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column

マイクロマネジメント

 部下に業務を指示したが、どうもうまく進められていない、求める品質に達していない。結局、上司が自分で引き取ってやってしまう。というのは割とよくある話だ。上司の言い訳としては、「自分でやったほうが早い」、「品質が低くてこれでは納品できない」など、いろいろあるだろうが、要は、部下にその業務遂行能力がないと思い込んでいる、部下のことを信頼していない、ということである。

 上司が部下を信頼できなくなると、こんなことを始めることがある。毎朝、その日の業務について、部下と打ち合わせを行い、今日やらなければいけないことひとつひとつについて、手順を細部まで確認する。打ち合わせの締めには、部下がちゃんと理解したか心配なので、再度、手順を復唱させたりする。さらには、適宜、作業の進捗状況を報告させ、そこで問題があれば、対応方法を細かに指示する。1日が終われば、何がどこまで終わったか、予定通りにいかなかったのは何が原因か、などこれまた細かに確認し、では、明日どうするか、といった具合だ。

 このような管理手法を「マイクロマネジメント」という。上司からすると、部下に対して細かに指示しており、業務を適切にマネジメントしているような気になるのだが、部下からすると堪ったものではない。自分の意見や感情は封殺され、言われたままに仕事をしなければならない。その結果、指示されたことがちゃんとできても、それは上司のおかげ、もし失敗しても、それもまた上司のせいとなり、部下は主体的に行動することがなくなり、仕事に対する責任感も持たなくなってしまう。これは一種の「過干渉」だ。過干渉は子育ての世界では、親が一方的に自分の価値観を子供に押し付け、子の欲求を抑圧することだ。その結果、主体性の欠如、他責思考といった傾向がみられるようになる。過干渉は、精神的な虐待と位置付けられているほど、罪深いものなのである。

 Googleの元人事トップ、ラズロ・ボック氏は、著書「ワーク・ルールズ!」の中で「リーダーが犯す過ちは管理しすぎることだ」と述べている。また、アジア開発銀行のオリヴィエ・セラット氏のこんな言葉を引用している。「マイクロマネジメントはミスマネジメントだ・・・人々がマイクロマネジメントに走るのは、組織のパフォーマンスに関する不安を緩和するためだ、つまり、他人の行動を絶えず監督し管理していると気が楽になるのだ―」

 ちなみに、冒頭のエピソードは、いずれも私が新米マネージャーの頃の失敗談だ。初めて部下ができ、とにかく、部下をしっかり育てなければ、と気負っていたこともあり、いろいろな取り組みをしたものだ。きっかけは部下の些細な失敗であった。その失敗に過剰に反応し、自信を失った私はマイクロマネジメントに陥ってしまったのである。つまりは、マイクロマネジメントとは、部下のことを信頼していないだけではなく、上司自身の自信のなさの表れなのである。

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