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「共感」を強制するな!

執筆者: 高野 潤一郎 人材育成

私は、「大自然に接すると、美しいと感じる」ことがありますが、「絵画を見て、美しいと感じる」ことは滅多にありません。 これは、間違ったこと、悪いことなのでしょうか?

私のような感性の持ち主に、「この絵画を見たら、美しいと思いなさい。美しいと思わないと、マズイですよ」という態度で接することは、ある意味、「外から力ずくで、特定の価値観を押し付けようとする非人道的な行為」だと捉えています。

また、反対に「相手の考え方や気持ちがどういったものであれ、それに共感を示す人物」は、「八方美人で、信用できない相手」あるいは「自分なりの考え方や感性を持たず、他者との相乗効果が望めない相手」であって、本音で付き合うには心理抵抗を覚えます。

ところが、人事考課に「共感力に関する評価項目」を設けている企業もあるためか…「相手に共感できないのだけれど、それは自分に『共感力という能力』が欠けているためだ」と悩む、真面目な研修受講生に出会うことがあります。

そんな場合には、まず、「自分とは異なる考え方の相手とのコミュニケーションでは、即座に相手に共感を示すことなんて、できないのが普通です」と話し、少し安心していただきます。

大切なことは、「相手が、どんな考え方や感じ方をしているのか?」「物事をどのように捉えていて、その捉え方には、どんな利点があるのか?」「その解釈や評価の背景には、どんな経緯があるのか?」などについて、「相手や意見の内容をきちんと理解しようと努める」ことだと伝えます。

そういった姿勢で相手に接することで、「自分の内面に、自発的に何らかの感情が生まれ、結果として、相手に共感できる場合もあれば、共感できない場合も生じる」というのが、「自由意志のある人間どうしのコミュニケーション」だと伝えるのです。

この話のミソは、「どんな考え方や気持ちを持っているのだろう?」などと、「自分に関心を持った態度で接してきてくれる人物」は、「異なる意見の持ち主であっても、なかなか嫌いになれない」という点です。 たとえ、こちらが相手の意見に完全に『同意』していなくても、「相手の意見にもそれなりに良い側面があるはずだ」と、関心を持って接していると、相手は「こちらが『共感』してくれている」(共感力のある相手だ)と感じてくれるということです。

このように、「一生懸命に相手の言語・非言語のメッセージを受け取ろうとする姿勢」が、良好な関係構築の基盤となる、「ラポール(※)」と呼ばれる「瞬間的な心身状態」の構築につながります。 そして、さまざまな形で「ラポールを増強していく」ことで醸成されるのが、中長期に渡って安定した「信頼関係」なのです。

今回は、種々のコミュニケーション系研修の基盤となる、「共感力」と「ラポール≠信頼関係」について取り上げてみました。 あなたの会社で実施されている研修は、小手先のテクニック演習になっていませんか?

※ラポール(rapport;「精神感応」と訳される場合もあります)
「この相手となら、今後も話し合っていっても良さそうだという感覚が持てている状態」のことです。 一般には、次の3つの要素がそろったときに「ラポールが形成される」と言います。(1)お互いに対する心の傾注、(2)肯定的な感情の共有、(3)非言語コミュニケーションの同調。 そして、「約束を守る」などいった経験を重ねて、ラポールを強化し、「信頼関係」に育てていくことが重要です。
[ 参考情報: “The Nature of Rapport and its Nonverbal Correlates”, Linda Tickle-Degnan and Robert Rosenthal, Psychological Inquiry 1, No.4(1990), pp.285-293 ]

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プロフィール

高野 潤一郎 (たかの じゅんいちろう)

マネージャー

日本の科学技術政策立案プロセスの一翼を担う国立試験研究機関にて、国内外の研究開発動向の調査分析・将来予測に従事し、在職中にマテリアル・サイエンス分野の博士号を取得。大型事業契約(約1,000億円)締結や日米共同プロジェクト(約500億円)の基調に採択される論文を執筆。人材開発・組織開発支援会社を創業し、11年間に渡る経営(複数のフォーチュン・グローバル500企業への研修提供、グローバルに展開するコーチング財団の初代日本統轄ディレクターを兼務、人材開発・組織開発コンサルティングの提供、私立理工系大学にてキャリア講義ほか)を経て、現職。

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