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「管理」という誤訳

執筆者: 吉岡 宏敏 人事管理

 Managementを「管理」と訳すからいけないのである。

 マネジメントは「経営」であって、管理ではない。だから、マネジャーは管理職ではなく、経営職である。そのことは、多くの人が分かっているけれども、言葉のもつ力は強い。「管理」というラベルがついているために、ついつい、課長という管理職者は課の経営ではなく、まず管理をしてしまう。役所のような手続きに気を配り、木を見て森を見ないようなマネジメントをしてしまったりする。

 だから、管理職階層の名称を経営職層としている会社は正しい。正しいラベルをつけておけば、ときに人事部の方々から管理職研修で要請される「管理職は、非管理職のプレーヤーとはちがい、経営サイドの一員であることを分からせてほしい」といったこともなくなるだろう。名は体を表すのだから、その名称は極めて重要である。

 誤訳の最たるものが、「目標管理」ではないか。目標管理がドラッカーの言ったMBO(Management by objectives)の翻訳だとしたら、この誤訳の弊害は甚大である。まず、目標管理という言葉は、「目標を管理する」と読める。部下たちの目標を管理することを目的化してしまい、目標の設定と達成度の把握だけに注力してしまったりする。

 原語を知っていれば、逐語的に訳して、「目標による管理」と理解する。これは幾分ましではあるけれども、まだ組織目標を分解して達成を図るという組織のオペレーションや個々人の業務管理のニュアンスに留まる。「目標による経営」と言ってはじめて、マネジャーが部門経営の意思と責任をもって、組織成果と人材活用の最大化をめざし、人々の目標という“ツール”を工夫凝らして駆使することになる。

 もちろん、ラベルはどうあれ、そうした含意を理解していればいいだけのことだから、マネジャー昇格時にきっちり教えておけばいい。ただ、繰り返しリマインドしないと、管理という言葉のパワー(言霊?)に侵されかねないから、評価者研修や管理職研修では、目標管理(MBO)の意味を必ず強調し再確認することをお勧めする。

 ついでにいえば、そもそもドラッカーは「Management by objectives and self-control」と言った。目標を設定し、自律的な業務遂行を促すということである。いちいち指示しなくても、部下が自分でやるべきことをやっていく、そういうマネジメントのことである。つまりそれにより、マネジャーが楽にならなければならない。

 ともすれば、管理的な観点で正しい目標設定に腐心するあまり、目標管理制度の運用で多大な時間と労力がかかったりする。それでも、それにより部下が自律的主体的に動いてくれればいいわけだから、そうした目標たりえているかが一番問うべきポイントだろう。あるいは、決め事やルールに縛られないマネジャーの裁量性と説明責任による目標管理制度の自在な運用が、もっとさまざまに、あってもいいのではないか。

 Manageとは、意思をもって、いろいろ工夫して、やりとげる――をもともとの語義とするのだから。

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プロフィール

吉岡 宏敏 (よしおか ひろとし)

シニアパートナー

東京教育大学理学部応用物理学科卒業。ベンチャー企業経営、ウィルソンラーニング・ワールドワイド株式会社コーポレイト・コミュニケーション事業部長等を経験後、株式会社ライトマネジメントジャパンに入社。人材フローマネジメントとキャリアマネジメントの観点から、日本企業の組織人材開発施策の企画・実行支援に数多く携わる。ライトマネジメントジャパン代表取締役社長を経て、現職。

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