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林 明文

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あらぬ疑い | その他

あらぬ疑い

 人事管理は経営管理の重要な領域であり、もっと高度に発達するべきでしょう。そのためには人事管理も他の分野と同じように、より高度に理論武装しなければなりません。今までの人事管理論は、“モチベーション”“やる気”などの言葉が多用されていました。どちらかと言うと定性的視点に立った分析が多く、また人事施策なども合理性に欠いた施策も多くあります。  企業の人事管理は経営管理としての有効性と説明責任がある以上、パフォーマンス、金額や人数などの定量的な視点での議論が不可欠です。今まではあまりに数字、定量といった視点が欠如していました。“人”を扱うのだから、数字的定量的な発想はしてはならないと思っている人が多いのです。数字、定量を人事管理の中に持ち込むことに、違和感を感じる人も少なくありません。  批判的な人の代表的な主張は、人事管理は“人”の管理であるから、人の気持ちを重視しなければならないという主張でしょう。もっと言えば“気持ち”“モチベーション”が重要だから、数字で議論してほしくないという感覚なのです。定量という言葉があるだけで、“気持ち”を大事にしていないと直結する人もいるくらいなのです。ですから定量的、合理性などを多用している私にストレートな意見を言う人もいます。“定量、合理性、理論のような視点は、人を大事にしていない”と。しかし私自身はこのような前近代的な批判はむしろ褒め言葉としか聞こえていません。  人事管理ですので、必要な人材、適正な人件費とともに、社員のパフォーマンスマネジメントとしてのモチベーションやロイヤリティーは重要であることは間違いありません。そういう意味では従来型の“気持ち”を重視した考え方に新たな定量的な視点を提供し、人事管理としての領域の全体像を提示しているという感覚です。  例えばバブル期大量採用をした企業では、昇格を甘くすれば管理職は余剰しますし、昇格を厳格にすれば管理職一つ手前の等級に多くの社員が滞留します。よく管理職手前の等級に長期に滞留する社員のモチベーションを上げるための研修をしたいという話があります。これはこの一団の社員に研修手段でモチベーションが向上できることを前提としています。しかし人員の構成が歪な企業では、高い等級の社員が低い等級の職務を行わざるを得ないので、いくら研修しても本質的な解決にはなりません。社員のモチベーションの問題の背景には、人員数や人員構成といった構造的な原因があることを明確に認識しなければなりません。そのためには全員管理職を目指させる制度を見直す必要もあるでしょうし、雇用調整なども視野に入れなければ解決しないのです。これは定量的、構造的視点で考えればごく自然の帰結です。  “人”を大事にするなら、逆に徹底して人事管理を定量化、見える化し、合理的な施策を施さなければなりません。よく“人を大事にしていない”というあらぬ疑いをかけられることが多いですが、人を大事にするからこそ、定量的視点が必須であると信じています。 以上

仕組みの議論 | その他

仕組みの議論

 経営者は概して人事に関する議論が好きです。人事の制度の仕組みについても実に細かい部分まで議論をしたがる傾向にあります。“管理職には年俸制を導入したい”“基本給のテーブルはもっと段階を増やしたい”“評価の標語を多くしたい”など実務的でかなり細かな部分の話をしたがる人が少なからずいます。  経営管理の諸分野の中で、これほどまでに細かな部分まで経営者が話をする分野は他にないのではないでしょうか。たとえば情報システムの議論をするときには、新システムの効果や基本的な機能は議論するでしょうが、どのようなシステム構成であるとか、各サブシステム機能や使用する機器の詳細なスペックなどはあまりに専門的であり議論できませんし、しないでしょう。そういう意味では経営者は情報システムを経営的視点から議論することに終始しており、その目的や効果をどう実現するかという“仕組み”について議論しているのではないのです。他の分野もそうです。経理財務も経営として議論することは明確であり、勘定科目の定義や仕訳の仕方などを議論することはないのです。すこぶる経営視点での議論に終始します。  人事分野については、目的や効果、それを実現するための方向性くらいの議論であればよいのですが、あきらかにこの経営的領域を越えて、人事制度の内部の仕組みについての議論まで行われるのです。本来は人事管理に対する要求が満たされるのであれば、その実現方法、要は制度の内容や運用方法などの専門的、実務的領域については専門部署である人事部門に任せればよいのです。しかし役員会などで新人事制度などの議論をすると、勢い仕組みについての議論になります。“役職手当の金額をもっと上げたい”“管理職への登用年齢をもっと引き下げたい”“給与テーブルの号俸数を減らしたい”など設計実務に関することであり、経営者はもっと上位の問題課題や方針についてのみ議論することが望ましいのです。  そもそも人事に対する専門的知識が少ない役員が多いでしょうし、また役員間で人事に対する知識や認識そのものが余りにばらついています。人事は“人事業界”共通の用語や理論がないに等しいので、人事知識経験に乏しい役員が議論するにはあまりに効率が悪く正確さがなさすぎます。  経営者は人事の話が好きだということもありますが、今の人事部門は、人事に関して高い信頼を得られていないとも言えます。実務的なこと専門的なことは専門部署に任せればよいのですが、人事にはその信頼性が十分とは言えません。役員は人事上の問題課題の認識と施策の方向性のみを議論するだけで、あとは人事部門に任せるくらいの信頼性を勝ち得なければならないのです。そのためには人事はもっと経営的視点で議論しなくてはならないでしょうし、人事のパフォーマンスを誰でもわかるような形で示すことも必要なのです。経営者に長々と仕組みの議論をすることがこの分野の現状をよくあらわしていると思えます。

社員の幸福感の高め方 | モチベーションサーベイ

社員の幸福感の高め方

 幸福感の高い人はどのような人だろうか?一般的には配偶者のいる人や非喫煙者、心身が健康である人はそうでない人と比べると幸福感が高いと言われています。また、興味深い調査として、幼少時にシルバニアファミリーで遊んでいた女性とそうでない女性を比べたものがあります。この調査では、大人(20~25歳)になった時点での幸福度は、シルバニアファミリーで遊んでいた女性のほうが高いという結果が出ています。  しかし、当コラムを読んでくださっている皆さんが興味をもたれるのは、「幸福感」という概念は、ビジネスの中でどのように活かすことができるのか?特に、「生産性」や「業績」といった代表的な成果指標に対してどの程度の影響を与えるものなのかといったことではないでしょうか。  欧米の研究を見ると、幸福感の高い社員は、生産性が高く、売り上げも多く、リーダーとしても優れ、高い業績を上げる。また、病欠も離職も少なく、仕事のストレスに負けることもないという報告があります。幸福な気持ちで業務に取り組むと、時間の使い方が効率的になり、仕事の質を下げることなく生産スピードを向上させることができるそうです。その結果、幸せな気持ちで物事に取り組んだ人は、そうでない人と比べて生産性が12%向上するという調査結果も発表されています。ちなみに、不幸は生産性を10%低下させるそうです。  では、企業にとって良いことづくめの幸福感は、何から影響を受けているのだろうか。幸福感の高めかたが分からないと施策を講じられませんが、この領域の研究は国内外を通してまだ始まったばかりです。  国内における先駆け的な研究は、2012年に内田・城戸が人材育成学会にて発表した『ポジティブ組織行動論の試み-仕事での「幸福感」と組織内要因-』であると言えます。内田らはこの中で、約300名のビジネスパーソンから集めた定量データを分析し、幸福感を高める5つの組織内要因を明らかにしています。この5つは、「マイビジョンへの挑戦」、「自己効力感」、「地位と給与の満足」、「仕事の社会的評価」、「努力と評価の関連」と名付けられた因子であり、これらが幸福感に対して統計的に有意であることを示しています。  自分の実現したいビジョンをもち、得意分野を活かしながら挑戦的に仕事ができていること。自由裁量の度合いが高く、自分の能力を活用しながら自信をもって仕事を進められていること。現在の地位や役割と、得られる給与等の報酬に満足していること。自分の仕事が社会的にも組織内においても評価されていること。そして、自分の努力が上司などから人事的に評価されること。つまり努力と評価のつながりが認識できることが「幸福感」を高めるのです。  2回のコラムで取り上げた「幸福感」は、組織内で伝播する特性をもっています。自分が職場で幸せであると思えるほど、共に仕事をする仲間だけでなく顧客に対しても、より多くのポジティブ感情を伝えるようになります。そして、最終的には、職場全体がポジティブな状態へと変わってゆき、大きなビジネス成果を生み出すのです。ポジティブ感情のドミノ効果と呼ばれるこの現象は、組織に対して大きな変化を起こすための小さな一歩の必要性を示唆しています。  職場の幸福度について興味をもたれた方、詳しく知りたい方はお気軽にご連絡ください。 以上

異なる期間 | その他

異なる期間

 日本企業の将来は手放しで明るいものではありません。国内市場は総じて縮小傾向にあり、競合に打ち勝っていくことが生き残りのために重要になります。またより成長するためには海外へ進出を加速させることも考えなくてはなりません。市場環境の変化とともに労働市場でも劇的な変化が始まっています。少子高齢化が進行し、社員の平均年齢が徐々に高くなってきます。高齢社員が多くなり若年社員が少ないということですが、これは企業の活性化の維持という観点や、高齢化した社員でより高いパフォーマンスを挙げなくてはならないという、過去の人事問題にはない非常に深刻で重大な問題が起こるのです。厳しい市場環境で成長しなければならないが、同時に高齢化、働き手の不足に対応しなければならないのです。 現在多くの企業で、50歳台の社員が多く30歳、20歳台の社員が極端に少ない人員構成が見られます。そのため発生している問題は、高年齢化による人件費の向上や管理職社員の必要人数以上の増加などが深刻です。また若手社員の不足についても非常に深刻であり、ここまで若手社員が少ないと到底直ちに解消できる問題ではありません。  現在起きている高齢化の問題を正しく認識しなければなりませんが、この問題は時間の経過とともにより深刻さを増していきます。将来の予測を行うと、先ほどの高齢化が進行している企業では今後約20年近く高齢化問題に悩まされることが定量的にわかります。  このような歪な人員構成となった原因はいくつか想定できます。その一つが経営責任と雇用責任の期間が異なることにあるでしょう。経営者は通常4年から6年程度の経営責任を負います。企業の雇用責任は大学新卒社員を一人雇用すると65歳まで実に43年間の雇用責任が発生します。この期間が異なることが人員構成の問題を発生させる一つの原因なのです。時の経営者の経営的判断が雇用責任の期間と合わないために経営的にOKでも人事的にはNOであることが発生するからです。   代表的であるのは新卒の採用人数でしょう。正社員は企業のノウハウや技術、文化を継承していく幹部人材であるので、本来的には緩やかな台形型の人員構成が望ましいです。したがって業績が悪いときに新卒社員採用を抑制するのは、短期的コストカットという観点からは経営的に正しいのですが、企業の中長期の成長を維持向上するための人材基盤という観点では正しくありません。逆に短期の業績がよいからといって新卒社員を大量採用する経営者もいます。これも一年の収入が多いからといって43年ローンを多く組むことがナンセンスであるように、雇用責任という観点ではナンセンスです。  経営者、人事は短期的な最適化を求めることの視点も重要ですが、それに偏重し過ぎると、後の企業や経営者、人事が非常に困るのです。継続的に発展する企業を造ることも経営者の重要な役割であり、短期の経営責任と長期の雇用責任の両方を担っていることを再認識しなければならないということです。 以上

改革のパターン | その他

改革のパターン

 改革を断行できる経営者はあまり多くありません。改革自体が過去の経営を一部否定することと、社員の削減や処遇の見直しという重い仕事を実際に行わなくてはならないからです。改革を行うには経営者は相当な腹を決めなければなかなか実行できるものではありません。  改革が必要な企業で改革に対しての行動にはいくつかのパターンがあります。まず改革を行わなくてはならないことはよく理解しているが、改革をしないという“戦意喪失”的パターンです。自分が経営者の間はできれば改革はしたくないということです。環境が好転しない限り状況が悪化するケースが多いですが、自分の任期中は行わないのです。次に大胆な改革をぶちあげますが、計画を検討する中で次第にトーンダウンするパターンでしょう。“敵前逃亡”的パターンと言えるでしょう。改革の重要性や方向性はより理解しており、それを行う構えを見せるのですが、構えで終わってしまうのです。改革の検討段階で社外社内からいろいろな抵抗にあいます。この抵抗の強さや抵抗を覆すパワーを考えると、次第に妥協的改革案になり、果てはほとんど何も行わない改革となってしまうのです。このパターンに似ていますが、抜本的な改革はしないけれども、社内外の強烈な抵抗をうまく制御して、決定的な対立がなく、その組織内の許容的範囲で改革を行うパターンもあります。“予定調和”パターンと言えるでしょう。このパターンの企業の多くは、改革のあるべき姿はわかっていますが、過去の経営や現状への配慮も同じだけの比重で考える傾向にあります。非常に頭の良い先の見えるキーマンが先導して行うパターンです。確かに抜本的ではありませんが、制約の中で最大限の成果を上げようとするものです。そして改革を徹底して断行する“正面突破”パターンがあります。このパターンは環境的に改革をしなければ生きていけない企業が多いですが、将来を見据えて徹底して改革を断行するという企業もあります。正確な環境判断と今後の経営のあるべき姿から一気に改革を断行するのです。  改革を断行し成功する企業はいくつか共通することがあります。一つは強力なリーダーがいるということです。このリーダーは現状の正確な把握と将来に対するビジョンがあります。またある程度人望がなければなりません。次に方法論に固執しないということです。実行するための方法論について詳細な意見は言わずに他に任せるのです。また強力なブレーンがいるということも共通しています。そして最後にこれが最も重要ですが、改革が失敗したら自らの身を処す覚悟ができているということです。  これから日本企業の人事は今まで経験してこなかった変革期を迎えます。高齢化やグローバル競争、環境変化に対応して成長を持続しなくてはなりません。そのための人事基盤はあまりにも脆弱で非合理的です。また過去の遺物も多くあります。どこかで大きな構造転換が必要になるでしょう。改革がうまくいくためには“リーダーシップ”と“覚悟”がいかに重要であるかを再認識しなければなりません。  以上

偶数段階評価 | 人事制度設計

偶数段階評価

 日本人は幼いころからの学校教育の影響か、何かを評価するときに五段階で行うことが好きなようです。この五段階とは、例えばS、A,B,C,Dや5、4、3、2、1のようなもので、長年慣れ親しんできています。この感覚が企業の人事にもそのまま持ち込まれているように感じます。  この5段階評価は、特徴的であるのはBや3などの“ふつう”という概念です。平均的、まあ合格レベル的な感覚ではないでしょうか。なぜ特徴的であるかというと、非常に難しい概念であるからです。それは“ふつう”の上下の境界線が決まらなければ“ふつう”が決まらないからです。要は“ふつう”という概念は、二つの境界線を設定しなければ成立しないのです。AとB、BとCの境界線の間が“ふつう”ということだからです。Bの概念には厳密に言えば求められている基準に対して多少上回っていることと、多少下回っていることが混在している、非常にわかりづらい構造なのです。  人事管理の評価でもこの日本的な慣行は一般的で、評価を“ふつう”を中心とした5段階にする傾向が非常に強くあります。もっと言えば慣れ親しんでいる5段階で評価することになんら疑いを持っていないのです。  企業の人材管理で非常に重要であるのは、企業が求めるレベルの人材が適正数在籍しているかということです。これを制度的に言えば、昇格が最も重要と言うことになります。昇格を判断するためには、現在の等級の基準をクリアしているかが問題であります。従ってBとか普通という概念ではなく、大学を卒業すると同じように、等級を卒業するために、昇格基準を越えているかいないかが問題なのです。従って極論すれば“越えている”“越えていない”を判断することが基本的な機能として必須になるのです。これは究極には“○”か“×”かということですが、○にも段階があるでしょうし、×も同じですからそれぞれ2つに分割したら4段階評価ということになるでしょう。  要は人材管理の非常に重要な機能の昇格の判断には今までの5段階評価は合理性が全くないということなのです。基準をクリアしているかいないかが昇格の候補者であり、それがはっきりわかる評価方法に変えなければ機能しないのです。  社員の能力の評価は、昔風の5段階ではなく、クリアしているかいないかが明示できる偶数段階評価が必要になるのです。たまに昔から親しんでいる奇数段階評価でないと社員が理解できないと言う企業もありますが、大学卒業は単位が取れるかとれないかで判断される訳であり、なにも小中高校の感覚でなければ評価しづらいというのもどうかと思います。実務的にもBや普通のある概念は難しさを倍以上にします。評価の目線が合わないと言っているのであれば、合いやすいように偶数段階評価にすれば、合わない部分はたちどころに半分以下になるでしょう。 以上

人事の品格 | その他

人事の品格

 近年の労働市場は以前に比較して徐々に発展し続けています。よく言えば適切な労働流動化が進んでいるともいえますが、そうともいえない寂しい状況も多く目にします。ある企業の人事部の若手社員が、急に退職したいと言い出したそうです。退職そのものについては、特に引き留める理由はなかったのですが、その社員は退職理由も言わず引継も早々に、なにも挨拶もせずやめていったそうです。人事部長は、最近の若年社員は“リセット”的な退職をする社員が多いと嘆いていました。在職中にはいろいろと指導されたり、研修を受けて世話になった人も多いのに対して、その人間関係がなにもなかったかの如く一気に絶ってしまうような印象を受けるというのです。転職した社員のその後についてはよくわかりませんが、他の競合会社の人事に転職したそうです。こんな退職行動しかできない人がよく他社の人事管理や雇用管理の仕事ができるなというのが、その人事部長の率直な感想でした。人事部に所属しておきながら、非常識な転職を何とも思わずにしてしまうことの無頓着さが理解できないのです。そういう意味で人事に携わる人にはより人間を理解し、俗な言い方をすれば“自己を律する”“気を遣う”ことができなければ、本当の意味で人事管理などを全うできないのではないかと言っていました。まったく同感です。  この話に多少関連する他社の話です。ある企業で人事部長を中途で採用しようとしていました。伸び盛りの会社で、社員数も増えてきており、人事管理を高度化する事が必要となってきたからです。採用活動の結果有力な候補が2名残ったそうです。2名の候補者の中で特に入社意欲が強い1名の候補者を採用することになったそうです。当然会社としては常識的な範囲での入社時期や処遇を提示します。その候補者も基本的にはその条件に合意していたはずですが、オファーを受けたとたんに強気の交渉が始まります。本人にしてみれば候補者が自分だけとわかり、採用段階で自分により都合のよい条件を引き出そうと思っていたのでしょう。例えば基本的には定時で帰ること条件にしてほしいとか、できるだけ在宅勤務を認めてほしいなどというものです。また給与もオファーされた金額に若干の上乗せを要求します。制度的には例外的な処理をしなければならないことがわかっていながらです。しかもここまでに至る面接などは本人の都合でリスケジュールやキャンセル、夜遅い面接や遅刻などもあり、採用の責任者はすこし辟易していたそうです。候補者本人はこのことをワークライフバランスなどと表現し正当化しようとする感覚、発言が多かったそうです。結局人物的な観点で採用には至らなかったと聞きましたが、管理担当役員は人事をプロとしながらこのような発言行動は理解できなかったようです。  この変動する環境の中で人事を生業にする限りにおいて、スタンスや意識、行動を常に自己チェックし、常識的であることがいかに重要かを理解しなくてはならないのではないでしょうか。人を扱う専門家が自らを律することができないという状況は冗談にもならない価値観的危機を感じます。ビジネスマンとして、人事のプロとしての品格が問われているのです。 以上

気分が悪い | その他

気分が悪い

 360度評価は対象者からみると気分の悪い仕組みでしょう。直接の上司以外の人から評価されることに、いろいろな抵抗を感じるからです。部下に評価されたくないであるとか、評価者としてのトレーニングを受けていない社員は適正な評価ができないとか、好き嫌いが評価に反映されるとか、その結果部下に強く指導しづらいなどのような話が非常に多いのです。そういう意味では特に経営者や管理職など評価をする上司側から見ると、気分が悪い、気持ちが悪い仕組みなのでしょう。  しかしこの360度評価は今までの評価に比較して実に多くの有用な情報を提供してくれます。様々な関与者から評価をされることによって、被評価者の強み弱みがよくわかります。これを配置や任用、教育に使用するときわめて効果的です。もちろん上司の評価を主評価として他の関与者の評価を参考情報という位置付けで処遇(昇格や昇給)の評価に使用することも有効であることは言うまでもありません。  日本企業ではこの360度評価はストレートに処遇に結びつける評価として使用することはあまり多くありません。逆に処遇に結びつけず、配置や任用や教育に使用することを前面に出すことによって、気持ち悪い部分を緩和し導入している企業が多いでしょう。  日本企業は長期雇用であるために、社内の人間関係は長期にわたり継続します。組織内があまりぎすぎすしないようにという感覚から処遇に関する評価はどんなにがんばっても甘めについてしまうのです。これは長期雇用の特徴であるために、どんなに厳格な評価をしようと経営や人事が努力しても、処遇の逆算で評価をしてしまう傾向にあるのです。  しかし激変する環境下における人事ニーズはこの甘い評価をそのままにしておくことは許されません。そのため処遇の評価を徹底して適正化することの道を選ぶか、処遇の評価と360度評価のような活用育成のための情報収集を平行して行うという道のいずれかを選択しなければならないでしょう。いずれにせよ今後は今以上に360度評価が活用されていくでしょう。当社では2015年2月に多くの実績のある360度評価サービスの事業譲渡を受け本格的にこのサービスを提供し始めました。今までも提携企業と360度評価を行ってきましたが、より高いレベルでのサービス提供が必要であることと、様々な人事関連分析や人事施策、教育施策とのサービスとして連携が重要と認識し、当社ブランドでのサービスとして提供しております。  当社の経営会議で360度評価の重要性を話し全員の賛同を得ました。その後に当社内での360度評価の実施の提案がなされました。会議参加者ほぼ全員が気分の悪さを感じたことがすぐに分かりました。しかし“経営者、管理職は高い視点で度量を持ってこのサービス受けるべきである”というサービス説明に賛同し、これから多くのクライアントに提供していくことを話した後でしたので誰も反対できません。結果当社でも経営者含めて行いますが、このときの反応が象徴的なのです。人事のコンサルティングを行っている当社であってもこの気分の悪さを強烈に感じますので、経営者や人事の強力なリーダーシップ下で推進しなければ導入ができないでしょう。人事がより強くなりその結果企業が成長することを実行するためには、この気分の悪さがブレーキになってはいけないと強く感じたということです。 以上

社員の幸福感が経営にもたらすもの | その他

社員の幸福感が経営にもたらすもの

 皆さんは「幸福」と聞くと何を思い浮かべますか?お金、地位、健康…人によって幸福の捉え方は様々です。では、皆さんは幸福ですか?と聞かれたら、何と答えるのでしょうか。  ご存知のように、近年様々な国・機関・団体で、幸福に関する調査が行われています。例えば、国連は「World Happiness Report」を作成しており、2013年の調査結果を見ると、1位デンマーク、2位ノルウェー、3位スイスとなっており、日本は43位です。また、OECDが発表している「Better Life Index」における日本の順位は21位(2013年)です。調査によってその視点や対象が違うため一概に言えないものの、日本の順位は高いとは言えません。  このような幸福に関する調査が数多く行われるようになった背景には、調査対象者が感じている「幸福感」が、その人の人生だけでなく、地域社会や経済活動に対しても、良い影響を与えているということが分かってきたからです。  幸福感に関する研究は、従来ポジティブ心理学の領域でなされていましたが、現在は組織行動論の領域に取り入れられはじめ、「ポジティブ組織行動論(Positive Organizational Behavior)」として、ビジネスで活かすための研究が進んでいます。研究の視点としては「幸福感とは何か」「幸福と成功との関係」「幸福感は何に影響を与えているのか」「何が幸福感を高めるのか」などが挙げられますが、今回のコラムでは「幸福感とは何か」「幸福と成功との関係」について触れさせていただきます。  幸福感は、さきにも述べたように人によって感じ方が異なるため、測定することは簡単なようで難しいと言われています。心理学者による幸福感の研究ではSWLS(ディーナーらの人生満足度尺度)が多く使われていますが、一方で欧米人と日本人といった特性による違いを考慮する必要があるといった考えもあります。これに対し、内田・城戸(2012、2013)は、日本のビジネスパーソンを対象とした幸福感の調査・研究を行い、幸福感は「自分の人生を順調とみなし満足していること」、「自分の将来に対して希望をもっていること」、「周囲の人たちと良好な人間関係を築いていること」から構成されることを明らかにしています。つまり、過去から現在までの時間軸の中で蓄積されてきた満足感や、将来に対する期待や希望。そして、周囲の人との良好な対人関係が日本のビジネスパーソンの幸福感を構成しているというわけです。  では、その幸福感と成功はどのような関係にあるのでしょうか。「何かしら成功したから幸福なのだ」と思われている人も多くいらっしゃいますが、心理学と脳科学の研究によって、幸せは「成功に先行する」のであり、単なる成功の結果ではないということが明らかになっています。  仮に、成功が幸せをもたらすのであれば、期初にたてた目標を達成した社員、昇進した社員など、何らかの目標を達成した人達はみな幸せになっているはずです。しかし実際には、勝利を勝ち取るたびに、成功のゴールポストはさらに前方へと押しやられていきます。悲しいことですが、こうして私たちの幸せは、地平の彼方にどんどん遠ざかっていくのです。  これに対し、幸福だから成功するという「ハピネス・アドバンテージ(幸福優位性)」の考え方は、前向きで受け入れられやすく、私たちの組織への応用展開が可能と言われています。今後は、幸福感によるビジネス上の効果と言われる「欠勤が少なくなる」「離職率が下がる」「生産性が高まる」「高業績をあげる」などを得るための取り組みが、企業内で広がってくるものと思われます。  幸福感がもたらす具体的な効果や、何が社員の幸福感を高めるのかについては、次回のコラムにてご紹介をさせていただきます。 以上

高難易度の管理部門人事 | その他

高難易度の管理部門人事

 企業内で管理部門に所属している社員は、営業や製造といった直接部門に比較すると非常に低い比率です。業態や規模にもよりますので比率を正確に出すことは正確ではありませんが、5%から10%程度ではないでしょうか。たとえば人事部門などは社員100名に対して1名程度が適正な人数と言われていますので、社員の中では1%程度の比率ということになります。非常にマイナーな職種といえます。  人事制度を設計するうえで、この管理部門人材のキャリア設計は非常に難易度が高いといえます。これは人数が少ないことと、管理部門のキャリアといっても、いくつかの専門的な分野に分化しており、様々な研修や経験を積まないと優秀な管理部門社員や管理職になれないからです。一般に管理部門では、経理、人事、総務、法務、情報システム、広報などが挙げられます。この中では経理や法務は専門的な知識や様々な経験がなければ実務を遂行することができません。情報システムも他の分野と比較して独立した分野であり、管理部門人材といってもまったく別の職種の人材といえるでしょう。  この管理部門人材の調達育成の難しさは、その人数が大きな影響を与えています。たとえば1000名の企業で経理部が20名だとします。この20名は経理の経験がそれなりになければ決算や財務の仕事などを遂行できません。したがってちょっと経理が忙しいからといって他部門からローテーションで配属しても戦力になりません。また20名であれば毎年新人を配属することできませんので、2年ごとに1名か4年ごとに2名などの配属ペースとなるでしょう。この難しい分野の仕事を行うために1名や2名のために研修を行わなくてはならず、非常に非効率です。営業や生産部門のように多くの新人が毎年配属される部門では新人教育も十分な時間、コストをかけても、効率的にできますが、管理部門ではそうはいきません。  1000名の企業ですらそうこうであるのに200名の企業ではもっと深刻な問題となります。200名の企業で経理部門が5名だとします、計画的に配属するならば8年に1名の配属ということになります。こうなるとよほど長期の視点で持って配属を考えなければうまく循環しません。しかも経理部の社員が一人退職すると営業や生産と比較して極めてダメージが大きいのです。これは経理だけでなく、他の部門すべてがこういった状況ですので、人事管理としては難易度が非常に高いのです。  2000名以下、1000名以下の企業では、管理部門人材を新卒から配属して育成することが本当に妥当なのかということです。このような難しい管理、高いリスクを抱えるのであれば、できるだけ社員が行う業務を少なくして、アウトソーシングや派遣社員の活用を行うほうが合理的です。外に出せない意思決定業務やコアの業務については社員が行うのは仕方ないにしても、他の業務でアウトソーシングできない業務はほとんどないはずです。管理部門人材の調達と育成について再度考える必要がありそうです。 以上

質問に答えろ | その他

質問に答えろ

 質問に対してこちらが求めている答えが返ってこないことが実に多く感じる。たとえば会議の時などでも、質問者の質問に対して、的を得た返答をする人が実に少ないのだ。質問している趣旨を理解したうえで、その質問に対しての回答がうまく行える人は多くないのが現実である。  会議などを行っている中で、参加者から質問が出るというのにはいくつかのパターンがある。代表的なものでは単純な質問である。説明者が話す内容の中で、よくわからない部分があった時など単純にわからないことを聞くというものである。次に確認や強調のための質問がある。これは説明者が話している内容の主旨や一部について、会議参加者に再度確認させたり、強調するための質問である。これは会議の主旨から、特に参加者に理解賛同を得たい場合に行う質問のパターンである。また誤りに対する指摘としての質問もある。クレームに近いものである。説明者の説明の事実認識や論理構成などの誤りを正すためにするための質問である。“痛い”質問である。質問をされた側は、質問の意図を瞬時にもっと深く理解するべきである。質問の意図をよく理解しないで回答されると、質問者は“的外れ”と思い苛立ち、失望が大きい。  質問する側は質問したことに対する明確な回答がほしいことを理解しなくてはならない。質問に対する回答が長すぎたり、まとまっていないとさらに苛立ちや失望が大きくなるのである。そのためには結論から回答することも効果的であろう。“この施策にはリスクはないのか?”と聞いたところ、長々と説明されて結論がよくわからなかったりすることがある。長く説明するのであれば、“まず今の質問に対しては、YESです。なぜならば・・・”などのようにはっきりと結論を明示することも場面によっては効果的である。  逆に会議などで質問を受けた時など、気の利いた、ポイントを突いた回答をする人は優秀であると感じる。会議の主旨や流れ、雰囲気をよく理解して、質問者に対して効果的に対応できれば、参加者の信頼を得ることができるのだ。そのためには、質問を受けた時に即反応することは厳禁である。まず質問の主旨を理解する → 次に今、答えられるかを判断する → 答えるのであれば効果的な答えを考える → そして回答。このような頭の中の作業をしてからでないと答えるべきではないのだ。これは質問されてからできるだけ短い時間、瞬時に判断できるかが重要なのだ。このような頭の作業を行わないで答えると、ピント外れになるのである。この頭の反応をいかに瞬時にした上で、できれば回答は結論から言うと非常にクリアである。  これは会議だけではなく日常の仕事の中でも同じである。実に重要なコミュニケーションスキルであるが、日本ではあまり訓練されていないと感じる。それだけ質問に答えない人、堪えられない人が多いのだ。“質問に答えろ”“結論から言え”と心の中で言われていると痛切に感じるべきである。 以上

5年後 | その他

5年後

 日本企業の5年後はどうなっているだろうか。  現在より少子高齢化は着実に進んでいる。高齢化により内需は次第に縮小することになるだろう。さらにオリンピックによる一時的な需要が無くなることになる。税金、社会保障費負担が増すことも確実である。5年後には急速に企業業績の低下が予想されるのだ。そのため現在の日本企業の経営は非常に重要な局面に立たされていると言える。グローバル展開を進め、日本市場が縮小しても力強く成長することを指向しなければならない。国内市場を対象にしている企業は、新たな需要を生み出す商品・サービスの開発投入を急ぐか、競合企業に対しての優位性を高めなければ生き残れない。残り数年で経営の革新をしなければ、今の延長線では魅力的な企業として存続できないばかりか、存続そのものが危機に立たされることにもなりかねない。この状況に対して経営の重要な部品たる人事は十分に対応しているだろうか。今後の環境を予測して、計画的かつ抜本的な改革を行っている企業もあるが、強く意識していない企業も多いと感じる。  5年後急速に業績が低下すると、多くの企業は中高年社員をターゲットとした人員削減をかつてない規模で実施することが予想される。バブル崩壊後のリストラ時に“団塊の世代”の人員削減が行われたが、この規模を大きく上回る大リストラ時代が来るのだ。この背景には日本企業の人事管理が、いまだ年功的であることが大きく影響している。多くの企業の人事制度は“実力・成果主義”を標榜しているが、実際に実力・成果をストレートに反映しきれていない。換言すれば年齢との関係性を断ち切れない状態にあるのだ。そのため年齢が上昇すると人件費が上昇する、管理職が多すぎるなどの問題が放置されているともいえる。業績が悪くなると、人材育成投資を削減するので、この20年間十分な教育がなされたとも言えない。生産性の低い、処遇の高い大量の中高年社員を抱えきれなくなった時に、大規模人員削減を実施することになるだろう。  今後の厳しい環境をチャンスととらえるためにも、人事は思い切った施策を早急に実施する必要がある。社員の能力の向上は待ったなしであろう。新たなビジネスチャンスの獲得、競合優位性の向上のための人材育成を急ピッチで行わなくてはならない。また過去の延長線での制度改定ではなく、5年後、それ以降の環境を予測した“実力主義”の人事制度に早急に転換しなくてはならない。“評価があまい”、“給与を下げるとかわいそう”などと言っている場合ではないのだ。  企業の人事は岐路に立っている。5年後が一つの転換点とすると、今手を打たなければ間に合わないということを再度認識する必要がある。 以上