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なぜ緊急車両の通行妨害が起こるのか? 

執筆者: 大久保 尚代 その他

遠くからサイレンの音が近づいてくる。消防車だ。音が近くに来てなかなか遠ざからないと思ったら、細い道が太い道に合流するT字路の交差点で、交差点内の右折車が緊急車両の行く手を阻んでいた。消防車は何度もアナウンスで指示を出し、乗用車が少しずつ位置を変えてようやくできた隙間を縫って走り去った。長い信号一回分の時間が経過していた。

ドライバーであれば緊急車両を優先させるのは常識中の常識である。いったいなぜこのような誤った行動が引き起こされてしまうのだろうか。それを防ぐ手立てはあるのだろうか。

通行妨害が発生する理由については、調査を見つけることができなかったが、災害時の行動研究などを踏まえて3つの仮説を考えてみた。

・視野狭窄の罠
周りが見えていない状態で、緊急車両が近づいているという聴覚による事実と、自分の進路に影響があるかもしれないという可能性が結びつかず、ぼーっとして何も考えずに交差点に進入してしまったのではないか。

・正常化バイアスの罠 
自分にとって都合の悪い情報を無視したり、過小評価したりしてしまう心理的特性が正常化バイアスである。「まさか緊急車両がこの道にはこないだろう」「緊急車両が近づいているが、自分がわたるくらいの時間はあるだろう」などと甘く考えていたのではないか。

・被害者心理の罠
右折したい自分が、法規通りに道路の左側によると、次の信号で右折できなくなり自分だけ遅れてしまうかもしれない。自分だけ損をするのは馬鹿らしいという一心で、前の車と同じ行動をとることだけに囚われて交差点に進入してしまったのではないか。

実はこの3つの仮説は、人・組織の課題の原因仮説として語られることも多い。

たとえば、社員が「組織間の壁がある」「閉塞感がある」という企業は、固定的な環境で社員が視野狭窄に陥っているかもしれない。

年々市場が縮小し、利益率が低下しているのに手が打てていない企業は、意思決定者が「自分が在籍している間は会社はつぶれない」という正常化バイアスに蝕まれているかもしれない。

社員のコミュニケーションが良くない企業は、組織全体に「自分ばかり頑張っているのに報われていない」という被害者意識が蔓延しているのかもしれない。

では、どうすればこれらの課題が解決するのだろうか。望ましくない行動そのものに対する罰則の厳格化は1つの方向だろう。多くの職場でも、「べからず集」は活用されている。しかし、緊急車両優先は「道路交通法」に定められているにも関わらず、妨害行動は発生してしまっている。禁止は根本的な解決に至るとは限らないのだ。

重要なのは、罰則などによる禁止よりもむしろ、望ましくない行動をとってしまう認知的・心理的な原因に対して手を打つことではないだろうか。加えて、望ましい行動をシンプルに、具体的に伝えることだ。いわば災害における避難訓練のように、何をすべきかを頭と体に叩き込んでおくのだ。

一律にルール化するのではなく、人の行動のプロセス、メカニズムを紐解き、そこに働きかけること。それこそが、複雑な人間の行動を望ましい方向に導く上での近道なのではないだろうか。

参考文献:
●“安全・危機管理に関する考察(その2 ) 一緊急時の人間行動特性-” 古 田 富 彦
「国際地域学研究 第6 号2003 年3 月 」https://ci.nii.ac.jp/naid/120005274751
●“大災害時の避難行動“東京女子大学名誉教授 広瀬 弘忠 消防防災博物館 https://www.bousaihaku.com/dptopics/113/

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プロフィール

大久保 尚代 (おおくぼ ひさよ)

マネージャー

ニューヨーク大学大学院メディア・エコロジー・プログラム修了(MA)
大学卒業後、出版社にて書籍の企画編集に携わる。フルブライト・プログラムで米国に留学、帰国後社会人向け教育研修会社に入社。企業の変革リーダーの育成や組織の活性化支援、マーケティング業務に従事。当社においては営業およびセールスプロモーションを担当している。

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