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大人のコンプライアンス

執筆者: 吉岡 宏敏 経営

 コンプライアンスの訳語は法令順守とされるが、法令順守ができていることは、コンプライアンスのミニマムレベルにすぎない。

前都知事をめぐって異様に繰り返し聞かれたセリフ「違法ではないが、不適切」ではないが、法令は守っているがコンプライアンス上はアウトという事態は少なくない。「法を犯していないのだから問題ないじゃないか」は、ものごとの軽重や良し悪しに関する社会的な視点を欠いた子供の理屈である。コンプライアンスとは、「規範」に従うことであり、その規範とは法律以外の社内諸規定はもちろん、公正、秩序、倫理といった社会の規範にまで及ぶからだ。

よく知られるように、コンプライアンスで守るべき規範のピラミッド構造では、底辺に(1)法規範が置かれ、次に(2)社内規範、次いで(3)企業倫理規範、頂点に(4)経営理念・ビジョンが置かれる。つまり、「(1)合法的行動」、社内の「(2)リスク管理行動」は大前提。法を守り会社のルールを守るのは当たり前で、そのうえで社会の規範たる「(3)模範的行動」が強く求められ、さらにその会社としての「(4)理想的行動」を目指さねばならないということである。

しかもその行動は、自社のすべてのステークホルダーズとの関係において問われる。CSRの世界では「CSR調達」という言葉があり、材料調達先企業を含むサプライチェーン全体でCSRがなされなければならないとされるが、そこでいうCSRの防衛的側面はコンプライアンスの堅持だ。自社のリスク管理のみならず各ステークホルダーズのリスク、つまりは「社会のリスクマネジメント」責任までが問われ、社会の模範たる行動が要請される。

まさにコンプラピラミッドの第3レベル、企業倫理規範に基づく模範的行動、つまり、社会の一員であり社会の秩序を保つ「大人の企業」としての振る舞いが求められているのだ。しかし、法規範や社内規範は明文化されているから明快であるが、そのように定まっていないなかで行動判断しなければならないこともある。だから大事なことは、判断基準たりうる企業倫理規範があるか、そしてそれが順守できるように社内に浸透しているか、ということになる。

しかし「わが社の企業倫理はなにか」と問われ、即答できるひとがどれだけいるか。倫理などというものは、常識的に考えればわかるというむきもあるかもしれないが、「常識」は個々人で異なる。そのちょっとした常識の違いの結果が、利益追求や損失回避を目的とした行動判断のなかで倫理的逸脱=企業の不祥事となるから厄介なのである。当たり前の常識とか人々の良心に頼るリスクを無視しないことこそがコンプライアンスの要諦であり、まずは、個々人の「外」に、準拠すべき規範を可視化しなければならない。自社の企業倫理規範を定める、ないしは明文化するということである。

では企業倫理をどう定めるか。難しいのは、経営ビジョンや理念と違って、企業倫理は固有に独立的には作れないことだ。組織の持続的発展のための組織倫理はもちろん、たとえば市場倫理、職業倫理やさらには地球で暮らす人類としての世界倫理など他のさまざまな社会の倫理を踏まえなければならないし、またそれらは、時代とともに一定ではない。変化する社会の価値観にずれることのない、現代の企業倫理を定め続ける必要がある。

しかしだからこそ、自社の企業倫理の定めがいがあるというものではないか。すでに多国籍企業のように国を超えた企業体もあり、一企業として、正しい企業倫理を定めることの社会にとっての意味はきわめて大きい。必ずしも「大人」でない国や民族や人々が存在し、グローバルにもローカルにも、倫理という規範が盤石でなくなっているのだから。

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プロフィール

吉岡 宏敏 (よしおか ひろとし)

シニアパートナー

東京教育大学理学部応用物理学科卒業。ベンチャー企業経営、ウィルソンラーニング・ワールドワイド株式会社コーポレイト・コミュニケーション事業部長等を経験後、株式会社ライトマネジメントジャパンに入社。人材フローマネジメントとキャリアマネジメントの観点から、日本企業の組織人材開発施策の企画・実行支援に数多く携わる。ライトマネジメントジャパン代表取締役社長を経て、現職。

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