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総合職が多すぎる

執筆者: 林 明文 経営

 多くの日本企業にみられる共通した問題がある。それは“総合職が多すぎる”ということだ。

 そもそも“総合職”は企業の方針や文化、コアノウハウの担い手である。キャリアのゴールとしては、企業経営を担っていくことを期待されている。企業経営を担っていくためには、企業活動に関する広範な知識や見識が必要である。営業部門だけで育った社員は、営業はよくわかっても、製造や管理部門がよくわからない。単機能で育った社員は企業経営が担えないのだ。総合職として、経営を担うためには様々な事業や機能を経験することが望ましい。すべての事業や機能は経験できないが、代表的なものをいくつか経験することが必須である。

 このように総合職として経営を担う人材に育成するためには、一つの仕事を長く担当することは望ましくなく、経験を積ませることが重要だ。しかし多くの企業の現実は、このような経営幹部の育成段階としての総合職という運用になっていない。総合職として入社しても、経営幹部になるための研修は少なく、また効果的計画的なローテーションも行わない。新卒の企業説明会では、総合職は会社の幹部ということをあたりまえのように話すが、入社をするとそのような扱いはしていないことが多いということだ。

 管理職が総合職社員の一つのキャリアゴールとするならば、総合職は管理職を生み出すための人材プールということになる。仮に必要な管理職ポストが500ポストとするならば、その1.5倍程度の総合職社員がいれば十分である。1.5倍以上の総合職がいる企業では、入社以来単一の仕事をずっと担当し続けている社員が目立って多くなる。1.5倍を上回る社員は特定の仕事、特定の地域で仕事をしている社員であるため、本来は総合職ではないのである。

 優秀な経営幹部を育成していくためには、計画的な経験、継続した教育が必要である。この高いコストを伴うローテーションや教育を実際に本気で行わない限り、優秀な経営幹部は生まれない。経営幹部が育たないと嘆く企業の代表的なパターンは、総合職が多すぎて実際に経験、教育が不足しているというものだ。これは経営が求めている人材を人数構造的に生み出せていない制度と運用に問題があると言わざるを得ない。

 社員の大半が総合職であるということが、合理的に考えておかしいということである。
以上

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プロフィール

林 明文 (はやし あきふみ)

顧問

青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て当社設立。代表取締役シニアパートナーを経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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