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背水の陣

執筆者: 林 明文 その他

 背水の陣とは昔の中国での漢と趙という国の戦争の話です。このとき漢は兵力が少なく圧倒的に不利な状況でした。漢の将軍韓信は圧倒的な兵力の趙軍に勝利するために、常識では考えられない戦術を用います。川を背にして布陣するという当時の兵法の常識では考えられない先方です。当時では“水を背にして陳すれば絶地となる”と言われていたからです。しかし韓信は少ない兵力が大軍を打ち破るためには、兵たちが通常の精神状態では無理だと考え、あえてタブーとされている背水の陣で臨みます。趙軍は敵の将軍は軍事の常識を知らないと嘲笑し、攻撃を開始します。しかし漢軍は後ろに川が流れている状況で一歩も引くことができません。生きて帰るには目の前の敵を倒さなくてはなりません。その必死さが趙の大軍を打ち破りました。背水の陣とは必死に努力することを表す熟語として今でも定着しています。

 さて企業のビジネスの現場ではこのような“背水の陣”的な感覚がどこまであるでしょうか。当然命をかけた戦争とビジネスを直接比較するものではありませんが、現代の日本人の多くは商業の世界で生きており、これを生業としている以上どこまで必死かということも問われてしまします。ビジネスマンの多くは生活も決して貧しくなく豊かです。基本的に終身雇用ですので定年までの雇用は保障されています。また一つの会社で失敗しても他社に転職することができます。しかし個人レベルでは一生懸命働き高い成果を出しても十二分に報いてもらえる企業は多くありません。さらには所得が高くなると税金の負担も一層増し、成果の割に所得は増えないのです。

 そういう観点では一つの会社や一つの仕事に必死になる要素は以前に比較してだいぶ少なくなってきたのではないかと思います。これは会社を経営するというレベルでも、一担当が業務を行うというレベルでも、その仕事を絶対に成功させるという気概を持ち続けることが、経済的に困難な環境になってきたのではないかと危惧します。また仕事に失敗しても、首になることもないですし、ましてや命を失うことなどありません。何に依拠して必死に仕事をするのでしょうか。

 仕事で成功している人の多くは、このような経済的な動機や生命の危機回避的な動機ではなく、それこそ自己の存在証明としての動機のように思えます。仕事を通じて生命や経済的困窮などのリスクがほとんどない以上、なんらかの“価値観“が背水の陣的な必死さを生み出すのではないでしょうか。現在の日本企業における人事制度の議論においての成果主義などは、効果はあるが根本的に働き方を変貌させるだけの力はなく、だからこそ企業の理念や方針や職業人としてのプライドが重要性を増しているのです。そのため評価制度などでも、単に成果を数字で測るような仕組みは、重要な本質的議論を避けているようにも思えます。日本企業がグローバルに輝きを取り戻すためにも、背水の陣的な必死さがほしいものです。

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プロフィール

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー

青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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