褒められたように嬉しくなることがあります。これは、私たちが自分周辺のものを自らの一部として認識しているからで、このことを心理学的には「拡張自我」と呼びます。 身につけるもので分かりやすいのはブランド品です。ブランド品を身につける人は「自分は高価なものを身につける価値がある人間だ」と思っていたり、そうありたいと思ったりしているからだそうです。高価なブランド品によって「拡張自我を利用して自信をつけようとしている」とも言えるのです。 また人間の脳は、実際の価値の議論は置いておいて、ブランド名に惹かれる傾向があるそうです。このことは、アメリカのベイラー医科大学で脳科学を専門とするモンタギュー博士らの有名な「コカコーラ」と「ペプシコーラ」の実験から明らかになっています。コカコーラとペプシコーラのブランド名を隠した状態とブランド名を見せた状態で、どちらかを選ぶ時の脳の反応を比較しました。実験の結果、ブランド名を隠した状態では、コカコーラとペプシコーラは同じように好まれて差がありませんでしたが、ブランド名を見せた状態では、コカコーラがより好まれる傾向を示したそうです。 (引用元:2004年『Neuron』掲載、Neural Correlates of Behavioral Preference for Culturally Familiar Drinks) さて、このように無意識のうちに自分自身に影響を与える自分の身のまわりの品について、日頃は身近すぎてほとんど意識しないと思いますが、きちんと手入れをして大切に扱うことが必要です。 野球のイチロー選手は道具の手入れをすることで知られています。「イチローの流儀」小西 慶三 (著)によるとイチロー選手がどのくらい道具を大切にしているかが伝わってきます。イチロー選手は勝った試合でも、負けた試合でも試合が終わってロッカーに帰って来ると、必ずグローブの手入れをするそうです。負けた腹いせにグローブを投げつけるなどは、もってのほかの行動です。 拡張自我から考えると、使用後に道具を手入れするということは、自分を手入れすることと同じです。仮に失敗した時にも感謝の念を持ちながら手入れをして向き合うことで、次へのパワーや自信が生まれてくるのかもしれないのです。 身近な物を大切に思い丁寧に心をこめて手入れをすると、きっとそれは自分の自信や力となって戻ってきてくれるのです。さて、このように無意識のうちに自分自身に影響を与える自分の身のまわりの持ち物たちへ、日頃は身近すぎてほとんど意識しないと思いますが、きちんと手入れをしたり大切に扱ったりしていますか?

「モンスター社員」の増殖 | モチベーションサーベイ

「モンスター社員」の増殖

最近、「モンスター社員」と言う言葉をよく耳にする。厳密言うと「モンスター社員」にも色んなタイプがあるようだが、一般に、処遇や福利厚生に対し過度な要求をしたり、会社の制度やルールに対して否定的・非協力的な主張をして、自身の要望が受け入れられないと、「労基署に行く」等と言って人事を脅したり、実際にそうする「やっかいな社員」の事を指すようだ。 入社時点に想定していた内容と異なる業務を求められると、話が違うと、拒否したり、上司や人事から気に入らない注意を受けると翌日から無断で休む、さらには、インターネットのSNSや掲示板上に、そうした状況を誇張・曲解した上で、会社や上司・同僚を誹謗中傷する投稿をする等・・。こうした「モンスター社員」は、従来の「やる気のない社員」や「さぼり社員」とは異なり、よりたちが悪いと言える。会社にとっては深刻な存在で、対応を間違えれば、一人のモンスター社員が、会社全体の価値を下げてしまうリスクさえあるかも知れない。 モンスター社員が「増殖」している背景には、採用難が続く中で、会社の採用基準が甘くなりがちな事や、働き方改革が進む中で、残業時間の抑制や休暇の取得など、労働者の権利をきちんと確保していこうとする社会的要請が高まる中、「会社」より「社員」の権利をより尊重する空気が我が国の社会全体に漂っていることも影響しているだろう。 また、SNS上に発信されたコメントにひとたび火が付くと、その内容の正否を確認される間もなく、それが世界中に瞬時に拡散してしまうというネット社会特有の現象もまた、事態をより悩ましくしている。 最近、かつて目覚ましい企業再生を果たし、賞賛されてきた著名な企業経営者が、一たび、逮捕されると(まだ有罪と確定したわけではないのに、)手のひらを返したように、否定的なコメント一色になる我が国のマスコミや識者の論調に、正直、驚いているところだが、我が国のそうした「推定有罪的」国民性?もまた、会社が毅然としたアクションを取りにくくしていて、結果として、「モンスター社員」をのさばらせてしまっているようにも思う。 会社のいわゆるブラック企業的行動を排除させるために、「社員」の権利をより尊重する方向で、「会社」と「社員」の関係をリバランスする取り組みはよいのだが、それが行き過ぎて、社員の権利を守ることに囚われすぎてしまうと、会社の中に、多数のモンスター社員の増殖を許してしまうような事にならないか。ルールに基づく「モンスター社員」への毅然とした対応と共に、社会全体としての「会社」と「社員」のパワーバランスが適切かどうかを検証していく姿勢が、我々、ひとりひとりに求められている。

パイロットフィッシュ | 人材アセスメント

パイロットフィッシュ

 職場で何か新しいことや面倒な取り組みをはじめる際に、なぜかいつも声がかかる人物がいた。中小企業の間接部門に所属していた彼は、取り立てて優秀な社員というイメージではなかったが、30代前半という若さもあったろう、どんなプロジェクトも気力と体力で突っ走っていくような男だった。  いろいろなプロジェクトに先陣を切って投入される彼であったが、なぜか、途中で他の社員にバトンタッチすることが多かった。本業が忙しくなって呼び戻されたり、どういうわけだか、プロジェクト終盤に差し掛かってくると失速し、勢いだけでは押し切れなくなるところがあった。とはいえ、あともう少しというところでプロジェクトを外される彼の気持ちを考えると、さぞ悔しかったに違いない。はたから見ていて気の毒に思うこともしばしばあった。  そんな彼のことを、仲間の間では(今にして思うと、大変失礼な言い方なのだが)”パイロットフィッシュ”と呼んでいた。  熱帯魚を飼育した経験のある方ならご存知と思うが、新しい水槽を立ち上る際に、新しい水を入れて直ぐに高価で繊細な熱帯魚を入れるようなことはしない。新しい水槽には、熱帯魚の排泄物やえさの食べ残しを分解するバクテリアが存在しないので、水質の変化に弱い繊細な魚を投入するとすぐに弱ったり死んでしまったりするのだ。 そこで登場するのがパイロットフィッシュだ。そういう名前の魚なのではなく、有益なバクテリアの繁殖を早めるために、まっさらな水槽に先陣を切って投入される魚のことを言う。無事にバクテリアが繁殖し、水質が安定すると、パイロットフィッシュの役割は終わりとなる。はじめは魚にとって過酷な環境なので、時には死んでしまうこともある。したがって、丈夫で安価な種類の魚がチョイスされるのだ。  職場で新しい取り組みを始めようとすると、誰しも苦労するものだ。誰もやりたがらない面倒なプロジェクトに次から次へと飛び込んでいく彼の姿が、アクアリウムのパイロットフィッシュと重なって見えたのだ。  先日、そんな彼と何年振りかに会う機会があった。聞けば今でも同じように、いろいろなプロジェクトを次から次へと渡り歩いているらしい。そこで、どうしても気になっていた、かつての疑問をぶつけてみた。あんなに何度も途中でプロジェクトを外されて、どうして腐らずにやっていられるのか、と聞くと、「何もないところからスタートして、造り上げていくっていう感覚がなんかいいんだよね。道筋ができると俺の中ではもう終わりっていうか、そこからなら誰でもできちゃうし」  なるほど、本当に彼は職場のパイロットフィッシュだったのである。 彼をプロジェクトにアサインしていた上司はその適性を的確にとらえていたのであった。 (ちなみに、パイロットフィッシュの語源は飛行機のテストパイロットから来ている。)

なぜ進まない「女性活躍」 | 人事アナリシスレポート®

なぜ進まない「女性活躍」

2016年4月に女性活躍推進法が施行され、各企業は様々な取り組みをしている。 政府も2020年には指導的地位に占める女性の割合を30%に引き上げるという目標を掲げて推進しているが、現実はどうだろうか。遅々として進んでいない。 女性社員の働き方改革に対応した社内制度はある程度整ってきていて、ダイバーシティ推進課や女性活躍推進課の新設とともに、テレワークのような新たな働き方を導入しているケースがある。ただし、マミートラック(仕事と育児の両立は実現できても、昇進昇格とは縁遠いキャリアコース)だったり、R職への格付け(HR、PR、CSR、IR等のRがつく職種)のパターンが多い。 女性社員はなぜ活躍できていないのだろうか。企業の担当者からは、うちの女性社員は管理職になりたがらなくて困っている、管理職に魅力がないのだろうとよく聞く。 他に何か阻害要因があるのではないだろうかと考えると、女性社員の働き方は男性社員に比べてライフステージ(結婚、出産、育児)に応じて多様なことから、各ステップを通じて自分らしい生き方や進路の選択ができるようにしなくてはならない。だが、男女共同参画の視点に立ったキャリア教育や、キャリア形成ができていない。そもそも女性に大きな仕事やレベルの高い仕事をさせていないケースも多い。組織内での経験や短期業績評価を基に昇進・昇格させていく企業では長時間労働が前提とされ、子育て中の女性社員のように限られた勤務時間の中で生産性高く働いて帰宅しても、長時間職場にとどまっている他社員に比べて評価されにくいこともあるだろう。 出産・育児等で仕事を一旦離れ、キャリアやスキルの形成が中断した場合、復帰しても管理職、役員といった立場で意思決定過程に参画していくための環境も十分に整っていない。そしていまだに残るガラスの天井があげられる。 こういった阻害要因を排除した取り組みを本格化していかなくてはならない。 また、短期的に一定の業績を上げる必要がある企業にとっては、株主・顧客・社員といった様々なステークホルダーにそうした取り組みが理解されることが不可欠である。そのためには,女性の活躍推進に取り組むことが企業の活動や職場にプラスの効果をもたらすことをステークホルダーに対して示していく必要もあるだろう。 一方、政界に目を向けてみると、日本の女性政治家は世界に比べてまだまだ少ないといわれている中で、小池百合子氏が女性で初めて都知事に就任し様々な問題を解決すべく奮闘している。世界でもイギリスのテリーザ・メイ氏が故サッチャー氏以来26年ぶりの女性首相に就任、アジアでも台湾では、蔡英文氏が第14代総統に就任した。アメリカでは、ヒラリークリントン候補者が史上初めて女性で米大統領選の主要政党候補になるなど女性の活躍が進んできている。 女性活躍推進法が制定された2016年は、日本で女性が参政権を獲得して70周年となる年だった。100年前の大正時代では女性が参政権をもつなど考えられない、それを別に変とも思っていなかっただろう。現代では当たり前になっているように女性の活躍が当たり前になる時代はすぐそこまで来ている。現代社会の当たり前がどんどん変わっていくように。 女性活躍推進法は10年の時限立法だ。今後2025年までに、女性の働き方はどこまで変わるのだろうか。社会や企業の意識が変わっていくと同時に、働く女性自身も意識を変えるべき時がきているのかもしれない。 前出の故サッチャー氏はこう言っている。 考えは言葉となり、 言葉は行動となり、 行動は習慣となり、 習慣は人格となり、 人格は運命となる。

人事の財務諸表 | 人事アナリシスレポート®

人事の財務諸表

 企業経営にとって、財務諸表はその企業の経営状況を知るうえで必須のものである。財務諸表を見れば、企業の財務状況や損益状況を即座に正確に把握することができるのである。“金”という視点で企業を見る場合には財務諸表を見れば十分であろう。経理財務機能では最も重要な帳票である。  人事分野ではこの“財務諸表”にあたる定期的な報告書式を持っていない。財務諸表の附表の中で、社員数や平均給与、平均年齢の数字は記載されているがこの程度であるし、あくまでも財務諸表の一部情報である。人事については経営者に対しても定期的に報告すら行っていない企業がほとんどであろう。経営者はどうやって人事の状況を把握するのであろうか。人事が経営にとって重要な機能であるのであれば、財務諸表に類する報告書式を持ち、定期的に報告されなければならない。“人事諸表”、“人材諸表”というのか命名はともかくとして、正確な人事情報を提供するルートとコンテンツが必要なのではないだろうか。 おそらくこの“人事諸表”は以下のような構成になるだろう。大きくは一定時点の人材の保有状況を把握するための帳票と一定期間の人事のパフォーマンスを把握するための帳票である。 前者は人材の保有状況であるので、期末時点の保有する人材状況がわかるものであるので、人数(雇用区分別、入退社員推移など)、人数構成(等級別、年齢別など)、人件費総額(総額、平均年収、推移、各種指標など)、スキルレベル(保有スキルなど)などである。これらが整理されていれば企業の保有人材、人的資源状況が一目でわかるだろう。後者は一定期間のパフォーマンスであるので、マネジメントレベル(目標達成度、管理職レベルなど)、モチベーション(全体、推移、評価統計など)、コンディション(職場環境、健康面など)である。これらの情報が“数字”を元に作成されていると、一定期間のパフォーマンスがわかりやすいのではないか。 “ポートフォリオ”と“パフォーマンス”、“保有人材”と“期間成果”を中心とした報告書式が整備され、最低一年に一度役員会報告になり、また一部情報が外部開示されるようになると、企業の人事レベルは一気に上昇するはずである。 人事の特殊性として、また近年の人事の重要課題として付属して報告する必要が高いものもいくつかある。例えば社員は“期間の定めなき雇用”であり大卒社員は65歳までの43年間雇用するように長期に拘束される。そのため将来の人員数や人件費予測は非常に重要な経営情報である。また女性活躍推進が義務付けられているため、これらに関する統計なども必要だ。 人事は経営や外部に対して正式な報告書式と報告場所を持たなければならない。現時点でそれがない企業が大半であろう。人事機能がより高度に発達して経営に貢献するためには必須ではないだろうか。 以上

社員の幸福感の高め方 | モチベーションサーベイ

社員の幸福感の高め方

 幸福感の高い人はどのような人だろうか?一般的には配偶者のいる人や非喫煙者、心身が健康である人はそうでない人と比べると幸福感が高いと言われています。また、興味深い調査として、幼少時にシルバニアファミリーで遊んでいた女性とそうでない女性を比べたものがあります。この調査では、大人(20~25歳)になった時点での幸福度は、シルバニアファミリーで遊んでいた女性のほうが高いという結果が出ています。  しかし、当コラムを読んでくださっている皆さんが興味をもたれるのは、「幸福感」という概念は、ビジネスの中でどのように活かすことができるのか?特に、「生産性」や「業績」といった代表的な成果指標に対してどの程度の影響を与えるものなのかといったことではないでしょうか。  欧米の研究を見ると、幸福感の高い社員は、生産性が高く、売り上げも多く、リーダーとしても優れ、高い業績を上げる。また、病欠も離職も少なく、仕事のストレスに負けることもないという報告があります。幸福な気持ちで業務に取り組むと、時間の使い方が効率的になり、仕事の質を下げることなく生産スピードを向上させることができるそうです。その結果、幸せな気持ちで物事に取り組んだ人は、そうでない人と比べて生産性が12%向上するという調査結果も発表されています。ちなみに、不幸は生産性を10%低下させるそうです。  では、企業にとって良いことづくめの幸福感は、何から影響を受けているのだろうか。幸福感の高めかたが分からないと施策を講じられませんが、この領域の研究は国内外を通してまだ始まったばかりです。  国内における先駆け的な研究は、2012年に内田・城戸が人材育成学会にて発表した『ポジティブ組織行動論の試み-仕事での「幸福感」と組織内要因-』であると言えます。内田らはこの中で、約300名のビジネスパーソンから集めた定量データを分析し、幸福感を高める5つの組織内要因を明らかにしています。この5つは、「マイビジョンへの挑戦」、「自己効力感」、「地位と給与の満足」、「仕事の社会的評価」、「努力と評価の関連」と名付けられた因子であり、これらが幸福感に対して統計的に有意であることを示しています。  自分の実現したいビジョンをもち、得意分野を活かしながら挑戦的に仕事ができていること。自由裁量の度合いが高く、自分の能力を活用しながら自信をもって仕事を進められていること。現在の地位や役割と、得られる給与等の報酬に満足していること。自分の仕事が社会的にも組織内においても評価されていること。そして、自分の努力が上司などから人事的に評価されること。つまり努力と評価のつながりが認識できることが「幸福感」を高めるのです。  2回のコラムで取り上げた「幸福感」は、組織内で伝播する特性をもっています。自分が職場で幸せであると思えるほど、共に仕事をする仲間だけでなく顧客に対しても、より多くのポジティブ感情を伝えるようになります。そして、最終的には、職場全体がポジティブな状態へと変わってゆき、大きなビジネス成果を生み出すのです。ポジティブ感情のドミノ効果と呼ばれるこの現象は、組織に対して大きな変化を起こすための小さな一歩の必要性を示唆しています。  職場の幸福度について興味をもたれた方、詳しく知りたい方はお気軽にご連絡ください。 以上

ストレスワクチン | モチベーションサーベイ

ストレスワクチン

多くの組織で問題になっているメンタルヘルスの予防的施策として、ストレスワクチンという処方がある。 メンタル不調を結果するような状況に至る前に、ワクチンを打ってストレスの抗体を作り、個々人のストレス耐性を高めておく手法だ。「ワクチンを打つ」とは、Off-JTのワークショップとフォロープロセスのことで、まずは組織診断によりその会社固有のストレス因子を検出し、それを使ってストレスフルな状況の予行演習を体験する。主に、入社間もない社員に対し行われる予防施策である。 企業内ストレスにさらされる状況はある程度決まっている。一般的には、入社直後や配属直後、異動後や転勤後、管理職への昇格したときがそうであり、加えて各社の業務や組織の特性と風土や慣習によって、ストレス状況の類型化ができる。部門による人間関係の特性や組織の意思決定のクセが、その会社固有のストレス因子かもしれない。それを“抗原”として、想定される状況下で、自分がどのように対処すべきかを先行して考えることで、ストレスを受け止める力を身につけさせるということである。 言うまでもなく、生産性を追及する組織である限りストレスは必須だから、組織のストレスをなくしていくのではなく、個人のストレス耐性が課題になる。「メンタル失調になりそうな候補者を検出できないか」という採用担当の方々からの要請も少なくないように、“個々人の資質問題”に偏りがちなアプローチに対して、ストレスの抗原−抗体反応の仮説は魅力的ではないか。 この仮説が正しければ、EAPや産業保険医体制の整備、あるいは管理職へのメンタルヘルス研修などで、不調者の予兆を個別的に早期発見、早期対応するくらいしかメンタルヘルス対策がないなかで、組織的な予防施策として展開できるからである。 「必ず直面するストレス状況を、事前にイメージさせ、受け止められるようにする」とは、その時どうすればよいかをシミュレーションさせることだけが大事なのではない。何より、その状況の背景の意味を考えさせ、理解させること。個人の業務や役割の意味とその背景にある会社のミッション、そうした業務が自分にとって、自分の将来にとってどのような意義を持つのかを、深く考えさせることこそが重要だ。つまり、将来のストレス状況にポジティブな意味づけを予め前提させる。ストレスとモチベーションが表裏の関係あること自体を体感させるのが、こうした施策の最大のポイントだろう。 さらに、ストレスワクチンの効用はもうひとつある。組織の暗黙知が明示化することである。抗原を検出するための事前のストレス診断により、暗黙のルールや集団行動のクセのインパクトがわかる。例えば、ある部門はきわめて家族的な人間関係に特性があるかもしれない。新入社員がこうしたことを事前に知ることで、効率的に仕事に集中できるはずだ。 かつて、辞めてほしくない社員に対して、アメリカの会社は“ゴールデン・ハンドカフ(金銭による手錠)”をかけるが、日本の会社は“エモーショナル・ハンドカフ”をかけると言われたことがある。日本企業の雇用関係は、長期雇用の黙契がなくなり、成果と報酬の契約的関係になりつつあるとはいえ、暗黙のルールや人間関係の圧力は存在する。ストレスワクチンは、それに対するプラグマティックな挑戦でもあるのではないか。