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初任給を上げる企業こそが生き残る?

執筆者: 吉田 典史 雇用

 2018年前後から大卒、大学院卒の初任給を上げる企業が増えている。特に金融、メーカー、IT業界の大企業やメガベンチャー企業に目立つ。

 私が、この半年で経済雑誌や人事労務の業界紙で取材したのは約10社。これらの企業は、1990年代前半から総合職全員を一律基本給22~26万円で採用してきた。ここ数年は新たに高度専門職を設け、基本給40~60万円で採用している。賞与や残業を含めた年収では500万~800万円。多くの日本企業で賃金は慢性的に伸び悩んできただけに、新しい試みと言える。今回は、これらの企業に共通していることを紹介したい。特に次に挙げる点だ。

 
1.業績はおおむね好調だが、新卒採用では苦戦
2.市場や環境の激しい変化を警戒
3.総合職の数を少なくし、高度専門職の採用を増やす
4.総合職よりも高い賃金だが、成績いかんでは総合職になる
5.正社員のポートフォリオの徹底

 これらの企業の業績はコロナウィルス感染拡大の影響を受けてはいるが、依然として好調だ。だが、採用の担当者たちは「欲しい学生を取れない」と語る。証券会社の担当者は、こう話す。

「欲しいのは、高度金融人材になりうる学生。大学院の修士や博士課程で高いレベルの数学的な素養を身に付けた人材。例えば、弊社のデリバティブの時価・リスク計算には高度で複雑な数学モデルを理解するクオンツ人材が不可欠。このような能力を確実に持っている学生が欲しい」。

 この証券会社は、1980年代後半から相当に高いレベルの数学の素養を身に付けた学生を総合職として定期に採用してきた。10年程の経験を積んだ後、高度金融人材になりうる社員を高度専門職にしている。だが、その育成のスピードでは市場や環境の変化に追いつけないという。しかも、この20年程は日本の大手証券会社よりもはるかに高い賃金を払う外資金融機関に転職するケースが増えているようだ。

 来年4月入社の新卒者の総合職は例年通り、200人前後を採用する。そのうちの5%を高度専門職にするようだ。総合職の数は減らし、高度専門職を増やす。採用時は総合職の位置づけで、その中の「高度専門職」とする。状況いかんでは、例えば、会社が求める成績を残すことができない場合は総合職に戻すこともあるそうだ。その際は、収入はダウンする。ハイリスク・ハイリターンと言える。

 このことは、正社員のポートフォリオの徹底を意味する。従来通りの総合職、その中に一般職、管理職、役員候補の管理職、その他に高度専門職。総額人件費を厳密に管理する態勢が整いつつあるのだろう。

 この動きが本格化すると、40~50代になっても管理職になれない人や管理職になったものの、部下のいない人は肩身の狭い思いをする可能性が高くなる。今後、この類の社員は配置転換や職種転換になるケースが活発になるだろう。賃金の大幅減やリストラもあるのかもしれない。

 会社員にとって、初任給が高くなる動きは「危機」であり、「好機」を意味する。それでも果敢に取り組む企業が優秀な人材を獲得し、やがては生き残るのではないだろうか。
 

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プロフィール

吉田 典史 (よしだ のりふみ)

1967年、岐阜県生まれ。2006年以降、フリーランスに。特に人事・労務の 観点から企業を取材。一方で、事件・事故など社会分野の取材を続ける。 著書に『震災死』『封印された震災死』『悶える職場』など多数

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