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column

社長の任期

 「経営者の任期」ということについて、常々考えさせられることがあります。あくまで私見ですが、日本企業の競争力低下の原因の1つに、役員を含む社長の任期が短いことがあるのではないかと考えています。

 象徴的な事例を2つ紹介します。第一は、ある企業グループの製造子会社の事例です。
この会社の社長は、歴代、親会社から転籍して着任します。1期2年で2期4年を目途に、3~5年の在任期間で交代しています。着任した社長のほとんどは、部分的あるいは抜本的に人事制度を変えるという施策を行ってきました。半ば慣習的に実施されていました。理由は、それによって、各々の経営のスタイルを実現なさろうとしてきたのだと思います。
ところが、社員からしてみると、この期間での人事制度の変更は、現制度がようやく定着しつつある時期なので非常に混乱します。その結果、社員のモチベーションは低く、不平不満が高まる一方でした。
人事部は、社員のモチベーションの低さがどこからくるものなのか、その原因を確認することができずにいました。今回、初めて調査することになりました。私たちが実際に行ったモチベーションサーベイの結果でこの事実が確認できたのです。

 第二の例は、別のある情報通信業の会社の事例です。社長の在任期間は2年間でした。
業績悪化が続き、今後の予測も決して明るくない状況で、短期的にコストを削減しなければならない。様々なコスト削減を行いましたが、それでもまだ足りません。もはや、雇用、つまり人件費を削減する以外に手段は残されていませんでした。希望退職を募って、まとまった人件費を削減し、V字回復に向けて、早期に舵をとることが求められていたのです。
 しかし、当時の社長は、自身の短い任期の中でそのような施策を行うことができず、必要な手を打たずに去っていきました。結果として「問題の先送り」になりました。
後日談としては、その次の社長の時代に希望退職が行われました。しかし、前社長時代に試算された削減規模の2.5倍の人件費、削減数となってしまいました。

 どちらの事例も、社長の任期の短さが影響した事例です。前者は、中長期的視点に立てば、短期間での人事制度改定は、よほど悪しき制度でなければ、通常は行わないところ、それを繰り返し行われてきたことを考えると、何のための制度改定なのか疑問だと言わざるを得ません。後者の場合は、例えば中期経営計画2サイクルで6年間程度あれば、一時的には血を流したとしても、中長期の計画の中で、再建策を描けたに違いありません。雇用調整は会社が生き残るために必要な施策であることは言うまでもありません。それを経て、V字回復を実現することが、経営責任を全うするということになるのではないかと思います。

 神戸大学大学院経営学研究科教授の三品和広氏の著書、「経営は10年にして成らず」の中で、「経営には10年の大計が必要である」と記されています。10年と言わずとも、ある程度の中長期間耐えうる経営をしなければ、本質的は経営課題の解決には至らないと考えます。
 それでは、中長期間耐え得る経営者を生み出すにはどうしたらいいのか。早期に、経営の素養のある人材を選抜し、ベースとなる経営リテラシーを身に着けさせる。さらに、経営の経験を積ませるような配置を行い、チャレンジングなポストに抜擢する。成果を生んだものを上に引き上げるというプロセスを繰り返すことだろうと思います。また、そうした経験のうちのすべて成功する訳ではないので、ある程度の失敗は許容する組織風土が必要だろうと思います。つまり、年齢、性別、人種にかかわらず能力あるものに責任を負わせることが当たり前という風土が、中長期間耐えうる経営者を生み出すことになり、日本の企業競争力を上げていくことにつながると考えます。

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