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業務指示の極意

 部下に業務を分担しアウトプットを出させる。期待通りの品質の成果を適正な時間で出させるためには、的確な業務指示が必要である。そのポイントは、単に、正しい業務の進め方や技法を教えるということではない。いちばん大事なことは、「業務の目的」を伝えることだ。その業務は、なんのためにあるか、を理解させる。目の前の小さな業務が、組織として何につながるか。ひいては、会社にとってどんな意味があるか、をわからせる。

 目的(=purpose)とは、「意味」や「意義」である。その具体的な成果指標が、目標(=objective)である。それらを伝えたうえで、あとは、有名なSL理論(=Situational Leadership)を思い出して、部下の経験や能力レベルに合わせて、概要指示から詳細指示の幅のなかで的確な説明を行えばいい。業務遂行では、不測の事態も起こるかもしれないが、「意味」が分かっていれば、ある程度の応用もできるし、何をやるべきか、何をやってはいけないかも想像がつくものである。

 個別業務指示の集積であるOJTは、もっとも有効な人材育成手法である反面、その属人性が課題とされる。つまり、上司である管理職者によって、教える内容が異なるということだ。業務の方法や技術が人によって異なる点は、階層別の必要技能を組織として整理し可視化し共有することやOff-JTを組み合わせることで解消できる。
階層別研修のようなOff-JTではなく、もっと短サイクルでOJTを補完する研修、かつて小池和夫さんが造語した「ショート・インサーティッドOff-JT」によって、経験を裏付け、技能を体系化するといったやり方である。

 問題なのは、目的、つまり意味付け自体が上司によって異なってしまうことのほうである。そうならないためには、企業目的から各組織目的への展開が、管理職者のなかで胎落ちしていなければならない。その意味でのリーダーシップの連鎖がなされるような、管理職層育成が恒常的になされていることが、的確な業務指示の前提になるのだ。

 さらに、人材育成の最前線である業務指示には、実はもう一つの意味付けが不可欠である。業務を行う部下本人にとっての「意味」である。会社や経営にとっての意味や意義を意識できたとしても、最終的には、自分のためになるという動機付けがなければ、人は未知なるものに挑戦的に臨めない。自分にとっての意味を自覚したとき人は変わる。かならず、その業務をいま自分が経験することが次の成長へのステップであり、将来のキャリアにいかにつながるか、をわからせなければならないのである。

 それがなされるためには、やはり、管理職者自身が自身の経験を踏まえたキャリアの意味付けができていなければならないし、自社が求める人材像や人材育成の方針と仕組みを理解していなければならない。結局のところ、業務指示に始まる人材育成では「会社にとって」と「自分にとって」のふたつの意味を語ることが方法論としての大原則であり、そのためにはまず、管理職者自身に対する意識付けが徹底される必要があるということだ。

 ゆえに、初級管理職者に対する「業務指示/OJTスキル研修」とは、部下に対する業務指示の要諦である意味付けを方法として学ぶとともに、「意味を語りうるマネジャー」育成こそを、ヒドゥンアジェンダとしているのである。

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