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column

人生のジレンマとの付き合い方

企業経営に大きな影響を与えた名著の中でも、ハーバードビジネススクールのクリステンセン教授の「イノベーションのジレンマ」は、私にとって、重要な示唆を与えてくれた経営書のひとつだ。と言うのも、あれだけ世界的にエクセレントだと賞賛されていた日本の一流企業が、せいぜい10年か20年ぐらいの間に、アジアの新興国の企業に続々と追いつかれ、追い抜かれていった現実を分かりやすく解説しているからだ。

少なくともバブル経済が崩壊するまで、世界における日本企業のステータスは、素晴らしいものだった。当時、アメリカを抜いて、日本が世界一になるのではないかという幻想まで起こさせた。バブル崩壊後も、山あり谷ありしながらも、やがて日本企業は復活するだろうと言われ続けながら、次第に潮目が変わっていき、やがて世界を席巻した日本企業の地位がずるずると崩れ落ちていったが、なかなか、その現実を頭の中で理解することができなかった。「イノベーションのジレンマ」では、1)優秀な大企業は顧客と投資家に資源を依存しており、主要顧客のあるマーケット中心に戦略を遂行せざるを得ない。2)将来、成長するかも知れないが、成長途上にある市場の規模が小さいと優先順位は下がってしまう。3)優良な大企業は、市場分析は得意だが、そもそも過去に存在しない市場の分析はできず、分析せぬまま新たな市場へチャレンジはしない。4)既存の事業のより良い仕組みややり方を追求するあまり、新規の事業を扱うのが逆に下手になる。5)既存の事業の延長線上で改良を続けていくうちに、顧客ニーズを追い越し、顧客から魅力が感じられなっていく・・。といった具合の説明を読むと、ああ。日本の優良企業もこうした罠に落ちてしまったのかもしれないと納得してしまう。

実は、この本の著者のクリステンセン教授には、「イノベーション・オブ・ライフ」という大変、興味深い著作がもう一つある。この本は、教授が、ビジネススクールの講座の最終回に、学生たちに対して行ってきた「How will you measure your life ?」という授業内容がもとになっていて、企業経営の理論をベースにしながらも、我々個人の人生がテーマになっている。

「どうすれば、幸せで成功するキャリアを歩めるのか。」「どうすれば、家族や友人たちと幸せな関係を築いていけるのか。」「どうすれば、罪を犯すことなく、誠実な人生を歩んでいけるだろうか。」といった問いに対するソリューションを論理的に提示している。論理的といっても、決して机上の話ではなく、彼の経験してきた事象をベースに展開されていて、金銭的報酬を追求するあまり、家庭の人間関係が崩壊したり、仕事で充実感を得られず心身が疲弊したりした友人・知人の例を挙げながら、キャリア的成功を収めながらも、プライベートがハッピーではない人々や、本当に自分が求めるキャリアから遠ざかっていく構造をわかりやすく解き明かしている。

個人としての人生も、企業経営同様に、頭で考えすぎず、行動することが重要である事、走りながら、状況次第では、ゴールや方針変更もすべきである事、仕事がいくら面白くても、人生の資源配分をしっかり見極めるべき事など、誰でもどこかで感じるだろう人生のジレンマともいうべき事象を理解し、それに対応するために役立つ示唆が多々ある。人生100年時代と言われている今、就職前の学生のみならず、いくつになっても自身のキャリアを整理する助けとなるだろう。

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