イノベーション人材とは?定義が特徴、育成するポイントをご紹介
目次
はじめに――人事が イノベーション人材の育成に取り組む理由
企業が成長する上で、イノベーションは不可欠です。
従来より、イノベーションは事業・組織のあらゆる場面で創出され、求められてきました。経済学者ヨーゼフ・シュンペーターはイノベーションを対象別に5つに分類しました。その5つ(新製品開発/新生産方法の導入/新しい市場の開拓/サプライチェーンの開発/組織の改革)は、組織のほぼすべての機能に関連するものです。
人事が「イノベーション」に向き合う時、実際には2つの難しさがあります。
・人材ニーズの多様性と個別性
「どの現場に、何ができる人材が求められているのか」の幅が広く個別性が高いこと
・中途採用の競争性
IT人材だけをとっても慢性的に不足しており、人がすぐ採れないこと
この記事では、このような「人材ニーズ」「調達」の二つの難所に対して、イノベーション人材を社内で発見し、育成する手法で解決することを提案します。ご参考になれば幸いです。
イノベーション人材とは?
世の中の定義は多様ですが、主に以下のように分類・整理できます。
-
段階別分類
「自走型人材」/「プロジェクト型人材」/「新事業開発人材」など - 役割やスキルに基づく分類
「アイデアを出す人材」/「事業を成長させる人材」
「技術タイプ」「企画タイプ」「管理タイプ」など - 能力・特徴別分類
分析力・課題抽出力/コミュニケーションスキル/協調性/問題解決能力/
指導力/忍耐力・胆力/情熱・意欲・モチベーションなど
これらの定義は、自社の状況や目的に対して使いやすそうかという視点で選ぶことがおすすめです。
イノベーション人材の定義
本記事では、読者は「イノベーション人材を育成する」課題に取り組む人事を想定し、「保有能力」「役割」の2つの軸でイノベーション人材を定義することをご提案します。
<保有能力>の視点で見ると、自社の人材(や、これから採用する人材)が保有しているイノベーション人材に適した能力は何か、強みを強化し、不足を補うにはどうすればよいか、を考えやすくなります。
<役割>の視点で見ると、イノベーションは「チーム戦」で、多様なタイプの人材が連携して成し遂げるものという前提を置いて、自社の人材(や、これから採用する人材)に多いのはどのような役割タイプか、不足しているのはどのタイプかを把握し、育成したり、バランスに配慮した配置を行いやすくなります。
具体的に、育成に使いやすいと思われる<保有能力>(イノベーション適性)と<役割>の定義例を上げます。ご覧になれば分かりますが、独自の定義というより、過去に上げられているイノベーション人材の定義と重なるものです。
<保有能力(イノベーション適性)>
新しいことを始める力
組織で取り組む力
面白がる力
<役割>
Driver=過去の常識や前提にとらわれないアイデアモンスター
Explorer=実現の難しいアイデアほど燃えあがるファンタジスタ
Designer=走りながら仕組化するウルトラプロフェッショナル
Crew=未知の世界、予期せぬ事態を楽しむパーティメンバーイノベーション
ここでのポイントは、「保有能力」と「役割」の2つの視点のかけ合わせです。保有能力だけに注目すると、単一のスキル開発に施策が留まりがちなところ、役割の視点を入れることで、その能力を組織でどのように発揮するのかというイメージが付けやすくなり、人事・育成者・育成される人材の間で育成の目的が明確化しやすくなることがメリットです。
イノベーション人材を育成するポイント
イノベーション人材の育成は、単なる研修だけでなく、適性のある人材の特定と実践的な経験の提供が不可欠です。
イノベーション適性のある人材を特定すること
現場で見極められれば信頼性は高いですが、イノベーション適性は、日常業務では発揮しにくい可能性があります。そこで、第三者によって診断する適性検査やアセスメントも有効です。手法としては3つあります。
①行動から思考力を「推察」する(=シミュレーション演習によるアセスメントセンター方式で思考力ディメンションに注目する)
②過去の経験から思考力を「判定」する(=インタビュー・アセスメントによる定性的に診断する)
③思考力そのものを「評定」する(=正解のない問いに対する回答を評定する)
ポイントは、第三者の診断だけに頼るのではなく、多元的評価(行動データ、360度、過去の探索行動、ミニ実験課題での観察)と組み合わせることです。また、実務でのトライアル(社内ベンチャー応募・スプリント参加)などを適性検証の一部に組み込むこともよいでしょう。
イノベーション人材の育成施策例
イノベーション人材を発見することで育成が可能になります。
育成施策は、単発の研修や適性検査にとどまらず、イノベーションを阻害する組織構造や管理システムの課題を克服することが不可欠です。ここからは、「組織論的アプローチ」と「人事管理的アプローチ」の2軸で育成施策例をご紹介します。
●イノベーションを阻害する階層型分業型組織の克服(組織論的アプローチ)
階層型で分業が固定化された組織は、情報のサイロ化や意思決定の遅延を招き、イノベーションの推進を阻害します。これを克服するためには、組織の柔軟性を高め、部門間の壁を取り払うことが重要です。
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<施策例>
- クロスファンクショナルチームの設置による部門横断的な協働促進
- フラットな組織構造への移行や権限委譲の推進
- 社内ベンチャー制度やイノベーションラボの設立による新規事業創出の場の提供
これらの施策は、例えばトヨタ自動車の「カイゼン活動」や、楽天の「イノベーションラボ」などで実践されており、組織の硬直性を打破しイノベーションを促進しています。
●管理システムの克服(人事管理的アプローチ)
階層型分業組織の管理システムは、評価基準や昇進制度がリスク回避的であったり、権限移譲が不明確であったりすることが多く、イノベーションを阻害します。人事制度(等級制度や評価制度)を見直し、たとえば複線型人事制度を導入することでよりイノベーションに適した環境にすることは可能です。
育成でアプローチする場合の一例は、イノベーターのレベル別に次世代リーダーを育成する施策です。
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<施策例>
- 開発部門人材・新規事業開発人材
新規事業をテーマとした実務伴走型・プロジェクト型の育成が有効です。また、育成施策だけでなくジョブローテーションや外部研修派遣、社内起業支援制度、業務時間の一部を新規挑戦に充てる「10%ルール」など、硬直的な人事管理を変える多様な施策を組み合わせている事例も見られます。 - VUCAリーダー(経営・管理職)
イノベーション適性の高いマネジメント=VUCAリーダーの存在は事業・組織の変革に不可欠です。VUCAリーダーを育成するには中長期的なプログラムで、
・「自分らしさ」の確立
・傾聴・共感・コミュニケーション力の向上
・先見力・概念化力の育成
・意思決定力・行動力の強化
などを強化することが有効です。集合研修(ワークショップ・ロールプレイ)と実践を繰り返し、イノベーション適性の発揮の度合いを高めていきます。 - 若手人材
組織の在籍期間が短いほど、イノベーション適性は高いスコアを出すという調査結果が存在します。組織に埋没する前の若手のうちから、未知の世界や予期せぬ事態を楽しみながら挑戦する「クルー」の能力を育成します。コニカミノルタの2年目人材が新入社員人材を教えるIT研修などもユニークな取り組みです。
まとめ
皆様の会社では、イノベーションに成功していますか? イノベーション人材は足りていますか? イノベーション人材がどこに必要なのか、どのような能力が求められているのかわからないまま、「イノベーション研修」の企画を行っていませんか? 打ち手を検討する前に、まずは自社人材の「保有能力」と「役割」のレベルを棚卸してはいかがでしょうか。誰を、どのように「育成」するべきか、結果が示してくれるはずです。
<参考>
・【Consulactionセミナー】成長を促す、イノベーション・ドライバー
革新的な人材とプロジェクトを生み出すための仕組みづくりとは? |博報堂WEBマガジン センタードット
・イノベーション人材とは?必要スキルと社内で育成する方法 | 記事一覧 | 法人のお客さま | PERSOL(パーソル)グループ
・イノベーション人材とは?意味や採用・育成方法を解説
・イノベーション人材~重要性と特徴・育成方法を解説 |
社員のエンゲージメント向上を支援する 株式会社 NTT HumanEX
・イノベーターズ・ディスカバリー|イノベーション人材発見は㈱トランストラクチャ
・イノベーション人材をどう発見するか
|コラム|株式会社トランストラクチャ(東京都)
・“未来のイノベーター” を採用で見極めるには?
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