「調査・診断(組織分析) 」の記事一覧(1 ページ目)|コラム|株式会社トランストラクチャ

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調査・診断(組織分析)

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会社の魅力の育て方 | モチベーションサーベイ

会社の魅力の育て方

 「いま、みなさんが大学生だったとして、御社のどこを魅力だと感じて入社しますか」 人事制度変革をご支援する中で、クライアントの特徴、その企業らしさを言語化するために、ワークショップでこのような質問を投げかけることがあります。  とある中小企業のお客様のなかに、「若い時に戻れるなら、同じ業種の大手企業へ入社したいなぁ。そっちのほうが給料も高いし、休みも多いし。」と発言される方がおられました。ほかの参加者もこの発言に影響を受けてしまい、「うちの会社は給料が安い」「シフト制で休みが少ない」など、他社と比較し劣っている点を次々と挙げられました。「アットホームで社員同士仲が良い」「地域密着のビジネスで転勤がない」といった良いところも挙げられましたが、ほかの企業と比べて突出している点ではないとの意見が出て、それ以上、魅力について掘り下げることができず、結局、自分たちの会社に特徴や魅力がない、という意見にまとまってしまいました。  たしかに、多くの中小企業は、給料や休日休暇など、処遇面で大手企業に見劣りしてしまうことが多いです。独自のビジネスモデルを持っていない場合は、なおさら自社の魅力を問われても、どう説明したらよいか、難しく感じてしまうのでしょう。  ただ、地方の小さな町村での地域おこしの成功事例と比較するとどうでしょうか。  村や町は、自然豊かな美しい景色、おいしい食べ物なども魅力として訴求していますが、それらはどこの地域でも素晴らしく、差別化要因になりにくいものです。成功事例で共通的に紹介されていたのは、その地域のことを四六時中考えているキーパーソンがいて、その人の姿と熱意にひきつけられた生産者や事業者が、思いをともに行動を続けていることでした。住民たちは、日本の中で最も素晴らしい地域だから推しているのではなく、地域の魅力について自分に問い直し、仲間同士で話し合い、エンゲージメントを高め、活動の力に変えていったのではないでしょうか。  会社の魅力を見出し育てる、エンゲージメント向上についても、同じことが言えると考えます。  社員一人一人が、自分がなぜこの会社に入社したのか、どうしていまも辞めずに働き続けているのか、定期的に問い直し、相互に対話を重ねることで、エンゲージメントは高まります。そのうえで、所属企業の魅力を問われれば、社員は、自社の魅力を社外の方に語ることができるでしょう。もちろん、労働条件を改善することも有効ですが、毎年、際限なく労働条件を改善できるわけではありません。労使一体となり、会社の魅力を言語化し、育てていくために、定期的にエンゲージメントスコアを把握し、スコア結果について話し合い、場を設けることは、エンゲージメントを高め、その企業らしさを作っていくものだと、私は考えています。

「管理職レディネスをどう高めるか」(育成のためのアセスメント①) | スマートアセスメント®

「管理職レディネスをどう高めるか」(育成のためのアセスメント①)

 管理職の登用審査には、アセスメントセンター方式が有効だと何回か書いてきたし、実際に使用する企業数も増えつつある。 ■「登用の失敗」はなぜおこるか(アセスメント活用の勘所①) ■外部視点評価を過信するな(アセスメント活用の勘所②) ■VUCAリーダーをどう見極めるか(アセスメント活用の勘所③)  ただ、審査の合否判断にだけアセスメントが使われるのは、あまりにもったいないのではないか。いざ管理職になろうかとする際に、「あなたは、能力不足だからダメ」といわれても、能力はすぐにはどうにもならないし、失地挽回には1年後の再審査にかけるしかない。  審査ではなく、管理職「候補者」の育成のために、アセスメントを使ったらどうか。せっかくアセスメントでは「管理職としての能力発揮可能性」を評定できるのだから、もっと早く、たとえば管理職手前の等級に昇格した時点でそれが分かっていれば、審査までのあいだに、管理職へむけての成長に努められるからである。結果、候補者の能力の底上げができることになるわけだが、アセスメント先行実施の、より大きな効用は、「管理職レディネス(=管理職となる準備ができた状態)」が醸成できることだ。   シミュレーションを通じたアセスメントを受けることで、第一に、管理職業務のなんたるかを、きわめて具体的に体感理解できる。第二に、そうした業務における自身の(現在の)能力課題を知ることができる。現在はプレーヤー業務ではあるけれども、将来管理職になった際の「弱み」があきらかになっていれば、現状業務を通じてのその克服を、上司も本人も意識し実践できる。  では、こうしたアセスメント先行実施による育成を意図したとして、登用審査としてもう一度アセスメントをするのかどうか。もちろん、仕上がりをテストで確認するのが効果測定としては確実だが、必ずしもアセスメントを2回する必要はない。たとえば、以下の二つの方法がある。 1.先行アセスメント+社内審査 候補者に対して、審査の1年前にアセスメントを実施、その結果を本人、上司にフィードバック。自身の強み弱みを踏まえて、上位課題(個人ではなく部署の課題)を設定し、その解決のための行動計画を立案・実行。■上位課題のレベル ■計画の実践度合い ■能力課題およびその是正への取り組み、を面接(経営陣による)で審査 2.先行研修(シミュレーション研修)+アセスメント審査 管理職手間の等級への昇格者に対して、「アセスメントの原理を応用した管理職シミュレーション形式」の研修を実施。演習と解説、自己分析により、管理職業務の体感理解と自身の能力課題を把握。結果を上司と共有し、育成にむけたOJT(権限移譲含む)と自己啓発を計画化し実行。登用タイミングでアセスメント審査をうける。  いずれも、プレーヤーの延長ではない管理職という節目だからこそ、❝入学評価❞であるアセスメント(の原理)を管理職レディネスの醸成つまり管理職先行教育に使おうということである。加えて、②のアセスメントの原理を用いる研修は、階層別研修におけるブラッシュアップ研修でもさまざまに実施できることを付記しておきたい。  階層別研修は、通常、階層ごとにエントリー研修とブラッシュアップ研修を用意するが、前者は、当該等級昇格者向け、後者には、目的別に3種類ある。ひとつは、当該等級在籍者の能力・行動課題の是正目的のもの。評価情報分析による共通課題に基づく。もう一つが昇格候補者への研修。次の等級への準備研修であり、こちらは、上記②と同様に、上位等級での期待行動をシミュレーションのなかでの体感理解と自己分析によって、「昇格レディネス」の醸成ができる。併せ研修行動を観察・評価することで、「育成しながら見極める」こともできるので、この手のブラッシュアップ研修を階層別研修に組み込むことは、効果的効率的育成施策として推奨したい。  ちなみに、ブラッシュアップ研修の3つ目は、当該等級滞留者への研修。上位等級への昇格の見込みがない人々を、いかに戦略的にかつモチベーション高く稼働させるか。難易度の高い施策ではあるが方策はさまざまにある。今回のテーマには外れるので、別の機会に紹介したいと思う。 「育成のためのアセスメント」を考えるコラム2回シリーズ。 「管理職レディネスをどう高めるか」(育成のためのアセスメント①) →今回 「内省の強制」から始める(育成のためのアセスメント②) ※育成のためのアセスメント「スマートアセスメント」はこちら

「辞めない」だけじゃない、従業員の真の定着を探る | モチベーションサーベイ

「辞めない」だけじゃない、従業員の真の定着を探る

従業員の定着の本質とは  人口減少とそれに伴う労働市場の採用競争の激化を背景に、多くの企業で人材の定着が喫緊の課題となっています。私は100~1000名規模の企業を中心に組織人事コンサルティングを行っていますが、「定着率を上げたい」というご相談が増加しています。しかし「定着」といっても、単に「従業員が辞めない状態」なのが望ましいわけではありません。会社にとって従業員は採用するのも解雇するのも簡単ではありませんから、「従業員が長期間、高い意欲を持って業務に精励している状態」が定着の本質であると言えます。 社員意識調査データから見えてきた定着のカギ 当社が実施している社員意識調査の分析結果の中で、総合満足度と勤続意向(社員が今後もその会社で働いていきたいという意欲)がともに高い水準にある企業があります。  「総合満足度」は高い意欲に、「勤続意向」は長期間の勤務志向に対応しており、この両方が高いということは、冒頭で述べた定着の本質を実現している企業と言えます。それぞれ業種業界・企業規模・男女の構成比等はバラバラですが、「総合満足度」「勤続意向」に対して統計的に有意な影響を示した要因を抽出すると、特徴的な共通点があることが分かっています。  満足度を高める要因 会社への信頼と誇り 仕事のやりがい・主体性の尊重 成果や努力の承認 良好な職場環境と上司との関係性 勤続意向を高める要因 良好な人間関係(満足度と共通) キャリア形成支援の充実 適切な人事異動 労働環境の整備 公正な昇進・昇格・昇給制度 役割に見合った仕事の配分  とくに興味深いのは、01.満足度の要因と02.勤続意向の要因では影響する因子が若干異なる点です。満足度には「やりがい」や「承認」といった心理的要素が強く影響する一方、勤続意向には「公正な評価」や「キャリア支援」といった雇用関係における実利的な要素がより強く影響しています。    一方、定着率の低い企業では、次のような課題がよく見受けられます。 人事評価制度が機能していない 管理職の育成不足 部下の成長支援やフィードバックの欠如 このような企業の中には、管理職自身が日々の業務に追われ、部下のキャリア支援や評価に十分な時間を割けないケースが目立ちます。人員不足による管理職の現場業務過多が、従業員のモチベーション低下や職場のコミュニケーション悪化に繋がり、定着率の低下を招くという悪循環に陥っていることもあります。 定着促進のためにHOWよりWHYを問う 従業員の定着に影響する要因について様々お話ししましたが、これら全てに対処するのは非現実的です。また、企業の経営環境や組織運営の文脈によって各要因の影響の濃淡も変わってくるでしょう。限られたリソースで自社に効果的な施策を打つためには、何をするか(HOW)よりも何が原因か(WHY)を突き止め、理論的に正しい施策を打つことが必要です。そこで、社員の意識調査と合わせて、客観的データを用いた調査・分析による「組織の健康診断」で自社の課題を適切に把握することが重要です。 具体的なチェックポイントとしては例えば以下の項目が代表的です。 給与水準:同業・同規模企業と比較して適正な水準か 労働分配率:自社の数年間の推移や業界平均と比較して適正な水準か 管理職と一般職の給与バランス:給与の逆転現象が起きていないか 管理職の育成状況:360度診断などによる客観評価  ちなみに、360度診断で高いスコアを記録している管理職が多い会社は従業員定着率も高い傾向にあることが分かっています。これは上司だけでなく、同僚や部下、他部署など、複数の関係者の意見を元に評価とフィードバックを行うもので、管理職の成長機会の提供にとても有効です。  定着率向上は一朝一夕に実現するものではありませんが、様々な原因(WHY)の中から自社の「問題の重心」を正確に把握し、的を絞った施策を継続することで、確実に成果を上げることができます。まずは組織の健康状態を客観的に診断することから始めてみてはいかがでしょうか。  

「内省の強制」から始める(育成のためのアセスメント②) | スマートアセスメント®

「内省の強制」から始める(育成のためのアセスメント②)

   「管理職の登用審査」に使われるアセスメント(=アセスメントセンター方式)を、「管理職候補者の育成」に使うことを前回提案した。アセスメントの利点である客観的な保有能力判断を用いることで、的確に管理職レディネス(=管理職になる準備ができている状態)の醸成が出来る。管理職手前の早い段階で、管理職能力として何が足りないかがわかれば、その後、個別計画的なOJTやOff-JTを組むことで能力伸長や弱点補強ができるからだ。  例えば、把握された強み弱みを踏まえて、上司が、その部下を管理職にすべく育成計画を組み権限移譲を含むOJTをすればいいし、共通して足りないスキルがあれば研修を組む、といった対象者の弱点の実態に即した効果的で計画的な管理職候補者育成が可能になる。  その際にもっとも大事なことは、まずは、本人が自身のアセスメント結果を「自分事」として腹落ちすることである。「分析力」はわりと良い点とれてるが、「創造力」はぜんぜんだめだな。「人材育成力」はイマイチの点だったな、などとテスト結果に一喜一憂するだけでは、まったく意味がない。自分事としての腹落ちとは、①問題に対して自分がどう答えたからこの評価点になったのだと「理解」し、②たしかに日常業務でもこの点は弱みだなと「納得」し、③是正のためにどう「行動」するかがわかっている、ということである。  この、①理解→②納得→③行動、を本人任せにしないで、きっちりとフィードバックを行うこと。いわば、「内省の強制」のイベントとしてのフィードバックが、アセスメント以降の育成の出発点として必須だと強調しておきたい。  それには、二つの方法がある。ひとつは、アセッサーによる個別フィードバック面談。実際の評定者だから、評点の理由はきわめて具体的に説明できる。加えて対話のなかで、本人の違和感や日常の課題感を聞き、演習行動との関係を意味づけさせることで、結果の腹落ちを促す。つまり、自身の業務の文脈でアセスメント結果を再確認させ、具体行動に結びつけることが、フィードバック面談の目的となる。  もう一つは、受検者集合型のフィードバックセッションだ。こちらは、ワークショップ形式なので個別面談のようなきめ細かさには劣るが、グループダイナミクスならではの「気づき」効果の大きさに優れる。たとえば、インバスケット演習であれば、いくつかの案件について、自身の回答を手元にもって、正解に向けてのグループ討議をする。講師の「この案件では何が問われ、どうすべきだったのか」という解説とともに、他者がどう考えどう行動したかを目の当たりにすることで、自身の不足や課題に如実に気づかされる。仮に、同じ管理職を目指す立場として、どうも自分は劣っていると体感したとしたら、その焦りは、以降の自己啓発の原動力にもなるだろう。  このセッションでは最後に、自己確認した能力課題に対して、以降の改善行動方針を作らせるが、そこでも、共有のなかで他者の方針に触れることで、自身に足りない視点に気づき、方針のブラッシュアップの場となるという効用もある。セッションを通じて、他者との考え方や着眼の違いに直面することが、ときに危機感をもった自己課題への気づきをもたらすわけである。  自分の能力課題は何なのか、それをどう解決するか。その切実な理解と自己啓発の意思がなければ、上司が考える計画的な指導も、きちんとした方法論やスキルの教育も、十分な効果は望めない。いま管理職としてなにが足りていないかが自覚できていて、それをどう解消していくかの意思と方針をもつこと。それが、管理職レディネスを高めるために不可欠な第一歩なのである。   「育成のためのアセスメント」を考えるコラム2回シリーズ。 「管理職レディネスをどう高めるか」(育成のためのアセスメント①)  「内省の強制」から始める(育成のためのアセスメント②)→今回 ※育成のためのアセスメント「スマートアセスメント」はこちら  

マネジメントのミスマッチを防ぐには? 管理職の昇格試験の改善ポイントを解説 | スマートアセスメント®

マネジメントのミスマッチを防ぐには? 管理職の昇格試験の改善ポイントを解説

多くの企業で「マネジメントに向いていない人がマネージャーになっている」いわゆる管理職のミスマッチ問題が存在しています。優秀なプレイヤーを管理職に昇格させても、管理職として成果を出す人もいれば、管理職としての役割を果たせない人もいます。 どうすればマネジメントのミスマッチを防ぐことができるのでしょうか。 重要なのは、管理職の昇格試験の段階で、「管理職として期待される行動が発揮できるか」を見極めることです。本記事では、マネジメントのミスマッチを防ぐために、昇格試験の改善ポイントを解説します。 目次 1.管理職の昇格試験とは 2.管理職の昇格試験の目的 3.管理職昇格試験の内容詳細 4.まとめ 1.管理職の昇格試験とは 社員が管理職の昇格を希望するときに、昇格要件を満たしているかを判断するプロセスを指して「管理職の昇格試験」としています。後述するように、「試験」といっても、テストとは限らず、面接、模擬演習、360度評価など、さまざまな手法が存在します。 このように多様な評価手法が存在する理由は、管理職昇格判断の難しさを示しています。通常、管理職の候補となる人材とは、メンバー時代から業績や貢献が認められて昇格しています。ところが、管理職になったとたんに、マネジメントという新しい業務を任されることになります。 マネジメントができるかどうかは、プレイヤーとしての評価からは判断がつかないため、人事評価とは別軸のプロセスで見極めを行う必要があるのです。 2.管理職の昇格試験の目的 管理職の昇格試験の目的は、会社が管理職に期待する能力・行動を発揮できるかを見極めることにあります。期待する能力・行動で共通性の高いものとしては、たとえば以下が挙げられます: 対人能力・コミュニケーション 意思決定・問題解決力 適応力・ストレス耐性 情熱・達成意欲 経営的な視点。 これらの共通項をおさえつつも、何を重視するのかという「めりはり」は、会社によって、また事業や組織のステージによって変わってくるものです。 組織連携の細やかさに競争力の源泉のある会社であれば、「対人能力・コミュニケーション」とりわけ「仕事の目的や詳細を丁寧に説明する」という行動が重要かもしれません。接客や小売業のなかには、ストレス耐性を重視する職場もあります。 研究開発部門の管理職は領域に関する研究実績、IT事業であれば領域の資格等級などの「専門性」が必要とすることもあります。 まず、「わが社の管理職に求める能力・行動は何か」を明確にすることが、管理職の昇格試験を改善する第一歩です。 3.管理職の昇格試験の内容詳細 「管理職に求める行動・能力」を特定したら、それを評価するのに適した手法を採用することが、次に重要です。 以下は筆者の独断による、目的と手法のマッチング例です。 横軸が期待される行動・能力、縦軸が手法例で、とても適しているを◎、適しているを〇、可能であるを△にしています。また運用によって適否が変わるものは()に入れています。   対人能力・コミュニケーション 意思決定・問題解決力 適応力・ストレス耐性 情熱・達成意欲 経営的な視点 高い専門性 筆記試験         〇 〇 人材アセスメント(インバスケット)   〇 △ △ 〇   模擬プロジェクト 〇 〇 〇 〇 〇 (〇) 360度診断 ◎   〇 〇     小論文       ◎ ◎ (〇) 役員面接       ◎ ◎   このような整理を使うと、わが社に必要な管理職の昇格試験のセットが見えてくるはずです。いくつかの事例をご紹介しましょう。 例1:目標達成型チーム運営の管理職 (営業組織など) 現場の管理職に求められること: ー自組織で達成すべき目標とその意味合いをしっかりと理解する ー部下にブレイクダウンした目標を伝え、声掛けや励ましで鼓舞する ーチームを盛り上げ、あきらめず取り組む 診断手法と見極めのポイント: ー360度評価⇒ 対人コミュニケーション力の発揮度合い ー小論文⇒ 自分の言葉でビジョンを語る力の発揮度合い ー役員面接⇒ 真摯さ、やる気のプレゼンテーション力の発揮度合い 例2:現場における創造性の発揮を重視する自律型組織 現場の管理職に求められること: ー指示待ちではなく高い目標に向かって課題解決に取り組む ー失敗や多様性を許容する心理的安全性の高い職場風土の醸成 ー部分最適に陥らず全体最適で意思決定を行う 診断手法と見極めのポイント: ー360度評価⇒ ハラスメント行動がないこと ー筆記試験⇒ 経営や論理思考の基本スキルの発揮度合い ー人材アセスメント⇒ 課題解決力、意思決定力の発揮度合い 例3:研究開発リーダー  現場の管理職に求められること: ー研究開発のロードマップに基づく研究テーマを設定する ーメンバーの自律性・情熱を尊重しつつ、進捗管理を行う ーコミュニケーションを活性化する 診断手法と見極めのポイント: ー経営提案(アクションラーニング研修※)とピアフィードバック⇒ 論理性、巻き込み力、影響力、コミュニケーション力 ー人材アセスメント⇒ 課題解決力、意思決定力の発揮度合い ※他部門メンバーと協働し、事業・部門課題に対する施策提案を作成し経営にプレゼンテーションする長期研修 まとめ 管理職のミスマッチが生じているなら、管理職昇格試験を見直しましょう。ポイントは2つです。 ・目的=「わが社の管理職に求める行動・能力」を明確化すること ・目的に適した手法を選び、多角的に見極めること 管理職昇格試験の内容は、広く共通的な要素もありますが、同時に、会社や事業のステージによってめりはりが異なるものです。わが社に、今、どのような管理職を求めているのかを分析していくプロセスこそが、基準の明確化や適切な見極めにつながります。 管理職は、現場の要であり、業績の成長と人材の成長を担う存在です。管理職の質向上をめざすには、まず入口となる、管理職の昇格試験から見直してみてはいかがでしょうか。 参考 [誰を昇格させるか](https://www.transtructure.com/column/hr-management/p5986/) [管理職昇格試験では遅すぎる](https://www.transtructure.com/column/search/smart-assessment/p6287/)  [昇格試験をWEB化して公平性と即戦力化を実現~階層別テストを活用した事例](https//www.insource.co.jp/ihl/251027_assessment_hierarchy_test.html)  [管理職登用試験の方法やポイント|論文例や問題例を紹介](https//etudes.jp/blog/management-promotion-examination)  [昇進・昇格試験に関する導入事例](https//www.noma.co.jp/case/promotion_test/)  [昇格選考における論文評定の分析(Recruit Management Solutions)](https//www.recruit-ms.co.jp/research/essay/pdf/2004jaas01.pdf) トランストラクチャのWebで完結する人材アセスメント「スマートアセスメント」ご紹介

なんのためのエンゲージか | 調査・診断(組織分析)

なんのためのエンゲージか

  20年以上前、多国籍企業で働くようになって、エンゲージメントという言葉を知った。毎年、エンゲージメントサーベイの結果が国別にフィードバックされ、自国の数字改善に向けた行動の報告・共有・実践を強いられるという行事には辟易しつつも、多国籍の経営を統制する単純でオペレーショナルな手法にはなるほどと感服。各国従業員の「心情」の定量把握として、社員満足度とかモチベーションではなく、あくまでも組織成果に結果する(といわれる)エンゲージメントレベルを測るという点も、さすが業績指向のスタンスとして新鮮に感じた記憶がある。    当時、我々が受けていたサーベイでは、エンゲージメントレベルは以下の4つの総合設問で測られていた。 ・I speak highly of my organization's brand and services. ・I would recommend my organization as a great place to work. ・I feel motivated in my current job. ・Overall I am satisfied with my current job.    それに対する相関性を診るための設問群が、Global & Local Sr. Leadership 、Recognition & Reward、Culture、Work Environment、Immediate Manager といったカテゴリーで用意されていた。5,6年前から、日本でもエンゲージメントの大事さが喧伝されるようになって、そのサーベイもさまざまに提供されているが、だいたい構造はこの頃のものと変わらない。何がエンゲージメントを高めるかについても、ドライバーはすでに明らかになっている。その具体表現は論者や研究者、サーベイ会社によって異なるものの、結局のところ、従業員がいだく3つの「実感」に集約できる。   有意義感 貢献実感 成長実感    ひらたくいえば、 ①目の前の仕事の意義(会社にとっての/社会にとっての/自分のキャリアにとっての)がわかっていて ②承認や報奨で自身のなしえたことの価値が確認でき、③仕事を通じての成長が実感できている、ということである。ゆえに、これら実感を喚起できれば、エンゲージメントは高まる。    さて、冒頭「組織成果に結果する(といわれる)エンゲージメントレベル」と書いた。人々が、エンゲージされて働くことで、高い意欲と主体性をもって目の前の業務に臨み、パフォーマンスを上げ、組織の生産性向上に資する、とされる。ひいては、企業価値(=経済価値)向上につながるゆえに、今年始まった人的資本情報開示でも、KPIの一つとしてエンゲージメントレベルを記載する会社は多い。    要は、「皆が自ら頑張って働き成果あげてくれる」から、いうことだが、その限りではエンゲージメントの効用としてずいぶんと矮小なのではないか。たとえば、中国語で「頑張れ」を「加油」というがごとく、良い燃料を入れることで機械を最大稼働するかのような印象だ。機械ならぬヒトが働くとは、決められた業務を遂行するのではなく、やるべき業務を考えだす=業務創造にこそ本領がある。そうした、人が「考え、創り出す」行動こそをドライブするのがエンゲージメントだ、と考えたほうが腑に落ちるし、元気がでる。    実際、組織論や人材マネジメント論の領域では、エンゲージメントの向上が創造性発揮に直結する原理はあきらかにされていないものの、エンゲージメントが創造性発揮に寄与する可能性が、多くの研究者に指摘されている。また、エンゲージメントの語源、仏語の「アンガーシュマン」は、サルトルの自由と創造に関わる言及によってよく知られている。サルトルは、アンガージュマンを通じて、人間は自由を行使し新しい価値や意味を生み出し、社会を変革していくべきだと主張した。ここでは、自由な意思をもつ人々を創造へむけ駆動する鍵としてアンガージュマン=エンゲージメントが語られていたように見える。    資本主義社会の発展とは、差異の創出(=イノベーション)により駆動されるものとシュンペーターは言ったが、企業において差異を生み出すのは、モノでもカネでもなくヒトという資源。ヒトが差異を創出するための、つまり人々が創造性を発揮するための鍵がエンゲージメントとしたほうがダイナミックだし、それこそが人的資本経営のKPIにふさわしい。    エンゲージメントが従業員の創造性を喚起するものだとすると、先の3つの実感のなかで、「有意義感」こそが、もっとも重要になるはずである。発達心理学でいう「人は目標の意味に共感し意欲を持つとき最大に能力を発揮する」からだし、そもそも創造という行為は、役割とか任務といった受け身でできることではなく、「みずから成したいと思う目的への没頭」がなければ始まらないからだ。    やるべきことの意義を自分事として確信することが、創造性発揮にむけ人々をエンゲージする。であれば、イノベーションのためには、会社の目的、事業の哲学、仕事の意味を、人々を触発し得るものとして提示できるか否かが、まず問われてくるだろう。エンゲージメントサーベイは、その検証の第一歩なのである。    

思考力はどうやって高める?株式会社トランストラクチャ

思考力はどうやって高める?

現代社会は、DX化やグローバル化の進展、社会構造の変化により、将来を見通すことが困難なVUCA時代だと言われます。このような不確実性の高い環境において重要なのは、既存の知識を単に記憶・再生する力ではなく、溢れる情報を取捨選択し、論理的に組み立て、自らの判断や行動に結びつける「思考力」です。思考力は特定の職種に限らず、社会人としての実務全般において求められる基盤的能力といえるでしょう。この思考力を高めるための具体的な方法を五つの観点から考察します。 「問い」を立てる力 思考の出発点は「問い」にあります。日常業務で提示された知識や事実に対して、「なぜそうなるのか」「他の可能性はないのか」と自らに問うことで、思考は深まります。問いを持たない学びや仕事は、表面的な理解や作業にとどまりやすく、応用が利きません。カントが「批判的精神」を重視したように、前提を疑い、問い直す姿勢は思考力の根幹を成します。 言語化による思考の整理 思考は言語を通して初めて明確になります。頭の中で考えているつもりでも、それを文章や発話に落とし込んでみると、不明確な点や論理の飛躍に気づくことが少なくありません。日常的にノートに書き出す、レポートとしてまとめる、あるいはディスカッションで発言することは、思考を外化し、自己検証するための重要な過程です。言語化と内省は思考力の深化に不可欠です。 多角的な視点に触れる 思考力を鍛える上で不可欠なのが、多様な視点を取り入れることです。同じ事象でも立場や背景が異なれば解釈は大きく変わります。たとえば企業活動を経済学の視点から見る場合と、社会学や倫理学の視点から見る場合では、着目点や評価は大きく異なります。異なる分野の文献を読む、異業種の人と議論するなど、積極的に「異なる視座」に触れることは、固定的な思考パターンを崩し、創造的な発想を促します。 正解のない問題に取り組む 思考力は、単一の正解が存在する問題だけに取り組んでいては十分に鍛えられません。現実社会では、複数の解答がありうる「オープンクエスチョン」に直面することが多くあります。例えば「革新は個の天才から生まれるのか、チームの協働から生まれるのか」「持続可能な経済成長は可能なのか」「リーダーシップとは一体何か」といった問いは、明確な結論が存在しません。これらの問いに対して、多様な情報を集め、仮説を立て、議論を重ねることが、複雑な課題に対応するための思考力を養います。 思考のための時間を確保する 現代人は情報の洪水の中で、常に処理と判断を迫られています。その結果、じっくりと考える時間が奪われがちです。しかし、思考力を鍛えるには「思索のための時間」を意識的に確保する必要があります。通勤中や就寝前に数分でも構いません。あるいは一日の中で「熟考するテーマ」を定めることも効果的です。思考は筋肉と同じく、継続的な鍛錬によって強化されるものだからです。 思考力は、生まれつきの才能ではなく、習慣と訓練によって磨かれる力です。「問いを立てる」「言語化する」「多様な視点に触れる」「正解のない問題に挑む」「時間を確保する」。これらの営みを日常的に積み重ねることで、思考はより深く、柔軟で創造的なものへと進化するのです。社会での実践において、自らの思考力を鍛え続けることは、変化の激しい時代を生き抜くための最も確かな資産となるでしょう。 以上

従業員満足度の真実 | 調査・診断(組織分析)

従業員満足度の真実

 人的資本開示における代表的な項目である従業員満足度は、企業価値向上のための重要な指標の一つとされています。経営者も人事部も、企業価値向上のための一つの重要な指標としてとらえ、従業員満足度向上を目指していることでしょう。  従業員満足度が高いことが企業経営にもたらすメリットは多岐にわたります。仕事に対してのモチベーションが高ければ、効率的に働く傾向があり、生産性の向上が見込めます。顧客満足度の高さにも影響を与え、リピート率を上げることに繋がれば業績も上がります。また、満足度の高い従業員が多くいることで職場の雰囲気もよく、チームワークが強化される可能性も高いです。その先には、心理的安全性が確保された職場において安心して意見を言える環境が整い、新しいアイデアを出し合い創造性やイノベーションの促進にも繋がる可能性も高くなります。そのほかにも、離職率の低下やウェルビーイングの実現にもつながり、企業にとってはいいことずくめです。    それゆえに、従業員満足度が高い=望ましい人事施策が講じられている会社である、ととらえるのが一般的でしょう。  しかし、現実はそんなに単純なものではありません。経営計画を達成するための人事制度改革が、逆に従業員満足度を下げることもあります。  例えば、超高齢化している会社が若手の確保や成長を重視した施策を講じるとともに、高齢層の処遇を適正化することで従業員満足度が低下することがあります。早期定年制を導入し、高齢層の退職を促すと、特に高齢層からの不満が増加します。選挙と同じで票をもっているのは高年齢層が多いので、従業員満足度は大きく下がり得るでしょう。 また、実力主義を導入することで、ハイパフォーマーは満足度が上がりますが、アベレージパフォーマーやローパフォーマーは不満を抱く可能性があります。実力主義に大きく舵をきればきるほど、会社として投資対象にしたい人とそうではない人に歴然とした差が生まれるので、そこから漏れる人は不満をもちます。2:6:2の理論でいえば、半分以上の人が不満に転じる可能性があります。    従業員満足度は、冒頭に記載したとおり、重要な指標であることは確かです。従業員満足度が常に高い状態が続いている場合、企業が必要な改革を怠っている可能性もありえます。重要なのは、満足度の高低ではなく、経営計画を達成するための人事施策をしっかりと講じて、組織に浸透させていくことです。実力主義を導入して、ローパフォーマーが厳しさを感じていなければ、運用がうまくいっていないのではないかと疑わなくてはなりません。人事施策を講じたら、どの層にどのような影響が出て然るべきかの予測を立て、継続的に調査を行い、適宜調整を加えていくことが不可欠です。    企業が真に持続的成長を遂げるためには、従業員満足度を適切に管理しながら(単に高いことだけを目指すのではなく)、柔軟かつ迅速に改革を進める姿勢が求められます。これこそが、変動する市場環境においても競争力を維持し続けるためのキーポイントです。

イノベーション人材育成のコラム

イノベーション人材とは?定義と特徴、育成するポイントをご紹介

目次 - はじめに――人事が イノベーション人材の育成に取り組む理由 - イノベーション人材とは? - イノベーション人材の定義 - イノベーション人材を育成するポイント --イノベーション適性のある人材の特定 --イノベーション人材の育成施策例 - まとめ はじめに――人事が イノベーション人材の育成に取り組む理由 企業が成長する上で、イノベーションは不可欠です。 従来より、イノベーションは事業・組織のあらゆる場面で創出され、求められてきました。経済学者ヨーゼフ・シュンペーターはイノベーションを対象別に5つに分類しました。その5つ(新製品開発/新生産方法の導入/新しい市場の開拓/サプライチェーンの開発/組織の改革)は、組織のほぼすべての機能に関連するものです。 人事が「イノベーション」に向き合う時、実際には2つの難しさがあります。 ・人材ニーズの多様性と個別性 「どの現場に、何ができる人材が求められているのか」の幅が広く個別性が高いこと ・中途採用の競争性 IT人材だけをとっても慢性的に不足しており、人がすぐ採れないこと この記事では、このような「人材ニーズ」「調達」の二つの難所に対して、イノベーション人材を社内で発見し、育成する手法で解決することを提案します。ご参考になれば幸いです。 イノベーション人材とは? 世の中の定義は多様ですが、主に以下のように分類・整理できます。 段階別分類 「自走型人材」/「プロジェクト型人材」/「新事業開発人材」など 役割やスキルに基づく分類 「アイデアを出す人材」/「事業を成長させる人材」 「技術タイプ」「企画タイプ」「管理タイプ」など 能力・特徴別分類 分析力・課題抽出力/コミュニケーションスキル/協調性/問題解決能力/ 指導力/忍耐力・胆力/情熱・意欲・モチベーションなど これらの定義は、自社の状況や目的に対して使いやすそうかという視点で選ぶことがおすすめです。 イノベーション人材の定義 本記事では、読者は「イノベーション人材を育成する」課題に取り組む人事を想定し、「保有能力」「役割」の2つの軸でイノベーション人材を定義することをご提案します。 <保有能力>の視点で見ると、自社の人材(や、これから採用する人材)が保有しているイノベーション人材に適した能力は何か、強みを強化し、不足を補うにはどうすればよいか、を考えやすくなります。 <役割>の視点で見ると、イノベーションは「チーム戦」で、多様なタイプの人材が連携して成し遂げるものという前提を置いて、自社の人材(や、これから採用する人材)に多いのはどのような役割タイプか、不足しているのはどのタイプかを把握し、育成したり、バランスに配慮した配置を行いやすくなります。 具体的に、育成に使いやすいと思われる<保有能力>(イノベーション適性)と<役割>の定義例を上げます。ご覧になれば分かりますが、独自の定義というより、過去に上げられているイノベーション人材の定義と重なるものです。 <保有能力(イノベーション適性)> 新しいことを始める力 組織で取り組む力 面白がる力 <役割> Driver=過去の常識や前提にとらわれないアイデアモンスター Explorer=実現の難しいアイデアほど燃えあがるファンタジスタ Designer=走りながら仕組化するウルトラプロフェッショナル Crew=未知の世界、予期せぬ事態を楽しむパーティメンバーイノベーション ここでのポイントは、「保有能力」と「役割」の2つの視点のかけ合わせです。保有能力だけに注目すると、単一のスキル開発に施策が留まりがちなところ、役割の視点を入れることで、その能力を組織でどのように発揮するのかというイメージが付けやすくなり、人事・育成者・育成される人材の間で育成の目的が明確化しやすくなることがメリットです。 イノベーション人材を育成するポイント イノベーション人材の育成は、単なる研修だけでなく、適性のある人材の特定と実践的な経験の提供が不可欠です。 イノベーション適性のある人材を特定すること 現場で見極められれば信頼性は高いですが、イノベーション適性は、日常業務では発揮しにくい可能性があります。そこで、第三者によって診断する適性検査やアセスメントも有効です。手法としては3つあります。 ①行動から思考力を「推察」する(=シミュレーション演習によるアセスメントセンター方式で思考力ディメンションに注目する) ②過去の経験から思考力を「判定」する(=インタビュー・アセスメントによる定性的に診断する) ③思考力そのものを「評定」する(=正解のない問いに対する回答を評定する) ポイントは、第三者の診断だけに頼るのではなく、多元的評価(行動データ、360度、過去の探索行動、ミニ実験課題での観察)と組み合わせることです。また、実務でのトライアル(社内ベンチャー応募・スプリント参加)などを適性検証の一部に組み込むこともよいでしょう。 イノベーション人材の育成施策例 イノベーション人材を発見することで育成が可能になります。 育成施策は、単発の研修や適性検査にとどまらず、イノベーションを阻害する組織構造や管理システムの課題を克服することが不可欠です。ここからは、「組織論的アプローチ」と「人事管理的アプローチ」の2軸で育成施策例をご紹介します。 ●イノベーションを阻害する階層型分業型組織の克服(組織論的アプローチ) 階層型で分業が固定化された組織は、情報のサイロ化や意思決定の遅延を招き、イノベーションの推進を阻害します。これを克服するためには、組織の柔軟性を高め、部門間の壁を取り払うことが重要です。 <施策例> クロスファンクショナルチームの設置による部門横断的な協働促進 フラットな組織構造への移行や権限委譲の推進 社内ベンチャー制度やイノベーションラボの設立による新規事業創出の場の提供 これらの施策は、例えばトヨタ自動車の「カイゼン活動」や、楽天の「イノベーションラボ」などで実践されており、組織の硬直性を打破しイノベーションを促進しています。 ●管理システムの克服(人事管理的アプローチ) 階層型分業組織の管理システムは、評価基準や昇進制度がリスク回避的であったり、権限移譲が不明確であったりすることが多く、イノベーションを阻害します。人事制度(等級制度や評価制度)を見直し、たとえば複線型人事制度を導入することでよりイノベーションに適した環境にすることは可能です。 育成でアプローチする場合の一例は、イノベーターのレベル別に次世代リーダーを育成する施策です。 <施策例> 開発部門人材・新規事業開発人材 新規事業をテーマとした実務伴走型・プロジェクト型の育成が有効です。また、育成施策だけでなくジョブローテーションや外部研修派遣、社内起業支援制度、業務時間の一部を新規挑戦に充てる「10%ルール」など、硬直的な人事管理を変える多様な施策を組み合わせている事例も見られます。 VUCAリーダー(経営・管理職) イノベーション適性の高いマネジメント=VUCAリーダーの存在は事業・組織の変革に不可欠です。VUCAリーダーを育成するには中長期的なプログラムで、 ・「自分らしさ」の確立 ・傾聴・共感・コミュニケーション力の向上 ・先見力・概念化力の育成 ・意思決定力・行動力の強化 などを強化することが有効です。集合研修(ワークショップ・ロールプレイ)と実践を繰り返し、イノベーション適性の発揮の度合いを高めていきます。 若手人材 組織の在籍期間が短いほど、イノベーション適性は高いスコアを出すという調査結果が存在します。組織に埋没する前の若手のうちから、未知の世界や予期せぬ事態を楽しみながら挑戦する「クルー」の能力を育成します。コニカミノルタの2年目人材が新入社員人材を教えるIT研修などもユニークな取り組みです。 まとめ 皆様の会社では、イノベーションに成功していますか? イノベーション人材は足りていますか? イノベーション人材がどこに必要なのか、どのような能力が求められているのかわからないまま、「イノベーション研修」の企画を行っていませんか? 打ち手を検討する前に、まずは自社人材の「保有能力」と「役割」のレベルを棚卸してはいかがでしょうか。誰を、どのように「育成」するべきか、結果が示してくれるはずです。 <参考> ・【Consulactionセミナー】成長を促す、イノベーション・ドライバー 革新的な人材とプロジェクトを生み出すための仕組みづくりとは? |博報堂WEBマガジン センタードット ・イノベーション人材とは?必要スキルと社内で育成する方法 | 記事一覧 | 法人のお客さま | PERSOL(パーソル)グループ ・イノベーション人材とは?意味や採用・育成方法を解説 ・イノベーション人材~重要性と特徴・育成方法を解説 | 社員のエンゲージメント向上を支援する 株式会社 NTT HumanEX ・イノベーターズ・ディスカバリー|イノベーション人材発見は㈱トランストラクチャ ・イノベーション人材をどう発見するか|コラム|株式会社トランストラクチャ(東京都) ・“未来のイノベーター” を採用で見極めるには?

イノベーション人材をどう発見するか  | 人材アセスメント

イノベーション人材をどう発見するか 

 数年前からほとんどの企業の中期経営計画には、「イノベーション」という言葉が書かれ、期首の社長メッセージでもイノベーションの要請は常套句のように頻出する。しかしいま、日本企業でイノベーションが続々起こっているという状況とは程遠い。掛け声だけで終わっている要因の一つは、イノベーション創出の、もっとも基盤的な手が打たれていないからではないか。基盤とは、イノベーションを駆動する人材の確保・育成であり、そのための人的投資の戦略。イノベーションの起点になる新しい発想は、人々の頭のなかからしか生まれないからだ。  たとえば、国が提起し、各企業が濃淡はあるものの一斉に取り組みつつある「人的資本経営」には「イノベーション」が見えない。契機となった人材版伊藤レポートが斬新だったのは、「資本市場の力を借りて人事・人材変革を起こす」との目論見。投資家が着目するのは、収益性のみならず成長性だから、そこに資する人事戦略、つまりイノベーションのための人的資本経営こそが勘所のはずだが、多くの企業は、国から例示された定型一般的な指標情報の開示に留まり、女性管理職比率や働き方改革といった「雇用面のSDGs」遵守、いわば「守り」は見えるが、「攻め」(=イノベーション)のストーリーは一向に見えない。  「攻め」のための人への投資とはなにか。製造業でいえばR&D人材への投資、業種の違いを超えていえば、DX人材への投資はひとつの鍵になるものだが、それだけではVUCA時代の成長にはつながらない。未来が予測不能に変化するのであれば、会社のどの部署、どの機能であっても、同じことをやっていることがリスクだし、成長もない。新商品・新事業開発の職務はもちろん、営業職や管理職であっても開発的に新しいことに臨む能力が求められ、またどの仕事であっても「前提を鵜呑みにせず自分の頭で考える」能力が共通して必要になる。  イノベーションの基盤であり起点になる、こうした能力開発への投資が攻めの人的資本経営の橋頭保だとすれば、まず最初にやるべきことは、社内のイノベーション人材を発見することではないか。こうした「新しい領域を切り開く能力」は、階層と分業で合理的効率的に組まれた企業組織では原理的に見えなくなってしまうからだ。多くの企業では、誠実と協調を旨とし、役割とルールに従い、組織として成果を出すことが行動原理であり、出る杭はうたれ、斬新な発想や価値観の異質性は捨象される。そうした根強い協働スタイルによって、持っていたかもしれない人々のイノベーティブな能力は身を潜め、摩耗していったかもしれない。まず、現有のイノベーション人材リソースを把握し、新たな調達や効果的育成を計画化するとよい。  では、日常の仕事ぶりや人事評価では分からない、隠れたイノベーション人材をどう見極めるか? イノベーション人材に必要な思考力とは、正しい答えに到達する収束的思考ではなく、VUCA状況のなかで、俯瞰し様々に発想し仮説化する発散的思考力。そうした思考力レベルの、第三者視点による評定には3つの方法がある。 ① 行動から思考力を「推察」する(=シミュレーション演習によるアセスメントセンター方式で「創造性」 や「変革指向」といった思考系ディメンションに着目する)  ② 過去の経験から思考力を「判定」する(=インタビュー・アセスメントにより定性的に判定する) ③ 思考力そのものを「評定」する(=正解のない問いに対する回答を評定する)  ひとつめのセンター方式アセスメントは、「思考=頭の中でどう考えているか」は見れないので、発揮行動からの「推察」にとどまり、二つ目のインタビュー方式は、例えば、創造性を発揮するような仕事経験が一切なければ、創造力は判定し得ないといった限界がある。有効性が高いのは三番目の思考力そのものの評定である。これは、自身の考えを結論だけでなく、どう考えていったかを含めて書きだした文章を解析する方法(Think Aloud Assessment)だ。  ここで使われる、「正解のない問い」とは、たとえばこんなものだ。  下記は、武将・伊達政宗が残した言葉と言われています。これは、彼のある苦い経験、あるいは成功体験に基づいているとします。その具体的体験をあなたなりに想像し、できるだけ様々な可能性を書いてみてください。 「大事の義は、人に談合せず、一心に究めたるがよし」(意味:大切なことは人に相談せず、一人で悩みぬいた末に結論を出すほうが良い。)  この答を、結論だけではなく思考プロセスを含めて、文章として書かせる。そこで、どれだけ発想を広げ、推論し、仮説をつくれているかを評定する。この方式が変わっているのは、制限時間を設けないことだ。好きなだけ考えて書いてもらってよい。ときに次々にいろいろ思いついてやめられなくなる人がいる。問いの答えを考えること自体が面白くなってしまうのだ。つまり、内発的動機付けが働き、たくさんの言葉を書き連ねてしまう。  内発的動機付けが創造性発揮のエンジンであることが創造性研究で明らかになっていることを考えれば、この方法の妥当性はあきらかなのである。 ※この手法=Think Aloud Assessmentについては、 下記当社セミナー・外部イベントにて詳しくご紹介をいたします。 ・2024年10月17日開催 : 当社主催セミナー 「イノベーション人材をどう発見するか?」 ・2024年11月  6日開催 : 日本の人事部主催 HRカンファレンス

「登用の失敗」はなぜ起こるか(アセスメント活用の勘所①) | 人材アセスメント

「登用の失敗」はなぜ起こるか(アセスメント活用の勘所①)

 きっちりと成果を出し、職務遂行能力にも問題ないと判断して、管理職に登用してみると、どうにも困ったマネジャーだったということがある。なんであんなヤツを上げたんだ、と人事部が経営から非難される、いわゆる管理職への「登用の失敗」。その原因は、名プレーヤーは必ずしも名監督ではない、というありふれた警句そのものにある。  つまり、卒業評価≠入学評価であるのにも関わらず、卒業評価だけで昇進を決めてしまうからだ。在籍等級でのパフォーマンスが高いけれども、管理職としてやれるかどうかはわからないのに上げてしまうということである。じっさい多くの会社の昇進運用は、卒業評価だけに終始しているように見える。  『日本の人事部 人事白書2024』(株式会社HRビジョン)によれば、管理職登用に際して重視する要件は、①これまでの実績・成果(75%)、②保有している能力(60%)、③人柄(50%)。名プレーヤーであれば当然、①実績・成果は申し分ない。問題は、②保有能力である。  それを、何で見るか。『JMAM 昇進昇格審査 実態調査2022』(株式会社日本能率協会マネジメントセンター)によれば、審査内容のトップ2は、「人事考課」(87%)と「上司推薦」(81%)。人事考課の結果は、現在の等級における能力評価であって、管理職能力の有無やレベルは示さない。管理職業務は経験していないし、評価項目も管理職能力ではないからだ。上司推薦では、「こいつは、管理職もできそうだ」という上司の判断はあるだろうが、客観性には疑問がある。  半数程度の会社が、テストも行っているが、「面接試験」(58%)や「論文・レポート試験」(46%)、「社内知識試験」(42%)といった社内基準の試験がほとんどで、意欲や知識は見て取れるものの、管理職に必要な能力を客観的に測定するものとは言えない。昇進に際して、管理職能力の多寡、つまり管理職ができるかどうかの可能性判定をしないで決めている会社がじつに多い。  やるべき入学評価とは、卒業できる(=当該等級での必要能力を持ち結果も出している)候補者たちの、管理職という「未経験の職務」の能力発揮可能性を判定することだ。その方法として、一番確かなのは、実際に管理職務をやらせてみることである。たとえば、上司(課長)の視点にたって自組織の課題を設定させ、1年間のPDCA実践による課題解決を課し、役員面接などで「課題の妥当性と実践の成果」を判定する審査プロセスを組めばよい。  ただこの方法は、もっとも効果的実践的ではあるものの候補者の負荷はもちろん、上司や人事部にとっての負荷が高い。端的に試験によって、管理職能力の発揮可能性を見たいということであれば、アセスメントセンター方式の能力評価を行えばよい。この方法は、まさに、「未経験の職務」の能力発揮可能性を診断するための専用ツールであり、管理職の職務状況をシミュレーション演習として用意し、候補者全員が同じ状況下での行動発揮を課せられ、その行動を観察・分析することで、保有能力レベルを判定する。  アセスメントセンター方式とは、第二次大戦中に諜報員の選抜試験として開発されたといわれる能力判定手法。社会心理学者クルツ・レビンの方程式B=f(P・E)を原理とし、行動(B)は、環境(E)と個人の能力・資質(P)の関数であるから、シミュレーション演習によって環境を固定し、そこでの行動を観察・分析すれば保有能力の評定ができるというコトワリである。  さきの昇進昇格審査実態調査によれば、約3割の企業がこの試験を行っている。昔から、昇進審査としてのアセスメントの精度は定評あるものの実施企業数がまだ少ないのは、ここに書いたような「登用の失敗」の原因にそもそも気づいていないか、あるいは、わかってはいても、試験と言いながらも、1~2日間の研修形式で行い、アセッサーという専門家たちが観察して評価するための手間と費用がかさむことがネックになっているのかもしれない。  しかし、能力測定手法においてもDX化は進んでいる。「未経験の職務」の能力発揮可能性を診断する原理とITC技術の融合により、自社の状況や要件や制約に即した「入学評価の道具」は、いかようにでも設計できるのである。 *アセスメント活用の効用と留意について提起する3回シリーズ。 ■「登用の失敗」はなぜおこるか(アセスメント活用の勘所①) 今回  ■外部視点評価を過信するな(アセスメント活用の勘所②) ■VUCAリーダーをどう見極めるか(アセスメント活用の勘所③)  

外部視点評価を過信するな(アセスメント活用の勘所②) | 人材アセスメント

外部視点評価を過信するな(アセスメント活用の勘所②)

 管理職の登用試験として使われるアセスメント(アセスメントセンター方式)は、シミュレーション演習下の候補者たちの言動をアセッサーという専門家が観察・評価する。それが登用試験として効果的なのは、「入学評価」つまり、まだやったことのない管理職の必要な能力をもっているかどうかの見極めができるからだと、前回書いた。  社内評価は、環境要因や情状、主観も影響するし、どうも能力評価が正しいかどうかもあやしい。だから客観的で正しいであろう外部視点評価を使う、ではないことに留意したい。あくまでも、社内評価=現状職務での能力発揮に対して、アセスメント=「未経験の職務」の能力発揮可能性を測定できることの効用、ということだ。  ことさらにこう書くのは、ときに、アセスメントの結果だけで管理職の登用判断を行っている会社もあるからである。アセスメントは、管理職能力発揮可能性を診るには信頼性の高い、しかも相対評価でない絶対評価の手法ではあるけれども、そこには、すぐれた効用とともに限界もある。だから、テストとして合格点クリアだけで登用者を決めるという単純な運用をすることにはリスクがある。   よくなされているように、社内評価(人事考課を含む経営の評価)の高低とアセスメント結果の高低を二軸にとって、4象限にプロットし、ギャップある象限の人たちを個別詳細に検討するといった総合的な判断は、最低減必要なことである。そのポイントは、ギャップの原因を、総合点だけではなく、ディメンションごとに検討することだ。たとえば、オペレーショナルな能力(情報理解力、分析力など)と経営的能力(戦略立案力、視座の高さ、人材育成力など)にわけて見る。  前者は、現状職務と今後になう管理職務でも通底するから、ギャップがあれば気になるところだ。【社内>アセスメント】であれば、その人には専門性や業務習熟の面で強みがあるのかもしれないし、【社内<アセスメント】であれば、現状職務や職場とのミスマッチに起因するのかもしれない。後者の経営的能力は、現状職務では求められていないことも多いから、アセスメントならではの能力評定判断として優先できるが、権限移譲して管理職務を一部担わせているような場合、その社内評価とのギャップがあれば、その理由についての検討が必要だろう。  とくに、注意が必要なのは対人能力である。そこに、アセスメントという手法の限界があるからだ。アセスメント・ディメンションは、①思考系能力(課題解決や方針・計画を策定する力) ②対人系能力(他者を理解し動かす力) ③資質・姿勢(達成志向や自律一貫性) の3カテゴリーに分かれている。うち、①と③は、かなり正確に測れるけれども、②の評点には注意が必要なのである。  なぜか。シミュレーション演習のなかでは、対人行動は「演じる」ことができるからである。演習のなかに、「面接演習」というものがある。アセッサーが厄介な部下役となり、部下面談をやってもらうものだが、試験として観察されているわけだから、実はハラスメント満々の人でもそれをおくびにも出さずに、正しい部下コミュニケーションを演じたりする。本性を見たいアセッサーは、ことさらに嫌な態度で応えるのだが(まれにそれが昂じて、リアルに喧嘩になってしまうほど)、思考力の高い人であればなおのこと、効果的な演技に徹する。  逆に、アセスメントでは対人系能力の評点が低い人が、実は、日常業務ではたいへんな「人たらし」で仕事の成果を出していたりする。この対人能力も、アセスメントではたいへん見にくい。シミュレーションのなかで、人をたらしこむ必要もないし、そもそも、個々人の行動発揮から保有能力を測るアセスメントでは「他者を動かし、他者を巻き込んだ」行動発揮は、見ようがないからである。  もう一点、留意すべきアセスメントセンター方式の限界がある。アセスメントは、モチベーション=内発的動機を無視していることだ。内発的動機は、思考力とくに創造や発想、企画に関わる能力の原動力であることが認知科学領域では定説である。しかしアセスメントは、アウトプットされた行動から思考力を推察するものだから、アタマのなかのメカニズムは見られない。思考力を駆動する内発的動機をもつ人の強みには関知しないのだ。  たとえば、目の前の仕事が大好きで、なんとかお客さんに喜んでもらいたい、価値提供したいとエンゲージされ、日常業務では高い能力を発揮している人が、「あなたは、〇〇工場に工場長として赴任しました…」というシミュレーション・ケースに臨んだとき、持ち前のモチベーションの高さが再現できなくても不思議ではない。結果、思考力の評点が低く出ているとすれば、そのギャップは慎重に検討すべきだろう。  ゆえに、アセスメントの効用(と限界)を正しく理解し、社内評価や社内での職務状況とのギャップを併せ、総合的な登用判断を行うことが必要なのである。 *アセスメント活用の効用と留意について提起する3回シリーズ。 ■「登用の失敗」はなぜおこるか(アセスメント活用の勘所①) ■外部視点評価を過信するな(アセスメント活用の勘所②)今回 ■VUCAリーダーをどう見極めるか(アセスメント活用の勘所③)