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学びのポイント
執筆者: 南城 三四郎 人材育成
ある企業で技術職として採用された新人のOJTでの話だ。
OJTトレーナーが今週一週間の業務経験からのどのような学びが得られたか、特に重要と思うものは?と聞いたところ「書類を届けるため初めてひとりでA社へ往訪しました。その経験からA社へ行くときは○○駅から歩いて行った方が早いという学びがありました」とのこと。技術職なのにその視点はさすがにおかしいだろう、それに初めてひとりで客先を訪問するという経験からはもっと他に学ぶべきポイントがあっただろうになぜそこなのか、さすがに空いた口が塞がらなかったそうだ。
これは経験からどのような教訓を引き出すか学ぶべきポイントがずれている極端な例だが、往々にして、経験が少ない者ほどそういう傾向がある。物事をとらえるときに思考のバリエーションが少なく近視眼的になりがちなのである。また、新人に限らず、問題の原因を深堀するのが苦手、議論の場でポイントのずれた発言をしてしまうといった人がいるがこれも同じような課題を抱えている可能性が高い。共通する解決策は物事をとらえるときの視点、視野、視座を意識させることである。
視点とは見るべきところのことであり、一度特定の箇所に注目してしまうと他のところに目が行きにくい。この新人のケースであれば、往訪する際にどのような準備をしたか、客先ではどのような会話があったのか、といった他の視点があることを気づかせることだ。
視野は、単に書類をお届けするということだけに限らず、相手企業と当社はどのような関係か、この書類を届けた後の仕事の流れはどうなっているか、など範囲を広げて考えることである。
視座は物事を見る立ち位置のことで、自分以外の立場に立って考えることだ。書類を持たせた先輩社員の立場、書類を受け取った担当者の立場などに立って考えるのである。
物事の視点、視野、視座を変えることで物事の本質が見えやすくなり、学ぶべきポイントが浮かび上がってくる。勘所は自分自身で自分の頭で考えることである。他者から言われたことは情報としてインプットはされるが、学びにはなりにくい。自分で考えてこその学びなのであり、そこに導いていくのが先輩社員の腕のみせどころとなるわけだ。
さて、OJTトレーナーを唖然とさせたこの新人、現在は中堅社員となり自身もOJTトレーナーとして新人の育成にあたっている。当時の話をしたところ、「いやー、あれは往訪時間ギリギリになってしまったので先輩に聞いたら○○駅から歩いた方が早いと言われまして、それからは都内で効率よく移動するためには往訪先の最寄駅の情報だけじゃなく、地図上での位置も把握しておかないといけないなと思い、都内の鉄道・地下鉄の駅・路線の位置関係を覚えたのですが、今でも結構役に立ってますよ。」とのこと。本人に聞いてみれば思いのほか自分なりに考えていたようではあった。
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プロフィール

南城 三四郎 (なんじょう さんしろう)
シニアマネージャー
大学卒業後、建設系専修学校にて、都市計画、情報処理関連学科の教員として、講義、学生指導を行う。その後、IT企業にてサーバー、ネットワークの保守・運用業務のほか、スマートフォンアプリ、Webサービスの企画、開発を担当するとともに、人材育成担当マネージャーとして社員教育に従事した後、現職。