合理的・構造的アプローチで企業人事を進化させる
コンサルティングファーム

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矛盾する方針

執筆者: 林 明文 人事管理

 企業が新たに人事制度を設計し導入する場合に、その制度のレベルは関与者の知識、スキル、マインドに大きく依存します。多くの企業では、人事制度の導入を計画する場合に人事部が中心となって設計します。また主要組織のキーマンや経営陣などを中心として、“人事制度検討委員会”などを設置して、人事部門が策定した制度を審議します。新たな人事制度の方向性やある程度の骨格を決定するのは、委員会のメンバーと実際には設計する人事部門メンバーとなります。経営者が方向性と大まかな制約事項を提示して、人事部門が自社に適合した経営に効果のある制度を設計し、それを経営者が承認するというのが望ましい進み方です。

 しかしこれがうまく機能しない企業が少なくありません。そもそも経営者の方針や制約がよく理解できなかったりします。また経営者の方向性を咀嚼して人事部門が設計しても設計そのものが合理的でないことも散見されます。そうなると説得力のある説明できないのです。さらには設計の途中や設計終了後に経営者と話をすると、ここでも大きな問題が起こることがあります。経営者は自らが発した方針が制度になることによって初めて現実の社員への影響を目の当たりにするのです。そうすると矛先が鈍る人も多く出てくるのです。

 ある企業で“担当している職務によって処遇する制度にする”という方針に対して、人事部門は複数段階の職務レベルを設定して、それぞれ適切と思われる給与を設計しました。職務によってということは、担当職務が上がれば給与は上がるでしょうし、担当職務が明らかに下がれば給与はダウンすると解釈しました。給与制度的には職務レベルによってはっきりと差のある給与制度となります。これを経営者に持っていったところ、毎年の昇給や数年ごとの昇格は行いたいという強い要望が出たのです。職務レベルを軸とした処遇と定期昇給や定期的な昇格などは理論的には相入れないのですが、どうもその経営者の認識が明確でないのです。こういう人事に疎い経営者に対して最近の人事制度理論をすぐに理解させることは非常に困難を伴います。経営者も昔の人事制度で慣れ親しみ、かつ昔の制度でよい思いをしてきた人なのです。こうなると人事制度設計も内部承認を得るまで大きな苦労が待っています。結果としては経営者の曖昧なイメージを何度も形にして説明しますが、そもそも矛盾した方針を出しているのですから、設計しても無理があります。設計に無理があることに経営者は次第に気が付いて行くのですが、これには時間がかかるのです。挙句の果てに、個人別の給与の変更案をみると一気に心が萎える人がいることも、多く目にしてきました。

 企業にとって重要な人事制度を策定するのであれば、まずは経営者含めて社内の関与する人たちの人事知識を一定レベルまで上げなければ、議論すら噛み合わないのです。いくつかの企業で、制度設計する前に人事の基本的な言葉や理論の研修を社長含めて関与者に行ってから設計をすることがありました。これは非常に効果的でした。ただし社長含めてこのような事前研修に出ること自体に消極的な企業も少なくありません。このような研修ができない企業は、議論が長くなることを覚悟したほうがよいかもしれません。経営者の“人事管理”に関する知識、スキルが足りていないのが現状ではないでしょうか。

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プロフィール

林 明文 (はやし あきふみ)

代表取締役 シニアパートナー

青山学院大学経済学部卒業。 トーマツコンサルティング株式会社に入社し、人事コンサルティング部門シニアマネージャーとして 数多くの組織、人事、リストラクチャリングのコンサルティングに従事。その後大手再就職支援会社の設立に参画し代表取締役社長を経て現職。明治大学専門職大学院グローバルビジネス研究科客員教授。

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