人事コンサルティング会社 活用の6つのポイント~「人事制度設計」「人材育成/組織開発」編
人事コンサルティングとは―人材マネジメントを伴走サポート
コンサルティング会社は特定の事柄や分野について専門的な知見や経験を有し、企業の担当部門の社外アドバイザー・業務委託先として支援を行います。 人事領域を専門とするコンサルティング会社は、人材マネジメントの諸機能(「採用」「育成」「評価」「報酬」「配置」「代謝」)の強化を支援する存在です。
これらのうち、採用に関しては、採用エージェントを利用する会社も多く、すでに多くの情報が存在しています。 一方、採用以外の人材マネジメント機能(「育成」「評価」「報酬」「配置」「代謝」)のコンサルティングについては、情報が開示されていない、あっても限定的で「よくわからない」のが実情ではないでしょうか。
本稿では、これら(「育成」「評価」「報酬」「配置」「代謝」)の領域に該当する「人事制度」「人材育成/組織開発」のコンサルティングサービスについてご紹介します。 また、後段では、人事コンサルティングを上手に活用する6つのポイントをご紹介します。
人事コンサルティング会社が提供するサービス例
◆組織の現状分析を通じて「課題特定」や「解決策の方向づけ」を行う
コンサルティング会社は、まずご依頼テーマに関する「課題特定」「解決策の方向づけ」のために組織の現状分析を行います。
現状分析の方法はさまざまで、人事制度のように複雑性の高い施策では、現状分析も網羅的に、一定の時間をかけて行います。
より簡略的な方法としては、ヒアリングや資料の読み込みだけを行う場合もあります。
当社の支援方法としては以下のような分析ツールがあります:
- 人事全体の状態を把握する「人事アナリシスレポート」
- 従業員意識調査である「モチベーションサーベイ」
- 特定の人材に対する調査として、「人材アセスメント」「360度診断」
- その他、アンケートやヒアリング
◆人事戦略を策定する
中長期的な戦略的視点から、求められる人材ポートフォリオと人材マネジメントポリシーの策定を支援します。 支援方法は、アンケートを通じた現状分析から出発することが多いです。 人事戦略をコンサルタントが一方的に策定するというより、経営陣のディスカッションやワークショップなどを通じて、社内を巻き込み策定することが一般的です。
◆人事制度を設計する
人事戦略や現状の人事管理の課題を踏まえて、等級、賃金・評価の仕組みを具体化していきます。 支援方法は、業務委託で制度設計の作業を請け負う方法と、人事部が設計した制度をコンサルタントがレビューする方法などがあります。
◆制度の運用を支援する
人事制度の運用がスムーズに行われ、制度のねらいが実現するための取り組みを支援します。
よくあるのは評価制度の運用支援で、評価者研修、目標設定会議支援、評価会議支援等があります。
ここで重要なのは、運用に課題があるときに原因は何かを確認することです。制度に問題がある場合や、運用に関わる環境に問題がある場合もあります。
その場合は、運用支援ではなく、制度の見直しや運用環境の整備を行う必要があります。
◆人材育成支援
求められる人材を輩出するために、今いる人材のスキルやマインドを強化するアプローチです。
人材育成施策は、求められる人材像と現状のギャップから育成課題を絞り込みます。
そして、受講者が当事者性をもって内容を理解し、結果として翌日からの行動が変わるようにすることを目指して施策を設計します。
事前の受講者の状態把握と、それに基づく研修の設計、事後のフォロー策や定着施策など、一連で設計することが重要です。
研修会社は世の中に数多くあり、それぞれ得意領域や、派遣できる講師の幅とレベル、プログラムが決まっているかカスタマイズか、などに特徴があります。
◆組織開発支援
組織開発のテーマに沿って、さまざまな人事施策や研修施策等を実施します。
具体的には以下のような支援があります:
- ミッション・ビジョン・バリューの策定と浸透
- 風通しの良い組織風土づくり
- チームビルディング
- 組織活性化のための各種ワークショップ
- 組織診断と改善施策の立案
これらの施策を通じて、組織全体の生産性向上や従業員エンゲージメントの向上を目指します。
◆代謝施策支援
「代謝」とは、組織の新陳代謝を促進し、活力を維持するための人材の入れ替えを指します。 具体的には、役職定年制度や早期退職制度などの仕組みの設計と運用を支援します。 これらの制度は、組織の年齢構成の適正化や人件費の最適化、新たな人材登用の機会創出などを目的として導入されます。
人事コンサルティングを依頼する6つの要件
- 人材マネジメントを自社で行っている
- 人事部ないしは人事のキーマンがいる
- 人に関わるコスト/ポートフォリオ/パフォーマンスのいずれかに課題がある
- 社長・経営陣の人事に対する関心が高い
- 施策の実施から効果検証まで最低2年間の期間を確保できる
- 施策のための予算を確保できる
貴社のご状況に当てはまるものはあるでしょうか?
当てはまる場合はもちろん、多少該当しない項目があったとしても、ぜひまずは、コンサルティング会社に相談することをお勧めします。
コンサルティング会社は豊富な経験があるので、適切な進め方をご提案できるかと思います。
それでは、一つずつ、具体的な内容をご説明します
1 人材マネジメントを自社で行っている
人材マネジメント(「採用」「育成」「評価」「報酬」「配置」「代謝」の機能)を自社で実行する権限や資源を有していることが重要です。 これは、コンサルティングで提案された施策を実際に導入・運用できる体制があることを意味します
人材マネジメントを自社で行っていない/困難な場合とは、たとえば以下のような状況です:
- 人事の機能が「労務管理のみ」「外注管理」になっている
- 親会社の出向者が多く、処遇や異動は親会社が決定している
自社が人材マネジメントを自律的に実行するのが難しい場合は、 まず、社内で課題を整理し、「誰が課題解決を主導するのか」「リソースをどう確保するか」検討することから始めてはいかがでしょうか。
2 人事部ないしは人事のキーマンがいる
人事コンサルティングの成否は、人事担当者の力量に大きく左右されます。 コンサルティングを活用して組織の課題を解決するには、プロジェクトを推進する人事担当者が重要な役割を担うからです。
人事コンサルティングを進める上で、人事担当者には以下のような役割が期待されます:
- プロジェクトの推進(スケジュール管理、必要な調整、社内説明など)
- 社内の状況や課題の把握と共有
- コンサルタントとの議論を通じた施策の検討
- 施策の社内展開(説明会の実施、運用フォローなど)
このような役割を担える人事担当者がいない場合は、まず人事機能の体制整備から着手することをお勧めします。
3 人に関わるコスト/ポートフォリオ/パフォーマンスのいずれかに課題がある
コンサルティングを依頼する際は、解決したい課題が明確であることが重要です。人材マネジメントに関する課題は、大きく以下の3つに分類できます:
- コスト:人件費、採用コスト、教育コストなど
- ポートフォリオ:年齢構成、スキル構成、配置状況など
- パフォーマンス:生産性、モチベーション、組織風土など
これらの課題は相互に関連していることが多く、一つの施策で複数の課題に対応することもあります。 また、課題の優先順位や解決の方向性は、事業戦略や経営状況によっても異なってきます。
4 社長・経営陣の人事に対する関心が高い
人事施策は、組織全体に影響を与えるため、経営陣の理解と支援が不可欠です。特に以下のような場面では、経営陣の関与が重要になります:
- 人事戦略の策定時における経営方針との整合性確保
- 制度改定に伴う予算確保や人員配置の決定
- 新制度の社内展開における経営メッセージの発信
- 施策実施後のモニタリングと軌道修正の判断
経営陣の関心が低い場合、施策の検討や実施に必要な経営判断が遅れたり、社内展開の際に経営陣からの後押しが得られにくくなったりする可能性があります。
5 施策の実施から効果検証まで最低2年間の期間を確保できる
人事施策は、その効果が表れるまでに一定の時間を要します。特に以下のような施策では、長期的な視点での取り組みが必要です:
- 評価制度の定着(1年以上)
- 育成施策の効果測定(半年~1年)
- 組織風土の改革(2~3年)
- 人材ポートフォリオの適正化(3~5年)
短期的な成果を求めすぎると、本来必要な施策が実施できなかったり、効果検証が不十分なまま次の施策に移行したりする可能性があります。
6 施策のための予算を確保できる
人事コンサルティングの費用は、支援内容や期間によって異なりますが、一般的に以下のような費用が発生します:
- コンサルティング費用(現状分析、制度設計、運用支援など)
- システム関連費用(必要に応じて)
- 研修・説明会などの実施費用
- 制度改定に伴う人件費の増加
これらの費用に対する投資対効果を検討し、必要な予算を確保することが重要です。
まとめ
人事コンサルティングは、専門的知見や豊富な経験を活用して、効果的・効率的に人事課題を解決するための手段です。 成功のためには、適切な体制と環境を整えることが重要です。
上の6つの要件を参考に、自社のご状況を確認して、どのようにすれば人事施策がうまく進むか、人事コンサルティング会社に相談されてみてはいかがでしょうか。
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