合理的・構造的アプローチで企業人事を進化させる
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振り出しに戻る

執筆者: 林 明文 人事管理

 管理職から外れたら専門職に移るという人事制度をよく見ますが、本当に合理的なのか大いに疑問です。

 優秀な事業部長を育てるには、複数の部長の経験が必要でしょう。同じように優秀な部長を育てるためには、異なる機能の課長経験が必要となります。優秀な課長として育成するためには、いくつかの異なる部署の経験をすることが望ましいでしょう。異なる環境や異なる機能でのマネジメント経験をさせることで、マネジメントとしての幅が広がり懐が深くなるのです。そのため優秀な管理職はローテーションが必須となるのです。逆に専門職は特定の領域の社内専門家です。企業によってその専門の領域は異なりますが、特定の領域を深掘りしていくことになるので、基本的にはローテーションという考えは必要ないのです。とにかく特定領域を徹底して詳しくなるようにするのです。要は管理職と専門職は全く育て方が異なるということです。

 しかし多くの企業の人事制度はあまり合理的に管理職、専門職の設計がなされていないのが現状でしょう。例えば管理職の等級が事業部長、部長、課長クラスに対応してM1、M2、M3とあったとします。それに対応して専門職の等級もP1,P2,P3のように設定したりするのです。これ自体には問題は全くないのですが、M1で管理職から外れた社員を同格のP1に転換させるような人事制度が圧倒的に多いのです。管理職と専門職は行き来が自由のような設計も多く見られます。管理職を外れたのであれば、管理職のもとで何らかの実務を行うことになります。この実務のレベルは同格の専門職と同じとは考えられません。専門職としてもその経験を積んでいない分、同格ではなく一つか二つ下ではないでしょうか。しかし実際にはあまり処遇を下げたくないという感覚から同格の専門職にしたりするのです。

 これは専門職の地位を著しく侵害しています。本当の意味での専門職は長年特定の専門領域の職務に就き豊富な経験と高いノウハウを持っているのであり、管理職だった社員が横滑りしてきて同格ということはあり得ないでしょう。そういう意味で現在の専門職は2つの人材が混在しているのです。管理職から外れた人材と専門家として評価されてきた人材が同じ等級・グレードに存在しているとも言えます。そうなると専門職は管理職から外れた社員の処遇の場として認識され、“管理職として処遇できない社員の職種”、“管理職より下”のような位置付けとなり、本当の意味での専門職は根付きません。

 まず管理職と専門職はその育成方法の違いと形成する能力の違いから相互の互換性は高くないことを再認識しなければなりません。自由に行き来できるというのは、全くナンセンスなのです。また管理職のどの等級からでも、管理職から外れた場合には専門職の一番下へ格付けるような方法が合理的でしょう。管理職としての能力ではなく専門職としての能力で評価すれば多くの場合にはM1〜M3の社員が専門職に行く場合には、皆P3に格付けるということです。管理職から外れたら、分岐したスタートポイントに戻るのです。“振り出しに戻る”ということです。

以上

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プロフィール

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー

青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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