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column

人材育成の本気度

 選抜型の、次期経営リーダーを育成する教育施策を数多く提供してきた。

 基本は経営リテラシーを学ぶための半年間の連続研修の形式。各研修の事前に基本知識の学習と課題に対して自身の考えをまとめる作業を課し、研修当日は議論とアウトプットに集中。事後には、研修テーマを自身の組織や自社を題材にして考察したレポート提出を都度課す。連続研修の最後には経営に対する施策提言を組みこみ、社長以下全役員のタフクエスチョンに晒され、経営目線から評価されるイベントで終わる。

 この最後のイベントの狙いは、もちろん優れた施策提案があればその実施について経営陣が合意しすぐに開始できるようにすることだが、多くは実践できる施策への期待というよりも、優秀な候補人材をさらに成長へむけブーストすることである。ゆえに、多様なタフクェッション(=厳しい質問や指摘)が、経営のリアリティに気付かせるための教育的な叱責として繰り出されなければならない。そこに、聞き手である社長以下経営陣の姿勢と力量が大きく問われことになる。

 ゆえに、このイベントは、決して締めくくりのセレモニーではなく、一連の経営リーダー育成施策の成否を分ける勘所である。ときに、提言の未熟さにいらだちおもわず頭ごなしに切り捨ててしまう社長が著しく受講者のモチベーションを棄損してしまったり、経営難の渦中にあるせいか受講者から提案される案に前のめりに食いついて、会社への不安感を抱かせてしまったりといった逆効果の逸話も聞く。時間と労力と費用を投下し経営人材育成に臨んできた取り組みが、最後の最後で失敗してしまったら元も子もない。

 成功させるために大事なことは、経営実践で必要な視座と視野を分からせるための厳しい指摘と、さらなる動機付けの両面を、きちんと踏まえた発言が経営陣からなされることである。経営陣が真剣に問い質すその言葉によって、自分たちの提言がなぜ至らないのかを胎落ちさせる。その問いや問う姿勢に、経営者の器というものが受講者に垣間見えることこそが意義深い。

 ある会社で、経営会議の時間の前半を割いて、若手選抜研修の最後の経営提言発表をしたことがあった。各グループの発表ごとに経営陣からの質問、指摘、意見が予想以上にあって、予定の終了時間になってもまだ半分しか終わっていない。経営会議の後半では重要な決議事項が目白押しなので、打ち切らざるを得ない。残りの発表内容は資料回付で役員が閲覧し後日コメントをフィードバックするようにしたい、と事務局が終らせようとする。

 と、間髪を入れず社長が「いや、それは違うんじゃないか。彼らがこんなに一所懸命に考え準備して我々に提起したいというのだから、我々はそれに応える義務があるのではないか。最後まで、じっくりやろう。経営会議の議論はそのあとだ。夜は長いし」と言った。

 時間切れか、、、と悄然としていた受講生たちも、その言葉に、一様に笑顔で顔をあげ目を輝かせる。育成施策の巧拙もさることながら、経営者の本気度に勝る育成のエンジンはないのだ、と思わせる一瞬であった。

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