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上司は休め!

執筆者: 高柳 公一 人事管理

年末年始のニュースの中に、旅行大手のエイチ・アイ・エス(HIS)社の会長兼社長で、ハウステンボスの社長でもある沢田氏が、今年の3月から3か月~半年の間、視察として世界を回る一人旅にでるという記事があった。その間、会社と連絡もあまりとらないと言う。上場企業のトップが長期間、オフィスを離れるのは異例なことだし、企業統治の観点から疑問を呈する他の企業経営者のコメントもあったが、企業経営に長く携わってきた沢田氏の事であるから、おそらく、そうした懸念も承知の上、敢えてこの決断をしたのだろう。

記事の中で、今回の長期単独視察の狙いを二つ掲げていた。ひとつは、「最近、自分の発想が豊かで無くなったので、世界の変化から刺激を受けたい」と言う事。 今、世界で起こっている物事を、間接的な情報ではなく、直接、自分の目で見て、そこから生じるアイデアや発想を、ストレートに経営に生かしていかないと、今の社会の変化の大きさやスピードに間に合わないと考えているのだろう。現実に実行できるか否かは別として、そうしたいと、内心思っている企業経営者は、多いはずだ。

そして、もう一つの長期視察の理由として、「私が長い間いなければ、これまで私の指示待ちだった部下が自分で考えて決めるようになり、人が育つ」という事を挙げていた。どんな組織であろうとトップが最終的な意思決定を行い、責任を持つことは基本だが、テーマや重要性によって、適切に権限と責任がそれぞれ配下に移譲されていることも又、組織の望ましい姿だ。しかし、現実を見ると、組織図や職務権限規定上では、そうした権限移譲が描かれていたとしても、実務上は、トップを含めた少数のメンバーに、リーダーシップと意思決定の権限が集中してしまっている企業は意外と多い。

トップや一部のキーマンが極めて優秀な場合、責任と権限を集中させたほうが、短期的には望ましいかも知れないが、その体制が継続できる期間はそれほど長くはない。グローバル化、AIによるRPAの進展等により、広範な経営領域で大きな変化が加速する現状では、過度に責任と意思決定を特定のリーダーに集中させることは、むしろ荷が重すぎて、リスキーな事だとも言える。

これは、経営トップ層だけの話でなく、部長層、課長層やそれ以下の組織レイヤーでも同様で、それぞれの階層、それぞれの現場で、リーダーシップを発揮し、判断を任せられる人材をいかに育てていけるか(言い換えると、指示待ち社員をいかに減らすか)が、現在の経営上、人事上の喫緊の重要課題なのだ。

こうして見ると、沢田氏が挙げた今回の長期単独視察の目的やそれに至らしめた経営状況は、他の多くの企業の現場にも当てはまるものと言える。部下が指示待ち社員ばかり・・と嘆いているのであれば、いっその事、自ら、長めの休みを取って、沢田氏のようにオフィスを離れてみてはどうだろう。結果として、自らの視点も広がり、部下も育つかも知れない。当然、そのためには、事前準備も必要だし、休暇中、部下に任せたことで起こる結果に対しても責任を持たねばならないが、それもまた、上司の一つの重要なミッションなのではないか。

※西日本新聞 平成29年12月29日朝刊の記事より一部、引用。

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プロフィール

高柳 公一 (たかやなぎ こういち)

取締役 シニアパートナー

一橋大学商学部卒業。米国ジョージワシントン大学経営大学院修了。プライスウォーターハウスコンサルタント社に入社し、国内外の大手企業に対して、人材開発、業務改善、IT戦略立案等のコンサルティングプロジェクトに関与。その後、トーマツコンサルティング株式会社にて、多くの組織・人事に関するコンサルティングを行った後、当社、取締役、シニアパートナーに就任。人事分析、人事制度設計、他幅広い分野の人事コンサルティングに多数関与。

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