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管理職になりたくない女性たち

執筆者: 宮井 文 人材育成

 2016年に「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」、いわゆる女性活躍推進法が施行されました。人財確保のための女性の登用、活躍推進は、労働力不足の深刻化を踏まえた国をあげての目標です。
 女性就業者数を見ると、2000年に57%だったものが、2019年では70%を超えています。専業主婦ではなく、何らかの形で働く女性が増えたということです。この裏には、もちろん労働参加を促す政策や企業の努力もありますが、世帯年収の減少に伴って社会で働く選択をした女性もいるという事実もあります。
 それでは、増加している女性就業者の中で、企業の管理職として指導的地位で活躍する女性はどれほどいるでしょうか。
 2003年の小泉内閣時代に、男女共同参画推進本部にて「指導的地位に占める女性の割合を2020年までに30%程度にする」という目標が決定されました。結果としてはご存じの通り、30%の目標には及ばず、2030年まで先送りにしました。

 これだけ国をあげて行う政策目標がなぜ達成できないのでしょうか。これは業種、企業など多種多様な事情があるため、ひとつに絞ることはできません。ここでは①企業や周囲の意識と②女性本人の意識について考えていきます。

① 周囲の意識
「男性が働き、女性が家事育児をする」
 耳に胼胝ができるほどよく聞くことです。この考えに関する意識変化は起きており、総理府「婦人に関する世論調査」「男女平等に関数世論調査」、内閣府「男女共同参画社会に関する世論調査」「女性の活躍推進に関する世論調査」から見ると、「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきである」という考えに賛成またはどちらかといえば賛成と回答している割合は、昭和54年に男性で75.6%、女性で70.1%だったものが、2019年には男性で39.4%、女性で31.1%と大きな変化を見せています。しかし、男女ともに30%以上は肯定的であることは注目すべきポイントです。
 ここに女性管理職の問題を絡めてみると、「管理職」というのはそもそも、非管理職に比べ仕事量も多く、仕事中心の生活をできる人が就くものという根底意識があるため、「家事育児介護を女性が行う」思想がいまだ根強い日本においては女性管理職を積極的に登用できていない、ということだと考えられます。男女で区別を付けていないつもりでも、ジェンダーバイアスが存在するのです。
 また、それまでの慣例に従って雑務やルーティンワークを女性に任せたり、女性の積極登用に尻込みする結果、女性管理職のロールモデルが生まれない、こうした慣例もジェンダーバイアスの一つと言っていいでしょう。そして、登用以前に育成しようとしないのです。

② 女性本人の意識
 企業で働く女性自身の意識はどうでしょうか。
独立行政法人 国立女性教育会館から出された「令和元年度 男女の初期キャリア形成と 活躍推進に関する調査 (第五回調査) 報告書 」によると、女性の管理職志望は入社1年目には60%あったものが2年目には46.4% となり、5年目には37.6%まで低くなっています。男性の場合は5年目でも87.9%です。つまり、多くの女性は「管理職になりたくない、ならなくてもいい」と思っているのです。
 管理職志望のない女性の回答において、特に多い理由は以下です。
「仕事と家庭の両立が困難になる」(69.3%)、「自分には能力がない」(40.01%)、「周りに同性の管理職がいないから」(18.2%)

 ここから①と②の関連を見ていきます。
「仕事と家庭の両立が困難になる」という理由からは、「男性は外で仕事、女性は家庭を守る」思想の根強さが表れています。女性の多くはそもそも、「結婚したら家庭のことを担うのは自分だ」と思って育ってきているのです。「男性は外で仕事、女性は家庭を守る」思想は女性自身にも刷り込まれてしまっているものであり、男女ともにこの考え方から脱却する必要があります。(この報告の就職活動時の基準重視度の設問「家庭と仕事を両立するための制度が充実していること」に関して男性より女性の方が「重視した」の割合が顕著に高いことも注目すべきポイントです。)
企業においては、女性の仕事と家庭の両立ができる環境を整備するのはもちろんのこと、女性同様かそれ以上に、男性社員の仕事と家庭の両立ができる環境を整備することに意識を向けるべきです。
 女性社員が「自分には能力がない」と考えてしまうのは、それまでの育成や業務内容によるところが大きいでしょう。入社時から男女共通で差のない業務を与え、目標を達成させることで自信を付け、よりステップアップしたいと思わせることが重要です。
 「周りに同性の管理職がいないから」という、ロールモデルがいない問題に関しては、ロールモデルを作ることが必要ですが、男女という区別ではなく、各個人として社員を客観的に評価し、正確に能力の把握をした上で最適な人員配置を検討することが第一歩です。また、男女の業務格差をなくしたり、男性社員が家庭との両立を図ったりすることで、性別関係なく目標とする上司像が形成されるでしょう。

 果たして2030年までに目標は達成できるのか。
「管理職になりたい」と思わせる魅力がそもそも必要なのです。

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プロフィール

宮井 文 (みやい あや)

シニアアナリスト

大学卒業後、教育業にて大学受験指導。その後、IT企業にてデータ分析、AIによる売上予測モデル構築などに従事した後、当社に入社。コンサルティング部門のアナリストとして主に調査分析業務に従事。

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