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世の中や自分に有益な残業

執筆者: 高柳 公一 人事管理

政府の「働き方改革実現会議」の初会合が先月末に開かれた。「非正規雇用の処遇改善」「賃金引き上げと労働生産性の向上」「テレワーク、副業・兼業といった柔軟な働き方」など、多岐にわたる働き方にかかわるテーマをひとつ、ひとつ議論していくことになるが、その中でも主要なテーマのひとつと言えるのが、「長時間労働の是正」だ。

諸外国に比べて我が国の労働時間が長い現状を是正し、短縮していくことが議論される。ワークライフバランスも考えて、働きすぎないようにしようという事自体、否定されるべきものではない。2015年度に過労死とされた人は96人に及び、過酷な労働環境を改善することは、喫緊の課題であることは間違いない。ただし、気になるのは、労働時間を短縮する手段として、時間外労働時間の上限を定め、その上限を超えた場合の罰則の導入も今回検討されていくという点だ。一律的な時間外時間制限の導入は、本当に、国全体として望ましい結果をもたらすことになるのだろうか。

先日の衆議院予算委員会で、某議員の質問内容への答弁を作成するため、関係省庁の職員は、夜中まで待機し、その後、残業して翌日の答弁資料を作り上げたという報道があった。働き方改革を議論するはずの国政の現場も、公務員の過激な残業があって、成り立っているのが現実だ。公務員にも時間外労働時間制限を設けたら、国会だって機能しなくなることになる。公務員に限らず、報道に係るマスコミ業界なども残業時間制限で区切ってできる仕事ではないだろう。あるいは、じっくり時間をかけて仕込み、魅力的な料理を提供する高級レストランの料理人などもその部類に入るのかも知れない。時間外労働時間に制限をかけることは、ワークライフバランスの改善や仕事の生産性の向上など、当然、期待されるメリットもあるが、仕事によっては、世の中が期待するアウトプットの品質レベルが維持できなくなってしまうリスクも十分、認識しなければならない。

より重要なことは、「労働時間を短縮することが望ましい」と考える労働者ばかりではないという事だ。本人の意思として、「もっと長く働きたい」という人もいる。残業しないと生活できないという状況については最低賃金の引き上げなどで、早急に改善していかなければいけないが、そういった話ではなく、できるだけ長く働いて「早くたくさん稼ぎたい」あるいは、「早くスキルを身に付け成長したい」と考えている労働者も多数、存在しているのだ。今回の改革で、より積極的に働いていきたいというマインドを持つ人々のモチベーションを下げてしまうことにならないよう十分な配慮が必要だろう。人々の仕事に対する向き合い方、価値の置き方も、様々で一律ではないということだ。

一概に並列的な議論するべきではないが、かつて、知識の暗記を重視した「詰め込み教育」を改め、1980年代に「ゆとり教育」がスタートし、学習時間と内容が大きく減らされたが、その後、国際学力テストで我が国の順位が大きく落ちてしまった事を思い出す。(その後、「脱ゆとり教育」への変更の流れの中で、順位も回復していると聞く。)

常態化した長時間労働を是正し、ワークライフバランスを改善させ、ゆとりある社会を作ることは、大変重要なテーマではあるが、その一方で、グローバルな競争がこれだけ激化している中、わが国の労働パフォーマンスを落としてしまうことは絶対に避けなければならない。世の中にとっても、労働者にとっても有益な残業があると、いう認識を持ち、もっと積極的に働いて社会に貢献しようという気概のある人々のモチベーションを低下させぬよう、今後の会議の行方を注視していきたい。

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プロフィール

高柳 公一 (たかやなぎ こういち)

代表取締役 CEO シニアパートナー

一橋大学商学部卒業。米国ジョージワシントン大学経営大学院修了。プライスウォーターハウスコンサルタント社に入社し、国内外の大手企業に対して、人材開発、業務改善、IT戦略立案等のコンサルティングプロジェクトに関与。その後、トーマツコンサルティング株式会社にて、多くの組織・人事に関するコンサルティングを行った後、当社、取締役シニアパートナーを経て現職。人事分析、人事制度設計、他幅広い分野の人事コンサルティングに多数関与。

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