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休みたくても休めない

執筆者: 森 大哉 人事管理

 世界に類を見ない少子高齢化社会に突入し労働力不足が懸念される我国では、女性の社会進出機会をより高めようと、さまざまな工夫がなされています。国の主要な制度として育児休業の制度が施行されています。個々の企業においても、子育ての期間は転勤をしなくても済むようにする転勤猶予期間の制度、実家を離れる心配のない地域限定の働き方、通常より短時間の勤務など、さまざまな工夫がされています。保育施設を提供する会社もあります。

 こうした努力にもかかわらず、女性にとって働きやすい社会になったという評判は聞いたことがありません。子供を育てながら働くというライフスタイルを諦める人はまだ数多くいるようです。その理由を尋ねてみると、「周りに迷惑をかけたくないから」というのがたいへん多い。育児休業制度があるのだから大いに利用すればいいじゃないか、育児休業から復帰した後も、職場の皆が協力すれば・・といった単純な意見は、現場を知らぬ者の妄言として退けられてしまいます。誰かが勤務を休めば、他の誰かがカバーしなければなりません。育児で休まざるを得ない人がいて、その穴を埋めるべく頑張り過ぎた仲間が、心身の健康を損なうような事例も少なからずあるようです。
 調べてみると、職種によっては比較的休みを取りやすいものがあります。育児休業の取得状況を見ると、化粧品等の販売職、航空会社のキャビンアテンダント、看護師、薬剤師、といったような職種においてはその率が高いようです。女性が多い職場なので理解があるというのも理由のひとつでしょうが、業務が標準化されているということも重要なファクターであると考えるべきです。たとえ臨時の補充であれ、きちんと訓練された人が確保でき、定められた業務標準に基づいて仕事をしてもらえれば、業務品質を落とすことなく一定のアウトプットを出すことができます。だから、職場に無理を生ずることなく安心して育児休業の制度を活用したり、子育ての事情に応じて休みを取ったりすることができるということです。
 多くの職種においては、これと反対のことが起こっているのでしょう。つまり、業務標準化の程度がたいへんお粗末で、職務標準に則った実務訓練も行われていない。だから、ある特定の担当者がいなければ業務が前に進まない、つまり「余人をもって代えがたい」状態になっているのです。誰もカバーに入れない、無理にカバーしようとすれば担ぎきれない荷物を背負うことになります。

 わが国では、もともと、業務量の変動によってたやすく社員を解雇することはできません。会社はどんなことがあっても社員の雇用を守る、その代わり、社員はどんな仕事でも何とかしてこなす、という交換条件が自然に成り立っています。だから、「あなたの仕事はこれとこれ」、「手順はこのようにして」・・というような業務標準化がそもそもなじまないと考える経営者や管理者が多いようです。マニュアルなど作ったら、それ以外の仕事はしません、と言われて仕事にならない、下手な決まり事は作らないほうがよい、などという意見もよく聞きます。なんでも曖昧にしておくほうが、何かと融通が利いて便利だというわけです。これでは、個々の社員に仕事が付いて回り、代替性が損なわれますから、いつまでたっても子育てをしながら働こうという女性の労働力を招き入れることはできません。

 時代は変わりました。十分な労働力を確保するため、子育てをする女性が安心して職場に参加できる環境を作らなければなりません。そのためには業務標準化と実務訓練の有り様をもう一回見直す必要があります。業務標準化には、短時間で手早くアウトプットを出し労働生産性を高める効果があります。加えて、人の代替を効かせるという重要な効用があります。したがって、業務標準化は、女性の職場参加にとって不可欠な要素です。もはや、業務標準化と実務訓練というめんどうくさいプロセスを避けるために「なんでも曖昧にしておいたほうが、融通が利いて良い」などと言っていてはいけません。スローガンを掲げて旗を振っているだけでは問題は解決しないのです。

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プロフィール

森 大哉 (もり ひろや)

代表取締役 シニアパートナー

早稲田大学法学部卒業。三菱重工業株式会社に入社し、労務管理・海外調達関連業務に従事。同社在職中にニューヨーク大学経営大学院修了。その後、トーマツコンサルティング株式会社に入社。戦略・組織コンサルティング業務を経て、同社パートナー就任。続いて、朝日アーサーアンダーセン株式会社にて、人事組織コンサルティング部門の部門長として数多くの組織変革を支援。同社パートナーを経て、現職。

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