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column

「型破り」と「形無し」の違い

 タイトルの「型破り」と「形無し」の違いを知ったのは、18代目中村勘三郎の言葉からだ。元々は無着成恭(むちゃく せいきょう)という僧侶が、子ども電話相談番組で「型破りと形無しの違いはなんですか?」という質問に対して、型がある人間が型を破ると「型破り」、型がない人間が型を破ったら「形無し」。と回答した内容となる。

 歌舞伎の世界、芸事の世界では幼少期のころから徹底的に基礎を叩き込む。おそらく、その弛まぬ習練によって作り上げた基礎があるからこそ、「型破り」は見るものを魅了するのだろう。洗練された「型」の先にしか「型破り」は存在しないのである。

 この「型」は人事制度においても存在する。会社1社1社に経営理念があり、事業規模も業種も様々ではあるが、人事制度に共通する点はないのかと問うと、そうではない。

 例を挙げると、同業種、事業規模が同等の企業であれば、組織構成は類似し、給与水準は採用競争力の観点から同水準となる。また、社員に求める知識、スキルも同等であることを想定すると、教育体系は相似し、実施しなければならない研修も似るだろう。

 では、人事制度の「型」をどの様に構築すればよいのか。それは適切なプロセスに沿って、人事制度を構築することになる。例えば、以下の様なプロセスで行う。

1.現状把握のための多角的な分析の実施
2.分析に基づいた問題・課題の抽出
3.人事制度設計方針及び領域別施策の検討
4.人事制度設計の構築

 「ひらめき」や「勘」ではなく、事実に基づき、適切なプロセスに沿って人事制度を検討していくことを推奨する。抽出した問題や課題は企業によって様々ではあるものの、業種、事業規模、現在の人事制度及び人事制度の運用状態などの観点から分析をすると、傾向があることに気が付く。その傾向から方針・施策を検討することで人事制度の「型」に行き着くのである。

 人事制度を構築する上でも、この「型」は非常に重要となる。この「型」がなければ、会社の風土や慣習、経営理念に沿ったオリジナリティの高い人事制度を構築しても、それが正しいどうかの判断がつかない。「型」は新旧の人事制度の比較だけでなく、構築した人事制度が正しいか否かを判断するためにも重要な役割を果たすのである。

 一方で、他社の人事制度改定の成功事例から、自社に合った人事制度を導入したいと考える企業もあるだろう。インターネットで検索をすれば、他社の成功事例を目にする。オリジナリティに富んだ、様々な人事制度が存在している。ここで注意をしなければならないのは、成功した企業の事例が絶対の正解とはならない点である。成功した企業の事例を後から分析し、成功要因を抽出することは出来ても、再現性があるかどうかに疑問が残る。成功した企業と自社の状況が異なる以上、同じことを実行し、同じ様に成功するとは限らないのではないだろうか。

 改めて伝えると、人事制度設計において重要な事は、適切なプロセスを徹底的に実行していくことである。他社の成功事例をそのまま自社に導入する「形無し」人事制度ではなく、現状の問題や課題を改善するための方針、施策に基づいて人事制度の「型」を固めた上で、社員の従業員満足度や勤続意向を向上させるための「型破り」な人事制度を構築していく。

 オリジナリティのある人事制度、洗練された人事制度を構築するために、まずは「型」から固めなければならないのである。

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