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column

後期高齢者のコンピテンシー

 ある会社の「快挙」について書きたい。

 先端技術領域を舞台に俊敏でフットワークよい事業展開で好業績を続けているその会社は、創業2代目社長が率いている。高い専門性を保持し、少数精鋭で迅速なビジネス展開を行ううえでは、自社独自の人事制度であるべきとの想いから、みずから制度設計の陣頭に立ち3年をかけて慎重な新制度導入を行ってきた。その要となるコンピテンシーの設計と検証には、全マネジャーを巻き込んで多大な時間をかけ、何度も試行し、このほど完成を見た。

 そのようにつくられたから、自社固有のスペシャリティとマネジメントレベルを測るこのモノサシは、マネジャーたちが部下を測定し処遇し育成する道具としてしっかり定着していて、機会あって彼らとの宴席に連なった際に、呑みながらのくだけた会話のなかでもごくごく自然に「コンピテンシーベースの育成」が話される情景を目の当たりにしたものだった。

 社内と事業パートナーに向けた今期の方針発表の場で、社長はこんなことを報告した。この会社は、専門性が極めて高い先端技術の最前線でビジネスするから、分化された領域にあわせたくさんの顧問を有している。顧問としてそれぞれの方と長い付き合いではあるが、その中の2人をこのほど社員として登用した、というのだ。一人は、72歳。もう一人は、84歳。3年契約ということなので、後者は87歳までの雇用である。

 多くの企業が、60歳以降65歳までのシニア人材再雇用の方針と仕組みづくりに右往左往しているなかで、いきなり超シニアの雇用である。「労働法の範囲を超えているので、どんな契約にするか分からなくて、、、、とりあえず、パソコンとiPhoneと名刺を渡しました」と社長は笑った。

 かなりの高齢者を採用する英断もさることながら、刮目するのは、冒頭にあげたような、社員のコンピテンシーを厳しく問い処遇し育成することに執念を燃やすこの会社が、この年齢の人物を採用したという事実。つまり、このお二人のコンピテンシーは、組織の構成員として必要なレベルだと判断したということだ。それが、高度に専門的で特殊な領域こその知見やスキルや人脈だから、年齢を超えて活用できるということかもしれないが、だとしてもここには、高齢=能力劣化=組織貢献不能、といった「常識」をひっくり返す痛快さがある。

 そういえば以前、外資系のコンサルティング会社にいたときに、70歳代後半の営業マンを雇用していたことがある。経験した会社と立場で培われたせいか上品な営業スタイルが魅力的で、成約力も優れ、高いパフォーマンスをあげていた。年齢によらず劣化しないコンピテンシー、さらには、高年齢だからこそ高まるコンピテンシーもあるかもしれない。その追究もまた、各社各様の課題となっている雇用延長=シニア活用に必要なのではないか。

 この会社には、ぜひ、雇用契約を更改していただき、90歳を超える社員の雇用への挑戦も見せてもらいたいと思う。

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