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チームとしての経営力

執筆者: 吉岡 宏敏 経営

 経営人材育成の取り組みが増えている。

 ともすれば、役員=従業員のアガリ、であって、明確な役員登用基準や育成施策がない場合も少なくなかったが、それではVUCA時代の経営として心もとない。ときに痛い目にあった登用の失敗を避け、今後の経営をリードしうる経営人材を計画的に作り出していくには、役員要件をはっきりさせ、そのあるなしを客観的に見極めることが不可欠だと、多くの企業で痛感されている状況がその背景にある。

 その方法としては、「今までではなく今後」の自社の役員に求められるスキルや経験が、何かを検討し要件として定義し、アセスメントセンター方式や360度診断、適性診断等複数の測定手法と経歴管理(≒タレントマネジメント)をもちいて、直近の役員登用だけでなく、中長期的な役員輩出の仕組み(=リーダーシップ・パイプライン)をつくるというのが常套的である。ここで大事なことは、定めた役員要件をすべて満たすことが登用の条件ではないということだ。異なる強みを持った人材が集まる経営チームであることこそが、強い経営力なのである。

 経営情報の開示がすすむ海外では、経営陣のスキルマップが自社のウェブサイトで公開されている。つまり、役員ひとりひとりの強みの違いが一覧できるようになっているのだ。日本ではまだその例は少ないが、何社かは、それぞれに特徴のある役員スキルマップが掲載されている。共通するのは、ファイナンスやマーケティングといった経営リテラシー領域別の強みだけではなく、能力や資質の項目でもマーキングがされていることだ。

 例えば、ある企業では、リテラシーとしての得意分野に加えて、マネジメントスキル、資質・姿勢、さらには行動特性といったカテゴリーでマッピングされている。資質面の項目は、「忍耐性・持久力」、「柔軟性・適応力」、「活動性・指導力」など5項目、興味深いのは行動特性の項目で、「インスピレーション」、「シンキング」、「フィーリング」、「プラティカル」の4項目。これら項目で、社長以下全経営陣のスキルマップがつくられているのだ。ここには、自社はどのような経営チームであるべきかという思想と実態が、要件項目とバランスの両面から示されている。

 「チームとしての経営力」をゴールとするリーダーシップ・パイプラインでは、各階層の昇格に際して「総合点」以上に、個別の「強み」の把握がポイントになる。「弱み」の克服は重要ではあるが、強みをより強くする育成こそが求められる。弱みをなくし個人としてバランスの取れた経営人材候補よりも、むしろ突出した強みや明確な思考や行動の特性を有する人材をはっきりと把握し、どう育成するかが問われることになる。

 最終的にチームとしてのバランスさえ取れていればよく、個々がとんがった強みをもつ異質人材の集まりは、イノベーションが生まれる創発の場たりうる条件でもあるからだ。VUCA環境下で求められる状況適応力の高い組織とは、多様性を内部に持たねばならないともいわれる。「チームとしての経営力」とは、防衛的ではないもっとも攻撃的なダイバーシティマネジメント施策として、最初に実践すべきことともいえるかもしれない。

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プロフィール

吉岡 宏敏 (よしおか ひろとし)

シニアパートナー

東京教育大学理学部応用物理学科卒業。ベンチャー企業経営、ウィルソンラーニング・ワールドワイド株式会社コーポレイト・コミュニケーション事業部長等を経験後、株式会社ライトマネジメントジャパンに入社。人材フローマネジメントとキャリアマネジメントの観点から、日本企業の組織人材開発施策の企画・実行支援に数多く携わる。ライトマネジメントジャパン代表取締役社長を経て、現職。

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