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column

組織編成の果実

 組織編成の基本は職能別編成だ。経理部に経理マンを集めてひたすら経理事務に当たらせ、営業部に営業マンを集めてひたすら営業訪問に走らせる。同じ部門に居て来る日も来る日も同種の仕事をするのだから、自然に熟達し、部門としての生産性が上がる。つまり、少ない人数で多くの仕事をこなすことができるようになるということだ。組織編成の第一義的目的は、職能を集中させて会社の生産性を最大にすることだ。
もちろん、多くの大企業で見られるように、組織を事業別に編成したり、地域別に編成したりすることがある。しかし、それぞれの事業部の中にはきっと小さな管理部門と、生産部門と営業部門が設置されているだろう。事業部が健全な利益を上げていくためには、事業部として生産性を最大化しなければならないのだから、やはり事業部末端には職能別組織が編成されているはずである。

 とはいうものの、同じ仕事をする人員がただ漫然と集まって仕事をしているだけでは、最大の生産性は得られまい。ここに、部門の長たる管理職の出番がある。部員たちが、毎日の仕事から学んだ「コツ」や「ノウハウ」を相互に交換すれば、より効率的に仕事をできるようになる。こうしたコツやノウハウを集大成してわかりやすいマニュアルにまとめ、説明会を実施すれば、さらに効率よく仕事ができるようになるだろう。便利に使えるツールを準備したり、経験の浅い者を徹底的に訓練したりすることで、一層高い生産性が得られるかもしれない。管理職は、ありとあらゆる工夫を積み重ね、これでもか、これでもかと担当部門の効率性を高めていくのだ。

 さて、仕事の中には、時に、標準からはずれるものが発生する。すべての事態を漏れなくマニュアル化することなんてできない。標準からこぼれてきた仕事は、別途、管理者が特定の部下に細かい指示を与え、出来栄えをチェックし、修正指示を与え、褒めたりすかしたりしながら片づけていく。
業務指示によって部下に任せられる仕事ならまだよいが、どうにも任せられない複雑困難な仕事は、自分でやる。そのような仕事を機敏に見つけて迅速にこなしていくことで、部下は皆安心して決まった仕事に集中することができる。こうして生産性はさらに上がるのだ。

 ところが、仕事というものは、変わる。会社を取り巻く環境が変われば、やるべき仕事が変わる。さきほど話に出たこぼれ仕事が、あとからあとから増えてくる。だから、管理職は、そういうこぼれ仕事と毎日戦いながら、変化する環境に常に目を凝らし、次に何が降ってくるのか、どの仕事がいらなくなるのか、新たに何をどう標準化すればよいのか、だれをどうトレーニングすればよいのか、絶え間のない奮励努力を続けていかなければならない。すべては、少ない人数で多くの仕事をこなしていくためだ。

 予算編成は管理職の重たい仕事のひとつだろう。部下の残業時間の管理も欠かせない。時期がくれば20人もいる部下の一人ひとりを、ルールにのっとって評価しなければならない。息つく暇も無い会議に忙殺される。だけれども、管理職のこうした仕事は、巨大な氷山の、海面の表に出た一角に過ぎないのではないか。海の中には、絶えざる標準化と、訓練と、業務指示と、イレギュラー対応という大きな塊が存在する。職能別組織編成が生産性最大化の道具であるということを前提にするなら、管理職の仕事はこのような姿に見えるのだ。

 管理職研修が重要だ、というけれど、管理職のこのような役割を、もういちど一人ひとりに問いかけるような研修が、たまには必要なのかもしれない。「わかりやすいマニュアルの作り方研修」など、企画してみてはどうだろう。

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