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column

Train The Trainer  ~ OJTに方法あり ~

 企業経営のグローバル化やデジタル化が進行する中で、人材育成は人事課題のトッププライオリティーに位置付けられる。実際、人事管理上の重要課題は何かという問いに、社員の能力開発であると答える企業は非常に多い。だが、経営計画を実現するための具体的な人材育成施策を緻密に組み立てている会社は、少ないように思える。

 一般に、人材育成には「育つ」と「育てる」のふたつの方法がある。一定の領域の仕事を与えて、それを遂行するための試行錯誤の中で自然に職務能力を身につけさせる過程を、「育つ」環境を与える方法と呼ぶなら、特定の能力を向上させるべく教育プログラムを設計し、これを実施することで能力向上を図ることは、「育てる」方法と呼ぶことができる。「育つ」環境を与える方法は、人員配置、ローテーション、目標設定などがこれに当たる。「育てる」施策は、教育、研修、訓練等の諸プログラムだと言えるだろう。

 「育つ」環境を与える方法は、実践性が特徴だ。だが制御が効きづらい。育成が完了するまでどれほど時間がかかるのか、つまるところ本人任せだ。「育てる」方法は合目的でコントロールしやすい。だが、実践性を欠く。いくら金と時間をかけて研修をしても、「喉元過ぎれば」で忘れてしまう。一長一短がある。
 両者の間にあって良い所取りをするのがOJTだといえるだろう。部下の能力を向上させようとする強い意思と具体的目的をもって特定の業務を与え、その遂行の過程で教育・指導を行い、仕事を体得させるのがOn the Job Trainingだ。「何か仕事をやらせておけば、経験を積んで、そのうち勝手に仕事を覚えるだろう」というふうにOJTを定義している向きも数多くある。しかしながら、それは当たらない。OJTは、あくまで具体的な育成目的を持ってするものであり、業務遂行を通じて意図的に能力開発を行う「プログラム」でなければならない。

 さて、こうしたことを実現するために、若年の社員にベテランの指導員を付けて指導させたり、日報や週報を書かせて自ら仕事を覚えるような自覚を促したりする施策が、多くの企業で取られている。ところが、たいてい、これではうまくいかない。OJTにおいては、もっと能動的に部下の行動に介入していくことが求められる。OJTにはそれなりの「やり方」というものがあるのだ。

 たとえば、OJTにとりかかる前に、その仕事についての旺盛なやる気を引き出す。嫌々取り組むのでは、何かを学び取ることはない。そして、やる気を持たせるためには、業務指示の冒頭、その仕事の目的や意義を明らかにしてやることが重要だ。何のために、この仕事をするのか。この仕事の意義は何なのか。「・・だからこの仕事は君をおいて他には任せられない」と持ち掛ければ、やる気は倍増だろう。
 いったんやる気を引き出したならば、次は細かい指示とフォローだ。極めて具体的かつ詳細に、成果に辿り着くためのプロセスと方法を指示する。経験の浅い者には、特に、手取り足取りが必要だ。そして、本人が仕事を開始したら、適当に早いタイミングでその仕事振りをチェックする。頻繁にチェックする。「仕事は先輩の背中を見て覚えろ」というのは、ずいぶん前の時代の話だ。
 ひととおり仕事が終わったならば、丁寧な反省会を行うのがよい。うまく行ったこと、行かなかったこと。一般的にはAという方法を取るべきだが、今回は特殊性があったからBという方法をとったのだ、などと、体系的理解を促進する。

 他にもOJTのやり方にはいくつものポイントがある。だから、効果的なOJTには、OJTを施す側、つまり、管理職をはじめとする指導者の側のトレーニングが必須だ。「トレーナートレーニング」とでも呼ぼうか。
 OJTの成否は組織の力を左右する。そして、OJTには「やり方」がある。トレーナートレーニングは、本気で取り組むべき課題だ。

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