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クワバラ、クワバラ

執筆者: 森 大哉 人事管理

 新型コロナの騒動は、のろのろと進んでいた「働き方改革」のアクセルを強く踏み込んだ。在宅勤務は、好むと好まざるとに関わらず広く普及し、定常化した。満員電車の揉み合いが無い快適さの代償に、業務妨害を企む子供たちとの熾烈な揉み合いを強いられる。それでも、会社から見ると、なあんだ、やればできるじゃないか、ということで、在宅勤務を標準の働き方に据え、この際、「働き方改革」をしっかり前に進めようと決心する会社が次々と現れてきた。

 このようにして労働のスタイルが変わってくると、会社は新しい悩みを抱える。部下の働きぶりが見えないという悩みだ。つい数か月前には、管理職を集めた研修で、「部下の働きぶりをよく観察しなければ正しい評価はできませんよ」などと嘯いていたのに、「どうやって観察するの?」という問いに答えを失う。もはや仕事のプロセスは見えないから、アウトプットだけを見て評価しなければならないのだろうか。しかし、アウトプットの量や出来栄えなど、測定できない仕事もあるしなあ・・と悩みは尽きないのだ。

 これまでの普通のマネジメントは、会社が良しとする行動を社員に求めてきた。それを立派に実行すれば褒美が与えられるし、さぼったり、いい加減にやったりすれば、罰が与えられる。こうしたマネジメントによって動かされる組織を仮に「規律組織」としよう。上長は常に部下の仕事ぶりを観察し、部下を指導し、望ましい行動をとるよう誘導する。社員は規律に反しないよう、常に会社や上長の意向を気にしながら業務に当たるというメカニズムだ。ワン・オン・ワンだとかコーチングだとかいろいろ配慮してくれるのは有難いが、つまるところ罰点を食らうのはご免蒙りたい。だから上長に求められるとおりの行動を取る。ふつうの組織だ。

 さて、最先端のICTを駆使する在宅勤務組織に言わせれば、こんな「規律組織」はまどろっこしいものかも知れない。最先端のICTとは、「画像認証技術」、「ビッグデータ」、「AI」・・などというやつだ。もともと、AIというのは、Xというアウトプットの結果たる膨大なYの値を集めてきて、こんなXをインプットしたら、たぶんこんなYがアウトプットされるだろうと、帰納的に判断するのだそうだ。XとYの間の因果関係はブラックボックスだ。ウェブサイトで買い物をする人が検索する品目を大量に集めて分析すれば、ある品目をチェックしている人に「こんなのもありますよ」と興味の湧きそうな別の品物を勧めることができるということだ。
 
 こんなことができるなら、在宅勤務する人の表情をPC内臓のカメラがいつも監視していて、画像認証技術で表情の動きを解析し、集中力が低下したというサインを見つけたときには部屋の照明とPCの電源を自動的に落とし、5分の休養を促す静かな音楽を流すようになるかも知れない。会話の音声と表情の動きからあまり買う気が無いと分析されたお客さんとのオンライン商談は、10分を過ぎると会社のサーバーが勝手にシャットダウンしてしまい、デジタルな趣の声が「コショウシマシタ。」とアナウンスするようになるかも知れない。

 つまり、規則で人々を律する組織ではなく、ICTで人々の行動をコントロールする組織だ。「規律組織」に対して「自動制御組織」とでも呼ぼうか。
 社員は自律的に努力し、自主的な判断で仕事を進める。上長はコーチとしての脇役だから、細かい指示も命令もしない、仕事の主役は最前線で働くオレだ!と、仕事をしている本人はそう信じている。だが、いつの間にか、知らないところで、AIが彼らの行動を詳細に監視し、照明を暗くしたり明るくしたりしながら、その行動をコントロールしている・・そんな時代の到来を、新型コロナが加速させているような気がする。クワバラ、クワバラ。

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プロフィール

森 大哉 (もり ひろや)

代表取締役 シニアパートナー

早稲田大学法学部卒業。三菱重工業株式会社に入社し、労務管理・海外調達関連業務に従事。同社在職中にニューヨーク大学経営大学院修了。その後、トーマツコンサルティング株式会社に入社。戦略・組織コンサルティング業務を経て、同社パートナー就任。続いて、朝日アーサーアンダーセン株式会社にて、人事組織コンサルティング部門の部門長として数多くの組織変革を支援。同社パートナーを経て、現職。

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