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試合と練習

執筆者: 林 明文 人材育成

 スポーツなどの競技では、正式な試合に出て相手に勝つためには、相応の練習をするのがあたりまえです。試合に勝つためには相手よりもより多くの練習をより効果的な練習を行わなくてはなりません。練習ではミスや試行錯誤があってよいですが、試合では相手に勝つためにミスなく実力を十分に出し切らなければ勝利という成果が上がらないのです。

 このスポーツにおける試合と練習の感覚とビジネスにおける感覚は極めて大きく異なります。ビジネスにおいては競合会社に勝ったり、業績が伸びることが勝利ということになりますが、この勝利に向けての実際の活動は、試合と練習が混在しているともいえます。OJT(オン・ザ・ジョブ・トレーニング)は、実戦で鍛えるということですので、練習しながら試合するようなものでしょう。確かにスポーツの世界では試合などのように限られた特別な場面が設定されます。ビジネスにおいては長い勤務時間がすべて試合のようなものですので、試合に出て別な時間で十分な練習などはできません。スポーツでは膨大な練習時間に対して試合時間は非常に短いですが、ビジネスでは練習を十分に行うだけの時間的な余裕はなく、そのため実戦の中で練習もしなければならないのです。

 新卒で入社した社員は十分な知識・スキルがありませんので、最低限の実戦活動ができるようなトレーニング必要です。多くの企業では最低限のトレーニングをして、すぐに実務に投入します。そして経験させながら成果を出しながら学ばなければならいのです。実戦投入後は毎年評価を受け、個別に指導され、またたまに行われる集合研修で最低限の知識・スキルを学びます。ビジネスマンとして成長するために、換言すれば試合に勝つためには、仕事をしながらいかに学ぶかということが重要なのです。

 この最低限の教育で実戦に投入するという育成方法は、本当に効率的であるのかが疑問です。成長するかしないかは本人のスタンスや配属された部署によって大きく異なり、育成のスピードに大きなムラが発生します。確かに最低限の教育のあとは実戦で成長するということは、自己責任という意味では重要です。しかし組織として見たときに試合に勝てるビジネスマンを多く確実に育成しようとしたならば、この方法の効果が疑われます。十分な練習を積んだ者しか実戦に出さないほうが、組織のパフォーマンスを上げるという意味では効率的なのかもしれません。そのため管理職は自組織の成果を上げるのと同時に、練習の指導もしなくてはならないという重荷を負っているのです。働く側にも試合と練習が混在している中での甘えも発生します。OJTは知識・スキルが十分でない社員を実戦に投入するということになりますので、どこまでが試合でどこまでが練習化が分からないという感覚になります。練習中だからできなくて当たり前であるような感覚です。

 OJTは大切だと思います。ベテランからの指導は短期間で人のパフォーマンスを上げることができる有効な手段だからです。しかしOJTに頼りすぎるもの大いに問題があります。もっといえば最近の企業はあまりにもOffJTを軽視しすぎていますし、自己学習、自己研鑽に対する意識付けも強烈さがありません。十分な練習を積んだ社員ばかりであれば、常に試合に勝てる組織になれるはずです。業務は試合であるとするならば、会社が十分な練習を提供するか自主トレを強力に推奨することが必要かもしれません。

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プロフィール

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー

青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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