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column

お金の管理だけで十分ですか?

 かつて税法や簿記を勉強していた私は、知人や諸先輩方に、経理職を勧められることが多かった。会社全体の経営を数字で管理する経理という仕事に携わることで、ビジネスへの理解が深まり、経営的ポジションについたり、起業したりする際に役に立つという。確かに、管理部長のほとんどは財務・経理出身の方が多く、人事部長や総務部長という方はまれである。

 経理の扱う数字によって会社全体の経営を管理しているという考え方には納得感があり、実際に税務・会計のコンサルタントとして多くの企業の数字に関わった。しかしながら、しばらく仕事をする中で、ある疑問が浮かんだ。

 経理が扱う数字だけでは経営活動を管理しきれないのではないか、という疑問だ。

 経理で扱う数字は「お金」に特化した数字であり、それ以外の分野については数字で表す習慣がなく、分析の対象となっていないことが多い。重要な経営的資源であるにも関わらず、客観的な数字で表現されたり分析されたりしないことが多い分野の代表的な例が、人事の領域である。

 多くの、特に中小企業の経営者と対峙した経験の中では、企業の中で起こる様々な問題に対して、数字だけでは管理しきれず「(経理が扱う)数字+勘+経験」という組み合わせによって経営的判断を下しているケースが多々あった。経験豊富で勘が必ず当たる幸運な社長にとっては何の問題もないのだが。

 「数字+勘+経験」のうち、数字で表現することができないことが多い「勘+経験」の領域を、数字で表現して分析してみることによって得られるメリットは非常に大きい。

 一定のルールに基づいて整理された数字を使うことにより、他社、自社の基準や過去の数字などとの比較が可能になる。財務・経理の分野では、さほど意識せずこの手法を用いており、業種や規模によって経常利益率は○○%程度が目安、などと特定の指標と一定の目安を基準に議論を展開している。

 これらの比較検討と分析・議論によって、経営課題を認識し、軌道修正を行ったり新たな手法を導入したり、複数ある選択肢の中から最適な選択を行ったりする際に、最善の判断を下すことができるのだ。数字を用いることによって、一定の基準の上で比較検討することが可能になり、無限の選択肢の中から直感で決定するというリスクを負わずに済む。これは、リスクヘッジという観点でも非常に有用だ。

 「勘+経験」の領域であるとされがちな人事に関しても、BSを見るように人的資産の保有状況を見て、PLを見るように一定期間のパフォーマンスや創出される価値を測定することによって、何を基準にどこを目指すべきなのかがおのずと明確になるのだ。

 会社や経営者の判断や価値観によって相違が生じることは予見しうるものの、同じ業種・規模で望ましいあり方はある程度定型化できるはずである。

 実際には、多くの会社ではまだ行われていないことだが、今後は、人事の領域についても比較・分析という概念を導入し、数字を用いた一定の指標と基準をベースに、経営戦略の実現のために議論を重ねることが望まれるようになるだろう。

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