高柳 公一 |5 |執筆者|㈱トランストラクチャ

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高柳 公一

column
給与情報の公開レベル | その他

給与情報の公開レベル

コンサルティングをしていると、企業間で、人事上のポリシーに、大きな隔たりがある事を時々、感じさせられる。たとえば、社員の給与や評価結果を社内でどこまで公開するのかという事も、その一つだ。評価結果は、大変、個人的なものであり、ラインの上司と人事部しか知るべきものではなく、他部門であれば、役員クラスでも、公開されないという考え方を持つ企業もあれば、管理職以上であれば、自分の所属階層以下の社員の評価結果については、だれでもアクセス可能で、むしろ積極的に部門間どうしで、評価に対して意見を求めあい、より適正な評価を行っていこうという企業もある。 給与額についても同様で、法的な観点もあり、さすがに、一人ひとりの給与明細を社員全員に公開しているところはあまり見かけないが、人事制度で決められた各等級の給与レンジや賞与額決定ロジックや月数を社員に公開していて、役割やポジションにより、おおよその給与水準が推測可能にしている企業もあれば、給与レンジに加え、誰がどの等級であるかという事さえ、本人以外には、一切、公開していないという企業まである。 このように、処遇に関する情報開示ポリシーは企業により様々であるが、給与額情報をある程度、積極的に公開していこうと考えている企業が、今、徐々に増えているように感じる。その目的は、どんなパフォーマンスや役割を担えば、いくらの給与が期待できるのかを社員に明示する事で、給与支給の透明性が高まり、社員のより高いパフォーマンスを引き出すことにある。他人と比べた自分の給与状況を知らされると、より熱心に働き、業績を伸ばしたという研究結果もあるようだ。また、給与の透明性を高めることで、男女間での給与格差是正にもよい影響が期待できるという声も聞く。 一方、いままで、給与レンジや賞与額決定ロジックを公開してこなかったのは、社員に対して、なぜ、その給与額や賞与額になったのかをうまく説明することができないという理由によるところが多い。給与情報の公開をすることで、適切で合理的な給与・賞与決定メカニズムへ整備を促進していこうと、経営や人事が、一歩、前進していこうとする意思の表れでもある。 そもそも、企業サイドがいくら、給与情報を秘密にしようとしても、社員間で給与明細を見せ合うことまで、止めることはできないし、最近では、匿名で社員や元社員が、給与情報を提供して、ネット上で、かなり具体的な月収や手当額まで、わかってしまう時代である。こうした大きな流れに対抗して、企業サイドで、情報を制御していくことはますます難しくなっていくだろう。社会の情報開示のトレンドが進行する中で、社員のパフォーマンス向上や優秀な社員の獲得・維持のために、給与情報や決定メカニズムの公開がより進んでいくことになるだろう。

職場の民主主義 | その他

職場の民主主義

「社員のロイヤリティを高め、パフォーマンスを向上させるために、他社ではどんな取り組みをしていますか?」企業経営者や人事部門の責任者から、時々聞かれる。 先般、新聞(4月5日付 ウォールストリート紙)に、ある興味深い記事があった。共和党・民主党の大統領候補選出で沸くアメリカでは、一般企業においても職場の民主主義が広まりつつあるという内容だ。 「オフィスレイアウトをパーティションで仕切るかオープンテーブルにするか」「職場の共有スペースで音楽を流すか否か」あるいは、「本社の引っ越し先のロケーションはA地区かB地区か」等、アンケート調査用のデジタルツールを利用して、一般社員が、職場の運営等について発言の機会を与えられたり、意思決定に参画する会社が増えているようだ。また、さらには、最終意思決定は経営・管理職側にあるものの、意見を参考にするということで、CEO決定や人材の採用の是非まで、社員に問う企業もある。 事の大小に限らず、組織運営上の意思決定を従業員の投票を行って決めることは、会社経営への参画意識が高まり、リテンションやモチベーションにプラス効果をもたらすことにつながるだろう。日本に限らず、米国でも、社員の参画意識を高め、やる気を引き出そうと各企業が腐心しているということだろう。 ただ、こうした取り組みには当然リスクもある。社員に迎合するようなアプローチで行ったり、十分に投票環境を整えておかずに投票を実施したりすると、誤った判断や社内の混乱をもたらすことになる。 社員投票を行う際には、経営・管理職サイドは、適切な情報と意思決定のポイントをよく整理して提供して、それぞれの選択肢のメリット・デメリットやインパクトをよく理解させたうえで投票させることが重要だろう。 我が国では、組織運営上の判断をする際に、社員に積極的に意見を聞こうとする例はそう多く聞かない。一般的には、従業員意識調査として社員アンケートを数年に一度、行っている場合はあるが、それさえ実施していない企業も少なくない。 今や、テクノロジーの発達により、比較的容易に、社員投票やアンケートが実施できる環境が整いつつある状況である。採用難やリテンション対策で頭を悩ます企業や社員のパフォーマンスを最大化することに取り組んでいる企業にとって、投票のテーマは、よく吟味するとともに、適切な段取りと社員に対するメッセージを十分考慮した上で、職場の民主主義を広めていくことは、企業差別化人事施策としても有効に機能するのではないだろうか。

組織の整体師 | その他

組織の整体師

ある意味、職業病なのかもしれない。長い間パソコンをたたき続けていたためか、肩こり・首こりが激しくなり、先日のある週末、頼りの整体師に施術を受けに出かけた。 「高柳さん 今日も、相変わらず、すごい硬さですよ」 私の肩をもみながら、整体師のAさんは、そう言った。 「肩こりの主たる原因は、血行不良なんです。長時間、同じ姿勢をしていると、特定の部分の筋肉が緊張状態になり、その周辺の神経や血管を圧迫する。その結果、血液の流れが悪化し、筋肉は酸欠状態となり、老廃物がたまり、こりを感じるようになります。ですから、仕事の合間に首や腕を回したり、軽い運動して、とにかく、血行を良くして、老廃物をためないようにしてください」 長い時間、同じ姿勢で過ごすと筋肉が緊張し続けることになるので、血液の通りが悪くなり、酸素の供給が滞ったり、老廃物を滞留させ、それが慢性化すれば、目まい、頭痛、集中力の低下など、全身に大きな影響を及ぼすことになるだろう。 マッサージサロンのベッドの上で、彼の話を聞きながら、人間の体で起こるこうした現象は、実は日本企業の組織の中でも、よく起こっているのではないかと思った。 組織の血流を停滞させないように、積極的に人事異動を行っている企業ももちろんあるが、組織やその構成人員が硬直的で、一度、ある部署に所属されたら欠員補充のような異動以外は、積極的に人事異動を行わないところは、思いのほか多いのが現実である。 そうした企業が人事異動に消極的な事の主たる理由として、同じ社員が継続して業務を行うほうがノウハウが蓄積され効率的だからという主張である。確かに、新しく移ってきた社員は、従来やっていた社員より、最初は効率が悪いかもしれないが、次第に慣れていくものだし、異動がないと、業務の標準化、マニュアル化の遅れの原因にもなり、業務の属人化が進んでいくことにつながる。あまり長い期間、特定のメンバーに業務を任せ続けてしまうと、仕事の内容がブラックボックス化して、外部で把握できなくなっていく。人事部門は、異動に伴う引継コストという短期的視点ばかりでなく、異動を行わない事による中長期的なリスクも考慮して、人事異動を実行していかなければならないはずである。 もう一つは、本当はもっと積極的に人事異動をしたいのだが、組織が縦割りで一度配属されたら、他部門への異動は現場が受け入れてくれないという理由である。本当は、やりたいのだが、現場の部門も抵抗されるということだ。確かに。現場の各部門の力が強く、人材の放出に、部門長が否定的な企業も少なくないが、これこそ、「全社最適<部門最適」の典型であり、人事主導になって、トップを巻き込みながら、組織全体での血流の活性化の重要性を浸透させていかなければならないところだろう。 ヒトの体と同じで、人事異動を適切に行う事で、組織の血液たる「情報」の流れがよくなるとともに、蓄積された老廃物も取り除かれていく。組織が硬直化し、企業全体が機能不全に陥らぬ前に、人事部門は組織のコリを取り除いていく優秀な整体師の役目も負っている。

プレイングマネージャー禁止論 | 人事制度設計

プレイングマネージャー禁止論

 「生産性の動向2015年度版(日本生産性本部)」によると、2014年の我が国の労働生産性は約73,000ドルで、OECD加盟34カ国の中21位、主要先進7カ国で最も低い水準が2005年より続いている。我が国の企業の生産性が低い水準で留まっている背景に何があるのだろうか。  コンサルティングの現場、肌で感じている事をいくつか挙げてみよう。例えば、「業務の分担」の問題。多くの企業で、正社員が非正社員と同様の業務を行っている状況が少なからず見受けられる。非正社員より労働コストの高い正社員が、非正社員と同様の業務を行い続ければ、生産性が低下するのは当然である。そこにメスをいれることができていないのは、誰が、どのレベルの業務を行うべきかというモノサシが現場で確立されないまま、放置されているという事だろう。  次に、「不要な残業」が行われ、それが見過ごされているという現実。なぜ、残業が必要なのか、どのくらいの追加時間が必用なのか、誰もよくわかっていない。残業をマネジメントするための環境が整っていないので、本来は就業時間内に当然完了すべき業務が残業時間に回されたりしても、気付かなかったり、否定することができない。適切な残業基準ができれば、就業時間内に仕事をかたずけてしまおうという意識が高まり、業務の生産性は高まっていくはずである。  もう一つは、「不適切な意思決定プロセス」である。意思決定に無関係な人物まで会議に召集されたり、せっかく会議を招集したのに、延々議論の末、結論をださなかったり、逆に、しかるべき時に、意思決定の場が設けられず、何度も先送りされたり・・。こうした不適切な意思決定プロセスのために、関与者の多くの作業と時間が無駄に使われていることを深刻に受け止めなければならない。  さらには、部下と上司の間で、「適切なコミュニケーションがされないこと」で、無駄な作業ややり直し作業が発生したり、現場における「業務の標準化やシステム化への主体的取り組みマインドの低さ」なども、我が国の生産性向上を阻害する要因といえるだろう。  実際のところ、大多数の企業では、それらを問題として認識している。が、現場の管理職がその他の業務で忙しすぎて、結果、本格的に手が付けられていないというのが実情なのではないか。本来、管理職は日々の実務を行わず、配下の実務者のアウトプットを最大化するためのマネジメントを行うことがミッションであるはずだが、我が国では、バブル経済崩壊以降、長きにわたり、合理化推進の旗印のもと、組織の頭数を抑えるために、管 理職をいわゆるプレイングマネジャーと位置づけ、非管理職が行うべき実務まで、管理職に多大に追わせてきたことで、管理職本来のミッションが機能不全に陥ってしまっている面があるのではないか。また、当の管理職も、非管理職時代から慣れ親しんだ実務を引き続き行うことを会社から許容されている事で、本来のマネジメントはほどほどでよいという免罪符を与えられた感覚になっているのではないか。  厳格に管理職と非管理職のミッションを切り分け、管理職から一切のプレイヤー的業務を取り上げ、四六時中、配下の組織パフォーマンスを高めるためのマネジメント業務にだけ集中させるぐらいの覚悟で、生産性向上に正面から取り組める環境を整えていかなければ、我が国の生産性問題は本質的に解決されないだろう。