「調査・診断(組織分析) 」の記事一覧(2 ページ目)|コラム|株式会社トランストラクチャ

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調査・診断(組織分析)

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なんのためのエンゲージか | 調査・診断(組織分析)

なんのためのエンゲージか

  20年以上前、多国籍企業で働くようになって、エンゲージメントという言葉を知った。毎年、エンゲージメントサーベイの結果が国別にフィードバックされ、自国の数字改善に向けた行動の報告・共有・実践を強いられるという行事には辟易しつつも、多国籍の経営を統制する単純でオペレーショナルな手法にはなるほどと感服。各国従業員の「心情」の定量把握として、社員満足度とかモチベーションではなく、あくまでも組織成果に結果する(といわれる)エンゲージメントレベルを測るという点も、さすが業績指向のスタンスとして新鮮に感じた記憶がある。    当時、我々が受けていたサーベイでは、エンゲージメントレベルは以下の4つの総合設問で測られていた。 ・I speak highly of my organization's brand and services. ・I would recommend my organization as a great place to work. ・I feel motivated in my current job. ・Overall I am satisfied with my current job.    それに対する相関性を診るための設問群が、Global & Local Sr. Leadership 、Recognition & Reward、Culture、Work Environment、Immediate Manager といったカテゴリーで用意されていた。5,6年前から、日本でもエンゲージメントの大事さが喧伝されるようになって、そのサーベイもさまざまに提供されているが、だいたい構造はこの頃のものと変わらない。何がエンゲージメントを高めるかについても、ドライバーはすでに明らかになっている。その具体表現は論者や研究者、サーベイ会社によって異なるものの、結局のところ、従業員がいだく3つの「実感」に集約できる。   有意義感 貢献実感 成長実感    ひらたくいえば、 ①目の前の仕事の意義(会社にとっての/社会にとっての/自分のキャリアにとっての)がわかっていて ②承認や報奨で自身のなしえたことの価値が確認でき、③仕事を通じての成長が実感できている、ということである。ゆえに、これら実感を喚起できれば、エンゲージメントは高まる。    さて、冒頭「組織成果に結果する(といわれる)エンゲージメントレベル」と書いた。人々が、エンゲージされて働くことで、高い意欲と主体性をもって目の前の業務に臨み、パフォーマンスを上げ、組織の生産性向上に資する、とされる。ひいては、企業価値(=経済価値)向上につながるゆえに、今年始まった人的資本情報開示でも、KPIの一つとしてエンゲージメントレベルを記載する会社は多い。    要は、「皆が自ら頑張って働き成果あげてくれる」から、いうことだが、その限りではエンゲージメントの効用としてずいぶんと矮小なのではないか。たとえば、中国語で「頑張れ」を「加油」というがごとく、良い燃料を入れることで機械を最大稼働するかのような印象だ。機械ならぬヒトが働くとは、決められた業務を遂行するのではなく、やるべき業務を考えだす=業務創造にこそ本領がある。そうした、人が「考え、創り出す」行動こそをドライブするのがエンゲージメントだ、と考えたほうが腑に落ちるし、元気がでる。    実際、組織論や人材マネジメント論の領域では、エンゲージメントの向上が創造性発揮に直結する原理はあきらかにされていないものの、エンゲージメントが創造性発揮に寄与する可能性が、多くの研究者に指摘されている。また、エンゲージメントの語源、仏語の「アンガーシュマン」は、サルトルの自由と創造に関わる言及によってよく知られている。サルトルは、アンガージュマンを通じて、人間は自由を行使し新しい価値や意味を生み出し、社会を変革していくべきだと主張した。ここでは、自由な意思をもつ人々を創造へむけ駆動する鍵としてアンガージュマン=エンゲージメントが語られていたように見える。    資本主義社会の発展とは、差異の創出(=イノベーション)により駆動されるものとシュンペーターは言ったが、企業において差異を生み出すのは、モノでもカネでもなくヒトという資源。ヒトが差異を創出するための、つまり人々が創造性を発揮するための鍵がエンゲージメントとしたほうがダイナミックだし、それこそが人的資本経営のKPIにふさわしい。    エンゲージメントが従業員の創造性を喚起するものだとすると、先の3つの実感のなかで、「有意義感」こそが、もっとも重要になるはずである。発達心理学でいう「人は目標の意味に共感し意欲を持つとき最大に能力を発揮する」からだし、そもそも創造という行為は、役割とか任務といった受け身でできることではなく、「みずから成したいと思う目的への没頭」がなければ始まらないからだ。    やるべきことの意義を自分事として確信することが、創造性発揮にむけ人々をエンゲージする。であれば、イノベーションのためには、会社の目的、事業の哲学、仕事の意味を、人々を触発し得るものとして提示できるか否かが、まず問われてくるだろう。エンゲージメントサーベイは、その検証の第一歩なのである。    

社員アンケートに真剣に答えてもらうには | モチベーションサーベイ

社員アンケートに真剣に答えてもらうには

 「社内アンケート」と聞いて、どのようなものを思い浮かべるでしょうか?モチベーションサーベイ、パルスサーベイ、ストレスチェック、職場環境調査、360度診断…一口に「アンケート」といっても社内で実施するアンケートとして、様々なものが存在します。  弊社でも「モチベーションサーベイ(社員満足度調査)」「360度診断」は調査分析のサービスとして提供しています。このところ着目していることとしては、はたして回答者である社員のみなさんはどのような気持ちでアンケートに答え、捉えているのか?ということです。 アンケートに対して負担を感じている、面倒くさいと思っている、期待している、本音を伝えるチャンスと思っている…様々な捉え方があるでしょう。アンケートを実施するのならば、本音で、忖度なく回答してもらう必要があります。そのためには、アンケートを実施する側の姿勢や投げかけがとにかく重要なポイントだと思うのです。  なぜアンケートを取るのかというと、「社員からの声を拾い上げ、それらを反映させて会社をよくするため」。シンプルにまとめればこういうことではないでしょうか。今後の会社の発展のために、会社の様々な環境、仕組み、業務を整え、さらに成果をあげてもらう、その検討材料としてアンケートは実施されます。果たしてその意図、目的が回答者に正しく、熱意を持って伝えているでしょうか。 また、よくあるアンケートに関するご相談としては、「アンケートは実施したが、結果を放置」「結果を経営陣や担当部署のみに限定して社員にオープンにできていない」というものがあります。せっかくアンケートを取ったとしても、その結果を使って会社として何をするのかがわからないようなアンケートは答える側としては答えたくありません。忙しい中を縫って回答時間を捻出するのならば、自分が答えた内容が返ってくることを人間は求めるでしょう。毎年実施していたとしても、結果のフィードバックもなければ次は答えたくなくなります。  それでは、期待を持って、前向きにアンケートに取り組んでもらうには、どうすればいいでしょうか。 最後に以下の3点にまとめます。 ①アンケートの意図、目的を明確に回答者に伝える 初めが肝心ということです。回答開始前に、なぜこのアンケートが実施されるのか、そして結果をどのように活用し、どのように開示するのかを明確に伝える必要があります。方法はメールや、イントラ、各組織長からメンバーに落としてもらうなど様々な方法が考えられます。もっとも効果があると考えられるのは、アンケートを管轄する担当者、または経営層から直接言葉で伝えることだと思います。本気で取り組む姿勢と言葉は期待感を醸成させることでしょう。会社規模などで可能、不可能はあると思いますが、アンケート前に各拠点を回って説明会を実施するような例もあります。 ②すべて解決はできなくても、優先順位を付けてアンケート結果を踏まえた施策を実施する とにかくアンケート結果を放置しないことです。アンケート項目が多い場合、しかも多く課題が見つかってしまった場合、どこから手をつけるべきかわからず放置してしまうことがあるかもしれません。優先順位をつけ、何から取り組むのかをはっきりさせて少しずつでも進んでいくことで、アンケートの意味が出てきます。社員はそれを見て、答えた結果が反映される実感を持ち、「答え損」という気持ちは無くなるはずです。 ③結果は社員に開示する 自分の会社の仲間はどういう意識なのか知ってもらうことは重要です。開示する粒度は様々ですが、大きく集計した結果だけでも開示することで、会社がオープンに見せてくれるという意識になり、また、結果から業務改善に取り組む人も出る可能性もあります。特に、組織長、管理職レベルには、自身の組織の結果をしっかり開示し、それを受けて組織内で取り組むべきことなどを検討してもらうのは重要です。アンケートを実施したのが人事部だとしたらば、「アンケート結果を見て動くのは人事部でしょ」という意識は排除させるべきです。自分事として受け取る仕組みを作ることです。

360度診断という道具 | 360度診断

360度診断という道具

 360度診断は、人事部の方であれば、ほとんどの方が知っている調査診断サービスです。近年、当該サービスを活用される企業が確実に増えています。その背景には、「心理的安全性(psychological safety)」、ハーバードビジネススクールのエイミーエドモンドソン教授により提唱され、Googleが実証実験で「チームの生産性向上の最重要要素」と位置づけたことがあるのでしょう。心理的安全性とは、“自分の意見や気持ちを安心して表現できる状態”と私は理解しています。自分の意見を発しづらい組織は、生産性向上が難しいという事です。日本企業は生産性が低いと言われ続けていますので、社員が意見しづらい企業が多いのかもしれません。生産性向上は、多くの企業が課題とされています。心理的安全性は、やはり注目すべきワードであることは間違いないようです。 皆さんの所属している組織は、自分の意見を素直に発言できる組織になっていますか。自信をもってYesと言える方は少ないのではないでしょうか。近道は、周りとのギャップを知り、解消に努めることです。ギャップ解消は、自分の意見や気持ちを安心して表現できることに必ず繋がります。360度診断は、自己評価と上司・同僚・部下評価のキャップを知るために最適な道具になります。  別の角度からのお話しです。皆さんが出社するまでの行動ってどうでしょうか。最寄り駅の同じような場所から電車に乗り、会社の最寄り駅で下車。同じコンビニやカフェに立ち寄り、同じ物を購入して出社する。人の行動はいつも同じです。ここで、会社の裏の個人店だけど、朝8時から9時まで全て半額ですよと教えてもらったら、多くの方がその店に足を運ぶことになると思います。教えてくれたこと、知ったことで、初めて行動が変わります。社会人になって、10年・20年経つと、残念ながら自分の行動が正しいと思っている場合がほとんどです。根付いているので行動は変わりません。こんな時、自分が周りからどの様に評価されているかを突き付けられたら、自分の行動について考える機会に向き合うことになります。自信の成長を考える人であれば、何らかの行動変容の必要性に気づきます。360度診断は、気づきを与える道具になります。  弊社が360度診断を継続的にご支援している企業のお話しです。毎年管理職を対象に調査を実施しています。年々点数が向上しギャップも解消に向かっています。心理的安全性が向上し、働きやすい組織になってきていることが想像できます。但し、その裏では管理職を入れ替えたことが点数向上に貢献していたことがわかりました。周りからの評価を認識したとしても変わらない方は一定数存在します。その場合には同社のように管理職の入れ替えが必要です。360度診断は、配置を考える道具になります。  360度診断について、ネットではメリット・デメリットが語られています。私はメリットの方が大きいと考えます。弊社でも実施しており、実際に評価された者としては、自分の強み・弱みの認識(自己認識)、その後の行動変容に役に立っているからです。 デメリット(忖度、犯人捜しがはじまる等)から考えてしまう企業が少なくないのは事実ですが、360度診断を導入されていない企業には、是非、一度は試してみることをお薦めしたいと思います。  弊社でも360度診断を提供しております。興味がある方は、弊社ホームページの問合せフォームからお問い合わせください。私が直接ご説明させていただきます。

いいわけ文化がイノベーションを阻害する | モチベーションサーベイ

いいわけ文化がイノベーションを阻害する

 新製品や新サービスが次々に生まれる会社と、何か閉塞感のある会社は何が違うのだろうか。 数多くの企業研修に立ち会わせていただいていて分かったことがある。言い訳が多い会社では新商品は生まれにくい。  「忙しいから」「上が決められないから」「若手が育っていないから」「予算が厳しいから」そんな言葉が飛び交っている会社は要注意だ。  いやいや、成功している会社は時間や予算に余裕があって、素晴らしい経営陣と主体的に動いてくれる若手がいるんでしょう?と思うかもしれない。でもちょっと待ってほしい。そこで思考停止に陥るかどうかが分かれ道だ。  言い訳が多い会社の特徴として、管理職が「部下に失敗をさせないこと」に注力している点が挙げられる。きちんとマネジメントをすべく、きっちり計画を立て、分からないことがあれば親切に教えてあげる。部下に過重労働させるわけにはいかないから自分が誰よりも働く。誰よりも頑張っているからこそ、何か問題が起きたときに上司に叱られるのは理不尽に感じる。「自分はしっかり仕事していたのに」「自分は悪くないのに」と考えてしまう。  上司に「なぜ失敗したんだ?同じ失敗を繰り返すな」と注意をされた部下はもうチャレンジをすることはない。「上司に文句を言われないように仕事をする」スタイルになっていく。 きちんとマネジメントすることが悪いのではない。ただし全てのことを失敗しないように進めようとするのは危険だ。確実に成功するチャレンジなどない。失敗のリスクがあることこそがチャレンジと言えるのだ。  チャレンジを推奨する文化がある会社では、失敗が起きたときに「誰が悪いのか」は焦点にならない。だから言い訳をする必要もない。周りの人は失敗を責めるのではなく、どうにか自分が手助けできないかと考える。失敗を失敗で終わらせない。その失敗から学んだことをどのように活かし、次のチャレンジに繋げるかが重視される。失敗したときに周りが助けてくれた、失敗を乗り越えて成功をつかんだ経験を持つ人は強い。次のチャレンジも迷うことはない。  若手がチャレンジしないことを嘆くよりも、まずは自分から、そして周りの人の行動を変えることから始めるべきだ。

ノーレイティングの時代は来るか | モチベーションサーベイ

ノーレイティングの時代は来るか

 先日、アメリカ企業に20年勤めていた知人が日本に戻り、日本企業に転職した際に人事評価にまだMBOを使用していることにびっくりしたという話を聞きました。  このMBO(Management by Objectives and Self Control)は、アメリカの経営学者ピーター・ドラッカーによって提唱され、日本に上陸したのは意外と古く1960~70年代と言われています。その後1990年代から多くの企業で導入され現在も広く使用されていますので、もう30年程度使用されていることになります。また現在、日本で導入されているコンピテンシー評価もアメリカ発祥の手法です。  これは人事評価やパフォーマンス評価の一環として使用され、社員の強みや改善のポイントを特定し、組織全体の目標達成に貢献するために役立つものとして使用されています。  前出の知人によると、アメリカでは人事評価そのものが廃止されていて、それは2010年頃からの動きとのこと。それまでは、社員個々の成果(業績)に基づき、事実ベースで評価を行い、結果に報酬を結びつけるというものが主流でした。ただ、現在の業務遂行においては多種多様なスキルが必要なことや、目に見える成果(業績)だけで判断することが難しくなってきたことが挙げられ、人事評価を撤廃する動きが急となったそうです。  人事評価を撤廃?と聞くと人事評価を行うことをやめたのかと思う方もいるかもしれませんが、人材や企業の成長を促すうえで、評価を行うこと自体をやめることはできません。人事評価をやめるというのは、人材に点数やランク付けをやめるということです。  本来、人事評価は社員のモチベーションを上げ、成長意欲や会社への貢献度を上げていくための人材育成ツールであるにもかかわらず、評価点数やランクが思ったより低く、逆にモチベーション低下を招いてしまったなんてことがあるのです。    そこで、アメリカでは「ノーレイティング」という手法に切り替えた企業が多く、GoogleやMicrosoft、Adobeをはじめ、有名な大手企業も取り入れています。  ノーレイティングは点数で評価を行うのではなく、目標に至るまでの行動内容、どのように目標を達成したのか、目標の見直しは行われたのかといったことも含め「面談」をこまめに行うことで人事評価を行います。また、ノーレイティングは行動改善なども評価の対象とするため、チームのコミュニケーションが取れ、改善するべき点が浮かび上がりやすくなります。また、業務遂行中にフィードバックなどを行うことにより、年度末にまとめて行っていた評価者の負担も軽減といったメリットもあります。  ここまでの流れでいうと、日本にはアメリカの人事評価の手法を取り入れる傾向が顕著で、今後日本でも人事評価がなくなっていくのかと思うかもしれません。しかし、今の日本で人事評価をすぐに撤廃することは難しいでしょう。日本では、アメリカですでに多くの企業が行っているタレントマネジメントが浸透しきっていないことが挙げられます。  日本企業は伝統的な組織文化を持っており、ヒエラルキーが強調され、社員のスキルや成果を評価するといった文化があります。このような文化では、タレントマネジメントが十分に評価されず、個人の成長と適材適所の配置に焦点を当てるのが難しいのです。  ノーレイティングは、数値評価や従来の評価スケールに頼らず、社員の個々の成長と発展に焦点を当てます。タレントマネジメントは、社員のスキルやキャリアの目標を明確にし、それを支援するためのプランを策定するプロセスです。これを組み合わせることで、社員の成長をより効果的に促進できるのです。  タレントマネジメントを導入するには、社内の現場や部門・部署を超えての連携が不可欠となります。そのため、タレントマネジメントが行き届いてからでないと人事評価を廃止・簡易化するのは難しいのではないでしょうか。  ただ、日本でもグローバルなビジネス環境の変化や若年層の価値観の変化により、タレントマネジメントの重要性が認識されつつあり、いくつかの企業では取り組みが進んでいます。何年後かには導入が進み、タレントマネジメントが当たり前の企業が増え、ノーレイティングを前向きに導入する時代が来るのかもしれません。 以上

人的資本経営と人事の反省会 | 調査・診断(組織分析)

人的資本経営と人事の反省会

 「人的資本経営」は、ここ数年人事の世界においては最も注目されている言葉の一つである。2020年に出された経済産業省 の 「人材版伊藤 レポート 」 、2022年に政府が「人的資本可視化指針」の中で、人的資本の開示項目を示していることなどの 影響 もあって、近年急速に議論が進み、経営課題として議論されるようになっている。 近年急速に発展した議論ではあるが、長らく人事の世界に身を置いていると、実はそれほど目新しい考え方ではない。人材を資源としてみるのではなく、資本として捉えるという概念整理には新鮮さを感じつつも、経営における人事の機能は今も昔も変わらないし、経営計画を実現するために極めて重要であることも変わらない。昔から我々は多くの企業と経営と人事の連動性や経営計画を実現できる人事管理を目指して議論をしてきたことを考えると、人的資本という言葉に代わったところで目指している姿にそう大きな差を感じていない。(もちろん様々な発展はあるが)また、多くの日本企業は長期雇用を前提とし、「企業は人なり」といって、人材を大切にし、長期的に人材を育成してきた。「投資」という言葉は使わないものの、人を育て、短期・中長期の観点から会社を発展につなげていくことの重要性は経営者であれば皆考えてきていることだろう。「無形資産」とはあえて言わないが、そう考えてきた人も多いはずだ。  だとすると、今も昔も変わらず、目指している人事のありようがあるが、そこに到達していない原因を認識しておく必要があるだろう。  そもそも、人事の世界はあるべき姿が曖昧で議論がしづらいと言われてきた。「人」に対する施策の効果測定は難しい。「人」に関する情報が可視化されていないので、人事について議論しようとしても同じ情報量で話をすることも難しく、議論がかみ合いづらい。故に経営と人事が連動しているかもわかりづらく、どう経営として実のある議論となっているのか自信も持てず、もやもやする。結果として、経営の議論として人事は後回しにされやすいのではないかと思う。また、仮に議論していたとしても経営目標達成のための人事全体としての大局的な議論ではなく、個別性の高い、ないしは個別課題に対する局所的議論であったりして、経営に資する人事という観点では本質的ではなかったりすることもあるのではないか。もっと個別に考えてみたらいろいろ出てくるだろう。人事基盤の設計の問題か運用の問題か。様々な施策の効果が測定できないからか。それとも人事機能の経営上の重要性を軽視していた、というスタンスの問題か。振り返っていただきたい。多くの企業が経営目標達成には、「変革人材が必要だ」「自律型人材は必要だ」といって人事基盤を整備して10年以上たつが、なぜ企業に変革がおきなかったのか。。  つまりは、「人的資本」という新しい概念が立ち上がったところで、議論の本質は変わらないし、また人事の領域の議論の難しさも変らない。よって、人的資本の観点で一生懸命議論しても、これからも目指している人事のありように到達しないかもしれない、ということだ。昔から人事が重要な機能であるということをわかりながらも、うまく経営と連動させることができなかったということに対して、まずはしっかり向き合う、ということが必要なのではないだろうか。  経営として人事について活発に議論されるようになったのは、人事としては好機である。伊藤レポートが「人事・人材変革を起こすのに、資本市場の力を借りようと試みた。」ということは確実に効果があったのではないかと思う。機関投資家や欧米の外圧によって、人事課題が検討せざるをえない経営課題になってきているのだ。今こそ経営としてしっかりと人事の反省会を開き、目指すべき人事のありようの実現の一歩を踏み出していただきたい。

「人が集まる企業」のKPI | 調査・診断(組織分析)

「人が集まる企業」のKPI

 人的資本経営とは、人材を「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出すことで、中長期的な企業価値向上につなげる経営のあり方、とされる。  人的資本経営の情報開示が求められるのは、投資家がそうした非財務的情報も考慮して投資判断をするためであり、それが株価に影響するため各社本腰をいれて情報開示の巧拙を競わなければならなくなった。しかし、人事施策と株価変動の関係については、せいぜい人員削減施策の影響がプラスに出たりマイナスに出たりといった事例があるくらいで、調査も分析もされていない。よって「金融商品としての自社」に最適な開示情報の選定ははなはだ難しい。  ゆえにそこはいったんおいて、では、そもそもわが社の企業価値向上につながる人的資本経営とはなにか、と考えたのが、情報開示に臨んだ各社に共通するスタンスだったろう。しかし、何が企業価値を高めるかについても普遍的な答えはない。例えば、エンゲージメントレベルをあげることが生産性向上につながる、ダイバーシティ&インクルージョンがイノベーションの苗床になる、従業員が幸福であれば(Well-being)結果的に企業は成長する・・・、といったよく言われるコトワリを自社にあてはめても、そうした人事施策が自社の企業価値向上につながる保証はない。    で結局のところ、多くの企業は国から例示された定型一般的な指標情報の開示に留まるといった横並び姿勢を見せたのが、情報開示初年度の状況だった。女性管理職比率〇〇%、目標○○%といった当たり障りのない指標開示には、独自の指標はほとんど見当たらないし、その会社ならではの人的資本経営の思想は伝わってこない。  企業価値向上うんぬん以前に、なにより「優秀な人材の確保」がなければ始まらないのだから、開示すべき情報は、求める人材像が明快で、働く場として魅力的かどうか、つまりその情報を見た人が働きたいと思うかどうかの観点でまず検討すべきではなかったか。開示情報=新卒採用広報の際に提示する情報だと考えれば、人材獲得競争のなかで差別性の高いメッセージたりえているかが問われるから、横並びなどもってのほかで、独自性の高い情報開示に腐心しなければならなかったはずである。  新卒採用広報における企業PRとは、製品やサービスのPRのように「企業の現状」を魅力的な効用として見せることではない。入社した自身の将来の姿がイメージできるような「企業の未来」を確かなものとして提示することである。確かさを保証するものは、組織と人材に関する明確な経営意思(=方針)と実現のリアリティ。人的資本経営としてその会社は何を目指すか、つまり入社する自分たちがどのような人材を目指しどのような場に身を置くか、そのリアリティを裏付ける重要なファクターこそが、開示情報に示される固有の指標、その現状の達成度合いと目標に向けたマイルストーンである。  とすれば、人的資本経営とはまず、「人が集まる企業」としての自社のアイデンティティを問い直し、追究し、形づけることから始まるのではないか。人的「資源」を「資本」と言い換えても、企業都合で人々の能力を高め、十全に使用/活用し、企業価値(¬つまり経済価値)を向上させるという構図に変わりはない。それだけではない、人々が交通し、成長し、機会開発する「場」としての企業の価値向上に目を向けることからも、各社各様の人的資本経営の指標はさまざまにありうるはずである。

上司は振り返る力・観察する力を高めたい | 人材アセスメント

上司は振り返る力・観察する力を高めたい

 ある日のこと、上司A氏は人事からメールされてきた部下の人材アセスメントのレポートに目を通していた。ある部下のレポートにはこう記してあった。 「基本的な志向は周囲と業務に関する情報を共有し、協働的に目の前の仕事をすすめることと考えられる。・・・」 このコメントを読んだときにA氏は違和感を覚えた。それは、彼は「情報共有?情報は自分の業績UPのために使っているような・・」「誰かと協働?結構暴走するけど・・」「あれっ?」という明らかな違和感であった。  実はこれ、私が過去の報告会など見受けた出席者のリアクションであるが、このような違和感を覚えたかたも少なからずいらっしゃるのではないだろうか。 人材アセスメントのレポートの内容と皆さんの実感との間に齟齬がある主な原因は、下記の3つがあるように思える。   ・外部評価上の課題   ・その企業独自の専門性の有無   ・業績評価と行動評価の混同  1つ目は、外部から評価できることには限りがあるということである。アセスメントでは姿勢、対人、思考、業務遂行の4つの能力について評価するが、アセスメントで行われる職務シミュレーションでは、どうしても意思決定のプロセスなどの思考面の観察が中心になる。とくに対人面においては観察できる範囲があるため、そういった点では、部下の日常に関する情報は上司のほうが多くもっているはずである。そのため、アセスメントのような外部評価との齟齬が生まれるのかもしれない。  2つ目は、部下のもつ企業独自の専門性の高低が部下に対する評価に無意識に入りこむことである。専門性を評価することは必要なことだが、アセスメントでは個人のもつ専門性は一切考慮されないため、専門性の評価を切離した外部からの評価は、自身の日常的な実感との違和感を覚えるのかもしれない。  3つ目は、よくあることだが、売上や利益の予算を達成できるから、マネジメント能力もあるという誤解である。売上、利益予算の達成度に対する評価はあくまで業績評価であり、業績を得るにいたるプロセスは行動評価を行う。そこを切り分けて評価していないと、「業績をあげる人=マネジメント能力が高い人=アセスメントの評価の高い人」という考えをもってしまう。そのため、出てきたアセスメント結果に対して違和感を覚えるのかもしれない。  人材アセスメントは、社内人材で判定し切れないであろう能力を外部の視点で観察、評価し、現状分析や将来への提言をレポートの形で示す。評定・レポートを部下の指導、育成に生かすのは上司である。  だからこそ、上司は、アセスメント結果を読み、自分の部下の日常の行動に、レポートにあるような行動がなかったかを誠実に振り返る。振り返ることができなければ、改めて部下との関わりかたを変えてみて、観察できるようにしてみるのである。 アセスメント結果と部下の日常の行動への認識との距離を縮め、自身の心に抱く違和感を小さくしていくために、部下の成長支援のために、上司の任たる者こそ、振り返る力、観察する力を高めたい。

人材獲得競争を勝ち抜くために<br />~調査結果を使ったアピール~ | 人事アナリシスレポート®

人材獲得競争を勝ち抜くために~調査結果を使ったアピール~

 多くの会社で人が足りない、しかし中途採用が難しいとお伺いする。 帝国データバンクの調査では、外食産業と情報システムを筆頭に、半数以上の企業が正社員不足と回答しているように(人手不足に対する企業の動向調査(2023年7月) | TDB景気動向オンライン (tdb-di.com))まさに人材獲得競争が企業の成長に大きな影響を及ぼしかねない状況である。  弊社は採用支援自体は行っていないが、制度設計やモチベーションサーベイ等のさまざまなプロジェクトを通じて、魅力ある組織・人事制度の実現をご支援している。「社員さんの活力を引き出す制度にしたい」「社員さんが満足する組織にしたい」といった人事の皆様の想いを日々受け止める立場から見ると、人事品質の向上に向けた営みは採用における会社の魅力となるはずと強く思っている。  ここでは、転職希望者向きのサイト等で紹介されている「採用条件のチェックポイント」の代表的な項目に沿って、どんな点がアピールポイントになるか考えてみたい。貴社において、使えそうなデータはあるだろうか? ■給料  貴社の賃金が採用上の競合(地域・業種)と比較してどのような水準にあるか?  同等もしくは上回る処遇であればすでにアピールされているだろうが、仮に、候補者の年齢層ではあまり差がなくても、「中高年になると市場を上回る」などの事実はないだろうか?  処遇に関しては、月給と賞与割合も注目したい。賞与割合を高めにしている企業の場合、候補者からすると、どのくらい確実に賞与が支給されるのか大変気になる。平均支給月数だけでなく、分布で実際にその額をもらっている社員の割合などを示すことが安心感につながるのではないか。 ■勤務地 転勤を伴う異動がある事業の場合、転勤関連の施策の充実ぶりもアピールポイントになる。 「エリア限定社員制度」は、転勤を望まない候補者に魅力的である。全国区で活躍してほしい候補者を確保するうえでは、たとえば転勤者向けのハードシップ手当などが魅力となる。 ■昇給昇格の仕組み 貴社において、社員の昇進昇格のスピードは中途採用と生え抜き社員で変わりないだろうか? スピードが同じであれば、「うちは新卒・中途に関わりなく活躍できますよ」というアピールポイントになる。中途入社者へのサポート施策(キャリア面談や研修等)も併せて紹介すると、成長志向の高い候補者に響くのではないだろうか。 ■ワークライフバランスや福利厚生、働きやすさ さまざまな福利厚生や働きやすさの施策を用意していても、採用面接で細かく説明する時間がない場合は、「社員満足度調査をやっている」「モチベーションサーベイの結果の社員説明会をやる」など、調査の実施そのものをアピールしてはいかがだろうか。 パーフェクトな良い結果でなくても、たとえば「満足度の高い点ベスト3」「近年改善した点3つ」などの切り口で見ていただくとどうだろうか?  上でご紹介した「賃金水準」や「昇進昇格スピード」「社員満足度」等は、弊社の定量分析やモチベーションサーベイ等で実施している内容だが、コンセプトは上記の通りなので、社内でも分析できるものはある。ぜひ、現状分析を通じて自社の強み、魅力を視える化し、人材獲得におけるアピールにつなげていただければと思う。

「誠実さ」のジレンマ | 360度診断

「誠実さ」のジレンマ

 「顧客や関係者に対して常に誠実に対応している。」…これは、弊社の提供している360度診断の標準的な設問群の中の一つである。  一応ご存じない方に少しだけご説明すると、360度診断とは、ある対象者を決め、その方の上司・同僚・部下など、周囲の複数の視点からアンケート形式で観察・評価してもらうことにより、日頃の行動について本人への「気付き」を与え、さらなる行動改善に結び付けてもらう試みのことを指している。 先の設問は、360度診断の中の一設問であり、弊社ではこれを「<誠実対応>設問」と呼んでいる。私は、多くの企業様の360度診断に継続的に関わってきたが、各企業様の全体傾向として、この設問に対する「周囲評価」が著しく悪い例に、今までたったの一度も出会ったことがない。すなわち、多くの企業様の従業員は、「顧客や関係者に対して常に誠実に対応している」と、周囲から高く評価されているのだ。  これは喜ばしいことではないか。私自身も、時折他者から「誠実だ」と言われ、悪い気はせず、内心ほくそ笑んだりしている。確かに大方その通りなのだろうが、見方によって、これはちょっとまずいこともあるのではないかと、最近私は思うようになった。  この「<誠実対応>設問」を、答える方(周囲評価者)はどのように受け止めているのだろうか。付随するフリーコメント等から解釈すると、ひとまず二通りの意味合いを読み取っているらしい。一つは「とにかくこの人はまじめで一生懸命で完璧を目指して仕事をしています」という「まじめでストイックな性格・行動」という意味合いであり、もう一つは「とにかくこの人はよく相手の話を正確に受け止めて適切に応答しています」という「協調性・ホスピタリティがある」という意味合いである。やはり一見非の打ちどころもなさそうだが、しかしそれは一面だろう。  「まじめでストイックな性格」が好ましいのは、本人の目指していることや取り組んでいることが好ましいときだけである。極端な例を述べるようで恐縮だが、分かりやすいので述べておくと、ナチス政権下の官僚たちは、きわめて忠実でまじめだったからこそ、今からは考えられないような政策を徹底して推進し、甚大な被害を引き起こしたのであり、同様の政策を掲げていた、とある近隣同盟国よりも、戦後遥かに大きな非難に晒された。その近隣同盟国の人々はといえば、ナチス政権下の官僚たちよりも、ある意味遥かに緩く適当で「ふまじめ」だったのだろう。敢えて比べれば、どっちがましだったのだろうか。  「協調性やホスピタリティ」も実は同様であり、「何に協調し、何を歓待するか」に拠る。やはり極端な話だが、わかりやすいので述べておくと、旧ソ連スターリン体制下において、スターリンの演説が終わった後、聴衆の拍手はつねに長時間やまなかったという。それは感動的な演説だったのかもしれないが、最初に拍手をやめた者が忠誠心を疑われて粛清されるのではないかと恐れ、誰も最初にやめられなかったのだ。誰もが倒れそうになり、「もう限界だ」と誰しもが思いはじめた時、その空気を察して、一斉にほぼ同時に拍手がやむのだった。こういうときに人は、周囲のちょっとした変化にも敏感になるのだろう。彼らは結局、スターリンの治世を底堅く支えることになった。そして協調性の正体とは、実は大概このような粛清や村八分になる恐れに近い。  これらの話を、「昔話だ」「極端な例だ」と切り捨てられるだろうか。例えば我々は、仕事が調子に乗ってくると、「ゾーンに入る」と言い、「フローに入る」という言い方をする。そのような集中状態は、高い成果に結びつくと言われているが、取り組んだ先のことまで見えているのだろうか。そしてその「成果」と言っても、それが好ましいのは、取り組んでいることそのものがまともなときだけである。本当に今われわれが取り組んでおり目指していることが、将来・後世に渡って評価に値することなのかどうか、明確に判断する基準を持つことは、ごく控えめに言っても難しい。  なるほど「誠実である」ことは、基本的にはのぞましいことだろう。しかしあなたは、「何に対して誠実なのか」を見失ってはならない。もしあなたが無自覚であり、後からまずかったことに気付くとき、あなたはむしろ、「誠実であった」ことを強く後悔するはめになる。「不誠実であったほうがまだましだったのではないか」と。

人事評価の限界 | スマートアセスメント®

人事評価の限界

 客観的な能力評定の手法として使われるヒューマンアセスメントは、正確には「アセスメントセンター方式」と呼称される。この手法は第二次大戦中、将校(一説には諜報員)の選抜手法として生まれ、各地にアセスメントセンターが設置されたことが呼称の由来と言われる。アセスメントセンター方式を特徴づけるのは、シミュレーションによる能力測定ということであり、その有効性は、社会心理学者クルツ・レビンが以下の方程式で示した原理を前提としている。  レビンいわく、個人がとる行動は、個人特性と環境との関数である。ゆえに、環境を職務シミュレーションとして固定することで、その環境下の行動発揮を観察・分析すれば個人特性を評定できる。対象者が経験や職場の異なる人々であっても共通環境で評定できるし、シミュレーションだから経験したことのない職務環境での行動発揮も診れる。例えばまだ経験したことのない管理職環境をシミュレーション演習とした評定は、管理職の昇格審査にきわめて多く使われているから、アセスメント=管理職昇格審査という理解が一般的になっている。  この方程式からは、通常企業内で行われる人事評価の限界もまた、見えてくる。業績評価は結果や目標達成なので明快だが、能力評価や行動評価では、個人能力の正確な把握は原理的に難しい。レビンの式でいえば、職場での能力発揮行動は、職務の慣れ具合や長くともに働いてきた良好な人間関係、上司との相性などなどといった「環境」と個人が有する「能力・資質」の両方が相まっての結果として発揮度合が決まるからだ。  そうであっても、貢献度合いを評価するという意味では何ら問題はない。能力評価とは保有能力ではなく発揮能力、発揮行動を問うのだという評価原則はつまり、貢献に結果しているかどうかを評価することに他ならないからだ。「環境も含めた能力」の発揮を評価するのが、企業内で行われる能力評価、行動評価ということである。 問題になるのは、個別育成や組織的活用の基盤となる個人能力・資質を、人事評価では正確には把握できないことだ。もちろん、環境変数に惑わされず、個人特性を見極め得る慧眼のマネジャーはいるかもしれないが、その彼彼女とて、部下の未経験職における能力発揮可能性を見極めるには、特殊なトレーニング(アセッサー養成訓練のような)抜きには難しいだろう。社内の適材を探し出して配置する、あるいは能力開発を個別的に効果的に行う――そうしたタレントマネジメントの起点情報としての個人特性把握には、人事評価情報は使えない。 かくして、管理職よりも下の階層に対して網羅的経年的にアセスメントセンター方式による測定を行う取り組みやリスキリング施策へのアセスメント組み込みのニーズが増えてきた。あるいは、イノベーションをにらんで事業開発型人材の発掘のためのアセスメント仕様設計などの要請もある。その採用局面への展開の事例もある。タレントマネジメントとは現有人材の保有能力の最大活用を目指すものだとすれば、必然的に、こうした正確な能力測定機会をさまざまに設けざるを得ないということである。

組織の力を引き出すために、人間的な側面にフォーカスしよう | モチベーションサーベイ

組織の力を引き出すために、人間的な側面にフォーカスしよう

 『A社は、ほとんど異動がなく分業体制による業務の効率性を追求していたが、他社との競争に対応するために積極的なローテーションを導入。最初は異動に対する抵抗感が強く、象徴的な管理職の異動から始まり、徐々に一般社員も異動するようになった。異動者からは、「学びがあった」とその価値が周囲に広まる。部署間の理解を深めるために説明会やワークショップが開催された。複数業務経験を昇格の要件とし、毎年一定数の異動を実施。若年層から異動希望の声が上がるようになり、異動の順番待ちも発生した。積極的なローテーションにより、一部の業務効率や品質に一時的な低下が見られたが、会社は社員の能力向上を重視し、業務の標準化、業務マニュアルの整備、評価制度の見直しなど対策を講じた上で、方針を継続。入社時から異動が当たり前となり、異動経験者から未異動者への不満も生じたが、時間をかけて異動が当たり前の文化が形成された。』  この例では、少数の影響範囲から始めて、効果を感じた人から口コミを通じて変化の波は少しずつ広がっていきました。そして、新入社員に対しても同じ考え方を適用していくことで、早いスピードで適用者の比率が増え、徐々に組織全体へ浸透していきました。  しかし、ここで興味深いのは、途中から「異動しない人がずるい」というような声が大きくなり、「異動をしていない層」に対する同調圧力が強くなったことです。最初に異動の効果を感じた人は、新たな発見や自分自身が新しい何かをできるようになったことで、仕事の面白みや充実感を感じていたはずです。それが途中から、一部の層において変化していきます。制度の目的が腹落ちしていない、周囲との関係性の面から多数派でいたいなどの理由があったかもしれません。                   組織には、「ハードな側面」と「ソフトな側面」があります。組織のハードな側面とは、組織構造、制度や規則、職務内容や仕事をする上での手順などをさします。一方、ソフトな側面とは、人の意識やモチベーション、人々の関係性、リーダーシップ、組織の文化や風土などをさします。いわば、「人」や「関係性」など人間的側面です。どんなに立派な制度や精緻なルールを整備して、計画通り運用し、ハードな側面を整えても、組織のソフトな側面(人間的な側面)の影響で、当初のねらい通り、目的が達成されないことがあります。組織の力を強くするためには、両方の側面に焦点をあてて取り組むことが必要です。組織開発の先駆者であるダグラス・マグレガーは、「組織における人間的側面は重要なマネジメント課題である。」と主張しています。  人は、「いやいや仕方なしにやる」ことによっては活き活きとせず、その人が持つ力が発揮されません。自ら「面白がってやりたい」と感じた時に活き活きとし、その人らしさや力が発揮されてきます。ソフトな側面へのアプローチは、一朝一夕にはいきませんが、是非取り組みたい課題です。そしてそれは、人事領域に関わる方の仕事の面白味・充実感につながるのではないでしょうか。   以上