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暗黙知を引き出す
執筆者: 吉岡 宏敏 人材育成
“子供の学習”と“大人の学習”は違う、という説がある。
それによれば、子供の学習は新しい知識を学ぶことだが、大人の学習は知識を整理し体系化することとされる。大人は、いろいろな経験をし、自覚的ではないかもしれないけれども知っていることも多い。その、自身のなかに散在する知識や経験を、意味づけ、体系化し、コトの原理がわかることで、再現化できるようになる。
つまり、経験を踏まえて自身としての方法論化ができるのが、大人の学習ということである。それこそが、企業研修(Off-JT)が大事である理由であり、そこでは学校の授業とは、まったく異なる教育手法が必要になる理由でもある。企業研修は通常、レクチャーにはほとんど時間を割かずに、ディスカッションや考えさせる演習に腐心する。それにより、自身の経験や知見を引き出し、多様な意見により相互に触発し、暗黙知を形式知化させていくことがその狙いである。
暗黙知を引き出すための一番のポイントは、「言葉にする」ことである。言葉にして伝えるために、あいまいな考えや印象的な経験を整理し、形にしなければならないからだ。それにより人に伝えられるし、自分で行動することもできる。
たとえば理念浸透のための教育では、各部門長がメンバーに対する行動指示のメッセージを具体的に作成する、といったことをする。企業理念や行動指針の項目ごとに、例えば、「地域社会への貢献」という項目に対して、個々の部下の担当業務に即して、「こういったことをしろ」、「これだけはするな」といった具体的な行動指示をつくらせる。その際に大事なことは、そのメッセージには、必ず自分の経験を盛り込むというルールを課すことである。
具体的行動を考えるにあたって、自分の体験や知見を振り返る。その上で、「こんな時はこうしろ、なぜなら自分もかつてこんなことがあって〜〜〜」といったメッセージを作成することで、誰でもないその上司だけの行動メッセージができあがる。
たとえば評価者研修で、部署別に能力評価やバリュー評価の項目ごとに行動例を皆で作成するセッションも効果的だ。あいまいで抽象度が高い評価項目でも、マネジャーたちが自身の経験に即して具体例を出し合い、そのレベル感を議論することで、実態的な行動と暗黙の基準が共有されていくという効果がある。
大人の学習とは、教えるのではなく、引き出すことである。管理職とはどうあるべきか、どう行動すべきか、というレクチャーに対しては「そんなことわかってるぜ」と斜に構えるマネジャーたちも、「あなたのマネジメントの持論を語ってくれ」というセッションをすれば、時間が足りなくなるぐらい白熱するものなのである。
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プロフィール

吉岡 宏敏 (よしおか ひろとし)
シニアパートナー
東京教育大学理学部応用物理学科卒業。ベンチャー企業経営、ウィルソンラーニング・ワールドワイド株式会社コーポレイト・コミュニケーション事業部長等を経験後、株式会社ライトマネジメントジャパンに入社。人材フローマネジメントとキャリアマネジメントの観点から、日本企業の組織人材開発施策の企画・実行支援に数多く携わる。ライトマネジメントジャパン代表取締役社長を経て、現職。