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column

2035年

 64歳の部長が部下の若手社員にWeb会議で話をしている。営業部の業績の説明と、この若手社員の担当するクライアントへの新たな指示をするためである。ちなみに若手と言っても52歳である。営業1部は全員で25名。定年再雇用社員は10名、正社員は15名である。正社員の年齢構成は60歳以上65歳未満が8名、50歳台が4名、40歳台が2名、30代はわずか1名で20代はいない。部長は若手社員に一通りの話をした後にこう続けた。”君はまだ若手の社員だが、あと10年くらいすると管理職になる可能性もある。そろそろ実務だけではなく、マネジメントも意識して業務に取り組んでくれ“

 今から十数年後の2035年には、職場は上記のような状況になっているだろう。日本の大手企業の多くは、国内市場の縮小と少子高齢化、超流動的な労働市場により、驚くほどの高齢化が予測される。70歳ないしは75歳までの雇用義務化は避けられないだろう。75歳まで雇用しなければならないとすると、人事管理の考え方を一変させるくらいの激震だ。標準的なライフプランを想定した“年齢”を軸とする人事管理から、年齢に関係のない“実力”軸の管理へと急速に舵を切ることになる。また過去20年間新卒を中心とした若手社員の採用抑制の影響が圧倒的に大きくなる。会社のノウハウや文化を継承する中堅社員がいないということだ。
 これに拍車をかけるのは労働市場であろう。より流動的になる労働市場により、他の会社より魅力に劣る企業からは驚くほど人材が流出する。20、30歳台の社員がほとんど離職する会社も出てくるだろう。また日本国内市場を基盤としている企業は、業績の低下に苦しみ続ける。ビジネスボリュームの低下と反比例して、生き残りをかけた熾烈な競争が激化し単価が下落する。社員の処遇をより良くすることが困難となる。今後企業を取り巻く環境は、平成の延長線上の環境ではなくなるのである。

 少子高齢化、歪な人員構成、長期の継続的な業績低下が予測される中で、個別の企業が力強く成長するためには、サービス、商品、技術、ビジネスモデルの革新はもちろんであるが、人事管理も重要なキーとなる。環境が連続的変化でないと予測されている以上、人事管理も過去の延長線上の発想では機能しない。しかし近年の多くの企業の人事管理の改革は、受け身的な印象が強い。現在発生している問題への対処というスタンスであり、間違いなく起こる大きな変化を先取りしたものと言えない。

 法律や常識という観点では、人事管理は過去を継承しなければならない。しかし今後の変化は過去の継承を重視するスタンスでは対応できるものではなさそうだ。今までの変化と全く異なる次元の変化が急速に到来しつつあることを改めて認識する必要があるのではないだろうか。

以上

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