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寛容な「顧客」になろう

執筆者: 高柳 公一 経営

政府の働き方改革の主要テーマである長時間労働の是正は、今まで継続的に取り組まれてきた課題であるが、なかなか解決できないまま、現在に至っている。その背景には様々あるのだが、「過度な顧客第一主義」という観念が、我が国の意識の中に強くある事が、解決の障害の一つになっていると考えている。

「過度な顧客第一主義」という観念においては、お客様は神様であり、サービスの提供者よりも、とにかく受益者の利害を最優先させるべきであり、それは社会にとっても良い事という前提に立っている。ビジネスの目的は、顧客創造であり、顧客への価値提供を最大化しようとする事は当然なのだが、サービスの提供者の利害を犠牲にしてでも、それを優先するべきという考え方が根強い。

深夜や明け方でも利用できるように、店舗は24時間オープンにするべきだ。どんな商品も絶えず、在庫を切らしてはいけない・・・等、顧客の価値提供を最大化するために、我が国の企業は努力を続けてきた。実際には、明け方に利用する客数はごく少数だったとしても、顧客の利便性が高まるなら、社員の負荷が多少、増えても行うべきだ、あるいは、正月1日からでも買い物をしたいという顧客がいるなら、社員の家族との時間を犠牲にしてでも、元旦からオープンするのが世の中のためだ、等、なによりも顧客を優先しようというマインドが存在している。一方、我々日本人は、顧客としての立場になると、商品に少しでも傷があれば交換する、丁寧に包装されている事は当然である、等など、商品やサービスの品質に関しては、妥協を許さない傾向にある。

また、この事は、社内顧客に対しても同様で、社内におけるサービスの受益者は、利用する可能性が低い資料の作成を依頼したり、必ずしも同席する必要のない社員にもミーティングへの参加を求めたり、重要性の低い、細かなミスでもやり直しを命じたり・・等、必要以上のサービスを提供者側に求めていく風潮が少なからずあるように感じる。

我々は、社会の中で、労働者たるサービスの「提供者」の側面と、顧客たるサービスの「受益者」の側面の両方を担っていて、時と場合によって、我々は「提供者」であったり、「受益者」であったりするのだが、我が国においては、受益者の利益を最大化すれば、とにかく社会にとっても善であるという単純な発想になってしまっていて、提供者の利害の優先順位を下げてしまっている。我々は、顧客としては、至れり尽くせりのサービスを受けられて、とても居心地がよい国なのだが、労働者としては、逆に、至れり尽くせりのサービスを提供しなければならない、結構しんどい国という事になる。

欧米の諸外国では、サービスの受益者である「顧客」より、提供者である「社員」の視点をより尊重している。多少、営業時間が短かろうと、夏季休暇で4週間以上、店舗が休業しようと、諸外国の人々は、顧客として我々以上に、寛容で、忍耐強く振る舞うことができるようである。

今後、長時間労働の是正を進める上では、このサービスの提供者と受益者のスタンスの見直しに踏み込まざるを得ないだろう。つまり、我々が、サービスの提供者としての生活や立場をより尊重するという事は、逆に、受益者の立場たる顧客として、サービスの提供者に過度な期待や必要以上の要求をせず、今以上に寛容になっていくことを期待されているということでもあるのだ。

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プロフィール

高柳 公一 (たかやなぎ こういち)

取締役 シニアパートナー

一橋大学商学部卒業。米国ジョージワシントン大学経営大学院修了。プライスウォーターハウスコンサルタント社に入社し、国内外の大手企業に対して、人材開発、業務改善、IT戦略立案等のコンサルティングプロジェクトに関与。その後、トーマツコンサルティング株式会社にて、多くの組織・人事に関するコンサルティングを行った後、当社、取締役、シニアパートナーに就任。人事分析、人事制度設計、他幅広い分野の人事コンサルティングに多数関与。

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